企業ハリマ化成グループ東証プライム:4410】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

研究開発では、“新規事業、成長分野に向けた研究開発”をキーワードとし、“パインケミカルを軸に、成長分野への資源配分を継続し、新製品開発による新市場参入を目指す”ことを目標として活動しております。また、デジタル技術を活用したものづくりとDX体制づくりを推進し、研究開発の合理化とスピードアップを図っております。

各分野の取り組みとして、パインケミカル分野ではロジンや脂肪酸の組成および純度をコントロールする技術開発や機能性および環境調和性の高いゴム用添加剤、機能性樹脂分野では乳化・分散技術を利用した水系樹脂の研究開発に取り組んでおります。また製紙用薬品分野では海外の紙製食品包装材料規制に対応する製品の拡充、紙素材に撥水や撥油およびヒートシール性を付与できるバリアコート剤の開発に注力しております。これらの分野は、いずれも化学素材のバイオリニューアブル化への流れを意識した製品開発を進めていきます。電子材料分野では、引き続き、成長が期待される半導体産業や自動車産業向けの材料開発に取り組んでおります。さらに先端技術分野として、「情報通信市場」「エネルギー市場」「環境・ヘルスケア市場」に向けた新製品開発にも着手しており、顧客での製品展開ステージに進展している複数のテーマについては現中期計画期間中の製品化を目指しております。

当社グループは、日本以外にも、ベルギー、オランダ、英国、米国、アルゼンチンに研究開発拠点を持っており、これら拠点間の連携を密に取り合うことで、グローバル市場の多様なニーズを迅速かつ的確に捉え、顧客の課題解決につながる研究開発活動を推進しております。

当連結会計年度の研究開発費は、2,707百万円、特許の登録件数は国内8件、海外が16件、国内の出願件数は10件、海外の出願件数は8件でした。

(1)パインケミカル

当分野においては、当社の強みである粗トール油精留事業に関連した技術開発に加え、印刷インキ用樹脂、粘接着剤用樹脂、合成ゴム用乳化剤や脂肪酸誘導体等の研究開発を行っております。

松材から得られるバイオマス資源である粗トール油は、温室効果ガスの排出量削減に貢献できるため、世界的にニーズが高まっております。当社グループでは、特性の異なる世界中の粗トール油を余りなく活用できる技術の構築や、粗トール油から得られたロジンや脂肪酸を使った製品におけるトレーサビリティに関わる認証取得を通じ、これらを使用した製品の価値向上に取り組んでおります。

印刷インキ用樹脂は平版インキ市場が縮小しておりますが、販売数量の確保と収益性の改善のため、印刷適性に優れた新製品の開発と市場への投入を進めていきます。粘接着剤用樹脂は、高温使用環境下でも粘着力を維持できる耐熱性を重視した新規の粘着付与材樹脂を開発しており、当社が保有する水系化技術を駆使して同樹脂のエマルション製品の開発も進めております。またゴム用添加剤の分野では、建物を守る制振ゴム用添加剤の拡販に加え、防振ゴム用やタイヤ用の新たな製品開発に取り組んでおります。顧客での評価に進展しているタイヤ用添加剤は、初期の評価段階であるものの、複数顧客で目的とした機能を確認いただいております。いずれも各分野で要求される機能について、その発現機構を踏まえながら新しい添加剤の開発を進めていきます。

当事業における研究開発費の金額は427百万円であり、報告セグメントに帰属しない全社費用であります。

(2)機能性樹脂

当分野においては、塗料用樹脂およびフィルム等のコーティング剤に使用される機能性樹脂の研究開発を行っております。

塗料用樹脂は、建築外壁用の環境配慮型弱溶剤系樹脂の開発を進めるとともに、より環境に配慮した水系塗料用樹脂の開発に取り組んでおります。水系塗料用樹脂では高光沢で高い密着性と耐水性を併せ持ち、建築外装だけでなく鉄部等の塗装に適した耐久性を持つ樹脂を開発しました。市場でも高い評価を得ることができ、現在、拡販活動を進めております。

コーティング剤に使用される機能性樹脂は、ディスプレイや電子部品等の伸長市場や高い付加価値が要求される市場に向けた製品開発を進めております。当社の基盤技術である樹脂合成、分散、表面・界面制御技術を応用した光学フィルム向けの光学調整用ハードコート剤を開発しており、他用途への技術展開を検討していきます。また、様々な用途で使用される離型剤の開発にも取り組んでおり、市場への提案、顧客評価へと進めていきます。

当事業における研究開発費の金額は311百万円でありました。

(3)製紙用薬品

当分野においては、水性樹脂の合成をコア技術とし、段ボール等に使用される紙の強度を高めるポリアクリルアミド(PAM)系紙力増強剤、紙の吸水性を制御して水性インクのにじみ防止や耐水性を付与するロジン系サイズ剤、紙の表面に塗ることで印刷適性や撥水性を付与する表面紙力増強剤や表面サイズ剤など、製紙工程で使用される機能性薬剤を軸とする研究開発を行っております。

基盤製品であるPAM系紙力増強剤やロジン系サイズ剤については、国内の紙の内需減少を踏まえ、紙生産量の約50%を占める中国と米国、生産量が増加している東南アジア市場で適用できる製品やアプリケーションの開発を進めております。特に紙製品の世界的な輸出入、脱プラスチックの潮流から需要が高まりつつある食品包装用紙向け薬剤として、米国食品医薬品局(FDA)、ドイツ・BfR、中国・GB9685といった、世界的に主要な三法規制に対応可能な安心で安全な製品(間接食品添加物として海外法規制に対応可能な製品)の拡充に注力しております。また事業拡大に向け、紙の原料となるパルプを生産する際の工程改善薬剤であるピッチコントロール剤や、脱プラスチックの動きの中で紙製素材の利用を促進できるバリアコート剤を開発しました。バリアコート剤に関しては、新たに開発したバイオマスベースの製品も顧客での評価に進展しており、更なる機能向上を検討しております。

海外市場に関しては、当社子会社である中国の杭州杭化哈利瑪化工有限公司や米国のPlasmine Technology,Inc.と連携して、現地市場に合致した製品や技術の開発を進めております。紙生産量世界一位の中国では、昨年、PAM系紙力増強剤の添加率上昇によって頭打ちとなる効果を改善するために開発した助剤の販売が順調に伸長しました。米国では、FDA認証取得製品を軸とした事業展開を進めることで、従来のロジン系サイズ剤に加え、PAM系紙力増強剤の販売も順調に増加しております。環境負荷が少なく、紙製素材の利活用に大きく貢献できる製品の開発と市場への提供によって、サステナブルな社会の構築に貢献していきます。

当事業における研究開発費の金額は683百万円でありました。

(4)電子材料

当分野においては、成長が期待される自動車産業、半導体産業用途を中心に、はんだ付け材料、ろう付け材料、レジスト用樹脂の研究開発を行っております。

はんだ付け材料は、精緻な電子制御が要求される自動車向け車載電機器の高機能化への対応と併せて、大きなストレスでも壊れない接合耐久性を実現するソルダペーストの開発に注力しております。また、ヘンケル社のはんだ事業買収により取得した技術と当社技術との融合により、新たな製品の開発を進めております。

ろう付け材料は、自動車用アルミニウム熱交換器接合用材料の海外展開推進と、給湯器等への搭載が拡大しているステンレス熱交換器を接合するろう付け材料の開発に注力しております。熱交換器の軽量化や熱交換効率の向上に留まらず、顧客の生産工程における使用エネルギーの削減に繋がる製品の開発にも取り組んでおります。

レジスト用樹脂では、当社の得意とする高分子合成技術や有機合成技術を活用することで、微細・微小な配線や電極形成に対応できる製品の開発に注力しております。生成AI(人工知能)等、成長分野における採用が進んでおり、今後の市場成長に大きく貢献していくことを期待しております。

当事業における研究開発費の金額は418百万円でありました。

(5)先端技術

当分野においては、今後の成長が期待される「情報通信市場」「エネルギー市場」「環境・ヘルスケア市場」に向けた新製品の開発に取り組んでおります。これまで当社が培ってきた金属ナノ粒子の設計技術、分散剤の設計技術、分散技術、バイオテクノロジーをコアコンピタンスとして、それぞれの市場の発展に貢献できる製品や技術の開発を進めております。

情報通信市場では、積層セラミックコンデンサ(MLCC)用部材や各種チップ部品用電極材料の開発に注力し、進化・発展する市場において、さらなる付加価値の向上に貢献できる製品開発に取り組んでおります。エネルギー市場では、リチウムイオン二次電池(LiB)用部材の開発に注力しており、市場で要求される高エネルギー密度・高出力密度に対応できる製品開発に取り組んでおります。また環境・ヘルスケア市場においては、抗菌材料およびバイオプロセスによる新規ヘルスケア商品の開発に注力しており、環境に配慮した付加価値の高い商品開発に向けた検討を進めております。

当事業における研究開発費の金額は174百万円であり、報告セグメントに帰属しない全社費用であります。

(6)ローター

当事業においては、サステナビリティをキーワードとして粘接着剤用樹脂、道路標識塗料用樹脂、印刷インキ用樹脂、合成ゴム用乳化剤およびアロマケミカル等の研究開発を行っております。

粘接着剤用樹脂の分野では、水系粘着付与剤樹脂(商品名:SnowTackTM)の高いグローバルシェアを維持しつつ、得意とするラベル・シール用途だけでなく、産業用テープ向け粘着付与剤樹脂市場への用途拡大をめざしております。また、省エネルギーの観点から水系粘着付与剤樹脂の高濃度化、熱乾燥工程を必要としないUV粘着剤向け粘着付与剤樹脂の開発も進んでおり、量産準備段階に入っております。さらに、自動車部品等に使用される当分野の製品については、顧客から事業継続計画(BCP)の策定を強く求められるようになっており、ハリマ化成の日本国内拠点とローターのグローバル拠点で共通の製品づくりができる体制へ向けた研究開発も推進しております。

印刷インキ用樹脂の分野では、印刷のデジタル化、小ロット化に伴い、紫外線硬化型インキが伸長しております。当社開発品(商品名:ReactolTM UVシリーズ)は、紫外線硬化型インキに優れた顔料分散性、耐乳化性を付与できることから大手印刷インキメーカーで採用となり、欧州、米国、アジアへのグローバル展開を進めております。水系フレキソインキ市場では、持続可能な社会の創造をめざす顧客が掲げる温室効果ガス削減目標を達成するために、包装容器に使用されるインキ、コーティング剤の原料を従来の石油由来から植物由来に置換したいという需要が高まっております。その需要に対応すべく開発したロジンをベースにした水系フレキソインキ用樹脂(商品名:SnowpackTM)は一部の顧客に採用され、商業化の段階に入りました。

アロマケミカルの分野では、テレピン油から派生する香料原料の開発を進めております。香料市場においては、昨今の環境志向の高まりにより、石油由来香料から植物由来香料への原料置換ニーズが高まっております。ローターでは、ニュージーランドで、松材を原料としたパルプ製造工程で副生する粗サルフェートテレピン油を蒸留し得られた成分から香料原料の製造を行っておりますが、今後の需要拡大に対応すべく生産効率向上をめざした製造技術の開発を進めております。

さらに、ローターでは中長期的な視野で研究開発を行う部門を設け、ロジンや脂肪酸等バイオマス原料の機能を追求し、石油化学品を代替できるグリーンな製品の開発を行っております。今後、市場伸長が見込める事業への新規開発投資を推し進め、ハリマ化成の研究開発カンパニーと連携の上、戦略的な技術開発、マーケティングを進めております。

当事業における研究開発費の金額は690百万円でありました。

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