三菱電機 【東証プライム:6503】「電気機器」 へ投稿
企業概要
(1) 経営方針
「私たち三菱電機グループは、たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献します。」という企業理念は、社会における私たちの存在意義そのものです。この企業理念の下、三菱電機グループは「成長性」「収益性・効率性」「健全性」の3つの視点によるバランス経営に加えて、「事業を通じた社会課題の解決」という原点に立ち、サステナビリティの実現を経営の根幹に位置づけています。これにより、企業価値の持続的向上を図り、社会・顧客・株主・従業員をはじめとしたステークホルダーへの責任を果たしていきます。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
①経営環境
世界経済の先行きは、引き続き消費の拡大が見込まれるものの、欧米を中心とした各国の金融引き締めの継続や中国における不動産不況等の影響により、緩やかな成長に留まることが見込まれます。さらに、ウクライナ情勢の長期化や米中対立など地政学的リスクの高まりに伴い、想定を超えた経営環境の変化も懸念されます。
②対処すべき課題
「ありたい姿(循環型 デジタル・エンジニアリング企業)」の実現へ向けた変革の加速
三菱電機グループは、お客様から得られたデータをデジタル空間に集約・分析するとともに、グループ内が強くつながり、知恵を出し合うことで新たな価値を生み出し、社会課題の解決に貢献する「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革を進めています。
この変革をさらに加速するためのデジタル基盤として、「Serendie(セレンディ)」を構築しました。Serendieを活用し、多様な人財が技術力と創造力を発揮することにより、新たなソリューションを提供します。そのために、デジタルによって経営や事業を変革する「DX人財」、新たな市場を開拓する「共創活動」、AIやモデルベース等の先進的な「デジタル技術開発」、経営のインフラとなる生産や業務の「プロセス改革」を強化します。
2023年4月に設立した「DXイノベーションセンター」は、上述の取組みを牽引するとともに、各事業部門によるソリューション事業の創出・拡大を後押ししていきます。
経営体質の強化
三菱電機グループは、「収益性」と「資産効率」の向上のため、ROIC*1を活用した事業運営を進めることで、資産効率とキャッシュ創出力を重視した経営に取り組んでいきます。これにより、重点成長事業については生産体制強化やM&A等の積極的な投資をスピーディーに実行する一方、収益性・資産効率の改善が見込まれない課題事業は撤退や売却の検討を進める等、事業ポートフォリオ戦略に基づくリソースシフトを強力に推進していきます。
さらに、グローバルでのエンジニアリングチェーン・サプライチェーンの最適化及びグループ経営の効率化にも取り組みます。また、足元の経済動向を踏まえ、経営環境の変化に柔軟に対応したオペレーションを徹底していきます。
あらゆる事業運営のベースとなる人財については、人的資本価値の最大化に向け、2024年度から新しい人事制度を導入しました。「成長に繋がる適正評価の実現」と「自律的キャリア開発支援」をコンセプトに、等級・評価・報酬制度を刷新し、従業員のキャリアオーナーシップに基づく自律的な成長を促すとともに、マネジメント層にはグローバル基準でのジョブグレード制度を新たに適用し、ジョブ型人財マネジメントへの転換を図ります。
本質的なサステナビリティ経営の推進
三菱電機グループは、サステナビリティの実現に向けて注力する5つの課題領域(「カーボンニュートラル」、「サーキュラーエコノミー」、「安心・安全」、「インクルージョン」、「ウェルビーイング」)を明確化しています。これらの課題領域において、事業を通じ社会課題を解決することで、社会の持続可能性と三菱電機グループの事業発展をトレード・オフの関係にするのではなく、この2つが両立する「トレード・オン」に挑戦していきます。
かかる中、当社は、2024年4月に「サステナビリティ・イノベーション本部」を新設しました。同本部が中心となり、グローバルかつサステナビリティの視点で社会課題を解決する新たな事業創出に取り組むとともに、持続的成長を支える経営基盤の強化を包括的、戦略的に推進し会社を変革していきます。
カーボンニュートラルについては、当社の長期環境経営ビジョンである「環境ビジョン2050」において、2050年度までにバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すこととしています。また、その中間目標として、2030年度までに自社工場・オフィスからの温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すこととしました。これら目標の達成に向け、技術革新により社会全体の脱炭素化に貢献する事業を育成するとともに、自社の技術も活用して自社排出の削減を進めていきます。加えて、TCFD*2の提言に基づいた気候変動に係るリスクと機会の開示に向けた取組みを継続していきます。
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンについては、多様な人財が活躍し、新たな価値を創出するために協働することを目指し、従業員の働き方や多様性を認め合えるような職場環境・風土の実現に向けた各種取組みを推進します。また、国際的に合意されている人権の保護を支持・尊重することを企業活動の前提とし、従業員やサプライチェーンの人権尊重に取り組みます。
サステナビリティに関する具体的な考え方や取組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。
当社が進める3つの改革の深化・発展と倫理・遵法の徹底
当社は、これまで明らかになった品質不適切行為の全容及び調査委員会・ガバナンスレビュー委員会からの指摘、提言を真摯に受け止め、2021年より信頼回復に向けた3つの改革(品質風土、組織風土、ガバナンス)への取組みを開始し、新しい三菱電機の創生に向けた変革に全力で取り組んでいます。エンジニアリングプロセスの変革を目指す「品質風土改革」、双方向コミュニケーションの確立を図る「組織風土改革」、予防重視のコンプライアンスシステムの構築を進める「ガバナンス改革」の3点は、確実に進捗しています。特に「ガバナンス改革」においては、外部の視点を入れながら、不正が起こらない・起こさないガバナンス/内部統制の仕組みの構築を進めています。
三菱電機グループのコンプライアンス・モットーである“Always Act with Integrity”(いかなるときも「誠実さ」を貫く)に基づき、品質不適切行為やこれまで発生した労務、サイバーセキュリティの問題の風化防止を含む、再発防止に向けた各種取組みを進めていきます。
*1 ROIC(投下資本利益率):各事業部門での把握・改善が容易となるように、「資本」「負債」ではなく、資産項目(固定資産・運転資本等)に基づいて算出する三菱電機版ROIC
*2 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):G20の財務大臣・中央銀行総裁からの要請により設置された、民間主導による気候関連財務情報の開示に関するタスクフォース
中期経営計画 2025年度目標
これら施策を通じ、中期経営計画における2025年度財務目標の達成に取り組んでいきますが、一部事業における市況悪化の影響等を受け、目標は一部見直しを行います。今後は「連結売上高5兆円+(変更なし)」「営業利益率8%+(変更前10%)」「ROE9%(変更前10%)」「キャッシュ・ジェネレーション3.3兆円/5年(変更前3.4兆円/5年)」を新たな目標とし、追加の構造対策や、更なる価値の創出に取り組むことで営業利益率8%を上回る業績の達成を目指していきます。キャピタル・アロケーションは当初の計画を維持し、成長投資を最優先として重点成長事業を中心に2.8兆円を振り向けつつ、利益成長を通じた株主還元についても更に強化して0.6兆円を目標とする方針としています。
なお、セグメント別の事業戦略および営業利益率は次のとおりです。
セグメント | 事業戦略 |
インフラ | 広範な社会インフラ事業におけるグローバルレベルの顧客基盤・ストックを活かし、「世界の重要インフラの安定稼働とカーボンニュートラルの実現」と「日本・アジアの安全保障への貢献」に取り組みます。そのために脱炭素コンポーネントや防衛・宇宙事業への重点的なリソース投入と、事業間シナジーを生む統合ソリューションであるE&F(Energy&Facility)ソリューションの推進に注力します。 |
インダストリー・ モビリティ | コアコンポーネントとデジタル技術の統合で、未来の“ものづくり”と“快適な移動”を支えます。インダストリー領域では重点成長事業におけるコンポーネントの提供価値拡大と、FAデジタルソリューションの事業モデル構築を推進します。モビリティ領域では新会社 三菱電機モビリティ㈱の下、環境変化に対応した事業ポートフォリオの再構築や事業運営の効率化などをスピーディーに行います。 |
ライフ | 人々の生活を支える空調や昇降機などの設備事業に加え、お客さまとつながり続けることができる保守や運用管理などの循環型事業を通じて、あらゆる生活空間における快適で安全・安心な生活環境を創造するソリューションプロバイダとなることを目指します。顧客価値の創出を推進し、「グリーンエナジーソリューション」「安全・安心&快適ソリューション」「ビルマネジメントソリューション」を提供します。 |
ビジネス・ プラットフォーム | 「事業DX」と「業務DX」の両輪の取組みを通じて循環型 デジタル・エンジニアリングを推進させるための経営基盤を構築していきます。構築した経営基盤と、「グローバルオペレーション&メンテナンス(O&M)」を中心とした各種サービスを各ビジネスエリア・事業本部に提供することにより、統合ソリューションの創出を支え続けるとともに、情報システム・サービス事業の強化を図ります。 |
セミコンダクター・ デバイス | 社会のGX・DX実現に必要不可欠なキーデバイスの提供を通じて、三菱電機グループの統合ソリューションをコンポーネントから強化していくことに加え、社内関連事業の知見を幅広く取り込み、顧客目線で付加価値の高いデバイスの開発に取り組みます。特にパワーデバイス事業では、三菱電機が強い技術と豊富な市場実績を保有するSiC(Silicon Carbideの略:炭化ケイ素)を中核とした成長基盤の強化に取り組み、事業の成長をさらに加速していきます。 |
<営業利益率のセグメント別内訳>
セグメント | 2023年度 実績 | 中期経営計画 2025年度目標 |
インフラ | 3.0% | 7% |
インダストリー・モビリティ | 7.0% | 9% |
ライフ | 7.1% | 9% |
ビジネス・プラットフォーム | 5.9% | 9% |
セミコンダクター・デバイス | 10.3% | 12% |
三菱電機グループは、上記施策を着実に展開することにより、更なる企業価値の向上を目指します。
なお、上記における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において当社が判断したものです。
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