ネクセラファーマ 【東証プライム:4565】「医薬品」 へ投稿
企業概要
当社グループは、製品開発型のバイオ医薬品企業として、経営資源を医薬品の研究開発活動に集中しています。研究開発費は、当社グループが保有する開発品の開発費、次期開発候補品の探索及び創薬基盤技術の研究に係る費用で構成されています。
当連結会計年度における、IFRSに基づく当社グループの研究開発費は10,075百万円となりました。
研究開発活動の具体的な内容は、以下のとおりです。
(1)世界をリードするStaR®及びSBDD創薬力の拡大・強化
世界をリードするStaR®/SBDDの強化については、これまで行った提携を通じた取り組みを進めるとともに、新たな提携についても模索しています。当社グループは、GPCRに関する技術的優位性を強化することにより、複数のプログラムを創出し、自社開発パイプラインの強化と同時に、大手バイオ医薬品企業の創薬・開発パートナーとして選ばれ続けることを目指します。
2023年10月5日、当社グループとVerily Life Sciences LLC(以下「Verily社」)は、炎症性腸疾患(IBD)を適応症とした最初のGPCRターゲットの検証と選定に成功したことを発表しました。これはVerily社の持つ免疫プロファイリング能力と、当社グループの持つGPCR構造ベース創薬(SBDD)技術を集約した、2022年に発表した研究開発提携の成果です。両社は、遺伝子及び機能ゲノミクスのデータを用い、コンピュータ上での高度な解析と研究所での実験による実証を経て創薬ターゲットを選定することで、ターゲットと疾患との関連性を高い信頼性をもって検証し、臨床試験成功の可能性を大幅に向上させます。
2023年10月10日、当社グループは、PharmEnable Therapeutics(以下「PharmEnable社」)との間で、両社の優れたプラットフォーム技術を融合し、神経疾患をターゲットとした二番目の新規リード化合物創出に向けて提携を拡大したことを発表しました。本提携により、当社グループのSBDDプラットフォームと、人工知能(AI)・医薬品化学に基づくPharmEnable社独自の先進テクノロジー(chemUNIVERSE)を融合し、非常に特異性の高い新規リード化合物を特定し、開発を進めることが可能となります。両社は2021年の最初の技術提携契約を拡大し、創薬とその後の開発を共同で実施・費用負担します。すでに最初のターゲットに対する技術提携において、互いの技術を補完することで、新規の結合様式とケモタイプを持つ有望な低分子化合物を同定することに成功しています。
2023年11月10日、当社グループとKallyope Inc.(以下「Kallyope社」)は、消化器疾患領域における創薬プログラム創出のための、最初のGPCRターゲットの同定、検証及び選定に成功したことを発表しました。これは、両社が2022年に締結した戦略的研究開発提携による最初の科学的成果です。本提携では、当社グループのGPCRに特化した化合物ライブラリー及び専門知識と、シングルセル解析、回路マッピングに関する計算生物学、及びエンテロイド表現型スクリーニングを組み合わせたKallyope社の革新的なKlarity™プラットフォームを活用します。当社グループとKallyope社の共同研究チームは、今回選定されたターゲットを完全に裏付けがなされたSBDDプログラムに進展させるとともに、将来のプログラムのために消化器疾患に対するさらなるターゲットの同定を目指します。
(2)生産性と付加価値、そして成功確率を高めるために、研究開発体制をプログラム重視型モデルに転換
当社グループは、研究開発体制の強化に注力しており、2023年に2つ以上の自社開発プログラムの臨床試験を開始するという目標を達成しました。
2023年7月3日、当社グループは、統合失調症及び関連神経疾患の治療薬として、ファーストインクラスの治療薬候補であるGPR52受容体作動薬(HTL0048149)の第Ⅰ相臨床試験で、最初の被験者への投与を行ったことを発表しました。HTL0048149は、抗精神病及び認知機能改善作用を持ち、既存の抗精神病薬に見られる副作用がない1日1回の経口低分子治療薬として生み出されました。HTL0048149は、脳内のオーファン受容体であるGPR52受容体を標的とすることで、統合失調症に伴う陽性症状(精神病、妄想、幻覚など)、陰性症状(引きこもりなど)及び認知機能障害(注意力、作業記憶、実行機能など)の改善を目指します。このような新規の作用機序により、HTL0048149は、既存の抗精神病薬で効果がない、あるいは副作用のために服薬が継続できない多くの統合失調症の患者さまのお役に立つことを目指しています。なお、既存の医薬品は、陰性症状や認知症状において十分な治療効果を得ることができていません。本第Ⅰ相臨床試験は2つのパートから構成される、18~55歳の健常人を対象とした、HTL0048149の安全性、薬物動態、薬力学的作用を検討する、無作為化二重盲検プラセボ対照、単回及び反復投与用量漸増試験です。本試験は、英国で実施されており、最初のデータリードアウトは開始から12~18ヵ月後になる予定です。
2023年8月10日、当社グループは、Cancer Research UK(英国王立がん研究基金)との提携において、当社グループが見出した、進行性固形がんに効果が期待される経口がん免疫療法候補薬HTL0039732の第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験で、最初の被験者への投与を行ったことを発表しました。HTL0039732は、プロスタグランジンE2(PGE2)に対する受容体の一種である、EP4受容体を介したシグナル伝達を阻害することで効果を発揮します。PGE2はがん微小環境でがん細胞の免疫回避を活性化させており、EP4受容体を標的としてPGE2の作用を阻害し、免疫系が、がん細胞を識別・抑制する機能を高めることで、マイクロサテライト安定性(MSS)大腸がん、胃食道がん、頭頸部がん、去勢抵抗性前立腺がんなど、既存の免疫療法では治療効果が十分でないがん種への効果が期待されます。本第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験は、Cancer Research UKのCentre for Drug Developmentが資金拠出・デザイン・実施を担い、HTL0039732の毒性・忍容性・薬物動態の検討、第Ⅱ相臨床試験推奨用量の決定、単剤及びPD-L1阻害剤アテゾリズマブとの併用での抗腫瘍活性の評価、の三点を主な目的としています。Cancer Research UKのCentre for Drug Developmentが実施する本第Ⅱa相臨床試験では、特定のがん種での併用療法を対象に、最大4つのコホートで用量拡大を検討予定です。また当社グループは、その後の臨床開発・商業化に向け、HTL0039732に対する本試験の結果のライセンスを保有します。
(3)大手グローバル製薬企業との既存の提携の推進及び継続的な収益確保への取り組み
当社グループは、大手グローバル製薬企業との広範な提携を通じて、特に代謝性疾患や精神神経疾患など、世界の医薬品市場において最も有望で急成長している治療領域におけるプログラムの開発に関わっています。
2023年1月5日、当社グループは、提携先のTempero Bio Inc.(以下「Tempero Bio社」)がFDAに対して、アルコールとその他の物質使用障害(Substance Use Disorder:SUD)を対象としたTMP-301の新薬臨床試験開始申請(IND)を行い、承認されたことを発表しました。TMP-301(旧開発コード:HTL0014242)は、当社グループが創出しTempero Bio社に導出した、新規の選択的mGluR5 NAM候補化合物です。Tempero Bio社は、米国国立薬物乱用研究所(NIDA)から交付された530万米ドルの助成金を活用し、2023年にTMP-301の健常人を対象とする第Ⅰ相臨床試験を開始しています。
2023年3月30日、Centessa Pharmaceuticals Limited(以下「Centessa社」)は、2022年12月期の事業進捗及び業績の報告において、当社グループのSBDDプラットフォームを利用して開発中の経口投与が可能なオレキシン受容体2(OX2R)の選択的作動薬であるORX750について、ナルコレプシー及びその他の睡眠障害に対するベストインクラスとなる可能性がある新薬開発候補品として選定したことを発表しました。また、Centessa社は、ORX750がNT1モデルマウスと野生型マウスにおいて覚醒時間の増加を示したことを発表しました。ORX750は、現在、前臨床開発及びINDに向けた研究開発活動を実施中です。
2023年6月27日、当社グループは、提携先であるPfizer Inc.(以下「ファイザー社」)が、糖尿病・肥満症の治療薬として臨床開発中のGLP-1受容体作動薬候補Danuglipronの開発を優先し、その結果、Lotiglipronの開発を継続しないことを決定したと発表しました。これらの新規の経口投与可能な新薬開発候補品は、いずれもファイザー社により第Ⅱ相臨床試験が行われていました。Lotiglipronは、当社グループ独自のStaR®技術を利用し、複数のターゲットを対象とした研究開発提携においてファイザー社が見出したものです。当社グループは、過去に類似の状況で他のプログラムで行ってきたのと同様に、ファイザー社とLotiglipronの今後の開発計画を含めた検討を行います。
2023年9月12日、当社グループは、Neurocrine Biosciences Inc.(以下「ニューロクライン社」)が、NBI-1117570の健常成人を対象とした第Ⅰ相臨床試験を開始したことを発表しました。NBI-1117570は、経口のムスカリンM1/M4デュアル受容体作動薬であり、神経疾患及び精神神経疾患の治療薬となることが期待されています。
2023年10月31日、当社グループは、Genentech Inc.(以下「ジェネンテック社」)より、2019年に契約を締結した複数ターゲットを対象にした創薬提携において、3.75百万米ドルのマイルストンを受領することになったと発表しました。創薬に関する本支払いは、非公開のGPCRをターゲットとした、ファーストインクラスとなり得る医薬品の開発進展によるものです。ジェネンテック社が選定した複数のGPCRに対して、当社グループのGPCR構造ベース創薬技術と、ジェネンテック社の創薬、開発及び疾患における専門知識を融合した進行中の提携において、一定のマイルストンを達成しました。
2023年11月6日、当社グループはファイザー社より、新規の経口低分子GLP-1受動体作動薬の第Ⅰ相臨床試験を開始したと通知されたことを発表しました。PF-06954522は、当社グループのStaR®技術を用いた、現在進行中の研究開発提携においてファイザー社が見出したものです。
2023年11月24日、当社グループは、GlaxoSmithKline plc.(以下「GSK社」)との研究開発提携及びライセンス契約に基づいて開発中の、ファーストインクラスの治療薬となる可能性のある選択的経口GPR35受容体作動薬(GSK4381406)の全権利の再取得に向け、GSK社と協議を開始したことを発表しました。GPR35受容体はIBDと遺伝学的な関連性が検証済みのオーファンGPCRの一つです。
GSK4381406は当社グループが設計し、2020年にGSK社にライセンスされました。以来、当社グループとGSK社による共同開発プログラムを通じて得られた基礎研究や前臨床試験及び安全性試験の結果により、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群(IBS)などの消化器疾患において、GPR35受容体作動薬はバリア機能を改善し内臓痛の改善に効果がある可能性が示唆され、これらのデータに基づき、2023年半ばに英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)より第Ⅰ相臨床試験実施の承認を取得しました(NCT05999708)。
GSK社によるGSK4381406の優先順位の引き下げと現開発の打ち切り決定は、GSK社の免疫疾患領域の戦略変更、及び幹部交代に伴うものです。また、本決定は前臨床試験や安全性試験などの科学的データに基づくものではありません。2020年の契約に基づき、当社グループは、一時金を支払うことなく、GSK4381406の所有権を再取得する権利を有しています。GSK社は、GSK4381406が上市されれば、当社グループから純売上高に応じて、1桁台前半のロイヤリティを受領する権利を有しています。
当社グループは、GSK4381406の所有権の再取得後、英国で計画されていた第Ⅰ相臨床試験を単独で実施するとともに、本品目のさらなる臨床開発及び再提携に向けた最善の戦略を決定する予定です。
2023年12月6日、当社グループは、ニューロクライン社が、新たなムスカリン作動薬候補2品目であるNBI-1117569(M4-preferring agonist)及びNBI-1117567(M1-preferring agonist)の第Ⅰ相臨床試験について決定を行ったことを発表しました。いずれも神経・精神疾患の経口治療薬となることが期待されており、当社グループにより見出されたものです。ニューロクライン社はNBI-1117569の第Ⅰ相臨床試験を既に開始しており、加えてNBI-1117567の第Ⅰ相臨床試験を2024年に開始すると発表しました。
(4)日本における有数の販売プラットフォームの構築
2023年4月1日、当社グループは、当社社長CEOのクリストファー・カーギルが同日付で株式会社そーせいの代表取締役社長に就任することを決定し、当社グループの戦略目標達成のための日本事業の強化を見据え、当社CEOが直轄で同社の事業運営を行っていく体制に変更しました。
日本事業の確立については、臨床開発~販売体制をアジャイルかつ拡大可能な形で構築し、日本の患者さまに人生を変える医薬品を届け、この大きく魅力的な市場で、見逃されている市場の発掘に取り組むことを柱のひとつに掲げています。
2023年7月20日、当社グループは、Idorsia Ltd.及びIdorsia Pharmaceutical Ltd.(以下総称して、「イドルシア社」)より、IPJ及びIPKの全株式を取得し子会社化すること(以下「本取引」)を発表しました。
IPJとIPKの子会社化は日本における有数の販売プラットフォームを構築するという目的達成のための最良の手段であり、グローバルでの徹底的なリサーチの結果です。本取引は手元現金と低利の新規長期借入金により資金手当て済みであり、通期での初年度から、キャッシュ・フローを創出する予定です。本取引の戦略的意義は以下の通りです。
・ 日本における卓越した臨床開発機能と収益力の高い販売体制、従来にない販売・マーケティングモデル、規模拡大とさらなる価値創出力が加わることによって、当社グループのミッションを加速する。
・ 主要製品であるピヴラッツ®とダリドレキサントの獲得、及び第Ⅲ相臨床段階にあるCenerimodとLucerastatに対する独占的オプション権、そしてイドルシア社のグローバルパイプラインから最大5品目の臨床段階にある追加的プログラムに対する特定の権利により、将来のパイプラインを確保・拡大する。
・ 過去20年にわたり、日本と韓国で多くの承認取得と上市を成功させてきた田中諭氏が率いる、経験豊富で卓越した実績とサービス提供力を有するチームを獲得する。
・ 日本の高品質な臨床環境を活用し、見逃されている専門疾患領域をターゲットにするとともに、より広域なAPACへの拡大と製品上市を可能とするプラットフォームを獲得する。
また本取引によって、日本及びAPAC(中国を除く)地域において、(1)当社グループが100%保有している従来からの自社開発品、(2)イドルシア社のパイプラインから選定され当社がオプション権あるいは特定の権利を獲得した臨床候補化合物、及び(3)他社の有望な製品/開発品の導入、の3つの方法で、有望なパイプラインを獲得し開発及び販売を行うことができるようになります。
加えて、当社グループは、日本及びAPAC地域以外においては、従来通り、当社の強固な創薬プラットフォームから生まれた新規候補化合物やプログラムについて、大手製薬企業との提携を行う一方、これらの提携契約では、日本及びAPACでの権利保持を目指します。
2023年10月31日、当社グループは、IPJが、不眠症患者に対する治療薬として持田製薬株式会社(以下「持田製薬」)と共同開発してきたデュアルオレキシン受容体拮抗薬であるダリドレキサントの製造販売承認申請(NDA)を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出したと発表しました。本申請及び持田製薬と塩野義製薬株式会社の販売提携契約に関連して、当社グループは1,500百万円のマイルストンを受領しました。本申請は、本邦におけるダリドレキサントの安全性及び有効性を検討した無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相臨床試験の良好な試験結果に裏付けられています。ダリドレキサントは2022年1月に米国で、4月に欧州でそれぞれ承認されており、その他の承認済み地域を含めイドルシア社がQUVIVIQ™のブランド名で販売しています。
2023年12月7日、当社グループは、脳動脈瘤によるくも膜下出血(aSAH)術後の脳血管攣縮、及びこれに伴う脳梗塞及び脳虚血症状の発症抑制薬であるピヴラッツ®点滴静注液150mg(一般名:クラゾセンタンナトリウム)について、韓国食品医薬品安全処(MFDS)、より製造販売承認を取得したことを発表しました。今回の製造販売承認は、IPKが提出した、日本における第Ⅲ相臨床試験結果に基づいています。韓国では、2025年前半に販売が開始される予定です。日本では、IPJが2022年1月にピヴラッツ®の製造販売承認を取得し、2022年4月に発売しています。日本では、ピヴラッツ®は2023年11月時点で約8,900人の患者さまに使用されています。
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