SHOEI
【東証プライム:7839】「その他製品」
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企業概要
本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営方針
当社グループの経営方針は、以下の方針に基づいております。
1)健全な財務体質により、事業継続を長期にコミットします。
長期的視野での経営を可能にするためには財務的な独立が不可欠です。当社は企業収益及びステークホルダーへの利益還元を重視するのと同様に、高い自己資本比率の維持を目指します。
公的援助や他人資本を当てにした経営では事業を長期にコミットすることは不可能です。
これはリーマン級経済危機、伝染病流行、大規模自然災害等に備えるという点においても例外ではありません。予期せぬ事情で市場規模が急に冷え込んだ場合、生産能力が落ち込んだ場合でも、ブランドを棄損することなく終息まで耐え抜くだけの体力を備えておくことが重要です。また、M&Aや新事業への展開においても、好機に迅速な決定、対応が可能となるよう、ある程度潤沢な現預金を常時持ち合わせておく必要があります。
健全な財務体質はESG(環境・地域社会・企業統治)経営を持続的に継続する意味でも重要です。ESGを疎かにしてはいずれそのツケを払う時が来ます。環境対応については、形だけ整えてお茶を濁したり、いたずらに調査や議論を重ねるのではなく、当社の身の丈に合った範囲でスピード感をもって実現して参ります。
当社は30年先、50年先も現在同様自主独立を貫く健全な企業であり続けたいと思います。
2)Made in Japanで勝負します。
当社の最大の資産は過去60年間で築き上げたブランドです。
そのブランドは「かっこいい」「安全」「機能的」「かぶり心地がいい」というお客様の声によって支えられております。当社のヘルメットは「造形(デザイン)・製品開発」「品質保証」「生産」という相互にトレードオフするミッションを全うして初めて市場に送り出されますが、これらをバランスよくかつスピーディーに成立させることが当社の競争力の源泉であり、いずれのミッションが海外に移転しても現在のブランドを維持できないと考えています。他社ではコストダウンを目的として生産部門を海外に移転するケースが散見されますが、当社は海外移転によるメリットよりデメリットの方が圧倒的に大きいと判断致します。Made in Japanで勝負し続けることこそが、ブランド力を高く維持し、競争力を保ち続ける為に当社が取るべき唯一の選択肢であると確信しております。
3)お客様の声に耳を傾けます。
2024年9月期において、当社が製造した二輪用ヘルメットのうち、サンバイザー付かつインターコム対応モデルは販売個数において全体の約42%となりました。これらの機能はいずれもかつては存在していなかった機能ですが、今では「SHOEIといえばこれ」というくらい当社にとってなくてはならない商品となっています。これはほんの一例ですが、お客様がご希望される製品を安全かつ機能的に供給することが、企業としての使命であり、存在意義であると確信致します。
現在はヘルメットとエレクトロニクスの融合、レトロブームへの対応といった市場ニーズに対応すべく、業界を率先して新しいチャレンジを続けており、着実に成功を収めております。第68期には、新しいチャレンジの第一弾としてBMX競技用ヘルメットを日本市場から上市致しました。市場規模はまだ小さいですが、自転車競技人口は若い世代を中心に着実に増えており、お客様の期待に応えながら育てて参る所存です。第二弾については社内で検討中です。いずれにせよ、様々なカテゴリーで「さすがSHOEI」と称賛される商品を上市できるよう、日々研鑽して参ります。
当社は2020年3月の東京を皮切りに、大阪、横浜、京都、福岡に直営ショールームをオープンし、また、2023年6月には海外では初のパリにSHOEI Gallery Parisをオープンしました。かかるショールームもお客様のニーズを直接確認する重要な拠点になると確信しています。是非お立ち寄り下さい。
(2)経営戦略
当社グループの経営戦略は、上記方針を踏まえ、以下5つの戦略としております。
1)生産戦略
国内2工場での自社一貫生産体制を充実します。モデル毎にメイン工場は決めるものの、常時どちらの工場でも生産可能な体制とするとともに、現地現物の精神に則り、需要に合わせてフレキシブルに生産量を変更可能な生産体制を構築します。また、ジャストインタイムによる改善活動等を通じて、常に生産コストの削減を追求します。又、高度な技術やノウハウを高めることにより、それら知的財産をブラックボックス化する情報管理を強化し、当社の優位性を盤石なものにします。
2)商品戦略
高品質・高付加価値商品の研究開発も推進し、集中的に経営資源を投下しています。多様化するライダーの嗜好に対応し、「お客様のニーズに沿った付加価値機能」を備えた、クラシックモデルや利便性の高いモデルを展開します。また、研究開発体制を拡充し、エレクトロニクス対応を促進、時代の最先端を走る製品開発によりブランド力アップを図ります。さらには、バイク用高級ヘルメット以外の高品質・高付加価値商品の開発も推進し、適切な事業の多角化を進めて参ります。
3)ブランド戦略
顧客満足度及び走行時の安全性をより担保するため、パーソナル・フィッティング・システム(PFS)サービス(個別フィッティング調整)の普及に引き続き努めて参ります。PFSを通じてブランド力や販売店とお客様の関係を一層強化します。また、マルク・マルケスを中心とするスポンサー活動によるプロモーションを維持・拡大する一方、新しい切り口の広告宣伝も進めて参ります。
4)市場戦略
欧米日市場の深掘りと顧客密着の販売体制を構築し、世界中の全ての国々でトップシェアを維持します。また、今後の若年層を中心にライダー人口、バイクブームの拡大が期待されるアジア、中国を中心とした新興国での販売を強化します。
5)ESG経営
ESG(環境・地域社会・企業統治)、サステナビリティを意識した経営を行います。特に、環境への取り組みが企業に求められた重要な社会的責務のひとつであると認識し、気候変動の緩和・適応など環境問題に配慮して行動することについて可能な範囲で積極的に対応し、持続可能な循環型経済社会の実現に貢献致します。
(3)経営環境
当連結会計年度における世界経済は、欧米における利上げ累積効果によるインフレ鎮静化が進行しつつある一方、ウクライナやイスラエル等での紛争は終結の目途がたっておりません。又、中国における不動産部門及び消費の低迷や、米国の対中国政策の影響を受け、景気の早期再浮揚には不透明感が伴うものと認識しております。その一方で、予断を許さないものの、プレミアムヘルメット市場が壊滅的な影響を受けるほどの状況ではないと分析しております。
高級二輪乗車用ヘルメット市場については、上記の経済状況のなか、コロナ禍で高まった二輪乗用車ブームの減速に天候不順なども加わり需要が減退した一方、生産体制や国際物流の改善により製品が潤沢に供給された結果、第2四半期までは流通段階で在庫過多の状況にありました。しかしながら、代理店の発注調整により、足元では欧州、中国では過剰流通在庫の消化が進んでおります。中国においては、第2四半期までは流通における過剰在庫の影響を受け、今期投入した新規格製品に依存する厳しい状況でしたが、ライディングシーズンが始まる春先からは需要が徐々に戻りました。中国における需要動向には今後ともアンテナを張り、適切に対応して参ります。
(4)優先的に対処すべき課題
当社グループは、以下の5点を重要課題として取り組むとともに、コーポレートガバナンスの強化を実行してまいります。
1.生産戦略
①実需に即した生産体制
当連結会計年度の生産数量は、中国を中心とする需要減退及び欧州子会社を主とする代理店在庫削減の結果、前連結会計年度に比べて大幅に減少しました。欧州子会社を主とする代理店在庫削減はほぼ目途がつきましたが、中国を始めとする世界のマクロ環境が引き続き不透明ななか、日本においては代理店在庫が過剰気味になるなど、代理店からの発注は総じてコンサバティブな状況が続く可能性もあり、当社は需要動向を注視しております。他方、二輪乗車ブームが一段落したとは言え、当社のメイン市場である欧米日ではまだまだ二輪に根強い人気がある上、ライダーの高齢化に伴う価格吸収力もあって、新モデルの上市は限定的なものの、新グラフィックアイテムの増加等で市場を確保できるため、今後、需要が決定的に減退するとは考えておりません。
いずれにせよ、当社は現地現物の精神に則り、市場が消化できる量の販売に合わせて生産体制をフレキシブルに変更して参ります。
②中期的生産体制
足下は需要減退に伴い調整局面となっておりますが、中長期的な二輪乗車用高級ヘルメットの市場は、先進国においては爆発的な伸びは期待できないものの、特に中国をはじめとするアジアを含む新興国で安定的に伸長するものと予測され、当社はブランド力と商品競争力を武器に、いずれ生産増強が必要になると見込んでおります。その一環として、以下の対策を進めて参ります。
・茨城工場に隣接し、茨城県が所有する江戸崎工業団地内の一区画(7.2ha)取得による工場スペースの拡張を進めます。当該土地については造成が完了し、2024年4月に茨城県より引き渡しを受けました。
・まずは、この新しい土地に倉庫を建設し、2024年12月に完成しました。現在借りている倉庫や既存倉庫からの製品・仕掛品等の集約を行い、生産体制の効率化を進める方針です。
・新しい土地の本格的な使用内容については、今後の受注状況等を慎重に見極めながら適切なタイミングで判断して参ります。
③改善活動等を通じた製造現場の競争力強化
当社は、Made in Japanを生産戦略として経営方針の根幹に掲げております。長年ジャストインタイムによる改善活動等を通じ、国内両工場の競争力を持続的に強化しております。Made in Japanを維持するためには従業員1人1人の精鋭化が必要であり、生産数量が落ち着いている状況下、これらをさらに強化すべく、ここ数年で採用した人員も含めた従業員の教育強化や多能工の更なる充実を実行して参ります。
2.商品戦略
①新分野への展開
当社は一部の官需製品を除き、二輪乗車用ヘルメットに特化して参りましたが、今後は更なる利益増、事業リスク分散の観点から、新分野への展開を検討して参ります。手始めとして、比較的二輪乗車用高級ヘルメットと価格帯が近いBMX(自転車モトクロス)競技用ヘルメットについて、2024年9月にまずは日本で上市致しました。BMXはオリンピック競技にもなり、子供たちの人気スポーツとなるなど、急速に注目を浴びている競技であり、将来的には欧米への展開も検討しております。
②商品の高付加価値化、多種多様化するニーズの取り組み
引き続き日々刻々変化するお客様のニーズ(機能、デザイン、被り心地等)を重視した製品の設計・開発に注力致します。既存モデルであるJ-Cruiseシリーズの新モデル(J-Cruise 3)を順次世界展開するとともに、主力モデルのモデルチェンジや新モデルの開発を進めて参ります。また、ヘルメットのスマート化需要が急速に拡大するとの認識の下、通信、音響、映像機能付きヘルメットの開発に力を入れて参ります。
③販売体制の多様化
当社はSHOEIと価値を分かち合える販売店様との協業で質の高い製品の販売を進めて参ります。一方で、自社EC(ネット通販サイト)を通じお近くに販売店がないお客様のフォロー体制を整え、自社ショールーム(現在、日本に5か所、パリに1か所)での販売を通じ、お客様から頂戴した生のご意見を既存製品の改良、次期モデルの開発に活用していきます。
3.ブランド戦略
①PFSサービスの普及
日本市場では、連結ヘルメット販売数量の39.9%がPFSサービスを施して販売されており、世界に一つのマイヘルメットとしてお客様の好評を得ております。今後、日本市場において更なる普及率向上を目指し、PFSサービス実施対象店舗の拡大を進めて参ります。一方、欧米、アジアなどの海外市場ではPFSサービスは普及の初期段階にあるため、今後は、日本の成功体験を海外に拡げるべく、日本からトレーナーを頻繁に派遣してトレーニングを拡充するなど、海外市場でのサービス拡大に注力して参ります。いつの日か、ヘルメットは自分の頭の形状に合ったフィッティングをして購入するのが当たり前という時代が来るものと確信しております。
②広告宣伝
引き続きMoto GPの代表選手であるマルク・マルケス、アレックス・マルケス兄弟とのレーサー契約を中心に、限られた経営資源を効率的に投資する一方で、今までにない新しい切り口の広告宣伝を打ち出すことが必要であると考えます。レーサー契約以外の選択肢としては、日本市場及び海外市場ともに、SNSによる広告宣伝・マーケティング情報の効果的な拡散や、著名人やインフルエンサーの積極的な活用等、広告宣伝の多様化を進めて参ります。
4.市場戦略
重点新興国での販売強化
新興国(特にアジア)における需要の伸びは目覚ましいものがあります。当社はこの需要をしっかりと取り込む為、これらの国での市場調査、マーケティングを強化して参ります。タイ市場においては、2019年8月に現地販売子会社設立後、新型コロナの影響で、日本からの輸入が困難な状況が続いておりました。2022年秋からその制約もようやく解除されましたが、現地の景気減速に伴い予定通りには推移しておりません。現在はPFSサービスの普及、ディーラー網の整備やマーケティング活動を活発化させることにより業績回復を目指しています。中国においては、2021年6月に子会社(SHOEI上海)を設立しましたが、新型コロナの影響で活動が制限されていたため、2023年初夏よりようやく、市場調査やマーケティング活動を本格的にスタートしております。しかしながら、未だなかなか的を射た情報が得られておりません。今後はSHOEI上海を充実させる等を通じて中国市場の実力及び将来性をしっかりと見極めて参ります。
5.その他の中長期戦略
①環境問題への取り組み
当社の企業規模として可能なことは限られておりますが、形だけ整えてお茶を濁したり、いたずらに調査や議論を重ねたりするのではなく、当社の身の丈に合った範囲でスピード感をもって対策を実現することにより、持続可能な循環型経済社会の実現に貢献致します。前連結会計年度は、茨城工場及び岩手工場において従業員向け電気自動車用充電設備を2基ずつ設置し、従業員がガソリン車から電気自動車へ切り替えるインセンティブとしました。また、当該会計年度は、茨城工場及び岩手工場において自家消費型太陽光発電設備(PPA)を導入し、電力使用量における再生エネルギー利用率を19%まで高め、CO2を年間267トン減少させる見込みです。さらに、足元では、茨城工場の隣地に建てた新倉庫と既存工場の社内運搬のためにEVトラックを導入しました。今後も出来るところから順次対応して参ります。
②新事業の検討
当社は今日まで二輪乗車用ヘルメット専業メーカーとして業容を拡大して参りました。今後ともこの祖業を強化していく方針に変更はありません。一方、世界中でライダーの高齢化や若者の趣味の多様化が進んでいることも歴然とした事実であり、当社の間尺にあった、当社らしい新事業があるのかについて議論を深めております。その第一弾として、当該会計年度に上述のBMX競技用ヘルメットへの進出を実行しており、第二弾についても検討を進めており、第69期中に具体化すべく、現在経営と社内が一丸となって努力している状況です。
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