企業兼大株主SOMPOホールディングス東証プライム:8630】「保険業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。また、文中の当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(以下「KPI」といいます。)の各数値については、本有価証券報告書提出日現在において、予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

<当社および当社の連結子会社に対する行政処分への対応等>

 当社および当社の連結子会社である損害保険ジャパン株式会社(以下「損保ジャパン」といいます。)は、ビッグモーター社(株式会社ビッグモーター、株式会社ビーエムホールディングス、株式会社ビーエムハナテンの3社をいいます。)による自動車保険金不正請求等への対応に関する問題により、2024年1月25日に金融庁から、それぞれ保険業法第271条の29第1項、保険業法第132条第1項に基づく業務改善命令を受け、その中で、適切な企業文化の醸成に向けた取組みが不十分である等の指摘を受けました。これに基づき、このような事態を二度と起こすことがないようコンプライアンス・お客さま保護を重視する健全な企業風土の醸成などの再発防止策を掲げた業務改善計画を2024年3月15日に金融庁に提出しました。また、損保ジャパンは、独占禁止法に抵触すると考えられる不適切な保険料調整行為等の問題により、2023年12月19日に公正取引委員会の立入検査を受け、現在も公正取引委員会による審査が継続しているほか、2023年12月26日には金融庁から、保険業法第132条第1項に基づく業務改善命令を受け、その中で、独占禁止法等に抵触する行為もしくは法令の趣旨に照らして不適切な行為を行うリスクが発現しやすい環境であった等の指摘を受けました。これに基づき、適正な競争実施のための環境整備などの再発防止策を掲げた業務改善計画を2024年2月29日に金融庁に提出しました。

 当社および損保ジャパンは、2024年2月29日に公表しましたとおり、ビッグモーター社による自動車保険金不正請求等への対応に関する問題および不適切な保険料調整行為等の問題に関して、関係する役員の責任を重く受け止め、役員の処分を行い、経営責任の所在を明確化しました。

 この度の事態を厳粛に受け止め、未来に向けて「新しいSOMPO」を創っていくという強い意志をもち、全社を挙げて業務改善計画の着実な実行・再発防止に取り組み、お客さまおよび社会からの信頼回復に努める所存です。あわせて、グループ横断で企業文化の変革・ブランド回復・コンプライアンス推進・品質管理などを強化することで、「法令等遵守」、「お客さま本位の業務運営」および「社会からの視点」に立脚して、業務運営の透明性・公正性・適切性を確保してまいります。

 当社および損保ジャパンは、業務改善命令における指摘事項および社外調査委員会からの提言事項等を踏まえ、10年後、またその先もお客さまに必要とされる会社であり続けるために、業務改善計画において掲げた再発防止策(経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化、コンプライアンス・お客さま保護を徹底するための態勢の確立、コンプライアンス・お客さま保護を重視する健全な企業風土の醸成、適切な保険金等支払管理態勢の確立など)を着実に実行してまいります。

 

<当社の再発防止策(概要)>

1.経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化

 国内主要事業会社の共通方針として、執行のトップが取締役会議長を担う形態を原則見直し、当社役員の国内主要事業会社への取締役派遣を増強することで、執行との分離を進め監督の態勢を強化してまいります。また、コンプライアンス担当役員および内部監査担当役員の設置や専門人材育成の強化等の人的資源投資、国内主要事業会社における機関設計の見直しなどを通じて、各社の取締役会における監督状況と内部統制の機能状況のモニタリングを強化してまいります。

2.子会社である保険会社の業務の健全かつ適切な運営を確保するための態勢の構築

(1)子会社の重要施策に関するモニタリング態勢

 子会社の重要施策等に対する事前のリスクアセスメントおよび事後のモニタリングを徹底してまいります。また、グループCROおよびコンプライアンス担当役員が損保ジャパンの内部統制の十分性・実効性について監督・モニタリングを行い、監査委員会に四半期毎に報告してまいります。特に、再発防止策については、重点的に監督・モニタリングを行ってまいります。

 

(2)情報連携・報告態勢の整備

 子会社の重要事項が漏れなく当社へ報告されるためのルールを再整備するとともに、経営状況を常時把握するための当社と損保ジャパンの役職員の相互兼務等の実施や形式にこだわらないコミュニケーションの強化など、持株会社である当社が能動的に子会社の重要情報を入手できる態勢整備を行ってまいります。

 

3.子会社である保険会社のコンプライアンス・お客さま保護を重視する健全な企業風土の醸成

 グループ企業理念体系の見直しを行い、グループ全体への浸透および実践を徹底することで、社員が声をあげられる、多様な意見が受け入れられる企業文化を目指してまいります。

 

<損保ジャパンの再発防止策(概要)>

1.経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化

(1)社外取締役の設置および持株会社である当社による経営管理態勢の強化

 2024年4月1日付けで監査等委員会設置会社へと移行し、社外取締役を設置しました。これにより、取締役会における公正性を高めるとともに、執行部門に対する取締役会の監督機能を強化してまいります。また、取締役会の構成について、持株会社兼任取締役と損保ジャパンの業務執行取締役を同数程度とすることで、持株会社である当社による監督機能を強化してまいります。これらを通じて、監督と執行の分離を図り、取締役会の監督機能を強化してまいります。

 

(2)第2線・第3線担当役員の機能強化

 適切な法令・コンプライアンス遵守態勢を構築し、コンプライアンスリスクを最小化することをミッションとするCCoO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー/コンプライアンス領域担当役員)およびお客さま視点での業務改善を推進する体制を構築し、お客さま評価の向上を実現することをミッションとするCQO(チーフ・クオリティ・オフィサー/品質管理担当役員)を新設しました。また、内部監査部門を社長直轄としました。これらを通じて、第2線(コンプライアンス部門・リスク管理部門等)・第3線(内部監査部門)によるけん制機能を強化してまいります。

 

2.コンプライアンス・お客さま保護を徹底するための態勢の確立

 第1線(営業部門・保険金サービス部門等)・第2線の役割分担の明確化を図るとともに、第2線への人材投入・専門性向上などによるリスク管理態勢・内部統制の強化を実施することで、けん制機能を強化し、コンプライアンス・お客さま保護の徹底に努めてまいります。また、内部監査部門と監査等委員会との連携を強化するとともに、監査のDXなどによる内部監査部門の態勢強化を図ってまいります。

 

3.コンプライアンス・お客さま保護を重視する健全な企業風土の醸成

(1)カルチャー変革担当役員・カルチャー変革推進部の設置

 CCuO(チーフ・カルチャー・オフィサー/カルチャー変革担当役員)を新設するとともに、実行組織としての専門部「カルチャー変革推進部」を新設し、お客さま視点の徹底、風通しの良い企業風土への変革の実現を目指してまいります。

 

(2)お客さま保護とコンプライアンスを重視したカルチャーの醸成、役職員の浸透に向けた取組み

 経営陣がコンプライアンス・法令遵守に関するコミットメントを表明し、タウンホールミーティング等を通じ、直接、繰り返し職員に伝達してまいります。また、お客さまからのご指摘や業務改善命令の内容を年に一度振り返る機会を会社として設けることで、今回の問題を風化させることのないよう取り組んでまいります。営業部門においても、品質やお客さまの視点を重視するよう営業推進態勢や営業目標の設定を見直すことで、コンプライアンス・お客さま保護を重視する健全な企業風土を醸成してまいります。

■損保ジャパンにおける自動車保険金不正請求等への対応に係る問題固有

1.適切な保険金等支払管理態勢の確立

(1)不正請求を防止するための態勢整備

 事故時の損害の簡易調査を廃止するとともに、技術アジャスターを増強し損害調査業務への関与を強めてまいります。また、保険金支払完了後の事後検証などのモニタリング機能を強化し、適正な損害調査の推進態勢を整備してまいります。技術アジャスター等に対する教育・研修体制を強化するとともに、不正請求疑義事案を専門的に調査する対策部署を設置することで、不正請求に係る予兆を早期に把握する態勢を整備してまいります。

 

(2)公正かつ的確な審査体制・手続きの確立

 保険金サービス部門の担当役員および人員を増員するとともに、保険金サービス部門の人材育成専門組織を新設することで、体制を強化し、営業部門からの独立性を確保してまいります。また、公正かつ的確な保険金の審査体制の確立のため、保険金支払のルールを整備するとともにモニタリング・事後検証を強化してまいります。

 

2.実効性のある代理店管理(保険募集管理)態勢の確立

 適正な保険募集態勢を確保するため、代理店手数料体系においてお客さま視点での「品質」を重視するとともに、苦情分析や品質改善事案への対応強化などモニタリング態勢を整備し、実効性のある代理店管理態勢および保険募集管理態勢の確立に取り組んでまいります。

 

■損保ジャパンにおける保険料調整行為等に係る問題固有

適正な競争実施のための環境整備

 他の損害保険会社等との接触禁止ルールの整備や共同保険に関わる保険引受ルールの整備などに取り組むとともに、政策株式の削減ペースを加速し、2030年度末までに政策株式保有残高ゼロを目指してまいります。これにより、適正な競争実施のための環境を整備するとともに、提案する商品の品質等によってお客さまから選んでいただける態勢を構築してまいります。また、保険契約および取引シェア獲得のためにこれまで行ってきた本業支援のあり方の見直しにも取り組んでまいります。

(1) 前中期経営計画(2021~2023年度)の総括

 前中期経営計画(2021~2023年度)においては、「規模と分散の追求」、「新たな顧客価値の創造」、「働き方改革」の3つの基本戦略を柱とし、グループのトランスフォーメーションと事業ポートフォリオ変革に取り組んでまいりました。

 その結果、海外保険事業がグループの業績を大きく牽引したことなどにより、2023年度の修正連結利益は過去最高となる2,910億円、修正連結ROEは9.2%となりました。

 一方、上記のとおり、当社および損保ジャパンは自動車保険金不正請求等への対応に関して、また損保ジャパンは不適切な保険料調整行為等の問題に関して、行政処分(業務改善命令)を受けました。当社および損保ジャパンは、金融庁に提出した業務改善計画に基づき、グループ一丸となって再発防止に取り組むとともに、お客さま保護を再徹底し、全てのステークホルダーからの信頼回復に努めております。

(2)SOMPOグループが目指す姿

 国内外の金融政策や為替、グローバルな保険市場の動向の不確実性は増しており、国内では当面、インフレが企業経営に影響を与え続ける可能性もあります。また、中長期では少子高齢化の進行による人口動態の変化がもたらす国内保険市場の縮小、気候変動による世界的な自然災害の増加、地政学リスクやモビリティ技術の進展なども大きなパラダイムシフトの要因となり得ます。さらには、生成AIや消費者行動の変化により、ビジネスモデルの転換が必要となる可能性も考えられます。

 こうした環境下において、当社グループは、130年を超える歴史で培った事業の基盤や専門性を背景に、お客さまに安心・安全・健康に資するサービスを提供できるグループとして、強みを最大限に活かした戦略遂行を目指してまいります。

 <SOMPOグループが目指す姿>

①損害保険事業は、国内・海外を問わず、お客さまに安心・安全を届け続けるために、レジリエンスを高めることを最重要と位置付けます。国内損害保険事業と海外保険事業が最適な融合を果たして、市場規模やお客さま・リスクの変化に対して柔軟に対応できる姿を目指してまいります。

②ウェルビーイング事業は、保険や介護などグループの各事業をつなぎ、健康・介護・老後資金に関わる社会課題への様々なソリューションがつながっているプラットフォームを構築することにより、お客さまにシームレスにサービスを提供できる姿を目指してまいります。

(3)新中期経営計画(2024~2026年度)の取組方針

2024~2026年度の新中期経営計画においては、「SOMPOグループが目指す姿」に向けて、「レジリエンスのさらなる向上」と「つなぐ・つながる」をゴールと位置付けております。

 グループとしては、信頼回復とレジリエンス向上に取り組む国内損害保険事業、グループの規模の拡大と成長を牽引する海外保険事業、中長期の成長の牽引役を担うウェルビーイング事業(※)という3つの事業領域を中心に注力してまいります。そして、その結果として、3年後には修正連結ROE13~15%、修正EPS成長率12%超の実現を目指してまいります。

 また、グループ共通戦略として、「人材戦略(含むコーポレートカルチャー変革)」「財務戦略(含む資本循環経営)」「データ・デジタル戦略」にも取り組んでまいります。

 各事業においては、まず国内損害保険事業において、業務改善計画を着実に遂行しながら、収益基盤と事業基盤の再構築にフォーカスしてまいります。保険本業の品質を高めながら、ポートフォリオ変革や、保険金サービス部門と営業部門の変革等に取り組むプロジェクト「SJ-R」を基軸として、態勢整備を進めてまいります。

 次に、海外保険事業においては、地域・事業領域の拡大を図り、資産運用利益も高めながら、安定した利益成長を目指してまいります。また、M&Aの案件発掘も引き続き規律を持って進めてまいります。

 ウェルビーイング事業では、国内生命保険事業においては、保険と健康サービスの2軸で「ひまわりファン」の拡大を、介護事業においては、オペレーター事業の更なる品質と効率性向上、そして介護事業者向けデータ活用サービス「egaku」を含むプラットフォーム展開を、引き続き進めてまいります。さらに、M&Aの実行も検討しながら、健康寿命の延伸に向けたさまざまなソリューションを提供することで、一人あたりLTV(Life Time Value)を高め、当社グループのPER向上にもつなげてまいります。

 当社グループは、自らが果たすべき役割を進化させ、企業価値を向上させるとともに、多様なステークホルダーに真摯に向き合いながら、これからも様々な課題解決に取り組んでまいります。

※国内生命保険事業および介護事業の顧客基盤や強みを生かして、健康寿命の延伸に向けたさまざまなソリューションを提供する事業

◆グループガバナンス体制

 当社は、指名委員会等設置会社として社外取締役を中心に構成する取締役会がグループの執行状況を監督する体制としており、指名委員会、監査委員会および報酬委員会の3つの法定委員会では、いずれも社外取締役が委員長を務めております。2024年4月からは取締役会の議長も社外取締役から選定することで、客観性と公正性を一層強化しております。また、当社の執行役、執行役員の一部は主要子会社の取締役を兼任しており、事業会社の課題等を各社の取締役会を通じて直接把握することで、経営管理の実効性を高める体制としております。グループ各社においても取締役会が監督機能を十分に果たせるよう、重要な執行情報について、タイムリーかつ能動的な報告が行われる仕組みを講じてまいります。

 業務執行体制においては、グループCEOの全体統括のもと、執行権限と責任を明確化しております。事業区分ごとに選定される事業CEO(2024年4月1日付けで事業オーナーから名称変更)が一定の権限委譲を受けて事業の成長を牽引していく一方、グループ共通施策等は専門領域ごとに選定されるグループ・チーフオフィサーまたは領域担当役員が推進を担ってまいります。当社は2024年4月から、グループの内部統制の実効性を高めるコンプライアンス担当役員と、業務改善計画の進捗状況を含むグループの内部監査を統括する内部監査担当役員を新たに選任しております。

 新中期経営計画期間中、当社は、このようなガバナンス体制のもとで、業務改善計画の着実な実行とグループの信頼回復に向けたガバナンスの実効性向上を最優先に、事業会社における自律的なPDCAサイクルの再構築や、持株会社である当社による子会社経営管理の強化を進め、執行と監督の分離と透明性ある意思決定プロセスを確保するための態勢を整備し、健全な持続的成長を実現するための強固な土台を築いてまいります。

<新中期経営計画の全体像>


◆グループ経営数値目標

 2024年度は、損保ジャパンにおける自動車保険の保険金支払単価上昇や「SJ-R」の取組みへの先行投資などの影響により減益予想となりますが、国内損害保険事業の事業基盤・収益基盤変革、海外保険事業の規律ある拡大、ウェルビーイング事業の成長加速などにより利益成長を実現するとともに、資本を適切にコントロールすることで、ROEとEPSの向上を目指してまいります。

項目

前中期経営計画

新中期経営計画

2023年度

(実績)

2024年度

(予想)

2026年度

(目標)

修正連結ROE

9.2%

7%程度

13~15%

修正EPS成長率

年率+12%超

修正連結利益

2,910億円

2,550億円

 

国内損害保険事業

723億円

150億円

 

海外保険事業

1,631億円

1,900億円

 

国内生命保険事業

418億円

410億円

 

介護事業

88億円

60億円

※国際財務報告基準(IFRS)適用後の基準(案)に基づく

(注)2024年度の事業部門別修正利益、修正連結利益、修正連結純資産、修正連結ROEおよびリスク分散の計算方法は、以下のとおりであります。


※1 事業部門別修正利益は、一過性の損益またはグループ会社配当等の特殊要因を除く。

※2 一過性の変動要素を除いたOperating Income(=当期純利益-為替損益-有価証券売却・評価損益-減損損失など)で定義

※3 国内生命保険事業修正純資産=国内生命保険事業純資産(日本会計基準)+危険準備金(税引後)+価格変動準備金(税引後)+責任準備金補正(税引後)+未償却新契約費(税引後)

(4) 報告セグメントごとの経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき課題等

① 国内損害保険事業
ア.前中期経営計画(2021~2023年度)の総括

◆主なKPIの達成状況

国内損害保険事業では実質的な収益力を示すため、「修正利益」を主なKPIとしておりました。

前中期経営計画の最終年度である2023年度の修正利益は、損保ジャパンにおける火災保険の収支改善などにより、前年度から403億円増加し723億円となったものの、自然災害や大口事故、自動車保険の発生保険金の増加の影響が大きく、目標を下回る結果となりました。

一方、政策保有株式の削減については、前中期経営計画期間における累計1,500億円の削減計画に対して、計画を上回る1,956億円(※1)の削減を行いました。


◆前中期経営計画の成果

 前中期経営計画期間中は、火災保険・自動車保険を中心としたプライシングやアンダーライティングの強化に加え、生産性向上などの収益構造改革に努めてまいりました。この収益構造改革による利益改善効果は着実に発現しておりましたが、インフレによる保険金支払単価の上昇や想定を超える自動車事故発生率の悪化等のマイナス影響が収益拡大の重石となりました。

 また、損保ジャパンは、2023年度に自動車保険金不正請求等への対応および不適切な保険料調整行為等の問題に関して、金融庁から行政処分を受け、業務改善計画に基づくこれらの問題の再発防止策の実行と抜本的な事業モデルの変革に着手しております。

イ.新中期経営計画(2024~2026年度)

◆新中期経営計画の取組方針

 国内損害保険事業は、予測の難しい環境変化の中においても、SOMPOグループの中核会社として、グループが目指す「“安心・安全・健康”であふれる未来へ」を実現するため、信頼回復とレジリエンスの向上に取り組み、グループの成長に寄与してまいります。

 損保ジャパンは、2023年度に発生した上記の問題を受けて、「お客さまに、社会に、まっすぐ。」というスローガンのもとでカルチャー変革に取り組み、「新しい損保ジャパン」を目指してまいります。

<新しい損保ジャパン>

・ すべてをお客さまの立場で考える会社

・ 正しいことを正しく実践し、すべてのステークホルダーの期待に応える会社

・ お客さまに品質で選ばれ、持続的に成長する会社

 新中期経営計画では、収益基盤の変革と事業基盤の変革を両輪とし、持続可能な成長を実現するための戦略「SJ-R」に全力で取り組むことで、お客さま・社会とのつながりを強固なものにしていくとともに、高い独自性とレジリエンスを誇りとする「新しい損保ジャパン」を実現してまいります。

◆主なKPI

 国内損害保険事業の主なKPIは以下のとおりであります。

 ポートフォリオ変革を始めとする「SJ-R」による利益回復でROEの分子を改善し、政策株式削減で分母となるリスク量の圧縮を図ることで、2026年度時点で事業別ROE8%以上を目指してまいります。


② 海外保険事業

ア.前中期経営計画(2021~2023年度)の総括

◆主なKPIの達成状況

海外保険事業では、実質的な収益力を示すため、「修正利益」を主なKPIとしておりました。

2021年~2023年の3年間で修正利益は年平均76%で成長し、2023年は目標1,000億円以上に対して1,631億円と大きく超過しました。


◆前中期経営計画の成果

 海外保険事業はSompo International Holdings Ltd.を中心に米国、英国、欧州大陸、中南米、中東、アジア等で事業を展開し、高品質な保険および保険関連サービスの提供を通じて、事業を拡大させてまいりました。

 コマーシャル分野では、北米、グローバルマーケット、農業、再保険の各事業セグメントで成長し、コンシューマー分野ではブラジルにおける健康保険事業およびその他のコンシューマー事業の売却など、ポートフォリオの最適化を図りました。

イ.新中期経営計画(2024~2026年度)

◆新中期経営計画の取組方針

 前中期経営計画での取組みによって、新中期経営計画に向けての基盤が着実に整備されました。新中期経営計画期間中は、保険金コストの上昇に沿った保険料レート環境、金利環境による追い風、経済インフレの緩和など、事業環境の変動が見込まれます。そのような環境下で、保険引受規律を維持し、アンダーライティングサイクルへ適切に対応してまいります。また、将来へ向けた投資によって顧客基盤の拡大を継続し、種目分散、地理的分散を通じてグループに貢献し、株主価値の最大化を目指してまいります。

◆主なKPI

 海外保険事業における主なKPIは以下のとおりであります。

 実質的な収益力を示すため、「修正利益」と「事業別ROE」をKPIとしております。これに加えて、重要戦略である地理的拡大による成長を測定する指標として、当該戦略によるグロス保険料をKPIとして設定し、引き続きグループの成長の牽引役としての役割を果たしてまいります。


③ 国内生命保険事業

ア.前中期経営計画(2021~2023年度)の総括

◆主なKPIの達成状況

 国内生命保険事業では、お客さま本位の業務運営のもと、2016年度以降、新成長戦略として伝統的な生命保険会社から「健康応援企業」への変革を目指して、保険本来の機能と健康応援機能とを組み合わせた新たな価値(Insurhealth®:インシュアヘルス)の提供を開始し、非連続な生産性向上とともに取り組みました。

 これらの取組みを進化させるべく、Insurhealth®を原動力とする成長をデジタル/データで加速し、働き方改革による生産性向上とひまわりブランドで後押しすることにより、「健康応援企業」の確立を目指しました。

 その結果、2023年度の修正利益は当初計画を上回る過去最高の418億円となりました。


◆前中期経営計画の成果

 前中期経営計画期間で、Insurhealth®商品は全10種類となり、その販売累計は、161万件、年換算保険料1,159億円に達し、お客さまの数と利益規模の拡大に寄与しました。Insurhealth®の健康応援機能に関しては、保険加入後の禁煙成功や健康改善によりキャッシュバックと保険料割引が得られる「健康☆チャレンジ!制度」の成功者が1.3万人に達し、未成功者と比べて入院率が約50%低いなどの実績が得られました。これらの成果により、健康応援企業としての礎を築き上げることができました。

イ. 新中期経営計画(2024~2026年度)

◆新中期経営計画の取組方針

 生命保険業界の経営環境は、少子高齢化の進展や健康寿命への関心の高まり等による保険ニーズの多様化、デジタル技術進展、経済動向の不確実性など、大きく変化しております。また、政府が掲げる「健康寿命の延伸」のもと、国民一人ひとりの健康づくりや疾病等の予防をサポートするため、官民一体となった取組みが進められております。

 このような環境のもと、国内生命保険事業は、ウェルビーイング事業の一員として、引き続き、保険本来の機能と健康応援機能とを組み合わせたInsurhealth®の提供を通じて、お客さま本位で「健康応援企業」の実現を目指すことにより、社会課題の解決に貢献してまいります。

 新中期経営計画では、「お客さま本位で、ひまわりファンをさらに増やして、健康にすることで、利益規模の拡大を実現する」ことを経営方針として掲げ、実現のため3つの挑戦に取り組んでまいります。

挑戦①:保険と健康応援を一体提案(トレードオン営業)する態勢の定着・進化

挑戦②:保険商品と健康応援サービスの一体開発と、事務部門による健康応援体制(健康応援事務)の構築

挑戦③:定常的経費の増加抑制と、選択と集中による重点領域投資で生産性向上を図る

◆主なKPI

 国内生命保険事業における主なKPIは以下のとおりであります。

 新中期経営計画の挑戦①②により、「ひまわりファン数」の拡大を通じて「新契約CSM※」の成長を目指しながら、「ひまわりファンの健康行動数」の拡大に取り組んでまいります。これらの取組みを挑戦③で後押しすることで、2026年度の事業別ROE12%以上を目指してまいります。

※Contractual Service Margin:新契約価値と同様のIFRS17号に基づく指標(税前)


④ 介護・シニア事業

ア.前中期経営計画(2021~2023年度)の総括

◆主なKPIの達成状況

 介護・シニア事業では、実質的な収益力を示す「修正利益」を主なKPIとしておりました。また、介護・シニア事業における収益の多くを居住系サービスが占めていることから、居住系サービスの「入居率」もKPIとしておりました。

2023年度は、水道光熱費の高騰が通期予想より抑えられた点や、令和6年度税制改正に伴い、エヌ・デーソフトウェア株式会社において将来見込んでいた繰延税金負債の減少などが影響し、修正利益は計画を上回る88億円となりました。一方、SOMPOケア株式会社における入居率は計画を下回り92.9%(※)となりました。

※入居率は年度末時点での数値であります。


◆前中期経営計画の成果

 介護事業への参入以降、入居率向上、人材強化、ガバナンス強化に取り組むことで収益化を達成し、当社グループの主要事業として着実に成果を積み上げてまいりました。前中期経営計画では、介護施設の新設やM&Aを通じた規模の拡大、リアルデータを活用した品質の伴った生産性向上への取組み、処遇改善等の人材への投資、エヌ・デーソフトウェア株式会社の買収などにより事業基盤を拡大させるとともに、「egaku」の開発など新たな取組みも進めてまいりました。

イ. 新中期経営計画(2024~2026年度)

◆新中期経営計画の取組方針

 急速に進展する高齢化に伴い、介護を必要とする高齢者は増加し、今後も国内の介護市場は拡大することが見込まれております。その一方で、生産年齢人口の減少に伴い、介護を支える労働力の減少が見込まれており、持続可能な事業モデルを確立するためには、品質を伴う生産性のさらなる向上や人材確保・育成が喫緊の経営課題であると認識しております。

 社会課題である介護人材の需給ギャップ拡大の解決に貢献するため、介護事業はプラットフォーマーへの変革を目指してまいります。また、SOMPOケア株式会社が介護オペレーター事業で培ったノウハウとエヌ・デーソフトウェア株式会社の介護ソフトウェアとの融合を図り、介護事業者のシステム化の支援およびそれに伴うサービス品質の向上と職員の負荷軽減を実現し、介護業界の持続可能性向上に貢献してまいります。

◆主なKPI

 介護事業では、「事業別ROE」をKPIとし、2026年度に12%以上の達成を目指してまいります。また、介護オペレーターとしてのさらなる成長を実現するため、2026年度末時点での居住系サービスの「入居率」を95.5%に引き上げることを目指してまいります。


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