日本高純度化学 【東証プライム:4973】「化学」 へ投稿
企業概要
気候変動が加速していく中、世界各地において自然環境・人々の暮らし・企業活動に様々な影響や被害が現れ始めています。気候変動への取り組みとしてパリ協定が採択され、各国がネットゼロに向けた対応を行っており、日本政府はNDCの目標(2030年度における温室効果ガス(GHG)削減目標)を26%から46%(2013年度比)に引き上げることを表明しています。こうした中、企業による事業を通じた脱炭素社会への貢献が求められています。当社は、事業を通じて気候変動の緩和と適応を行いながら持続的成長を目指します。企業に対して気候関連課題に関する情報開示要請も高まっており、情報開示の重要性を認識し、開示に向けた取り組みを進めています。
また、当社は知識集約型・開発型の企業であるため、人的資本が企業価値向上の源泉であり、「能動型自律人材」の多寡により会社の経営が左右されると考えております。当社の中・長期ビジョンを実現するためには「人的資本経営の推進」が欠かせず、①企業理念に共感し、ビジョンの実現に主体的に参画する組織風土の醸成、②能動型自律人材の採用と育成、③働きやすくやりがいを感じる職場環境の整備、という3つの考え方に基づき人材育成方針並びに社内環境整備方針を策定いたしました。これらの方針をもって、全従業員が主体的に経営に参画する組織風土を醸成し、人的資本経営の実現を目指します。
(1)気候変動への取り組み
気候変動は、当社にとってリスクであると同時に新たな収益機会につながる重要な経営課題であると認識しています。気候変動の取り組みを積極的にまた能動的に行うことは、中長期的な当社の企業価値向上につながるものであると考え、ステークホルダーと適切に協働し、自社のみならず社会全体に利益をもたらすことを目指します。また、こうした取り組みを通して、当社はSDGsやパリ協定で掲げられた目標達成への貢献を目指します。
当社は気候関連の財務情報開示の重要性を認識し、TCFD提言に則した情報開示を行っていきます。
①気候変動に関するガバナンス
・ESG委員会は、サステナビリティ課題の一つとして気候関連事項を審議します。経営会議の委嘱を受けて定期的に開催され(原則年4回)、E・S・Gの各分科会において、課題の特定、目標と行動計画の設定、進捗のモニタリングを行い、特定したリスクと機会に関する対応策をリスクマネジメント委員会と連携して審議し評価を行い、重要事項について経営会議へ付議・報告します。
・経営会議では、ESG委員会から報告される気候関連に関する取り組みの進捗状況も踏まえて、自社の戦略・事業計画やリスクマネジメント方針等を審議・決定します。
・取締役会は、気候関連事項のうち移行計画の進捗及び適応策など重要事項について経営会議より定期的に(原則年2回)報告を受け、自社の戦略・事業計画やリスクマネジメント方針等の見直し・指示を行い、気候関連事項に対処するための指標と目標に対する進捗状況等を監督します。
②戦略
TCFDの枠組みに沿って当社事業に対する気候関連のリスクと機会を特定し、「低炭素製品市場の進展」「脱炭素政策の進展」という2つの軸から複数のシナリオを想定し、当社のレジリエンスを検証しました。詳細は下表をご参照ください。
選択した | 特定したリスク・機会 | ドライバー | 時間軸 | 財務インパクト | 対応の内容 | |
種類 | 概要 | 影響の程度 | ||||
1.5℃ シナリオ WEO NZE 2050 | 移行リスク(政策・法規制) | GHG排出規制や炭素税の強化 | GHG排出規制 | 長期 | ほとんどない | 全社LED化、エアコンの買替、EV車への買替 などの環境投資策 |
移行リスク(評判) | ステークホルダーからのGHG排出量削減要請 | ステークホルダーからのGHG排出量削減要請 | 長期 | やや高い | ESG委員会にて、環境に貢献する製品の開発、環境投資策、シナリオ~リスク・機会分析等を推進し、サステナビリティ情報として開示 | |
機会(製品/サービス) | ニッケルを使用しないプロセスとする製品の開発 | ステークホルダーからのGHG排出量削減要請 | 短期・中期・長期 | 高 | 顧客個別要求仕様に迅速に対応できる設備投資の実施、展示会出展 など | |
機会 (市場) | 電池市場への参画 | 政府主導の投資促進策 | 中期・長期 | 高 | 2030年に二次電池分野のビジネスモデルを立ち上げるべく、電池材料・電解液メーカーとの共同開発等を模索中 | |
4℃ シナリオ IPCC RCP8.5 | 物理的リスク | (急性)台風や洪水による生産拠点の被災 | 台風や洪水の頻度・程度 | 長期 | ほとんどない | 受容できるリスクと捉え、対応策(投資)不要と考える |
(慢性)平均気温の上昇 | 平均気温 | 長期(5年~35年) | ||||
物理的リスク(急性) | サイクロンや洪水による当社顧客の工場が被災(国内外) | サイクロンや台風の頻度・程度 | 長期 | 高 | 当社BCPに当該リスク・地政学的リスク等を編入して再計画を構築 | |
機会(製品/サービス・市場) | 穀物由来原料の代替製品の開発 | 異常気象 | 中期・長期 | 中~高 | 新製品開発と既存製品改良の2アプローチで2030年に主要原材料の20%以上の入替を目指す |
選択したシナリオ ・国際エネルギー機関(IEA)が策定したWEO NZE 2050シナリオ
・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が策定したRCP8.5シナリオ
時間軸:短期=1年(単年度計画と同期間)、中期=3年(中期経営計画と同一期間)、
長期=2030年(日本のNDCにおける中期目標と同期間)
・気候変動関連のリスクに対する当社のレジリエンス
移行リスクが加速するシナリオ(IEA WEO NZE 2050シナリオ)においては、GHG排出量削減要請が高まると想定されます。当社のGHG排出量(スコープ1及び2)は非常に少なく、当社の製造におけるコストへの影響は非常に限定的でありますが、GHG排出量を削減するために省エネ対応や再生可能エネルギーの導入を進めることは、当社ステークホルダーが要請する低炭素社会への移行に向けた取り組みにあたります。加えて、当社のニッケルフリー製品の販売拡大の好機であるのみならず、中期経営計画で掲げたビジョンRDD2030「Redox技術を電池材料に!!」という蓄電池の要素開発を推進する好機であると判断しており、これらの取り組みもまた当社ステークホルダーが要請する低炭素社会への移行に寄与します。
一方で、物理的リスクが高まるシナリオ(IPCC RCP8.5シナリオ)において想定されるリスクはあるものの、むしろ当社にとっては穀物由来原料の代替原料の開発を進める好機であると捉えています。
③リスク管理
ESG委員会のE分科会が表明する気候関連リスクが、ESG委員会で規制要件(例:炭素価格)、短期・中期・長期の時間軸、移行リスク(政策・法規制リスク/技術リスク/市場リスク/評判リスクなど)、物理的リスク(急性リスク、慢性リスク)や、重要性の評価(緊急度・発生確率/財務への影響度等)を考慮して審議され、気候関連リスクが決定されます。その後、ESG委員会から経営会議へ報告され、経営会議での審議・承認を以て、最終的に当社の気候関連リスクとして特定されます。
特定した気候関連リスクは、リスクマネジメント委員会にて軽減・移転・受入・制御といった対応が検討され、コンプライアンス等他のリスクとともにリスクの把握と適切な対応が審議され、優先順位付けがなされます。その結果を踏まえて、最終的には経営会議において全社的なリスクマネジメント方針が決定され、リスク管理所管部にてリスク管理方針に基づき管理されます。
(2)人的資本経営の推進
当社は知識集約型・開発型の企業であり、人的資本が企業価値向上の源泉であるため、従業員のエンゲージメントを高め、従業員の健康・安全衛生や多様性といった人的資本を活用する上で基礎となる取り組みを実施することが必要であると考えます。
当社が望む「能動型自律人材」(*1)を育成し、その能力が会社の経営戦略と一致する方向で発揮されることで、製品開発や営業活動をはじめとする事業活動が活性化され、当社事業が成長する機会になります。一方でこれが損なわれると成長機会を失うリスクとなります。また、従業員が安心して働くことのできる健康的で安全な職場環境の整備を行うことが従業員のエンゲージメントを高める基礎となるため、これを推進することが当社事業の成長につながる機会となります。一方でこれを怠ると成長機会を失うリスクとなります。
よって、当社の企業理念に基づく中長期ビジョンを実現するためには「人的資本経営の推進」が欠かせません。
この人的資本経営の推進を実現させるために、①企業理念に共感し、ビジョンの実現に主体的に参画する組織風土の醸成 ②能動型自律人材の採用と育成 ③働きやすく、やりがいを感じる職場環境の整備 という3つのテーマに沿って人的資本方針を策定いたしました。この方針をもって、全従業員が主体的に経営に参画する企業風土を育み、人的資本経営の実現を目指します。
「人材採用・育成方針」
一人ひとりが当事者意識をもった「能動型自律人材」(*1)の採用・育成に加え、スキル・経験・知識を備えた人材(性別・年齢・国籍を問わない)の登用等を通じた人材の多様性の確保を推進します。
(*1)当社は、「能動型自律人材」を以下の3つに定義づけております。
①好奇心をもって挑戦する人材
~社会の変化を先取りし、好奇心と探求心をもって果敢に新しいことに挑戦します~
②当事者意識をもってやり遂げる人材
~自ら考えて行動し、常に全体最適の視点で最後まで責任をもってやり遂げます~
③多様性を尊重し周囲と協働できる人材
~人を思いやり、つながりや個性を大切にすることで組織の可能性を最大化します~
「労働・安全衛生方針(社内環境整備方針)」
ア.労働慣行について
当社は、従業員の人権を含む各種の国際規範を尊重し、従業員に対して尊厳をもって扱います。
イ.安全衛生について
当社は、労働関連の負傷や疾病を最小限に抑えることに努め、安全で健康な職場環境により、製品・サービスの質の向上や従業員の定着とモラルの向上を目指します。
また、当社は、職場の衛生と安全問題を特定し解決するために、継続的な従業員への情報提供と教育を実施します。
上記「人材採用・育成方針」、「労働・安全衛生方針(社内環境整備方針)」の指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績を検討中であり、決定次第、当社ホームページに開示いたします。
※当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みの詳細は、当社ホームページ(https://www.netjpc.com)をご覧ください。
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