企業兼大株主TOPPANホールディングス東証プライム:7911】「その他製品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。実際の結果は、社会動向の変化等の影響により異なる可能性があります。

1900年の創業以来、「印刷」を原点とするあらゆる技術・ノウハウを活用した製品・サービスの提供を通じてステークホルダーであるお客さま、従業員、取引先、地域社会、株主・投資家、行政・自治体等、広く社会に関わり、社会課題の解決に寄与する事業活動を行ってまいりました。今日、気候変動に伴う災害多発や自然破壊等、環境問題の深刻化をはじめ、人権リスクや地政学リスクの高まり等、グローバル規模で問題が多発し、将来予測が困難な時代を迎えております。当社グループは当社事業が社会に与えるインパクトを認識し、企業として責任を果たすとともに、事業を通じて社会課題を解決しながら企業価値向上を目指すサステナビリティ(持続可能性)経営を推進しております。

(1) サステナビリティ共通

①ガバナンス

 当社グループは、2020年4月より代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会(以下、サステナ委員会)を設置しております。サステナ委員会は、コーポレートガバナンス体制の中に位置付けられ、グループ全体のサステナビリティ推進の役割を担っております。

 取締役会はサステナ委員会に、当社グループのサステナビリティ課題についての検討・審議を担当させております。サステナ委員会で検討・審議された具体的な取り組み施策は、経営会議を通じて取締役会に報告され、取締役会においてサステナビリティ経営についての総合的な意思決定を行っております。また、取締役会では、サステナビリティの取り組み施策、目標設定及び進捗について、継続的に議論・モニタリング・監督を行っております。

 サステナ委員会内に、当社グループ企業の代表取締役社長及び取締役をメンバーとするトッパングループESG経営推進会議を設置しており、当社グループ内のESG、SDGsテーマの課題を共有し、連携して取り組んでおります。

 サステナ委員会の下部には、部門横断で編成されたSDGs推進プロジェクトとコーポレートESGプロジェクトを設定し、各プロジェクトが連携しながら、個別テーマの対応・推進を担っております。SDGs推進プロジェクトでは主に事業活動におけるサステナビリティの取り組みを推進し、事業におけるSDGs貢献の注力分野「TOPPAN Business Action for SDGs」の活動推進と進捗確認を担っております。コーポレートESGプロジェクトでは、主に自社活動におけるサステナビリティ課題を担当し、2022年度は、人権ワーキンググループ(以下WG)、サプライチェーンWG、TCFD WG、リスクマネジメントWGが編成され、各テーマのプロジェクトを推進しました。

 また、将来的なサステナビリティ課題について意見交換を行う場として、エグゼクティブ・サステナビリティ推進委員会を設置しております。外部有識者と当社取締役が意見交換等を行い、重要な課題についてはサステナ委員会と連携して、検討しております。


②戦略

 当社グループは、「Digital & Sustainable Transformation」をキーコンセプトに、社会やお客さま、当社グループのビジネスを、デジタルを起点として変革させる「DX(Digital Transformation)」と、事業を通じた社会課題の解決とともに持続可能性を重視した経営を目指す「SX(Sustainable Transformation)」により、ワールドワイドで社会課題を解決するリーディングカンパニーとして企業価値向上とサステナブルな社会の実現を目指しております。その一環として、事業ポートフォリオを変革し、経営基盤の強化とサステナビリティの取り組み深化を推進しております。2023年度を初年度とする中期経営計画において、2026年3月期には「DX」「SX」関連を含む成長事業の営業利益構成が全体の50%以上となるよう変革を進めております。

SDGs貢献の観点では、2030年までの長期視点で、事業活動マテリアリティとして定めている、「環境」「まち」「ひと」の3つのテーマにおける注力分野「TOPPAN Business Action for SDGs」を中期経営計画に織り込み、中期経営計画の事業ポートフォリオ変革とも連動させております。また、事業活動マテリアリティを支える基盤として全社活動マテリアリティを設定し、「環境配慮・持続可能な生産」と「従業員の健康・働きがい」を掲げております。

 こうした一連の取り組みを、「気候変動」「人的資本・多様性」「人権」「サプライチェーン」というサステナビリティの重要テーマと連携させ、グループ全体で推進しております。

 当社グループでは、ワールドワイドでの社会課題解決への貢献と持続的成長のため、グローバル規模で事業を加速させており、国内だけでなく海外にも拠点・サプライチェーンが拡大していることからも、世界共通の課題となっている気候変動への対応は経営の重要課題であると認識しております。地球環境課題への長期的な取り組み方針を定めた「トッパングループ環境ビジョン2050」では、「脱炭素社会への貢献」についても設定しており、「2050年の温室効果ガス排出の実質ゼロ」に向けた取り組みを進めております。また、本ビジョンからバックキャストで検討した「トッパングループ2030年度中長期環境目標」においても、指標の1つとして温室効果ガス排出量削減を設定し、中長期視点での取り組みを進めております。

 また、当社グループは、1900年に大蔵省印刷局から独立した技術者集団が立ち上げたベンチャー企業として創業して以来、「人によるイノベーション」や「共創」は事業成長にとって必要不可欠であると考えております。事業の土台として「人間尊重」を重要な価値観としており、従業員やお客さま等の関係性を重視し、従業員を資源ではなく、会社の貴重な財産である「人財」、すなわち「人的資本」と捉えております。また、価値創造のプロセスにおいては、多様な人財が個々の属性や価値観の違いを認め、尊重し合い、多様な人財の能力を生かし互いに高め合うダイバーシティ&インクルージョンを推進しております。人的資本・多様性は、サステナビリティ経営の重要課題であると認識しております。

 当社グループは、事業を通じて多くのお客さまに多種多様な製品・サービスを提供しており、その事業を維持・発展させるため、グローバルに広がる幅広いサプライチェーン網を有しております。当社グループが社会的責任を果たし、持続可能な社会の実現に貢献するためには、サプライチェーン全体でサステナビリティに取り組むことが必要不可欠と考えております。その中でグローバルな社会課題である人権課題についても、サプライチェーン全体で取り組むべき課題と認識しております。

③リスク管理

 当社グループのサステナビリティ課題についてのリスク管理は、取締役会の管理のもと、本社主管部門、事業(本)部各部門とサステナ委員会の下部組織であるコーポレートESGプロジェクトの1つであるリスクマネジメントWG(責任者:リスク管理担当取締役、メンバー:本社主管部門リスク担当者、事務局:法務本部コンプライアンス部)が密接に連携して推進する総合的なリスク管理に組み込まれております。

 リスクマネジメントWGは、年1回のリスクアセスメントを実施し、当社グループの経営に重大な影響を与えるリスクを「重大リスク」として特定しております。

「重大リスク」の特定にあたっては、本社主管部門が統括している事業(本)部各部門、子会社、グループ会社でのアセスメント結果及び中長期視点での顕在化の可能性、発生頻度やインパクトの強弱等を踏まえております。「重大リスク」は当社グループが事業を展開するグローバルな社会・経済環境の変化に加えて、気候変動に伴う環境問題、デジタル化の進展によるサイバー攻撃の巧妙化、強制労働をはじめとする人権課題等様々なグローバルリスクへの対応も含め、サステナビリティ経営推進の観点からも十分に検討されております。2023年度の「重大リスク」としては、「気候変動リスク」「事業の発展を支える人材の確保」「調達におけるリスク」「人権リスク」等を含む、25項目が選定されております。(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」参照)

「重大リスク」は、サステナ委員会に報告・検討された上で、取締役会が報告を受け、取締役会の管理のもと毎年見直しされております。

 また、「重大リスク」を含む様々なリスクが顕在化しないように、本社主管部門及び事業(本)部各部門で対応策を検討し、国内外の事業活動に結びつけて適切なリスク管理を実施しております。取締役会は、そのリスクへの対応状況について、本社主管部門からリスク管理担当取締役を通じて定期的に報告されております。リスクが顕在化した場合には危機管理体制に基づき、迅速な対応が図られております。

④指標と目標

「Digital & Sustainable Transformation」をキーコンセプトとした事業ポートフォリオ変革による持続可能な社会の実現と企業価値の向上を評価するため、成長事業「DX(Erhoeht-X)」「国内SX・海外生活系」「新事業(フロンティア)」の営業利益構成及びSDGsに対する事業貢献を定めた「TOPPAN Business Action for SDGs」にて「環境」「まち」「ひと」の3つのテーマに区分した各成長事業と連携する目標値を設定し、これらを指標としております。

「環境」における「サステナブルパッケージの売上比率」は「生活系事業のエコプロダクツ・ソリューションの拡大」の指標として、「まち」における「生活を豊かにするサービス数(情報銀行・メタバース活用パーソナルデータプラットフォーム)」は「DX事業における安全なパーソナルデータ関連ビジネス」の指標として、「ひと」における「健康に貢献するサービス数」は「新事業における健康寿命延伸関連ビジネス」の指標としてそれぞれ位置付けております。

◇成長事業「DX(Erhoeht-X)」「国内SX・海外生活系」「新事業(フロンティア)」の営業利益構成


◇成長事業と連携する「TOPPAN Business Action for SDGs」


(2) 気候変動

 当社グループは、気候変動がグローバルで事業を展開しているグループ全体に与える影響の大きさを認識し、気候変動を当社グループのサステナビリティ経営における重要課題の1つとしております。金融安定理事会が設立したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に対し、2019年に賛同を表明しております。2020年から提言に基づいたシナリオ分析を開始し、TCFDの提言に沿った気候変動に関する財務インパクト及びその対応について継続して開示を行っております。

①ガバナンス

 取締役会は、気候変動を経営戦略における重要課題の1つと認識し、気候変動リスクと機会は事業成長のための成長投資(社会課題の解決に向けた「DX」「SX」を柱とする事業ポートフォリオの変革を含む)として考慮しております。

 取締役会は、サステナ委員会に気候変動関連課題を担当させ、その下部組織であるコーポレートESGプロジェクトにおけるTCFD WG(本社関連部門及び事業部門、当社グループ会社が参画)が取り組みを主導しております。TCFD WGはSDGs推進プロジェクト、リスクマネジメントWGと連携して気候関連課題の評価と対応策の取りまとめを行っております。

 取締役会は、サステナ委員会より経営会議を通じて、気候関連課題の評価や状況、目標管理についての報告を受けるとともに、気候関連の課題を考慮し、経営戦略の策定等について総合的な意思決定を行っております。

 取締役会は毎年4月に、「トッパングループ環境ビジョン2050」達成に向けて設定された「トッパングループ2030年中長期環境目標」における温室効果ガス排出量の前年度実績及び当該年度の単年度温室効果ガス排出量目標について報告を受け、承認を行っております。2023年3月には、カーボンニュートラルの実現に向けた全社での取り組み強化のため、「トッパングループ2030年中長期環境目標」において1.5℃水準に向けた温室効果ガス排出量削減目標の引き上げを実施しております。これは、当社グループがグローバルでの事業展開、M&A強化による事業推進を加速していることを鑑み、バウンダリー(算定対象範囲)の適切な見直しにも対応しております。また、「トッパングループ環境ビジョン2050」では、同じく2023年3月に生物多様性保全に向けてビジョンも新たに設定しており、今後「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)」の対応も検討してまいります。


②戦略

TCFD WGは、気候変動に関する重要リスク・重要機会の洗い出し、財務面のインパクト評価、その評価に基づいた対応策検討を行っております。2022年度の事業機会の検討においては、本社関連部門に加えて、事業部門及びグループ会社の事業戦略担当メンバーが参画しております。シナリオ分析の検討を各事業部門の中期計画と連動させ、より具体的なビジネスを想定した財務インパクトの評価と対応策の検討を行っております。

 シナリオ分析として、当社グループの主要事業地域である日本国内拠点に海外拠点を加え、研究開発から調達、生産、製品供給までのバリューチェーン全体に対し、1.5℃シナリオ、4℃シナリオで、2050年までの長期を想定し、考察しております。リスク及び機会の時間軸としては、短期1年以内、中期1~3年、長期4~30年以上として、当社グループの事業活動計画である年度計画、中期計画、長期ビジョンの時間軸との整合を図り、気候関連課題におけるリスクと機会について関係部門による検討を行っております。

 当社グループが認識する移行リスクとして、世界全体におけるカーボンニュートラル実現に向けたカーボンプライシング制度の規制拡大を背景に、運用コスト負担の増加等が考えられます。また、当社グループが認識する物理的リスクでは、生産事業所の洪水等の浸水被害による生産停止や復旧費用の増加等が挙げられます。その対応として、再生可能エネルギーの段階的な導入等によるスコープ1+2及びスコープ3での温室効果ガス排出量削減、防災対策の強化等に取り組んでまいります。スコープ1+2温室効果ガス排出量削減については、2050年カーボンニュートラルに向けた移行計画を策定しております。将来を見据えた長期的視野での低炭素投資や対策の意思決定にICP(インターナルカーボンプライシング)制度を活用し、さらなる省エネ・再エネ設備の導入を推進いたします。

 当社グループの機会として、このような変化に対し、「Digital & Sustainable Transformation」をキーコンセプトとした事業ポートフォリオ変革と連動させ、事業機会の創出・拡大を図ります。具体的には、サプライチェーンの温室効果ガス排出量削減に貢献するDX支援サービスの開発、リサイクル適性の向上や食品ロスの削減ができるサステナブルパッケージの充実化を図ってまいります。

◇重要リスク・重要機会の評価及び主な対応策


◇2050年カーボンニュートラルに向けた移行計画


◇ICP制度概要


※ICP(Internal Carbon Pricing):低炭素投資・対策推進に向け企業内部で独自に設定、使用する炭素価格のこと。CO2排出量1トン当たり費用を自社の基準で仮想的に費用換算し、気候変動リスクを定量化。投資判断の基準の1つとすることで、脱炭素社会に向け、低炭素設備・省エネ投資を加速させることが可能。

③リスク管理

 気候変動リスクは当社グループの「重大リスク」の1つに特定され、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」に記載のとおり総合的なリスク管理に組み込まれております。サステナ委員会への報告にあたってはTCFD WGとリスクマネジメントWGが密接に連携しております。

TCFD WGは、気候変動関連リスクについて当社グループの事業活動及び提供する製品、サービスに対する現行規制、新規規制、技術、法制、市場、評判、急激又は緩慢な物理変化といったリスクタイプから識別し、それらのリスクタイプから想定されるリスクと機会を抽出し、それぞれの財務インパクトやブランドイメージへの影響を評価しております。また、影響評価を踏まえたリスクの対応計画の策定・推進についても担当しております。気候変動リスクの評価・対応策の内容はそれぞれ、サステナ委員会に報告・検討された上で、取締役会が報告を受け、気候変動リスクの管理及び管理プロセスの監督を行っております。

(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (2)気候変動リスク」参照)

④指標と目標

 気候変動関連リスクへの対応を評価する指標として「トッパングループ2030年度中長期環境目標」における「温室効果ガス排出量削減(スコープ1+2)」を設定、気候変動関連機会獲得への対応を評価する指標として「TOPPAN Business Action for SDGs」における「温室効果ガス削減に貢献するサービス数」を設定しております。

◇トッパングループ2030年度中長期環境目標「温室効果ガス排出量削減(スコープ1+2)」


※事業のグローバル化・海外M&Aによるバウンダリー変更に対応するため、2022年度に2025年目標・2030年目標の見直しを行っております。

◇気候変動への取り組みに連動する「TOPPAN Business Action for SDGs」


(3) 人的資本・多様性

 当社グループは「人間尊重」「企業は人なり」の理念のもと、持続的成長と社会への貢献を目指し、社員と企業がともに成長できる環境、風土を整備し、新たな「知」と「技」を創出する人財を育てることを目指しております。「人財」を、会社の貴重な財産、すなわち「人的資本」と捉え、「人財」の価値を最大限に引き出すことで生まれる「人によるイノベーション」が事業成長の源泉であると考え、人事諸施策を講じ「人財」への投資を行うとともに「事業の発展を支える人財の確保」に努めております。

①ガバナンス

 人財の採用計画の策定・人財開発プログラムの開発等の人的資本・多様性に関わる施策立案は本社人事労政本部が担当しております。取締役会は、採用計画の審議・承認をはじめ「人的資本・多様性」について報告を受け、継続的に、議論・モニタリング・監督を行っております。人財開発プログラムについては、テーマごとに担当取締役が報告を受け、承認しております。

②戦略

 当社グループは、2023年度を初年度とする中期経営計画において、経営基盤の強化における重要なテーマとして「成長事業を牽引する人財の確保・活用・育成」を設定しております。中長期の重点施策である事業ポートフォリオ変革に向け、DX事業の推進・生活系事業の推進(SX事業・グローバル事業の展開)・新事業(フロンティア)の創出に注力しており、これを支える人財の確保や育成を重要な経営課題と認識し、当社グループの中長期的な価値創造に資する「人財」への投資や様々な人事諸施策を推進しております。

1)人財開発プログラムの構築

 人財の開発・育成にあたって、本社人事労政本部人財開発センターが、各部門の人財開発担当と連携して体系的な人財開発プログラムを構築しております。社員一人ひとりの業務やキャリアに合わせた能力開発を進めるため、学びのプラットフォームとして、多彩な人財開発プログラムを実施しております。また、当社独自の人財開発に関するR&D拠点である「人財開発ラボ」において、脳神経科学研究会やコンディション研究会等の複数の研究会を運用し、従業員の「自己革新」と、トッパンならではの新しい価値創造の実現を促す次世代型人財開発プログラムの実装を図っております。

a DX人財の育成

 基礎的な教育を全社員に行い、DXに関する知識を一定水準に引き上げ、デジタル時代の急速なパラダイムシフトに適応可能な人財、組織の強化を図っております。併せて、顧客を超える知識とさらなる自己研鑽が必要との認識を社員と共有し、学び続ける組織文化の醸成を図っております。また、従業員一人ひとりのキャリアプランに合わせて、最新のデジタル知識を学べるように、サブスクリプション型のデジタル教育プラットフォームも導入しております。

b SX人財の育成

 基礎的な教育を全社員に行い、持続可能な社会の実現に貢献するために主体的に行動できる人財の強化を図っております。また、社会課題の解決と経済的価値を両立した次世代イノベーション事業を実現する人財育成の取り組みとして、ソーシャルイノベーションプログラム、トッパングループ未来創発プログラム・アドバンス他、管理者を対象としたフィールドワーク等を実施しております。

c グローバル人財の育成

 年次での英語コミュニケーション能力のアセスメントを実施し、全社的な英語レベル・グローバル人財の人員数等を顕在化させ、人財投資や人財配置等に活用しております。また、外国籍社員の採用、海外グループ会社との交流を積極的に進めるとともに、海外現地法人で実務研修を行う「海外トレーニー制度」、海外駐在員候補者向けの「グローバル選抜研修」や海外ビジネススクールへの派遣等、様々な育成プログラムを展開しております。

d 次世代リーダー・新事業開発人財の育成

 次世代リーダー・新事業開発人財としての知識・スキル・マインドを醸成するプログラムとして、社長講話や討議セッションを通して、リーダーとしてのマインド・行動力を学ぶ「麿'sイノベーションプログラム」、経営リテラシーの向上を図り、現場視点で企業価値向上を実現できる人財の育成を目指す「次世代経営者育成プログラム」、新事業の創出に向けたフレームワークを体系的に学び、企業内起業家マインドを強化する「新事業開発人財育成プログラム」等、階層別に様々な人財育成プログラムを展開しております。

2)ダイバーシティ&インクルージョンの推進

 当社グループは、価値創造のための重要な要素の1つとして、違いを変革の原動力に変えていくダイバーシティ&インクルージョンを重要視し、「ダイバーシティ&インクルージョン推進方針」のもと、事業活動と一体になった取り組みを推進しております。

2019年に人事労政本部内にダイバーシティ推進室を発足させ、全体像の策定と施策の企画・立案を担い、そのもとで、各事業所のダイバーシティ推進委員が各事業所の特色にあわせて、具体的な施策を展開しております。

 社員が個々の属性や価値観の違いを認め合い尊重し、一人ひとりが能力を十分に発揮できるようにするとともに、これらの力を結集して、グループの総合力を最大限に高めることを目指しております。

a 仕事と育児の両立支援、仕事と介護の両立支援

「働く意志を支援する」という考え方に基づき、多様な状況下にある従業員が仕事と生活を両立しやすい環境づくりを進めており、育児・介護休業制度や勤務短縮制度の整備、家族手当の増額等の施策を実施しております。

b 女性活躍の推進、性の多様性に関する取り組み

 性別を問わず、誰もが健康に働き続けられ、能力に応じて活躍できることを基本的な考え方として、女性の活躍推進を進めております。働き方改革や両立支援制度等の環境整備を施策のベースとして、さらに、能力や意欲に基づき女性の管理職への登用を積極的に進めるポジティブアクションを推進しております。また性の多様性(SOGI・LGBTQ)への理解を促し、誰もが働きやすい職場環境を実現するため、理解促進のためのセミナー開催・同性パートナーや事実婚パートナー制度の導入等の取り組みを進めております。

3)従業員のWell-being

 当社グループは、経営戦略の実現に向けて、従業員が健康で、やりがいや働きがいを感じ、主体的に業務に取り組める環境を整備し、組織力の維持・向上を目指すことが重要だと考えております。

a 健康と安全

「健康経営宣言」「安全衛生・防火基本方針」に基づき、それぞれの取り組みを進めております。「健康経営宣言」では、ワーク・ライフ・バランスも含め、従業員や家族の健康づくりをより一層推進するとともに、健康関連事業を通じ、世の中全ての人々の健康づくりを支援し、社会に貢献する、という2つの軸を打ち出しております。また、「安全衛生・防火基本方針」は、災害ゼロに取り組むために、社員及び契約社員をはじめとする職場で働く全ての人々を対象に、「安全は全てに優先する」を第一義に制定された方針で、ゼロ災害を目標に取り組んでおります。

 メンタルヘルス対策についても重要視しており、会社、産業医、健康保険組合が連携し、一次予防から三次予防、さらに一人ひとりのこころとからだのコンディション向上や対話力アップ、チーム力アップといった「ゼロ次予防」を推進して、「メンタル不調者を出さない職場づくり」に取り組んでおります。

b 従業員エンゲージメント

 従業員のやりがい・働きがいの向上に向けて、従業員エンゲージメントの状況を把握するためのサーベイを2021年度から導入しております。グループ会社を含めた24社21,000名を対象に実施しており、本調査を通じて明らかになった社員からの声をもとに、経営と現場が連携し、組織課題の解決に向けたアクションを推進しております。

4)トッパン版ジョブ型人事処遇制度

 当社グループは、多彩な能力・キャリアを持つ人財の適切な処遇、従業員のスキルアップ・キャリア形成、若手の抜擢、高年齢社員の活躍、チャレンジできる環境の提供等を目指し、人事諸制度の改革を進めております。

 トッパン版ジョブ型人事処遇制度は、全職種統一の職能等級制度から職群別の要素を取り入れた等級制度に再構築し、また年功制の排除の観点から、各等級における在位年数も撤廃した制度です。社員の処遇の根幹である等級制度の改定により、多彩な能力・キャリアを持つ人財の活用が進んでおります。人事評価の指標には、新たな項目として「持続可能な社会の実現」「ダイバーシティ」「人権の尊重」「社会的価値の創造」を加え、成長や行動革新のための方向性を示すことで、組織全体のパフォーマンス向上を目指しております。

③リスク管理

「人的資本・多様性」の観点から、「事業の発展を支える人材の確保」「人権リスク」「火災及び労災」「労務問題に関するリスク」は、当社グループの「重大リスク」の1つに特定され、「重大リスク」にかかるリスク管理は、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」に記載のとおり総合的なリスク管理に組み込まれております。当リスクについては人事労政本部が主管部門として、法務部門・製造部門等の関係部門と連携し、対応を行っております。これらのリスクへの対応状況については、定期的に、リスク担当取締役から取締役会が報告を受け、管理を行っております。

(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (6)事業の発展を支える人材の確保、(20)人権リスク、(21)火災及び労働災害、(22)労務問題に関するリスク(労働法規違反、労務トラブル等)」参照)

④指標と目標

 ダイバーシティ&インクルージョンを評価する指標として、管理職に占める女性管理職比率を設定しております。従業員のWell-beingを評価する指標として、エンゲージメントスコア、健康リスク値、コンディション危険判定を設定しております。


(4) 人権

 当社グループは、事業の土台となる基本精神は「人間尊重」であると考え、「TOPPAN VISION 21」における社員の考え方や行動のあり方を定めた「行動指針」においても、「人権を尊重する」と明記しております。また、2006年から国連「グローバル・コンパクト」に参加し、人権と労働に関わる6つの原則を支持しております。

2021年に事業活動全般において基本的人権を尊重し「社会的価値創造企業」としてさらに進化していくため、「トッパングループ人権方針」を策定し、人権に対しての取り組みを強化しております。

①ガバナンス

「トッパングループ人権方針」において、当社グループの人権尊重の取り組みについては、取締役会が監督し、人事労政本部の担当責任者が実施の責任を担うことを表明しております。

 取締役会は、サステナ委員会に人権尊重の取り組みを担当させ、その下部組織であるコーポレートESGプロジェクトにおける人権WG(人事労政本部が主管、担当取締役が監督)が取り組みを主導し、人事労政本部、法務本部、製造統括本部等の部門が連携して、当社グループ全体で人権尊重の取り組みを推進しております。

 取締役会は、年に一度、人権尊重に係る重要案件・課題について、サステナ委員会で検討・審議された活動内容について経営会議を通じて報告を受けており、取り組みの目標設定及び進捗を議論・モニタリング・監督しております。人権課題に関する事象(労働災害・火災、ハラスメントの発生等)が発生した場合は、社内関係部門による対応策を含め、取締役会が報告を受け、対応について議論・決議を行っております。

②リスク管理

 人権リスクは当社グループの「重大リスク」の1つに特定され、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」に記載のとおり総合的なリスク管理に組み込まれております。サステナ委員会への報告にあたっては人権WGとリスクマネジメントWGが密接に連携しております。

 人権WGは、人権リスクについての識別・評価、その影響評価を踏まえた対応計画の策定・推進を担当しております。人権リスクの評価・対応策の内容はそれぞれ、サステナ委員会に報告・検討された上で、取締役会が報告を受け、人権リスクの管理及び管理プロセスの監督を行っております。

(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (20)人権リスク」参照)

③施策

1)人権デューデリジェンスプロセス

 当社グループは、「ビジネスと人権に関わる指導原則」を支持するとともに、人権デューデリジェンスの重要性を認識しております。リスク評価に当たっては、「国際人権章典」、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」、賃金や労働時間等労働者の人権に関する条約等の人権に関わる国際規範を支持し、その観点での人権デューデリジェンス体制を構築しております。

 当社グループは、人権リスクの発生が、レピュテーションリスクや法務リスク、財務リスク等の経営に関するリスクにも繋がる可能性があることを認識し、当社だけでなく国内外のグループ会社やステークホルダーへの人権リスク評価を実施し、軽減・是正に向けた取り組みを行い、人権デューデリジェンスプロセスのPDCAサイクルを回しております。

a 負の影響の特定

 人権デューデリジェンスプロセスの第一歩として、負の影響の特定を実施しております。当社事業の特性や同業者の動向、国際的な人権基準をもとに、「人権リスク重要度評価」を行い、人権課題を整理・評価しました。その結果、当社の人権リスクを「強制労働・人身取引」「差別」「非人道的な扱い」「プライバシーに対する権利」「グループ全体の人権ガバナンス」と特定しております。加えて、当社の国内外グループ会社に対して、人権リスク調査として国内1社、海外1社のヒアリング調査を実施し、人権リスク特定の精度向上を図っております。今後も継続的に国内外グループ会社に対し、現地調査を含めた人権リスク調査を実施し、負の影響の特定に向けた取り組みを推進いたします。

b 負の影響の防止・軽減

 特定された負の影響の防止・軽減に向け、当社グループにおける人権リスク調査の全体周知やベストプラクティスの共有により、人権尊重の取り組みに対する意識の醸成・浸透を図っております。

 人権尊重の基本的な考え方の理解に加え、上記調査で特定された個別課題(ハラスメント、ダイバーシティ&インクルージョン、労働安全衛生等)に対する理解を深める全従業員を対象とした研修を毎年実施し、人権尊重の取り組みの具体的対応についても周知徹底をしていきます。

2)労働者の人権

 労働における人権については、当社と凸版印刷労働組合が、労使関係の安定と労働条件の維持改善、企業の平和を確保するために労働協約を締結し、労使の基本的な考え方、組合活動や労使交渉のルール、賃金・労働時間等の労働条件を定めております。凸版印刷労働組合は、当社と当社連結子会社8社の組合員で組織されており、労働協約の債務的部分(組合活動や労使交渉のルール)は、9社共通の内容で締結しております。

 適正な賃金の支払いについては、当社グループでは、各国の最低賃金を定めた法令に従い、現地の生活物価を踏まえ、従業員に適正な給与を支払うことを遵守しております。加えて、金銭的報酬はもちろん、法令で定める福利厚生を提供することに加え、働きがいの向上や自己実現・キャリア開発に対する会社の支援・サポート等の非金銭的報酬についても配慮しております。

(5) サプライチェーン

 当社グループは、企業が社会的責任を果たし、持続可能な社会の実現に貢献するためには、サプライチェーン全体でCSR調達に取り組むことが重要であると考え、サプライヤーや協力会社の皆さまとともに「CSR調達ガイドライン」に沿った活動を進めてまいりました。近年、企業の人権課題、労働安全衛生、環境等の取り組みについて、社会的な関心や要求が高まり、サプライチェーンマネジメントとして、より具体的かつ幅広い対応が求められていると認識し、2022年1月に「トッパングループCSR調達ガイドライン」(2007年制定、2014年に第2版に改訂)の内容を改訂し、その名称を「トッパングループ サステナブル調達ガイドライン」に変更しました。サプライチェーン全体に本ガイドラインを周知し、運用、監査、是正するサイクルを回し、サプライヤーや協力会社の皆さまと協力して持続可能な調達活動をさらに推進してまいります。

①ガバナンス

 取締役会は、サステナ委員会にサステナブル調達の取り組みを担当させ、その下部組織であるコーポレートESGプロジェクトにおけるサプライチェーンWG(製造統括本部が主管、担当取締役が監督)がグループ全体で進める体制を構築しております。取り組みは製造統括本部、事業部門管理部門が中心となり、当社グループ全体の関係部門と連携して行っております。

 取締役会は、サステナブル調達に係る重要案件・課題について、サステナ委員会で検討・審議された活動内容について経営会議を通じて報告を受けており、取り組みの目標設定及び進捗を議論・モニタリング・監督しております。サステナブル調達課題に関する事象が発生した場合は、社内関係部門による対応策を含め、取締役会が報告を受け、対応について議論・決議を行っております。

②リスク管理

 調達に関するリスクは当社グループの「重大リスク」の1つに特定され、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」に記載のとおり総合的なリスク管理に組み込まれております。サステナ委員会への報告にあたってはサプライチェーンWGとリスクマネジメントWGが密接に連携しております。

 サプライチェーンWGは、調達に関するリスクについての識別・評価、その影響評価を踏まえた対応計画の策定・推進を担当しております。調達に関するリスクの評価・対応策の内容はそれぞれ、サステナ委員会に報告・検討された上で、取締役会が報告を受け、調達に関するリスクの管理及び管理プロセスの監督を行っております。

(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (17)調達におけるリスク」参照)

③施策

 サステナブル調達ガイドラインをサプライチェーン全体に周知し、その運用及び監査、是正するサイクルを回すことで、サプライヤーや協力会社と協働し、サステナブル調達の取り組みを加速し、サプライチェーンの質的向上を図ってまいります。

2022年度は、サプライヤー・協力会社に対してサステナビリティに関わる国別リスク・業種別リスク・アンケート調査等によるリスク調査を行い、分析を踏まえ、リスクの軽減・是正に向けた取り組みを協働で行うデューデリジェンスプロセスのPDCAサイクルをスタートさせております。その他、「トッパングループ サステナブル調達ガイドライン」説明会の実施、サステナブル調達基準の自己評価アンケート、「トッパングループ サステナブル調達ガイドライン」の協力同意締結、事業継続に関わる取り組み状況の確認等を実施しております。

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