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企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、お客様のニーズに沿ったバルブの製造からメンテナンスまで、バルブのトータルライフにわたるさまざまなサービスをスピーディにご提供できる体制作りに弛まぬ努力を続けております。お客様に安心してご使用いただける高品質・高性能なバルブ製品、バルブの予防保全に絶大な力を発揮する診断機器、豊富な知識・経験を持つ技術者によるメンテナンスサービスなどで、全国の原子力発電所(以下、「原発」)、火力発電所をはじめとする各種産業用プラントの安全で安定した運転のお手伝いを通じ、社会に貢献できる企業グループであり続けたいと考えております。当社グループでは、グループ会社共通の社是として、
一 信頼される企業として社会の進歩に貢献する
一 誠実と融和により健康で活気ある職場をつくる
一 経営の刷新と技術の開発につとめる
を掲げ、全役職員のベクトルを同じ方向に揃えグループ力の結集を図ることで、顧客満足度を高め、社会・地域の健全な発展に貢献し、従業員とその家族の生活を守り、株主への適正な利益分配を行い、安定的持続可能な強固で粘りのある企業体質の構築を目指しております。
また、当社グループの主な事業である、バルブ製品の製造、メンテナンスとも、高い技術を持つ地域の協力工場や、厳しい工期と過酷な環境下でのメンテナンス作業に従事される外注技術者など、数多くの関係取引先のご協力を頂戴することで成り立っており、常に感謝の心を忘れることなく、今後も関係取引先との相互発展を基本とした強い信頼・協力関係を構築してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループが製造いたしますバルブ製品、鋳鋼製品のほとんどは、お客様の個別仕様書によって受注・生産を行っており、汎用品はごく一部にすぎません。また、バルブメンテナンスサービスにつきましても、一般的な定期保守点検契約のようなものは存在せず、比較的安定的に売上が望まれる原発の定期検査工事を除いては、基本的にプラントの運転状況とそれに応じた当社の営業活動の成果によるものであります。
よって各年度の売上高は必ずしも安定したものではないため、損益も同様に年度毎の山谷が非常に激しくなる可能性があり、特にバルブ事業は、売上の増減に加えその時々の工場操業度によっても損益に少なからず変動が発生し、目標とする経営指標として、例えば投下資本に対する利益率等を設定したとしても、以上のような理由から分子となる利益の変動が大きく、安定的且つ継続的な目標指標とすることは困難であると考えております。
このため、年度計画及び中期収益計画の策定に際しては、各年度に予想される市場環境から受注想定案件を積み上げることにより、売上高、営業利益、経常利益を予算化することとしております。
そして個々の案件の受注時には、厳密な貢献利益(限界利益)管理のもと、その時々の工場操業度と平準化効果、社員・外注作業者の最適要員配置、後年度における期待収益性などを重要な要素として受注判断を行うことで利益管理を実施しており、これにより機会損失を最小化し、獲得利益の最大化を図っております。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①基本課題
当社グループはこれまで国内原発の原型炉、実証炉、商用炉全てにバルブを納入してまいりました。原発黎明期においては重要な役割を担うバルブは海外製品が導入されていましたが、現在ではPWRと呼ばれる加圧水型原子炉の重要なバルブ・安全弁は当社製品をご採用いただいております。
このように当社グループは日本の原発の発展とともに歩んでまいりました。よって原発関連事業者としての責任と使命は今後も何があっても果たしていくことを基本的な会社方針としております。
福島原発の事故から12年が経過し、これまでにPWR型の6原発12基で再稼働が実現しましたが、BWR型原発については依然、再稼働の見通しは立っておらず、十分な市場回復には程遠い状況が続いております。よって原発を中心とした事業の軸を堅持しつつも、それに比肩する強い収益の柱を加えることが、現在の最重要課題であることに変わりはありません。
これら課題解決を目指し、『中期経営計画2023』では、前中期経営計画に引き続き、既存3事業の深化と新領域への挑戦を主要戦略に掲げ取り組むこととしております。
原子力は再生可能エネルギーの普及と、化石燃料からの脱却を促進する上で欠かすことのできない重要なベースロード電源であって、今後の新たな展開も期待されるところですが、これまで以上に想像力とリスク感応度を高め、決して同じ轍は踏まないことを肝に銘じ事業に取り組んでまいります。
また、統合報告書等を作成できるレベルにはまだまだ至りませんが、非財務情報の開示充実、ESGへの対応など、上場企業として責務を果たしてまいります。
②経営基盤の構造改革
(生産性の改善~TAMES Project~)
当社は前連結会計年度に創業100周年を迎え、新たな100年に向けての第一歩を踏み出しました。社会に求められつつ会社を長く継続するためには、成長戦略とともに事業基盤の強化が不可欠です。これを具体化する施策として、全社的業務効率改善活動である通称『TAMES-Project』の全社展開を進めております。
完全受注生産型事業においては、効率化を単に生産量だけに求めることはできません。すべての営業循環の中において、時間・規格・技術・場所等々、多くの制約の中で機会損失と闘いながら業務効率向上を実現していく必要があり、これは決して簡単なことではありません。
この課題に全社的に取り組み、経営効率向上を目指すのが本プロジェクトの狙いです。その狙いはコスト低減に留まらず、SDGsの諸課題、働き方改革、ICTの推進、健康経営、新製品・サービスの創出など、内外の課題を取り込みながら包括的に企業基盤の強化・改善を進めてまいります。
③既存3事業の深化
バルブ事業、メンテナンス事業、製鋼事業の既存3事業の個別課題を攻めの事業戦略により解決し更なる成長を目指します。
バルブ事業とメンテナンス事業は、当社グループが世界に誇る高温高圧弁・安全弁の技術とそれを象徴するTOAのブランドを活かし、グローバルニッチトップ化戦略の中核に位置付けられます。
国内原発、火力発電設備の安全・安定運転と経済性に貢献する新たな提案で顧客満足度を高め、原発廃止措置支援装置の開発、IT技術による状態監視装置やサービスシステムの構築、新たな製品・メンテナンス機器の開発などで成長を目指してまいります。また同時にコスト面での課題を克服すべくTAMES-Project活動での効率化実現に取り組んでまいります。
製鋼事業は製品の高付加価値化を主要施策として進めてまいります。昨今の経済情勢下、材料高による採算性悪化に苦しんでおり、この対応はもとより、加工、検査、材質、納期、そして何よりも品質を高めた高付加価値製品の提供により収益性の改善を推進してまいります。
④新領域への挑戦
(グローバルニッチトップへの挑戦)
既存事業の中核であるバルブ事業は、世間的には市場飽和状態にあって、決して魅力的なものとは映らないでしょう。だからこそ当社グループはグローバルニッチトップを目指すことを選択し、その中においては新たな事業領域の開発は不可欠な戦略であります。
発電所では非常に多くのバルブが使用されていますが、高温高圧弁・安全弁は数多あるバルブのごく一部に過ぎません。しかし調達価格で見たときその割合は決して小さなものではなく、ここに勝機があると考えております。
また圧力容器の防護設備のひとつである安全弁は当社グループの看板商品です。原発という極めて高い安全性が求められるプラントの最重要ラインに当社安全弁は設置され、24時間365日、プラントの安全を見守っており、絶対に他社では代替できない技術で顧客の絶大な信頼を得ております。
こういった、ニッチな分野での商品性やサービス力を徹底的に高めることで、ニッチな市場での競争優位を確立してまいります。
(次世代火力発電)
発電分野においては、脱炭素が絶対的な命題となる中、火力発電所は今後確実に、脱化石燃料化へ向かっていきます。残念ながら当社グループのバルブは、風力発電、太陽光発電といった分野では出番がない以上、この火力発電の脱化石燃料化、すなわち水素やアンモニアへの燃料転換に対応するバルブ開発が重要な課題となります。
水素やアンモニアの混焼火力発電は国内においても既に実証事業が進んでいますが、最終形である、専焼型商業発電プラントへのバルブ製品、或いは鋳鋼製品の供給に視点を据え、技術開発に取り組んでまいります。
(廃炉事業)
長期的な事業拡大戦略の一翼を担うのが廃炉事業への進出と考えております。これはバルブ事業の集大成ともいえる事業で、バルブのトータルライフに亘りワン・ストップであらゆるサービスを提供するという、当社グループの目指す姿に通ずるものであります。
具体的な事業のイメージは、廃止された発電所から回収したバルブをリサイクルして新しいバルブ等にして新しい発電所に戻すという非常にシンプルなものですが、そこに至る道程は困難の連続と想定しております。
この実現のため設立した子会社で、資源エネルギー庁より「原子力産業基盤強化事業補助金」に係る間接補助事業者に採択され活動をしております。実際に原発からリサイクル対象の金属が、事業が成立するレベルで排出されるのはまだ先のことで、業績貢献には今しばらく時間を要しますが、早期の参入表明で先駆者としての優位性を築き、今後の事業本格化に備えてまいります。
(デジタル技術の活用)
ビッグデータやセンシング技術などが事業に取り込まれ、多方面で新たなマーケットの創出、ビジネスモデルの開発につながっております。さらにはコンピューターを離れ、何かをインターネットにつなぐことで新たなビジネスを広げるIoT技術も既に当たり前になっております。
当社グループにおいても、長年のバルブ製造やメンテナンスの過程で蓄積した、バルブの検査データや経験、知見、そして電力用高温高圧バルブメーカーとしてのブランド力や市場シェアを活かし、「情報」や「ノウハウ」を商品とした事業展開の可能性についてさらに深く掘り下げる必要があると考えております。
例えばそのひとつとして、バルブや鋳物に関する技術情報の積極的な公開や、特殊設備の異業種での活用可能性を探るなど、新たな市場・顧客を求めデジタルマーケティングに取り組んでおります。また、これまでは狭い市場と決めつけることであまり縁のなかった、各種産業機器等の展示会に積極的に出展し、新たな分野への進出の足掛かりを探る活動を進めております。
やれることは何でもやってみる、TAMES=「試す」の精神で取り組み、これをひとつのきっかけに新たなバルブソリューションを展開してまいります。
(新たな子会社事業とのシナジー創出)
前連結会計年度から太陽電業株式会社を子会社に加えました。同社は東日本地区の原発で放射線管理業務や電気設備関連工事を行っており、同社との連携により市場の拡大が期待できます。東日本大震災以降、同地域での収益は原発に限らず火力発電所でも低下しており、震災前のレベルを取り戻すためにも重要な拠点になり得るものと考えております。
今後は早期のシナジー創出に向け人材の交流をはじめとした具体的な活動を進めてまいります。
また、前中期経営計画で取り組んできました前述の「TAMES-Project」を「TOMOS-Project」に深化させ、社員の挑戦と成長を通じて世の中の課題解決を図ります。
事業活動を通じ、これらの課題を解決することで、持続可能な社会と経済価値の向上を実現し、企業価値を高めてまいります。
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