SHINKO 【東証スタンダード:7120】「卸売業」 へ投稿
企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)企業理念、行動基準/行動指針
当社は、「わたしたちはお客様を念(おも)い、仲間を想(おも)い、社会を憶(おも)い、高度情報通信ネットワーク社会のラストワンマイルである人と人との接点に新たな価値を創造していきます。」を企業理念として掲げております。
当社の活動する現場は、人と人との接点の場であり、お客様、仲間、社会それぞれへの思いを大切に活動してまいります。
◆お客様 = 最も大切な存在 『念う(一心に思う)』
◆仲間 = お互いに尊敬しあい、大切にする存在 『想う(感情をこめて思う)』
◆社会 = 深い問題意識を持ちつつ貢献していく 『憶う(深く思う)』
当社の保守サービス事業、ソリューション事業、人材サービス事業の現場は、人と人との接点にこそあります。
医療機関に導入されている電子カルテシステムやレセプトコンピュータ等の機器、あるいは企業に導入されているパソコン、サーバ等のIT機器の設置や保守といった業務は、実際に病院やクリニック、企業に当社の社員が出向いて作業を行います。そこで機器を利用する方々の使用状況を伺いながら、エンジニアの視点からの機器使用についてのアドバイスを行うこと、顧客の要望に応えるべく現場ごとに適切な作業を行うこと、それが高度情報通信ネットワーク社会のラストワンマイルを担う当社に求められた使命であると考えております。
上記企業理念に加えて、以下6項目を行動基準/行動指針として掲げております。
わたしたちは、お客様第一で行動します。
そのために、お客様の期待を超えるサービスを提供します。
わたしたちは、プロフェッショナルとして行動します。
そのために、日々の研鑽を怠らず、スキルの習得に努めます。
わたしたちは、チャレンジ精神で行動します。
そのために、前向きに努力し、常に挑戦し続けます。
わたしたちは、コンプライアンス意識をもって行動します。
そのために、ルールを正しく理解し厳守します。
わたしたちは、チームワークを大切に行動します。
そのために、仲間の個性と価値観を尊重します。
わたしたちは、社会貢献を喜びとして行動します。
そのために、社会の一員として責任を果たします。
これらを実現することにより、法令を遵守した継続的かつ安定的な企業成長を目指し、社会的責任を果たしてまいります。
(2)経営環境
当社の事業領域である国内IT市場の2024年は、新型コロナウイルス感染症が収束し、観光、インバウンド需要も回復傾向にあり、関連する産業分野の企業では業績が回復を見せております。このような環境において、多くの企業ではDX推進の取り組みの加速が見られ、既存システムの見直し、新規ビジネス展開のためのIT支出を拡大しており、その市場規模は前年比7.2%増の23兆4,589億円、また2023年~2028年の年間平均成長率は4.9%と予測されております。(出典:IDC Japan, 2024年4月「国内IT市場産業分野別/従業員規模別/年商規模別予測、2024年~2028年」(JPJ50712324))
当社が約50年にわたって関わりのある医療分野においては、2022年10月に内閣総理大臣を本部長とする医療DX推進本部の設置が閣議決定され、政府が推進する医療DXは、2023年1月の電子処方箋の情報を皮切りに、電子カルテ情報、予防接種情報の共有拡大を検討しており、将来的には全国医療情報プラットフォームの適切かつ効率的な運用の実現を目指しております。2024年にはマイナンバーカードと保険証の一体化が予定されており、当社においても2023年3月期に開始した医療機関、薬局におけるオンライン資格確認導入作業を皮切りに、2024年からは訪問看護事業所におけるオンライン資格確認の導入が本格化し、今後も医療DXに関連した業務の依頼が増加することが期待されます。また、医療機関を対象とした深刻なサイバーセキュリティ被害が多発していることから、セキュリティ対策への支出も拡大傾向にあります。当社へは病院内のネットワーク構築の依頼に加えてセキュリティ対策への相談も増加傾向にあることから、医療分野における事業拡大の機会は今後も大いにあると予測しております。
また、DXによる企業変革、新たなビジネス展開に向けた取り組みが本格化し、業務効率化や既存システムのクラウドシフトを推進するIT支出の拡大が見込まれ、データの増加に伴いインフラストラクチャの拡張需要も予測されております。更に、2025年10月にWindows10のサポートが終了することに伴う需要が2024年から増えることが見込まれることに加え、GIGAスクール構想(文部科学省が推進する小中学校へのパソコンやタブレット端末の配備)の端末の更新需要により、機器の販売、キッティング、設置等の需要が増加することが予測されます。そこに付随して保守サービスに事業においてはオンサイト保守の他、故障機器を送付し修理や代替品との交換を受けるセンドバック修理の需要が増加することも期待されます。
大都市圏を除いた地域では、人口減少、ならびに企業流出が深刻化しており、地域経済は停滞が継続しているという一面もありますが、医療、教育、地方自治体といった各地に不可欠な分野におけるIT支出の機会はあることから、全国拠点を生かして新規開拓、事業拡大の余地は今後もあると期待しております。
また、今後すべての産業分野でIT投資はプラス成長になる見込みであることから、新たな分野における新規ビジネス展開の機会もあると考えられます。
このようにDXの進展に伴いIT人材の需要が増加する一方、経済産業省の調査では、2030年には全体需要が129.7万人から192.0万人に対し、16万人から79万人の人材不足が予測されており、(経済産業省ホームページ https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf 2019年3月時点データ)IT人材不足が深刻な課題となっております。これにより当社の人材サービス事業では、今後もCE、SEの派遣需要が増加することが見込まれます。
(3)経営戦略
当社は、DX改革の一翼を担い、事業の成長を継続し、ステークホルダーの期待に応えていくことを目標と定め、総合ITソリューション企業を目指しITネットワーク技術と全国ネットワークの強みを活かし、DXを推進する医療機関、企業を全面的にサポートしております。
国内IT市場において、医療DX、教育DX、自治体DX、企業DXが推進される中、今後情報通信量は増加し、インフラの刷新が不可欠となります。機器の選定、設定(キッティング)、設置から運用保守、そして2023年に古物商(事務機器商)許可を取得したことにより製品の3R(リデュース・リユース・リサイクル)までワンストップで対応が可能となったことを強みとし、今後も引き続き、取引先企業の成長を更に支援し、新たな付加価値を提供できる会社であり続けるため、一層の変革を進めるべく、事業セグメントごとに戦略を立てております。
保守サービス事業では既存パートナーからの保守エリアの拡大及び取扱機器の種類の増加依頼の他、ソリューション事業での機器設置展開後の保守委託が毎年増加しております。2023年3月期下期より、ソリューション事業においてオンライン資格確認のための機器の導入案件が多くありましたが、それらは保守契約を締結し、引き続き保守サービス事業において機器の保守サービスを提供しております。
これら多くの需要に対応するに当たり、業務効率化及び品質の平準化を目指し、前事業年度よりスマートグラスを用いた遠隔支援システムを導入いたしました。従来の保守作業においては、その機器の保守対応に長けたエンジニアのみを選定しアサインしており、それにより特定のエンジニアに業務が偏り、移動時間等の都合により1日に対応できる件数に制限がありました。遠隔支援システムを導入することにより、テクニカルセンターあるいは各拠点の管理者やスキル習熟者からの支援が可能となり、エンジニアの効率的なアサインが実現します。今後活用機会を増やしていくことにより、業務効率が向上し、延いては利益率の向上に繋がると考えております。また、技術資料、マニュアル、作業チェックシート等の電子化を進めると共に、業務報告書等の事務処理等の業務プロセスの更なる効率化を目指し、品質管理システムの刷新を計画しており、2024年7月の利用開始に向けて準備を進めております。
さらに、医療機器修理業においても更なる事業拡大を目指し、現在北海道、宮城県、東京都、長野県、大阪府、広島県、福岡県において取得している医療機器修理業の許可を全国にて取得することを目指しております。医療分野においては、医療従事者不足への対応策が課題となっている中で、医療機関の労働時間上限の規制対応といった制度対応が行われ、人材不足がより深刻化しております。そのような中、医療従事者間での情報共有基盤の構築や、IoT、AIを活用した診療の効率化やミスを防止する取り組みが増えております。当社は医療機関における保守実績から、同業他社からの協業依頼も含め、医療機器メーカーからの保守の相談も増加傾向にあることから、医療機器修理業を活用した保守サービス事業の拡大に取り組んでまいります。
ソリューション事業では、継続的に取引のある企業との関係性の維持・構築に尽力する一方、高いスキルが求められる高単価案件の獲得を目指し、SEの専門部隊を設置し、現場作業のみの受託から、全体のシステム構築、手順書作成、工事業者等の外注コントロール、全国展開作業のマネジメントまでをワンストップで受けることができる体制を整える取り組みを行っております。また、2023年には古物商許可を取得し、パソコンやその周辺機器のLCMサービス(ライフサイクルマネジメント:PCの調達や運用保守、廃棄までの各プロセスの管理業務を最適化するためのサービス)の展開も可能となりました。
今後、エンジニアのスキル教育の充実及びテクニカルセンターからの技術支援体制を強化し、役務案件におけるオンサイト作業回数を減らすことにより、利益率向上を図ってまいります。
GIGAスクール構想やオンライン資格確認等のようにソリューション事業において機器やシステムの設計、設定、構築、展開を行った案件は、その後保守サービス事業に繋がるケースが多くあります。2025年3月期においては、訪問看護事業者のオンライン資格確認のための機器の導入案件や、小中学校や専門学校における電子黒板の需要、快適な授業環境の実現に繋がる教育機関専用インターネット回線の需要が増加傾向にあることから、これらを保守サービス事業に繋げられるような取り組みを強化してまいりたいと考えております。
人材サービス事業では、社内教育により公的資格やベンダー資格(ネットワークスペシャリスト、CCNA、LPI、CompTIA等)の取得を促進しております。これらの資格を有することで、企業からの派遣要請にスムーズに対応できております。また、昨年より派遣を開始した空港や企業からの追加の派遣要請も順次あることから、絶えず予備人材を確保することにより、機会損失の軽減を図ってまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①価格転嫁と収益率の改善のための取り組み
物価上昇が続く中、当社にとっては価格転嫁は重要な課題であると捉えております。前事業年度において、メーカーの人件費増加に加え、円安で外国製品や部品の輸入費用が膨らんだ結果、パソコン及びその周辺機器の値上げが段階的に行われ、利益減少の要因ともなりました。今後は仕入原価や販管費の増加分を適切に転嫁するための活動に取り組んでまいります。また、前事業年度において一部利益率が当初想定を下回る案件がありました。今後収益率改善のために、スキル教育、研修の実施によるエンジニアのスキルアップや遠隔支援システムの活用により生産性向上に取り組んでまいります。
②生産性向上のためのシステムの見直し
当社が今後生産性の向上を図るには、業務の効率化が必要であると考えております。現在、営業支援システムを利用して日々の営業活動、案件の管理を行っておりますが、更なる効率化を目指し、システムの機能の拡充を図ってまいります。その他、会計システムの入替、不正アクセス対策の強化等も実施してまいります。
③優秀な人材の採用と育成
DX推進ニーズが高まる一方で直面する課題としてIT人材不足があります。中途採用やスタートアップ企業との連携により、自社内でDXを推進する人材の育成に着手し成果をあげている一部企業を除き、人材不足がDXの推進を停滞させる要因の一つになっております。このような環境において、今後SE、CE派遣の需要が増加していくことが予想されます。取引先企業からの要請に対して速やかに適切な人員を派遣することが、人材サービス事業の安定的な成長に繋がることから、事業の要となる人材の採用と育成が重要な課題と認識し、採用活動を強化しております。その一つの取り組みとして、近年は大学就職活動支援を実施しております。具体的には、当社人財開発推進室が自己分析、業界職種研修、企業面接対策、ビジネスマナー講座や、就職に有利な技術スキル習得のためのITパスポート、Microsoft Office Word Specialist、Microsoft Office Excel Specialist等の資格の研修を、要請のあった大学の学生に対して提供しております。2024年3月期はキャリアプラン講義を3件、ITパスポート研修を2件、Microsoft Office Professional研修を1件実施いたしました。受講した学生からは非常に高い満足度評価を得ており、研修を実施した大学からの新卒応募が増加しております。
当社入社後、社員にはビジネスマナー等の基礎教育からスタートし、IT基礎教育、派遣予定先企業での業務を踏まえての取扱機器の実機研修やネットワーク構築基礎教育、公的資格取得研修等、入社後約3ヶ月でエンジニアとして活躍できるITエンジニア育成プログラムを用意しております。
また、全国に拠点があることを生かし、Uターン、Iターン、Jターン希望にジョブローテーションを活用して応えていくことで、従業員がライフスタイルに合わせて長く働ける環境を作っていきたいと考えております。
④エンジニアのスキルアップと活用
ソリューション事業の成長、特に利益率の向上には、より高度なスキルを必要とする案件に対応できるよう、エンジニアのスキルアップが必要と考えております。当社のエンジニアは、多種多様な現場作業案件に携わることで、機器の保守から導入設計、設置展開等マルチなスキルや対応力を身に付けておりますが、今後はネットワークやサーバの設計、開発、提案等といった分野にも業務を拡大できるよう、テクニカルセンターを中心にSEの専門部隊を設置し、経験豊富なSEを中心としてOJTを兼ねた高レベルな案件対応や技術支援を行い、スキルアップを図っております。また、定期的にネットワークスキル資格取得のための教育研修を実施しており、これにより全世界共通のネットワークスキルを証明するシスコ技術者認定CCNA、CCNP Enterpriseや、IT運用スキルを証明するCompTIA A+等の資格を取得するエンジニアが増えております。
下記は当社従業員が保有する資格の一例とその保有人数です。(2024年4月30日時点)
IPA ネットワークスペシャリスト試験(NW) | 7名 |
IPA 応用情報技術者試験(AP) | 12名 |
CompTIA Project+ | 2名 |
CCNP Enterprise | 5名 |
CCNA | 58名 |
CompTIA A+ | 30名 |
CompTIA CySA | 1名 |
人材サービス事業において、派遣に際して上記資格を有することがエンジニアの条件として求められることが多々あるため、今後も求められる必要な技術の教育及び資格取得促進に向けた制度の確立を行ってまいります。
⑤医療機器修理業受託のための体制整備
医療機器修理の分野に進出することで、既存のレセプトコンピュータや電子カルテだけではなく、その他病院、診療所内のネットワークに繋がる全ての機器やシステムの保守を当社が一括して受託することが可能となり、結果として全導入機器のヘルスチェックや予防的対策も可能となります。この実現には社内体制の強化も必要であり、医療機器修理業の全国エリアでの許可取得と、エンジニアのスキルアップを図ってまいります。
⑥リソースコントロール
当社の経営資源は「人」であります。当社では利益拡大のために人的リソースの有効活用に取り組んでおります。当社が受託する全国規模の大型案件は本社及びテクニカルセンターを中心に全拠点のリソースを管理しながら対応しております。特にソリューション事業では、年度末に案件が集中する傾向があり、全国規模の案件と各拠点で受託した個別案件と通常業務が重複することにより人員不足となり、急遽外注によりリソースを確保せざるを得ない状況が発生する場合があります。テクニカルセンターが中心となり、案件管理及び支店間の支援体制を組み、リソースコントロールを実施することで、内製化を進め、それにより業務効率化を図ってまいります。
⑦パートナー企業とのグリップ強化
日本電気株式会社、KDDI株式会社をはじめとする、継続的に取引のある企業からの受注拡大のため、機会損失のない営業体制を構築します。
⑧品質の向上、効率化の実現
サービス品質の向上は、顧客の当社に対する信頼性を高めることに繋がることから、品質管理システムを活用し、全社的なサービスレベルの底上げと業務効率化を目指します。2024年7月に品質管理システムの刷新を予定しており、現在導入に向けた準備を進めております。
⑨財務上の課題
現在、運転資金は自己資金で賄えておりますが、大規模なシステム・整備への投資等を行った場合、運転資金が不足する可能性があります。その手当として金融機関からの借入を想定しております。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、売上高、セグメント利益を設定し、企業規模の拡大、企業価値の向上を目指しております。
項目 | 前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | |
売上高 | 全社 | 15,948,715 | 16,145,670 |
(千円) | 保守サービス事業 | 4,557,688 | 4,750,124 |
| ソリューション事業 | 9,212,092 | 9,248,112 |
| 人材サービス事業 | 2,178,933 | 2,147,433 |
セグメント利益 | 営業利益 | 752,829 | 627,159 |
(千円) | 保守サービス事業 | 705,932 | 778,354 |
| ソリューション事業 | 865,249 | 718,137 |
| 人材サービス事業 | 318,027 | 309,185 |
| 調整額※1 | △1,136,380 | △1,178,518 |
※1 セグメント利益の調整額は、報告セグメントに配賦していない本社費用であり、本社管理部門に係る人件費、
不動産賃借料等の販売費及び一般管理費です。
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