企業宮地エンジニアリンググループ東証プライム:3431】「金属製品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループは、主に橋梁工事の建設コスト縮減、品質向上、橋梁新製品開発および既設橋梁の維持管理、鋼構造物の生産技術、沿岸構造物の開発・実証に関連した研究開発活動を行っております。

 当社グループにおける研究開発活動は、連結子会社である宮地エンジニアリング株式会社技術・開発本部、計画本部および千葉工場技術研究所、ならびにエム・エム ブリッジ株式会社技術部および建設部が中心となり推進しております。当連結会計年度における研究開発費の総額は428百万円となっており、セグメントごとの研究開発活動の概要は以下のとおりです。

1.宮地エンジニアリング

 当連結会計年度における研究開発費は167百万円であり、主な研究開発の状況は以下のとおりであります。

(1)施工技術に関する研究

① 大規模更新に関する研究

 高速道路各社において、大規模更新、大規模修繕に関する工事が相次いで発注されており、今後もこれに貢献できる、老朽化した橋梁や床版の架け替えを短期間で可能とする技術の研究・開発に取り組んでおります。

② 接合技術に関する研究

 工場溶接および現場溶接の生産性向上を目的に、高能率溶接法の適用に取り組んでおります。特に、現場溶接作業者の高齢化や若年層の不足による現場溶接作業者の減少への対応として、小型可搬型溶接ロボットの適用拡大について研究を進めております。ボルト接合においては,大規模更新等で採用される接合面の種類が異なる異種接合において、効率的なボルト接合を実施工に反映するために、各種異種接合面のすべり係数を検証しております。

③ 工場製作のDX推進への取り組み

 工場製作のDX推進による生産性向上を目的に、協働ロボットの適用について検討を開始しました。工場製作には鋼板の切断や孔あけ等の加工に手作業に頼る作業がありますが、その作業に適した協働ロボットの適用について検討を行っております。

(2)新材料・新素材に関する研究開発

  FRPの橋梁構造物への適用に関する研究

 橋梁の計画的な維持管理の必要性から、今後市場の拡大が予測されるFRP検査路について、コスト削減のための構造の合理化や長支間化を実施しました。「FRP合成床版」の材料技術を生かした新たな商品として、歩道拡幅用床版や歩道橋用の取替床版、鉄道用の壁高欄・防音壁、道路橋用の壁高欄型枠を実用化し、さらなる構造改善や常設足場などへの用途の拡大を図るため、耐衝撃性や耐火性を確認するための試験を行っております。また、首都高速道路株式会社と共同で開発した、地震などで生じた橋梁の段差を、道路啓開時に車両の通行を可能とする渡し板「F-Deck」および阪神高速技術株式会社と共同で開発した、緊急輸送時にも対応できる製品「ダンパスデッキ」は、他の道路管理者への拡販を図っております。さらに、大規模更新工事における床版取替え時の交通解放技術としてFRP舗装覆工板を開発し、実証実験を終え、試験施工による適用性の確認を進めております。

(3)構造・強度・検査に関する研究開発

① 鋼・コンクリート合成構造に関する技術検討

 中小規模の架け替えのための合成床版橋「QS Bridge」および鋼・コンクリート合成床版「QS Slab」について、コスト削減のための構造・製作および施工に関する合理化検討と、各種規準の更新に伴う技術改良を継続して進めております。

② 腐食・防食に関する研究

 腐食・防食に関する研究を琉球大学と共同で実施しており、腐食した高力ボルト摩擦接合継手の残存すべり耐力評価手法を実験および解析の結果から検証しております。また、鋼橋の防食性能向上のためのFRPパネルによる多機能防食デッキの適用拡大のため、実験橋による実験結果から耐風設計法に関して研究を行っております。

(4)新製品・新技術に関する研究開発

① 橋梁のモニタリングシステムの適用に関する検討

 既設構造物の延命化技術としてモニタリングシステムを用いた構造物の健全性診断技術、補修・補強技術の開発、改良に取り組んでおります。無線式の光ストランドセンサー(OSMOS)によるケーブル張力管理、補修工事における安全・品質管理等のためのモニタリングの新たな適用方法およびLPWA(Low Power Wide Area)、BLE(Blue-tooth Low Energy)を用いた新型センサーの導入による合理化・コスト低減に向けた開発を進めており、LPWAを用いた安全管理におけるLPWAを用いたベント傾斜監視システムおよびBLEを用いた新型OSMOS変位計を実工事にて適用開始いたしました。また、架設時の安全管理・品質管理におけるモニタリングシステムの適用実績を拡大しております。

② 複合・合成構造の研究開発

 従来のCFT(コンクリート充填鋼管)と比較して耐荷力・靭性の向上が期待できるRCFT(鉄筋コンクリート充填鋼管)の適用について検討を行っております。

③ 環境配慮型の新製品や新技術の研究開発

 社会的要請であるカーボンニュートラルに資する環境配慮型のボルト関連製品や新製品を使用した新しい施工技術等の研究開発を行っております。

④ インフラDXへの取り組み

 構造物の3次元モデルを活用した設計・施工を実現するBIM/CIMの導入に加え、ドローン、レーザスキャナ、VRなど、ICT(情報通信技術)を活用した先進技術の導入・開発を推進しています。また、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による業務の自動化・効率化にも取り組み、鋼構造物の製作工場および施工現場における生産性と安全性の向上を図るとともに、働き方改革につながるDXを推進しています。

(5)施工工法等に関わる研究、取り組み

① PC業者、異種業者、補修業者との連携

 既設RC床版の更新技術、特に取り替え用プレキャストPC床版に関する技術(製品、施工)をPC業者、異種業者と連携して共同で研究することにより、高速道路各社の大規模更新事業に対応すべく継続して取り組んでおり、新たなプレキャストPC床版の現場継手の開発を進めております。

② 送り出し工法の合理化に関する研究

 当社グループで請け負う鋼桁架設工事は鉄道・道路を跨ぐ工事が多いことから、送り出し架設工法が多く採用され、限られた時間内で安全かつ急速に鋼桁を送り出すことが求められております。社会のニーズに応えるため、当社戦略機材である「ジャッキ装置付全輪駆動式高速台車」を活用することで、急速送り出し架設を実現しております。さらに曲線桁・拡幅桁・および断面変化の桁送り出し架設に対し、従来型の送り出し装置と比較して送り出し速度やジャッキ操作による省力・省人化に優位性を持った「新型送り出し装置」を開発し、運用を開始しております。

 また送り出し架設の照査業務効率化と解析精度の向上を目的とした照査ソフトの改良にも取り組んでおり、照査結果の色分け表示による「見える化」などの改善を行い、より安全な施工を目指してまいります。

③ 建築分野における大空間鉄骨建方の研究

 当社グループの建築分野では大空間構造物である大屋根鉄骨建方工事を数多く手掛けています。今般、非対称な大屋根鉄骨ブロックの建方作業の効率化を図るため、遠隔操作で安全かつ迅速に吊上げ形状調整が可能となる油圧式玉掛装置を開発し、続いて2点吊りと4点吊りができるように改良いたしました。本装置を活用することで高所作業の省力化を図り、更なる現場施工の安全性の向上を進めてまいります。

 また全長600mにも及ぶ長大な発電施設、工場建屋鉄骨を、当社が保有する特殊機材を活用した「多機能式移動ステージ工法」により、高所作業の効率化、作業足場の省力化を実現して施工技術の有効性を実証しております。今後も難易度の高い鋼構造物の建方工事に挑戦するとともに、先端技術を取り入れて一歩進んだ施工技術を提供できるよう研究開発を推進いたします。

④ 建築構造物およびコンクリート床版切断技術の研究

 先に開発した完全無水式ワイヤーソーによる建築構造物の鉄骨コンクリート柱・壁の切断および完全無水式ワイヤーソーシステムを用いた「M-SRシステム」により、高速道路大規模更新工事での合成桁の床版撤去時に床版ブロックを主桁上でスタッドジベルごと水平切断することで撤去作業の効率化を図り、現場施工でその有効性を実証しております。

⑤ 災害復旧(応急復旧橋)に関する取り組み

 近年、日本各地で大規模地震や異常気象に伴う豪雨などの自然災害が頻発しています。災害発生時にまず求められるのは啓開(応急復旧の前に支援ルートを確保するために道を切り開くこと)であり、大型工事車両・重機を必要としない、汎用性のある山留材を利用した簡易的かつ軽量で施工性に優れる応急復旧橋やFRP覆工板による人道橋の開発を継続して行っております。今後も有事の際には、早期のインフラ復旧に貢献するように取り組んでまいります。

2.エム・エム ブリッジ

 当連結会計年度における研究開発費は260百万円であり、主な研究開発の状況は以下のとおりであります。

(1)施工技術・構造・材料・検査に関する研究開発

① 大規模事業・保全事業に関する研究

 高速道路各社において需要が高まっている床版の取り替え、拡幅、架け替え工事を対象として、プレキャストPC床版の現場継手の開発を継続して進めております。あわせて、大規模事業に適用できる施工技術の開発を行っております。

 また、腐食・損傷した鋼部材の補修工法に関する研究を継続して実施しております。

② 橋梁の耐風設計に関する研究

 従来は風洞試験により耐風性検討を行ってまいりましたが、風洞試験を補完する手法として期待される数値流体解析を橋梁に適用するための調査・研究を継続して実施しております。

 また、風洞試験における計測の合理化を目的として、各種デジタルセンサーを用いた計測方法の風洞試験への適用検討を進めております。

③ モニタリングシステムの開発

 点検・診断業務、保全工事で必要とされる変形や振動の計測を効率的に行うことを目的として、無線技術を活用したシンプルなモニタリングシステムの開発を行いました。このシステムを受注工事での各種計測に適用することで検証を重ねており、信頼性の向上、適用拡大を進めております。

(2)新製品・新技術に関する研究開発

① 沿岸構造物・環境技術に関する研究・実証

 水産庁の新たな「漁港漁場整備長期計画」における養殖生産拠点の形成として、養殖適地の拡大を目的とした静穏水域の確保が施策として挙げられています。本施策の実現のために、静穏水域を沖合に展開するための長波長対応型の浮消波堤の開発を行っております。数値流体解析による性能検証に加えて大型水槽を用いた模型実験により消波性能の確認と設計手法の評価に取り組んでおります。

 生物多様性を保全する上でサンゴ礁は特に重要な生態系とされております。生物多様性の保全に貢献する技術として、微弱電流が流れる浮桟橋で活発に生息するサンゴの生態に着目し、サンゴの移植・増殖技術の研究を継続して実施しております。新たな研究サイトを設け様々な環境下での適用性についての実証を継続しております。

 また、サンゴの増殖をモニタリングする際に使用できる、水中ドローンが撮影した画像から、深層学習を用いたAIでサンゴを自動抽出する画像解析技術を開発しました。この技術により、ダイバーの潜水機会を減らすことが可能となり、省人化、安全性の向上、リモート作業による作業環境の改善が可能となります。今後は、教師データの拡充と、アルゴリズム改良により精度向上に向けた検討を進めてまいります。

② 省人化・生産性向上・スムーズで効果的な技術伝承に資するDX技術に関する研究

 国土交通省が推進するDXの推進に関連して、ICT(情報通信技術)を活用した省人化と生産性向上に向けた要素技術の開発、試行、検証に取り組んでおります。また、社内プロセスをワークフローにより見える化し、プロセスの改善・省人化の検討を進めております。

③ 耐震補強工事に関する研究

 従来、建築・機械分野で用いられている慣性接続要素について、長大橋他の耐震補強工事に適用するための実用化研究を継続して実施しております。

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