TIS 【東証プライム:3626】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
当社グループでは、新規事業創出および中長期の事業成長、競争力強化を目指し、継続的に研究開発活動に取り組んでいます。
当連結会計年度の研究開発に関する費用の総額は、2,958百万円です。当社グループの研究開発は各セグメントに共通している取組が多く、各セグメントに区分して記載しておりません。
中東や北朝鮮、中国など、世の中の情勢が不安定な中、また大規模地震や異常気象などによる環境問題など日々深刻になっている中、生成AIという言葉が、SNS上や新聞紙面上で見ない日はなく、AIなどの先端技術が着実に普段の生活の中に溶け込んできております。また、次世代計算機として、量子コンピュータの技術進化も顕著となってきており、2024年は量子コンピュータの性能向上が加速する年になると言われております。量子コンピュータの計算を担う「物理量子ビット」の増加や計算エラーを低減・修正する技術が日々報告されております。米国IBMやGoogleといった業界の大手企業だけでなく、欧米の量子スタートアップなども技術進化に大きく貢献する見通しとされています。このように、先端技術を用いたソリューションが求められる中、経営環境や技術競争環境は劇的に変化しています。
弊社では、社会ニーズをとらえ、社会課題解決につながるテクノロジーをビジネスに取り入れていくことが重要と考えており、最先端技術トレンドを幅広く分析し、最先端技術を応用するために、次に掲げる3つの領域の研究開発に注力しております。
(1) 近未来の事業の核となるコア技術を中心とした研究開発
(2) 持続可能な社会の実現や社会課題の解決に貢献する要素技術の研究開発
(3) 先進的なソフトウエア生産技術
(1) 近未来の事業の核となるコア技術を中心とした研究開発
数多くある先端技術の中から、Gartnerなどの調査を基に研究テーマを集中・選択し、2021年度より進めておりますコア技術戦略として、「XR*1研究」、「Multi-Level Edge Computing研究」、「量子及び古典コンピュータによる高性能計算の研究」を引き続き重点テーマとして研究開発を行っております。昨年まで行っていた「Data Labeling for AI」は、生成AIの研究開発として、短期の研究開発として継続して実施していきます。これらの要素技術を国内外の大学や研究機関との産学連携を活用して、今後の新規事業などにおける差別化技術として研究開発を行っております。
「XR研究」では、メタバース空間を新しい経済空間ととらえ、この空間においてそれぞれのユーザが様々なコミュニケーションを行えるための要素技術について、東京大学および東京都市大学と共同研究を進めております。この共同研究などで得られた知見を用いて、実写観光メタバースアプリ「BURALIT」および決済完結型バーチャルショップを構築できる「XR Pay」をリリースしております。また、2023年より電子情報技術産業協会におけるメタバース対応Gにおいて、主査として他社と連携してこの分野を活性化する活動しております。
「Multi-Level Edge Computing研究」では、将来の経済空間であるメタバース空間において相互的にコミュニケーションを行うことを考え、多人数がネットワーク上で画像などの大容量の通信が必要となってくることが想定されます。その際に必要な要素技術について、2021年より、電気通信大学において複数の研究分野の研究者とともに課題解決型共同研究を行っております。その結果、多人数大容量のネットワークインフラを作成することに成功し、さらに実運用を考慮して、低コストでのインフラについても考案しました。また、経済産業省の国際標準開発「ウェアブルセンサ信号のコンテナフォーマットに関する国際標準化」に参画し、広島市立大学との産学連携により、次世代のIoTシステムにおける情報フォーマットを定義することで、ヘルスケア分野などにおいて貢献していきます。
「量子及び古典コンピュータによる高性能計算の研究」では、近い将来の実用化に向けて、量子及び古典コンピューティング技術について、大阪大学、九州大学および産総研と共同研究を行っております。NISQ*2と呼ばれるエラーの多い中規模な量子コンピュータにおけるエラー抑制技術や、限定的な量子ビットの高効率な利用手法において成果を上げており、国際学会等で報告をしております。今後は、Early-FTQC*3に向けたアルゴリズム開発を検討しております。また、量子コンピュータを扱える人材の育成についても引き続き行っており、QuantAttack(クアントアタック)という量子コンピュータの理論を自然に学ぶことができるゲームなどを開発し、無料で公開しております。
(2) 持続可能な社会の実現や社会課題の解決に貢献する要素技術の研究開発
当社グループでは、よりよい社会を実現していく「社会DX」、お客様の事業を革新していく「事業DX」そしてTISインテックグループ自身を進化させていく「内部DX」の3つの領域のDXと捉えて、総合的な視点で取り組みを進めております。4つの社会課題の解決、すなわち「金融包摂」「都市への集中・地方の衰退」「低脱炭素化」「健康問題」の社会課題の解決を重点に、取り組む事業分野を、金融、製造、物流、電子政府、エネルギー、医療・ヘルスケアなどとして、新たな価値創造を目指しております。2023年度は、TISの経費精算クラウドサービス「Spendia」のチェック機能拡張による不正検知・ガバナンス強化を実現しております。
金融、電子政府分野等では、マイナンバー本人確認サービスを開始しており、金融包摂およびマイナンバー活用振興に貢献しております。金融包摂を念頭に、それらを活用した諸手続きの電子効率化などを通して生活者の利便性向上に貢献してゆきます。本サービスは、蒲郡市で採用されております。
エネルギー分野では、2022年度に取り組んだ地域の森林資源の循環利用を活性化するプログラム「WOOD DREAM DECK」のアウトプットとしてサウナ「ocomoriサウナ」を完成させ、Web3.0*4技術やNFT*5を活用して地域の森林資源を活かした経済循環と環境保全を両立するエコシステムを支えております。
医療・ヘルスケア分野では、地域医療情報連携サービス「ヘルスケアパスポート」がデジタル田園都市国家構想への参画を通して、社会実装に向けての活動を推進しています。また、当社グループが協賛する大阪・関西万博「大阪ヘルスケアパビリオン」では閉幕後のソフトレガシービジネスを社会実装と捉え検討を進めております。
(3) 先進的なソフトウエア生産技術
ソフトウエア生産技術については、取引先企業や自社サービスにおけるビジネス変革スピードへの対応力を強化するため、生成AI*6、アジャイル開発*7、UI/UXデザイン、モバイルアプリケーションなどの基本的な技術獲得と開発生産性の向上につながる技術開発をしております。当連結会計年度は、生成AIを社内の様々な業務で活用できる環境整備を行うとともに、再利用可能なプロンプト*8を含む生成AI活用ガイドを整備し、グループ会社を含む1,000名以上が参加する生成AI活用コミュニティにて展開するなど、活用の普及に取り組みました。ソフトウエア開発の領域においてもGitHub Copilot*9の社内利用を加速するためのルール整備、育成活動などを行いました。
また、昨年度に引き続き、モバイルアプリケーション開発のノウハウ整備やエンジニア育成活動、新規事業開発におけるエンジニアリングの最適化のためのガイド整備実践に注力しました。
*1 XR(Extended Reality)
VR(Virtual Reality/仮想現実)、AR(Augmented Reality/拡張現実)、MR(Mixed Reality/複合現実)などのさまざまな仮想空間技術の総称
*2 NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer device)
エラー訂正機能のない、ノイジーな中規模量子コンピュータのこと
*3 Early-FTQC(Early Fault-Tolerant Quantum Computing)
エラー訂正可能な誤り耐性量子コンピュータへ移行する初期段階の量子コンピュータのこと
*4 Web3.0
ブロックチェーン技術を活用し、デジタルデータを分散管理することで、特定の管理者を介さずデータやコンテンツなどのやり取りを可能にする、ボーダレスなサービスを展開できる分散型インターネットの概念
*5 NFT(Non-Fungible Token)
暗号資産(仮想通貨)と同じく、ブロックチェーン上で発行および取引される、偽造不可の鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ
*6 生成AI
生成AIは、人工知能技術を用いてテキスト、画像、音楽など新しいコンテンツを自動生成するシステムである。大量のデータから学習し、特定の指示に基づいてユニークなアウトプットを作成することが可能であり、ビジネスシーンにおいては、広告コンテンツの生成、ユーザーインターフェースの改善、顧客サポートの自動化など、多岐にわたって活用されている。
*7 アジャイル開発
システムやソフトウエア開発におけるプロジェクト開発手法の一つで、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進める。従来の開発手法に比べて開発期間が短縮されるため、アジャイル(素早い)と呼ばれる。
*8 プロンプト
AIに対して行動や作成を指示するための命令や質問のこと。適切なプロンプトを用いることで、AIの能力を最大限引き出し、高品質な内容の生成が期待できる。
*9 GitHub Copilot
生成AI技術を活用したプログラミングに関わる様々な作業を支援するツール。
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