企業兼大株主大王製紙東証プライム:3880】「パルプ・紙 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は3,336百万円であり、紙・板紙事業及びホーム&パーソナルケア事業等における研究開発活動の状況は以下のとおりです。

(1)紙・板紙事業

 紙・板紙事業では、メディア用途の紙から梱包・包装用途の紙へのシフトを進めており、営業と工場部門が一体で行動することで、マーケットの変化や需要動向をいち早く捉え商品開発に生かせるよう取り組んでいます。

 研究体制は、国内の主要な生産拠点に開発部員を配置しています。商品開発・企画推進グループでは、特殊紙分野の新商品開発を担当しており、昨今の脱プラスチック・環境配慮の要求に対応しながら、市場ニーズに合った紙製品・プラ代替商品の企画提案・開発を行っています。生産技術グループでは、ユーザーと直接対話を行いながらFSC認証製品化、再生紙化といった国内ユーザーのニーズを満たす商品のリニューアルや新規紙商品開発の他、海外で差別化が図れる高強度の板紙生産技術開発に取り組んでいます。また、昨今の古紙資源の海外輸出増加による古紙不足に対応するため、未利用古紙(難処理古紙)のリサイクル技術確立を進めています。

 当連結会計年度における研究開発の取組は以下のとおりです。

① 脱プラ・減プラ商品の開発に関する取組

 紙という生分解性があり再生可能な原料を使用して脱プラ・減プラに貢献できるよう「FSエリプラ」ブランドの開発を進めてきました。

(a)プラスチック代替素材の開発

 ナイフ、マドラーなどの高い剛性と耐水・耐油性が求められるプラスチックの代替として、「FSエリプラペーパー」、「FSエリプラ+(プラス)」など3品種とこれらの加工品を上市しています。

(b)プラ製フィルム包材やラベルの代替素材の開発

・従来のフィルム包材と同等の強度を持ちながら印刷適性も良好なラミネート紙「FSエリプラライト」

・ラミネートしなくてもヒートシール適性を持つ「FSエリプラヒートシール」など5品種

・耐水性を持つ紙製ラベルの「FSエリプラ耐水紙ラベル」

② 輸出向け高破裂強度板紙開発の取組

 デジタル化による印刷用紙の需要減少に対し、新興国で需要が拡大する板紙需要を取り込むため、2020年4月にN7マシンの板紙への転抄を行い、海外への販売を強化しています。N7マシンでの板紙生産開始当初は、薄物クラフトライナーボード(古紙パルプの配合率が低く、強度が高い段ボール原紙)の代替として、高破裂強度製品の開発と増産を進めてきました。現在は、自動車部品のような重量物を運ぶケースや紙製パレットに使用される高米坪で強度の高い板紙を開発・生産して、国内外への販売を開始しています。

 また、簡易包装化による環境負荷低減のニーズに対応できるよう、複数のマシンで再生クラフト紙・厚物クラフト紙を生産できる体制を確立しました。

③ 紙おむつ用フラッフパルプ開発の取組

 紙・板紙事業以外への用途転換として、15号マシンをフラッフパルプ生産設備へ転換し、2023年7月から営業運転を開始しました。当社グループでの使用以外に、国内外の紙おむつ製造会社に適応したフラッフパルプの開発と販売拡大に取り組んでいます。

 紙・板紙事業に係る研究開発費は、1,037百万円です。

(2)ホーム&パーソナルケア事業

 ユーザーニーズの変化に対応した新商品開発と既存商品の改良に加え、SDGs推進の一環として環境配慮型商品に主眼を置き、付加価値商品の売上比率を増やすべく開発を進めています。

 研究体制は、国内・海外の市場変化への素早い対応だけでなく、グローバル市場全体で品質とブランド価値を確立できるよう東京本社と国内2工場に開発部員を配置しています。また、中国、タイ、インドネシア、トルコ、ブラジルの海外子会社5社にも開発部員を配置し、世界で共通した商品価値の提供ができるようにしています。

 当連結会計年度における研究開発の取組は以下のとおりです。

① 衛生用紙での取組

 日常使いできるワンランク上のトイレット新市場を開拓するために、“柔らかさ”と“丈夫さ”の両立により、「ふんわりした柔らかな肌触り(ロイヤルタッチ)」、「柔らかいのに水に濡れても破れにくい設計」、「吸水力が従来製品の約2倍(当社通常品比:当社測定方法による)」を実現した 『The エリエール』を上市しました。また贅沢保湿ソフトパックの追加上市を行いました。さらに長尺品ニーズへの対応として、i:na(イーナ)トイレット長尺品のシート幅統一リニューアル及び3.2倍巻き12ロールの上市を行いました。キッチンペーパーでは100カット仕様(晒・無漂白)を上市しました。キッチンシートについては、ドライクレープの技術を活かして、吸水量と柔らかさを同時に向上させたリニューアルを行いました。

② ウエットワイプでの取組

 SDGs推進の一環として、2023年10月に生分解性繊維を100%配合した不織布を用いた『除菌できるメガネレンズクリーナー』を新発売しました。また、コロナ禍後の生活者ニーズの多様化に合わせて、掃除用セグメントでは“香り・消臭”の新機軸構築に注力し、2023年4月に『キレキラ!キッチンクリーナー 徹底キレイ おそうじシート 捨てるだけで生ゴミ消臭』、『キレキラ!トイレクリーナー 1枚で徹底 おそうじシート 香りが残りにくい無香性』を新規にラインナップしました。一方、対人用セグメントでは“保湿”に着目し、2023年10月にエリエール贅沢保湿ティシューをベースとした保湿剤成分を配合し、使用後の肌にうるおいを与える『エリエールウエットティシュー 純水タイプ 贅沢保湿』をラインナップに加えました。

③ ペットケア用品での取組

 エリエールで培ってきた商品開発力や生産技術を活用して、“どこまでペットと人にやさしくできるか”をテーマに、「エリエール Pet キミおもい」ブランドで5カテゴリー、31SKUを発売しました。犬用ペットシーツは『たっぷり吸収 パワフル消臭シート』を6SKU、犬用紙おむつは『のびのび動ける アクティブウェア』を2SKU、『おうちくつろぎ リラックスウェア』を5SKU、システムトイレ用猫砂は『パワフル消臭・抗菌 システムトイレ用ネコ砂』を砂が散らばりにくい大粒サイズと砂がかきやすい小粒サイズの2SKU、システムトイレ用シートは『パワフル消臭・抗菌 システムトイレ用シート』を3~4日用や1週間用など計5SKU、ノーマルトイレ用猫砂は『カチッと固まるネコ砂』(鉱物タイプ)と『おしっこチェックできる固まる紙のネコ砂』で計4SKU、ウェットシートは『徹底キレイおそうじシート』『肌にやさしいウエットティシュー』『全身すっきりシート』で計7SKUをラインナップしました。

④ ベビー用紙おむつでの取組

 2023年10月に『グーンまっさらさら通気パンツ』を『グーンぐんぐん吸収パンツ』にリニューアルしました。独自に開発したエンボスを吸収体に施し、吸収体内での尿の拡散性を向上させ、繰り返しおしっこを素早く吸収することで漏れにくさを向上させました(スピード吸収体)。また、Mサイズのウエストの長さを従来品から約1cmアップし、体型の変化が大きい時期に長く使える大きめ設計とし経済性を持たせました。通気性もそのままで、おむつ柄には「くまのプーさん」(M/Lサイズ)と「ミッキー&フレンズ」(BIG/BIGより大きいサイズ)を起用し、楽しくおむつ替えができるようにしました。

⑤ 大人用紙おむつでの取組

 介護負担の軽減を目的に、2023年10月に病院・施設用の主力商品である『アテント Rケア うす型さらさらパンツ』をダブルギャザーと脚まわりすっきり形状に変更し、横モレ防止機能と着脱性を高める商品にリニューアルしました。また市販用では、2023年10月に紙パンツの新たな選択肢として、普段の下着のように使えるスタイリッシュなグレーとホワイトのカラーを採用した『アテント うす型パンツ 下着気分ボクサータイプ』を新発売しました。2024年3月には紙パンツとの併用率が高まっている「紙パンツ用パッド」を、フィット性の高いギャザーとトリプル消臭機能を備えたモレやにおいの悩みに応える商品にリニューアルしました。

⑥ フェミニンケアでの取組

 エリス初のショーツ型生理用ナプキン『エリスショーツ』を2023年9月に新発売しました。スタイリッシュなブラックカラーを採用することで、夜だけでなく昼にも安心して使用できる仕様としました。また、吸水ケアブランド「ナチュラ」からは、『ナチュラ 夜つけて朝あんしん 吸水パッド』を2023年10月20日に新発売しました。“瞬間吸収スリット”を採用することで、就寝前にパッドを使用し、朝の尿モレ対策を行う“眠る前の新習慣”を他社に先駆けて提案しました。

 ホーム&パーソナルケア事業に係る研究開発費は、2,257百万円です。

(3)CNF(セルロースナノファイバー)

 第5次中期事業計画(2024年から2026年まで)での本格的事業化を目標に、市場が期待でき汎用性材料としてコスト優位性がキーとなる複合樹脂について、2021年度に稼働させたパイロット設備での一貫製造プロセス開発を進め、2025年度には三島工場内への商用設備の導入を目指して開発を進めています。また、これまでに卓球ラケット、レースカー部材での採用実績がある成形体、乾燥体も複合樹脂に引き続いて事業化を目指すべく、既存パイロット設備での用途展開と量産プロセスの開発を進めています。

 研究体制は、CNF事業化に向けて、2021年度に稼働させた複合樹脂設備を含む3つの実証設備にてCNF量産化を検討する事業化グループ、CNFの用途展開を進める開発グループ、ユーザーと連携した用途開拓を進める東京駐在グループの3グループ体制で開発を進めています。また、東京本社には、技術営業部隊としてCNF事業化プロジェクトを配置しています。

 当連結会計年度における研究開発の取組は以下のとおりです。

① 製造プロセスに関する取組

 複合樹脂の製造プロセス開発は、パイロット設備での開発成果を基盤として、2025年度の稼働に向けて年産2,000トンの商用プラント設置計画を立案しました。

② 用途開発に関する取組

 複合樹脂の用途開発は、“日本一の紙のまち”である地元自治体の四国中央市の「日常生活で身近にCNF製品を使用する」という企画の下、回覧板に採用されました。また、パイロット設備の供給力を活かして、自動車部材等の試作が進み、展示会で多数の大型部品を展示できる水準まで試作評価が進展しました。

③ 水分散液に関する取組

 新たに高透明度CNF『ELLEX-C(エレックスクリア)』の開発に成功し、2024年4月からサンプル供給を開始しています。より環境にやさしい製造技術として、従来の亜リン酸エステル化CNF『ELLEX-☆(エレックススター)』とは異なる化学処理を採用しました。水分散液の用途開発として、富士紡ホールディングス株式会社(住所:東京都中央区)と共同でホルムアルデヒドを含まない防縮・防シワ剤の材料の開発に取り組みました。『ELLEX-C』を用いることで、生地の色を変えずに寸法安定性を付与し、防縮・防シワ加工を実現できたため、機能性繊維加工「memory cotton®(メモリーコットン)*」に採用されました(*「memory cotton®」は、富士紡ホールディングス株式会社の登録商標です)。

 CNFに係る研究開発費は、紙・板紙事業に係る研究開発費に含んでいます。

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