日本ゼオン 【東証プライム:4205】「化学」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
2021年にスタートした中期経営計画では、「社会の期待と社員の意欲に応える会社」を2030年のビジョンとし、サステナビリティ経営の実現に向け取り組んでいます。基本的な考え方や対応の組織的な枠組みを明確にするため、CSR基本方針を「サステナビリティ基本方針」に改訂するとともに、サステナビリティに関する取り組みを全社的に検討・推進するための会議体として、これまでの「CSR会議」に加え「サステナビリティ会議」と、その下に「サステナビリティ委員会」を新たに設置しました。「サステナビリティ会議」「CSR会議」ともに代表取締役が議長となり、サステナビリティやCSRに関する諸施策を議論、決定し、必要に応じて取締役会への報告を行います。主にリスク管理・コンプライアンスについては「CSR 会議」で取り扱い、それ以外のサステナビリティ全般については「サステナビリティ会議」で扱います。
また、中期経営計画の中で注力するSDGsのゴールを定め、それらと対応させた全社戦略を展開していますが、当社として注力すべき事項をより明確にし、メリハリのある実効性の高い施策を打ち出せるよう、現在、社内横断的組織(プロジェクト)で「マテリアリティ(重要課題)」の特定に取り組んでいます。
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応については下記のように取り組みを行っています。
・気候関連リスクおよび機会についての取締役会の監視体制
2021年7月にコーポレートサステナビリティ推進本部を設置し、当社のサステナビリティ推進とその結果および進捗の開示を行っています。さらに2022年7月に同本部内にカーボンニュートラル統括推進部門を設置し、中期経営計画での全社戦略である「カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを実現する「ものづくり」への転換を推進する」ための活動を行っています。これらの体制整備は、取締役会承認のもとに行っています。
サステナビリティ会議およびサステナビリティ委員会では、重要なサステナビリティ課題の一つとして「気候変動への対応」を掲げて必要な議論を行い、その内容について必要に応じて取締役会への報告を行う体制となっています。
・気候関連リスクおよび機会の評価・管理における経営者の役割
当社は、経営理念「大地の永遠と人類の繁栄に貢献する」の実現に向けた気候変動を含むサステナビリティ課題に対応するために、前述のとおり推進組織を整備し、取締役であるコーポレートサステナビリティ推進本部長がこれを統括しています。その対応状況については、前述のサステナビリティ会議にて報告・審議が行われ、最終的に議長である代表取締役がサステナビリティ実現の責任を負う体制となっています。
当社の気候変動への対応としては、2050年でのカーボンニュートラル実現にむけた取り組みとして、2021年に第1次カーボンニュートラルマスタープランを策定し、CO2排出量の現状把握・削減目標の設定を行いました。
また当社は2020年にTCFDに賛同し、TCFDシナリオ分析をはじめとするTCFD要請事項への対応を進めています。ここでは財務的インパクトの定量開示(指標化と達成状況)が今後の主な課題と認識しています。
(2)戦略
①気候関連
・組織が特定した、短期・中期・長期の気候関連リスクおよび機会
当社の気候変動に関するリスクと機会を把握するため、2020年度にゴム事業部で、2℃シナリオ分析および4℃シナリオ分析を実施しました。更に、2021年度には全社に展開し、同様のシナリオ分析を実施しました。
リスクおよび機会の認識のために実施したリスク重要度評価の結果は次の通りです。
・気候関連リスクおよび機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響
事業インパクト評価(財務計画への影響)に関して、前述のシナリオ分析に基づき、4℃・2℃各シナリオにおいて想定される事業への財務影響を把握しました。4℃シナリオにおいては物理リスクの影響や調達コスト増により利益が減少、2℃シナリオにおいては炭素税の導入やEVの普及により利益が減少する一方、新たな事業機会獲得が利益に貢献するとの結果が得られました。
・2℃以下のシナリオを含むさまざまな気候関連シナリオに基づく検討を踏まえた、組織の戦略のレジリエンス
今後は1.5℃シナリオ分析を実施します。その結果を受けて、中期経営計画の全社戦略と連携しながら対応策を実行していきます。脱炭素戦略ではカーボンニュートラルを目指すための方策を全社的に検討しています。資源戦略ではサーキュラーエコノミーの促進やバイオマス原料を使用した製品の開発などを進めていきます。また、顧客の行動変化を想定した製品開発・ポートフォリオ管理を行い、事業の拡大を目指します。
②人材の育成及び社内環境整備に関する方針
・人材の育成方針
企業理念とサステナビリティ基本方針のもとに定めている人材育成の基本理念「従業員一人ひとりの能力を引き出し、育成し、活用する」が日本ゼオンの人材育成方針です。
当社では、「高い目標に向かって、自ら考え抜いて行動し、変え続けられる人材」を「ありたい人材」と掲げ、人材育成を行っています。各人が「ありたい人材」に近づけるよう、専門スキルの強化、自己啓発支援などの教育を実施しています。また、事業の拡大を支える多様な人材の確保を併せて進めています。
・社内環境整備に関する方針
2030年のビジョン「社会の期待と社員の意欲に応える会社」に向けた人材戦略の骨子は「健康経営の実践」と「Well-being, Freedom(自分らしく よく生きる)」です。当社では社内環境整備方針を「すべての社員が働きやすい職場環境づくり」と定め、2023年度からの中期経営計画では掲げた指標及び目標に向けて取り組みを強化しています。
(3)リスク管理
①気候関連
・気候関連リスクを識別・評価するプロセス
4℃および2℃におけるシナリオ分析に基づき、2030年およびそれ以降を想定した気候変動に伴う移行リスク、物理的リスクを識別し、重要度に応じた分類をしています。
・気候関連リスクを管理するプロセス
気候関連リスクについては、リスクマネジメント室を設置し、全社共通のリスク管理一覧表のなかで気候変動リスクを認識し、リスク対応については該当部門においてリスク評価と対応策を明確にしてリスク管理を行っていきます。
・気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが、組織の総合的なリスク管理にどのように統合されているか
識別した気候変動リスクに関してはインパクト評価結果や研究開発の方針とリンクさせながら将来のありたい姿を
描き、それに向けての経営方針や事業計画を作成し、3か年計画や年度予算にて具体的な数値目標に落とし込んでいく体制を作っています。
②人権尊重に向けた取り組み
ゼオングループでは、人権尊重に向けた取り組みを、サステナビリティ経営実現のための重要な基盤の一つと位置づけ、自らの事業活動において影響を受ける全ての人の人権を尊重するべく、2021年度より本格的に取り組みを開始しています。まずはビジネスの全体像の中から人権リスクマップを策定して人権リスクを特定しました。さらに経営層向け、関係部署向けセミナーを実施して、人権尊重の重要性を社内に浸透させた上で、外部専門家からのアドバイザリーを受けながら、関係部署で人権デューディリジェンスの具体的な進め方を検討して進めています。具体的には、日本ゼオン、グループ企業、サプライチェーンの3つに分類し、それぞれで課題を設定して取り組みを進めています。
今後は、海外のグループ企業における人権デューディリジェンスや、実際に人権侵害が発生した際のサプライチェーン、地域社会における救済窓口の設置、CSR調達ガイドブックの策定や購買基本契約への導入などを課題と認識しており、これらへの対応を含め、引き続き人権尊重に向けた取り組みを進めていきます。
③サプライチェーンでの取り組み
サプライチェーンでの取り組みとして、調達先の CSR 調達アセスメントを実施しています。2019年度から本格的に調査を開始し、2021年度は、事業部独自に購買している原材料まで対象を広げ、各部門における取引金額の上位80%以上に加え、人権などのリスクが高いと想定される調達先を選定し、延べ262社の調達先に対して調査を実施しました。回答のあった全ての取引先に対してフィードバックを行うとともに、得点率の高い取引先、得点率の低い取引先、サプライチェーンの上流でリスクの高い原材料を取り扱っている取引先といった観点で16社を選定し、訪問やオンラインでの面談も実施しています。面談では、取引先企業のCSRに関わる戦略・方針や考え方、環境、安全、人権、労働、地域への貢献といったCSRの取り組み状況を確認し、今後のさらなる改善に向けた取り組みを要請しています。また、実施した取引先に対し、「人権方針」や「CSR 調達ガイドライン」、「お取引先さまへのお願い」といった当社のCSR調達に対する考え方に関しての同意書を提出いただき、当社の考え方を上流の取引先に展開しています。今後、グループ企業のサプライチェーンにおいてCSR 調達アセスメントの実施も検討しています。
(4)指標及び目標
①気候関連
・組織が自らの戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連リスクおよび機会を評価する際に用いる指標
2021年に第1次カーボンニュートラルマスタープランを策定し、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた2030年度での削減目標値を設定しました。この目標は日本ゼオン単体のScope1とScope2の合計を対象としており、2030年度CO2排出量を2019年度比で50%減としています。今後は適宜、プランをアップデートしていきます。
・Scope1、Scope2および該当する場合はScope3のGHG排出量とその関連リスク
ゼオングループとしてのScope1、2、3の開示のために、グループ企業を含めたScope 1、2、3の排出量の把握を行う体制を確立し、その成果としてCDPへの開示やSBT認定を目標としていきます。
部門課題として、特にSDGs13ゴール(気候変動対応)に対応する指標や目標の設定を進めています。
・気候関連リスクおよび機会を管理するために用いる目標、およびその目標に対する実績
2030年度のCO2排出量を2019年度比で50%減とする、という目標にむけて、様々な取り組みを推進しています。
前述のScope1、2での排出量削減方策として、省エネルギー、プロセス革新、エネルギー転換、という3つのアプローチで取り組みます。なお、エネルギー転換はエネルギーの元であるボイラ等の燃料を再生可能エネルギーや証書付の燃料※に転換することにより進めていきます。
※ 証書付き燃料:採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、CO2クレジットで相殺することにより、地球規模では、この燃料を使用してもCO2が発生しないとみなされます。
2022年度は以下に示す通り、国内生産拠点のエネルギー転換を推進しました。今後も各削減方策を展開し2030年度の削減目標を達成するよう取り組みを進めていきます。
・国内生産拠点のうち 4 事業所(高岡工場・氷見二上工場・敦賀工場・徳山工場)において購入電力のすべてを100%再生可能エネルギー電力に転換。
・高岡工場にて CO2排出量が実質ゼロのカーボンニュートラルLNGの購入を契約。
・徳山工場にて蒸気の CO2排出量削減のためグリーン熱証書の購入を契約。
・川崎工場にて、東京ガス株式会社(以下、東京ガス)のカーボンニュートラル都市ガスを導入するとともに、カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンスに加盟。
②人材の育成及び社内環境整備
・人材の育成方針に関する指標及び目標(実績と目標)
a.女性管理職比率
2022年実績は5.7%、2030年目標は20%としています。 ※算出日2023年3月31日
b.従業員エンゲージメント指数
実績値と目標値は、「第2 事業の状況1経営方針、経営環境、及び対処すべき課題等(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。
・人材の育成に関する具体的な取り組み
a.採用活動
新卒採用、キャリア・中途採用 | 事業の拡大を支える人材の確保やイノベーションの創出に向け、国籍を問わず、異なる発想や感性を持つ多様な人材の確保を進めています。 |
障がい者雇用 | 2020年12月からは障がい者就労施設「ゼオンふぁーむ」を千葉県柏市に、2022年9月からは「ゼオンふぁーむ徳山」を山口県周南市に開園するなど、積極的にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を提供しています。 |
b.人事制度
シニア社員制度の導入 | 2022年4月に定年後60歳以上の社員全員を対象としたシニア社員制度を導入しました。満70歳までの再雇用の枠組みを整備するとともに、魅力ある処遇とパートタイム勤務や副業を含めた柔軟な働き方によって、シニア世代が当社で磨き上げた個々の強みを発揮し活躍できる「舞台」を創っています。 |
幹部職人事制度改定 | 2023年度には幹部職人事制度を改定する計画です。新しい人事制度では、「職務」と「人材要件」を明確にし、これらの見える化を図ることによって経営・事業戦略と人材マネジメントとの連動や個々の強みを発揮し成長を促していきます。また、評価や報酬の納得性向上やキャリアパスの可視化等を通じたエンゲージメントの向上につなげていきます。 |
「先の見える異動」の仕組みづくり | 自己申告機会の確保やキャリア面談、公募制の活用など、デジタル技術による人材マネジメント基盤整備とともに、「先の見える異動」の仕組みづくりを進めています。 |
・社内環境整備方針に関する指標及び目標(実績と目標)
項目 | 2022年実績 | 2026年目標 |
社員を活かす環境※1 | 48 | 55 |
年次有給休暇取得率※2 | 60% | 70% |
アブセンティーイズム※3 | 0.6% | 0.4% |
日本ゼオン健康行動指標※4 | 60% | 65% |
休業災害度数率※5 | 0.36% | 0% |
※1 エンゲージメントサーベイ結果 (毎年6月実施)
※2 算定期間1月1日~12月31日 当社全従業員の取得日数/当社全従業員への年間付与日数
※3 算出日2023年4月1日
※4 算定期間1月1日~12月31日 日本ゼオンの定期健康診断を受診した社員のうち、「BMIが基準値内」「運動習慣がある」「煙草を吸わない」の3つの健康行動から構成される当社オリジナル指標。2項目以上の達成を個人及び会社の目標とする。
※5 算定期間1月1日~12月31日
・社内環境整備に関する具体的な取り組み
a.社員を活かす環境の改善
社内公募の推進プロジェクト | DI&B(Diversity, Inclusion and Belonging)の組織風土定着のため、社内公募の推進プロジェクトが発足しています。社員同士の助け合いを軸とする「キャリアと組織の相談室」や「メンタリング」は、自律性やBetter Together(共に成長)を育む取り組みです。子育てやキャリア・中途採用など同じ悩み・境遇に置かれた社員が対話できる場である「お話会」、誰でもフラットに話せる関係の構築を目的とした「アイデア提案ゲーム」など、メンバーの「まずやってみよう」スピリットから生まれた取り組みを行っています。 |
工場における「新しい定員制」の導入 | 「新しい定員制」とは、従来の安定・安全生産のための操業定員に加え新たな定員を設定することで、教育・改善時間の確保、仕事と生活の両立、また生産革新の加速を目指すものです。これにより、生産革新、教育を推進するほか、年次有給休暇取得率の向上や育児・介護休業取得を促進しています。 |
サポート休暇制度の拡充 | 失効した年次有給休暇を積立する休暇をサポート休暇として改めました。また、入社時から安心して働ける環境を整備するため、本採用時に「16日」のサポート休暇を付与しています。私傷病やお子様の学級閉鎖など万が一の際にも安心して使用できるように取得要件も見直しました。 |
時間と場所にとらわれない働き方の拡充 | 一人ひとりのWell-being実現をさらに後押しするため、テレワークの拡充やフレックスタイム制・時間単位年次有給休暇の導入を通じて、「時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができる環境」の整備を進めています。 |
b.年次有給休暇取得率向上
年次有給休暇取得奨励週間(一部事業所)・奨励日の設定 | 各事業所で年次有給休暇取得奨励週間及び奨励日を設定し、周知することで該当日に休暇を取得しやすい環境づくりを行っています。 |
時間単位及び半日単位の年次有給休暇の導入 | 1時間単位で年次有給休暇を取得できる時間単位年次有給休暇及び半日単位で年次有給休暇を取得できる半日単位年次有給休暇を導入しています。 |
c.アブセンティーイズム低減
メンタルヘルスへの取り組み | 幹部職対象のラインケア研修だけでなく、全社員対象のセルフケア研修など、各種メンタルヘルス研修、研修動画の配信を実施しています。 |
EAPの設置 ※EAP:従業員支援プログラム (Employee Assistance Program) | 心身の健康づくりを目的として社外カウンセリング支援を導入し、対面・オンライン・電話・メールの4つから、希望する方法を選ぶことができます。 |
社内相談体制の整備 | 心身の不調がある場合には、各事業所産業医に相談することが可能です。また、全ての事業所に看護職が常駐しており、社員の相談窓口となっています。 |
定期健康診断 | 年に1回、定期健康診断を実施しています。法定項目だけでなく、一部法定外項目を実施することで、病気の早期発見に努めています。 |
d.日本ゼオン健康行動指標の達成
健康支援アプリの活用 | 16種類の健康管理メニューを搭載した健康支援アプリを導入。アプリを活用したイベントを開催し、社員の運動習慣づくりにつなげています。 |
禁煙への支援 | 各事業所での禁煙施策の実施や禁煙外来受診時のカフェテリアプランによる費用補助を行うことで、社員の禁煙への後押しを行っています。 |
健康情報の提供 | ヘルスリテラシーの向上を目的として、健康動画の配信、健康ニュースの発行、健康セミナーの開催など、健康に関する情報提供を随時実施しています。 |
糖尿病重症化予防と特定保健指導の実施 | 健康保険組合が主管となって行う「糖尿病重症化予防」と「特定保健指導」(法定40歳以上)では、対象を40歳未満にも広げて実施をしています。 |
e.労働安全に関する取り組み
危険予知(KY)の活動 (4R-KY(4 ラウンド危険予知)活動) | 4R-KY とは、作業前に作業分析し、理解することで自らの危険な行動を防止する危険予知手法の1 つです。手順を1 ラウンドから4 ラウンドに分けて行います。事業所に配置した「KY トレーナー」を中心に活動しています。 |
ヒヤリハット抽出 | ヒヤリハットとは、重大な災害や事故にはいたらないものの、ヒヤリとしたり、ハッとしたりするなどした事象のことをいいます。この背景には、「重大な事故1 件の陰には、29件の軽微な事故と、300 件のニアミスが存在する」というハインリッヒの法則があります。ヒヤリ、ハッとしたニアミス事例を蓄積・共有することで、重大事故の防止につなげています。 |
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