yutori 【東証グロース:5892】「小売業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「TURN STRANGER TO STRONGER(ハグレモノをツワモノに)」 をミッションに掲げており、「ファッションブランドを纏うことで、未知の才能をもつ世界中のハグレモノが、そのズレを強さに反転させられるように」という願いをもとに、複数のブランドの創造を図ることでミッションの実現に取り組んでおります。
(2)目標とする経営指標、経営戦略等
企業価値を継続的に拡大することが重要であると考え、売上高、売上総利益、調整後EBITDA(注1)及び営業利益を重要な経営指標としております。下記「(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」を解決することにより、これらの指標の向上を図ってまいります。
(注1)調整後EBITDAとは、営業利益に減価償却費、のれん償却費、敷金償却費及び株式報酬費用を足し戻した金額です。
(3)経営環境
①市況
当社の経営に影響を与える大きな要因としては、市場動向、経済情勢等に加え、当社の取り扱う商品である衣料品及び雑貨等に関連するものとして、アパレルファッション市場の動向があります。
株式会社矢野経済研究所の調査(「2023 アパレル産業白書」)によれば、国内アパレル総小売市場は2017年から2019年ごろまでほぼ横ばいの推移を続けておりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大等による影響により2020年には大きくマイナス成長となりました。しかしながら、2020年から2021年にかけて回復の兆しを見せており、2022年は前年比で105.9%の市場規模となっております。また、新型コロナウイルスの感染拡大等による消費者の購買行動の変化も起きているものと考えており、ECにおけるアパレル産業は堅調に成長しております。具体的には、経済産業省の調査「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」 によれば、2022年の衣類・服装雑貨等のEC化率は21.56%、市場規模は2兆5,499億円となっております。2016年のEC化率は10.93%、市場規模は1兆5,297億円であることから、シフトが進んでおります。また、2021年の市場規模は2兆4,279億円であり、2022年の市場規模の金額は前年対比で5.02%増加しております。
この点、当社の主な販売チャネルはオンラインストアであることから、当社にとって好機になるものと考えております。
②市場の規模
当社の事業はファッションブランドの運営でありますが、取り扱うブランドの特徴として、ストリートファッションのブランドを中心とし、10〜20代を主なターゲット層としてブランドの展開を行っている点に特徴があります。今後は30代へ顧客層の拡大や、アパレル以外の商材による事業展開を目指してまいります。市場規模は以下のとおりとなります。
10〜20代を主なターゲット層としたブランドの展開:1兆5,154億円(参考:「2023 アパレル産業白書」矢野経済研究所、「人口推計」総務省統計局)
10~30代を主なターゲット層としたブランドの展開:2兆3,963億円(参考:「2023 アパレル産業白書」矢野経済研究所、「人口推計」総務省統計局)
アパレル以外の商材による10〜20代を主なターゲット層としたEC事業の展開:2兆6,324億円(参考:「電子商取引に関する市場調査報告書」経済産業省、「人口推計」総務省統計局)
(4)中長期的な会社の経営戦略
当社は、これまでストリートファッションを中心にインフルエンサーを活用したマーケティング手法を駆使して創り上げてきたD2C(注1)ブランド群をもって事業を推進してきましたが、一層の事業の拡大のため次世代のブランド群の創造を目指してまいります。
具体的には、①既存ブランドのさらなる成長及びZ世代向けブランドの新規創出、②Y世代(1981年から1996年に生まれた世代でいわゆる「ゆとり世代」ともいう)等のZ世代以外をターゲット層にしたブランドの新規創出、③商材の多様化の3点を考えております。
①既存ブランドのさらなる成長及びZ世代向けブランドの新規創出
大きく分けると社内でのヒットブランド数の拡充とM&Aによる社外からブランドの取得の2つがあります。社内でのヒットブランドの拡充とは、ブランド数のより一層の拡充と売上・利益拡大の両立を実現すべく、各種SNSにおける各ブランドの社内運用アカウントの拡充とそれによるファンの獲得(外部のインフルエンサーを活用したマーケティングの割合は2023年6月以降で減少しており、今後もその傾向が続く想定)、ブランド立ち上げにかかるノウハウ及び成功体験の組織内での共有による自律分散型のブランド運営をさらに強化するとともに、市場の潜在的な消費のトレンドを早期に発見し、商品開発へと反映させる活動を行うことで市場のニーズに合致した商品をリリースすることを目指してまいります。実際に当社の売上の中心であるYZ Storeでは、その多くがZ世代による注文であり、今後もZ世代向けのブランド、商品の開発を一層強化していきます。その他、店舗出店に伴ったOMO戦略(注2)も既存ブランドの成長戦略の一つとして考えており、自社ECサイトであるYZ Storeを訪れた待機ユーザーをスムーズに実店舗に誘導(Online to Offline)、EC注文商品の店舗受取やEC在庫の店舗取り寄せ等、ECサイトと店舗をシームレスに連携することを検討しております。これによりオンライン購入履歴から近隣店舗の案内やLINEを使用した顧客との一対一の接客の質の向上が実現可能と考えております。2024年3月期においては、YZ Storeに店舗在庫状況の表示、YZ Store及び店舗共通のアカウントシステム(購入履歴等の一元管理)の導入を行いました。
一方で、M&Aによるブランドの取得は、当社が得意とするSNSマーケティングの手法を他ブランドにも適用して成長軌道に乗せていくことを目標としています。実際に、2022年10月に吸収合併した株式会社A.Z.Rに属していたブランドは、合併後、フォロワー数を伸ばすとともに売上高や店舗数も順調に拡大しております。
②Y世代等のZ世代以外をターゲット層にしたブランドの新規創出
これまでZ世代を主なターゲット層としてきましたが、Y世代を主なターゲット層としたブランドも新たに立ち上げ、顧客層を拡大していくことを考えております。また、上記同様にM&Aにより他社のブランドを取得して、当社のノウハウを適用して成長させていくことも考えております。当社において、Y世代をターゲット層としたブランドとしては「PAMM」があり、SNSの活用などZ世代向けブランドの運営ノウハウを活かしながら、ブランド独自の世界観を築き、成長しております。
③商材の多様化
これまで当社が蓄積してきたブランド運営ノウハウ及びSNSマーケティングの手法をアパレル商品に限らず、他の商材にも応用することでよりZ世代における認知を拡大して、安定的な売上の確保、売上の季節偏重の逓減に貢献できるものと考えております。2024年3月期においてはミニサイズのプチプラコスメ「minum」をプロデュースし、アパレル商品以外の事業も開始いたしました。今後も、アパレル商品以外のブランドのプロデュース、開発を検討してまいります。
(注1)D2C:Direct to Consumerの略。自ら企画、生産した商品を広告代理店や小売店を挟まず、顧客とダイレクトに取引する販売方法。
(注2)OMO戦略:Online Merges with Offlineの略。オンラインとオフラインをシームレスにつなげた状態で顧客への付加価値の高い購買体験の提供を目指す戦略。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①ブランドポートフォリオの多様化
当社は、主力ブランドの売上安定化を図るとともに継続的に新規ブランド及び商品を生み出し、特定のブランド及び商品への依存度合いを下げ、リスクの分散を図ることが重要であると考えております。ブランドポートフォリオのさらなる多様化のために、優秀な人材配置、販促活動の強化による顧客化推進、自社ECサイトのYZ Storeの強化等に取り組むとともに、ブランド運営においては、客観的な撤退基準を設け、基準を充足しない場合には撤退の意思決定を検討するなど、リスク管理を図った上で、ブランド運営を行っております。これらの取り組みにより、規律ある投資とブランドポートフォリオの多様化に取り組んでまいります。
②システム及び物流機能の強化
当社の主要事業は顧客への直販を中心としたアパレル商品の販売事業であることから、安定した事業運営を行うにあたっては、顧客の増加に対応可能な物流機能の強化が重要であると考えております。当社のビジネスモデルにおける物流機能には在庫の保管及び入出庫の管理が必要不可欠であり、物流機能と物流コストの最適化を追求することが、経営上、特に重要な要素となります。今後におきましては、引き続きシステムの強化による安定性及び効率化に取り組んでまいります。
③商品力の強化
当社は、ファッション感度の高い顧客ニーズへの対応を図るため、引き続きSNSを中心として、流行の状況のリサーチを徹底することにより、商品力の強化につなげるとともに、当社内の複数のブランド間での成功事例やノウハウの共有を図ることにより、ヒット商品、ブランドの再現性の向上に取り組んでまいります。
④インターネット販売の強化
当社は、アパレル事業の開始当初から、ECを中心とした販売を行ってきました。そのため、ECサイト経由の売上は71.8%(第6期)と、実店舗等のオフラインを中心とした事業展開を行ってきた一般的なアパレル企業と比べ、高い水準にあります。コロナ禍での消費者の生活様式の変化に伴い、インターネット販売の需要が高まるとともに一層のサービスレベル向上が求められると認識しており、引き続き自社ECサイトの強化、システムの見直し、顧客の利便性を向上するサービスの実装、優秀な人材配置、販促活動の強化による顧客化推進等に取り組んでまいります。
⑤M&Aの検討
当社は、継続的に高い成長を実現するため、日々企業買収の検討を行っております。アパレル業界は消費低迷や顧客ニーズの多様化から、競争力の弱い一部の企業においては、販売不振に陥っている状況にあると考えております。今後の業界再編の中で、本業の不振などの課題に直面し、事業又は企業そのものの売却を検討する企業が現れるものと考えております。また、このような企業のほか、当社のブランドポートフォリオにおいて開拓余地のある分野(例えば、Y世代向けのレディース分野)に強みがある企業を買収することで、当社の企業価値を高めることができると考えているため、M&Aを経営戦略のうちの重要な1つと位置付け、日々案件のソーシングを行うとともに、収益性及び当社とのシナジー効果を慎重かつ十分に検討した上で、実施してまいります。
⑥SNSを通じた認知拡大
当社は、Z世代が主な顧客層であり、SNSでの継続的な認知獲得が売上に寄与しているものと考えております。そのため、自社SNSコンテンツの認知拡大が特に重要であると考えております。当社はクリエイティブ職の育成と採用の継続的な強化により自社SNSによる発信力を高め、Z世代へのさらなる認知向上に取り組んでまいります。
⑦実店舗販売の強化
当社は、継続的に高い成長を実現するため、2022年4月より実店舗の運営を行っており、2024年3月には23店舗を展開しております。期間限定店舗を活用して需要の調査を慎重に行った後、SNSでの集客力を活かした小型店舗での展開が中心となっております。当社は、東名阪を中心に実店舗の拡大に取り組んでまいります。
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