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企業概要

 下記の文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

(1) 経営方針

 当社は2024年4月8日をもって設立10周年を迎え、次の新たなステージに向けて企業ビジョン・ミッション・バリューおよび組織体制も含めて抜本的に刷新いたしました。「Where it Starts / ことのはじまり」というビジョンのもと、「Get Together / 和をひろげる」をミッションとし、人と人のつながりや一人ひとりの無限の可能性をひろげる機会やきっかけを提供することで、多様な「はじまり」に満ち溢れた世界の実現を目指しております。


 インターネットの普及により、世界中の人々があらゆる情報にアクセス可能となり、加えてSNSの発達によって個人による情報発信が世界中に波及する時代となっております。それだけ一人の個人が多くの人に与える影響力が増大してきていると言えます。実際にインフルエンサーや YouTuber のように影響力を持つ個人が現れ、新たな職業となり、新たなワークスタイル・ライフスタイルが確立されてきております。

 当社は設立から10年間、ビジョンである「一人ひとりの『らしさ』であふれる世界」を実現するために、「『できる』をあたりまえに」することをミッションとし、「場所の制限をなくし、誰もがやりたいことにチャレンジできる」環境を構築してまいりました。これまでの10年間をふりかえり、より飛躍的な成長を遂げるため、方針と体制の再構築をいたしました。

 ビジョンの実現に向けて、レンタルスペースのマッチングプラットフォームである「インスタベース」により、ありとあらゆる場所で、フレキシブルに使えるスペースを提供していくとともに、「インスタベース」の周辺領域における新たなサービスである「TOIRO」や、他の新サービスを展開していくことで、一人ひとりが思う存分、場所の制限なく、活動できる・自身を表現できる世界を創造してまいります。

(2) 経営環境及び経営戦略等

 当社は、成長期待が高い環境を捉え、事業運営を行っていくなかで、中長期的に安定して売上を拡大させることが重要であると考えております。そのため、「インスタベース」のさらなる成長と「インスタベース」により蓄積された有用なデータやノウハウをもとに、中長期的に新たな収益の柱となるサービスを確立・拡充し、さらなる事業拡大と最適な事業ポートフォリオを構築してまいります。

 当社は創業以来、レンタルスペースのマッチングプラットフォーム「インスタベース」を運営し、スペース利用者とスペース掲載者をマッチングするサービスを提供しており、スペース利用者とスペース掲載者双方の課題を解決するプラットフォームとなっております。検索エンジンからの流入及びWebマーケティングの強化による利用者獲得にて幅広い用途で予約を獲得できる集客網を構築し、スペース利用者にニーズに合わせた魅力的なスペースの獲得、より快適なサービス利用を実現するUI/UXの改善を継続的かつ着実に行ってまいりました。さらに当社では、検索意図と異なる結果が表示されることによる離脱防止のため、AI画像判定を活用した検索結果の最適化(特許出願中)により、利用者が求めているスペース(例えば貸し会議室)を画像認識を通してスコアリング評価し、より精度高く最適なスペース候補を提供する等、新たなアイデアや技術を活用した取り組みも積極的に行い、他にはない価値提供に努めております。

2020年3月に発生した新型コロナウイルス感染症が終息してなお、働き方においては、テレワークやリモートワークが恒常的になり、ワークスペースの柔軟かつ多様な選択肢が増え始め、空きスペースを利活用する機会が増加しております。また、生活様式においては、趣味や各種イベント、パーティー、フィットネスなど、ライフスタイルの充実を求める機運も高まっております。

 現在、「インスタベース」では、フリーランスの教室の先生やレッスン講師が自身の講座を実施するための場所として、また、アーティストによる作品や写真などの展示会や販売会、新商品のプロモーションなどの場所として、多岐にわたる用途でスペースが利用されております。

 また、掲載スペースにおいては多種多様なスペースが掲載されており、遊休不動産に手を加えずそのままの状態でレンタルスペースとして貸し出すこともできる一方で、特定の用途に特化したスペース(例: ダンススタジオ、サロンスペースなど)や多用途で利用できるスペース(例: パーティースペース、多目的スペースなど)のように特徴のあるスペースに高い利用ニーズがあります。「インスタベース」では日々数千件の予約が発生しており、これらのスペース利用に関するデータを解析することにより、スペース利用を最大化するために最適な内装や備品、運営などが提案可能となります。このことから現在遊休不動産となっている空き家や空き物件とリフォームやリノベーションをマッチングすることで最適な空間作りの支援が行えると考えております。

 このように、「インスタベース」は人と場所を繋ぐレンタルスペースのマッチングサービスではありますが、「インスタベース」を通じたスペース利用においては、スペースシェア市場だけではなくフリーランス市場やスキルシェア市場のみならず、クリエイターエコノミー市場、さらにはプロモーション関連市場もターゲット市場となっております。「インスタベース」を通じたスペース利用におけるターゲット市場へのアプローチを強化すべく、今後新たな機能やサービスの展開を検討しております。

 レンタルスペース市場を含めた周辺領域の市場規模は以下となります。

シェアリングエコノミー市場

「インスタベース」に関連する市場としてシェアリングエコノミー(※1)市場におけるスペースシェア領域と、スペース利用者が属するスキルシェア領域があります。これらの市場規模は、2022年度に6,546億円(サービス提供者と利用者の間の取引金額ベース)と推計され、現状のペースで成長した場合、2032年度に3兆9,965億円(2022年度比6.1倍、内訳 スペースシェア市場2兆5,384億円・スキルシェア市場1兆4,581億円)に、さらに新型コロナウイルス感染症による不安、シェアリングエコノミーサービスの認知度が低い点等の課題が解決した場合、同7兆6,953億円(同11.8倍、内訳 スペースシェア市場4兆8,458億円・スキルシェア市場2兆8,495億円)に達すると予測されています。(※2)

② 住宅リフォーム市場

「インスタベース」の周辺領域の市場として住宅リフォーム市場があります。現在日本では、少子高齢化や都心一極集中、地方の過疎化が進むなか、全国的に空き家が増加しており、「令和5年住宅・土地統計調査(3)」によると、空き家率は過去最高の13.8%となり、歯止めがかからない状態となっています。また、空き家特措法施行後の既存住宅の除却や住宅用途以外への有効活用の傾向が今後続いたとしても空き家率の上昇は避けられず、世帯数減少が加速する2033年には空き家率17.9%へ上昇する見込みとなっております。(4)


※総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果より当社作成

https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/g_kekka.pdf

 このように我が国の社会的課題となっている空き家問題に対して、的確な解決策の一つとして考えられているのがリフォームやリノベーションであり、住宅リフォーム市場規模は2020年6.5兆円から2030年には7.1兆円に拡大する予測(5)となっております。また、「2050年カーボンニュートラル」の宣言とともに、住宅・建築物等においても、さらなる省エネルギー化や脱炭素化に向けた取組の一層の充実・強化が不可欠となっております。古い住宅・建築物等を壊して建て替えるより、活かせるものは極力残してリフォームする方がCO2排出量が少ないという研究結果(6)もあり、さらに現有資産を有効利用するストック活用は、SDGsの目標の一つである「つくる責任、つかう責任」に合致することから、リフォーム・リノベーションの脱炭素化への貢献度は高いものと考えられております。

 当社では住宅リフォーム市場をターゲット市場としたサービスの展開を検討しており、リサーチを含めたテストマーケティングを実施しております。

③ フリーランス市場

「インスタベース」の周辺領域の市場としてフリーランス市場があります。日本のフリーランス人口は2020年から500万人以上増加し、2021年に1,577万人になっており、フリーランス人口が増加傾向にあり、その経済規模も拡大していく見通しとなっております(7)。


 また、スキルシェアの市場規模は、2022年度に2,749億円(非対面・対面)と推計され、現状のペースで成長した場合、2032年度に1兆4,581億円(2022年度比5.3倍)に、さらに新型コロナウイルス感染症による不安、シェアリングエコノミーサービスの認知度が低い点等の課題が解決した場合、同2兆8,495億円(同10.4倍)との試算(2)も出ており、副業フリーランスやパラレルワーカー(8)が増加するなかで、個人の活動を支援するサービスが必要とされていると捉えております。

 フリーランス人口の増加には、日本に限らず世界におけるインターネットを活用したSNSサービスの台頭、さらに「YouTuber」など新たな職業やお金の稼ぎ方が現れてきたことも一つの要因となっており、一個人が社会や世界中の人々に対して大きな影響を与えられる環境が整備されてきていると言えます。

 当社ではフリーランス市場をターゲットとしたサービスの展開を検討しており、リサーチを含めたテストマーケティングを実施しております。新サービス「TOIRO」は、その取組の一環であります。

※1.シェアリングエコノミーとは、個人や企業が持つモノや場所、スキルなどを、インターネット上のプラットフォームを介して必要な人に提供したり、共有したりする新しい経済の動きのことや、そうした形態のサービスのこと

2.一般社団法人シェアリングエコノミー協会 株式会社情報通信総合研究所共同調査
「シェアリングエコノミー関連調査結果(2022年)」
https://sharing-economy.jp/ja/20230124

3.総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果

4.株式会社野村総合研究所 第276回NRIメディアフォーラム「2019年度版 2030年の住宅市場と課題」

5.株式会社矢野経済研究所 2021年版 住宅リフォーム市場の展望と戦略からの抜粋
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2757

6.東京大学・武蔵野大学・住友不動産株式会社による建物改修による脱炭素効果の研究成果
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/upload/b469e367eaae75cd0fa744f66eafe8a7c26429cf.pdf

7.ランサーズ株式会社 新・フリーランス実態調査 2021-2022年版
https://www.lancers.co.jp/news/pr/21013/

8.ひとつの企業に所属・依存するのではなく、複数の仕事やキャリアを持って働く人

 当社は今後も拡大が見込まれるレンタルスペース市場を中心として、さらにはその周辺領域における市場において、より多くのスペース利用者とスペース掲載者の課題を解決し、新たな社会インフラとしてビジネスや日常における更なる価値を提供することで優位性を確保し、事業の拡大・成長を推進してまいります。

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

① 当社の収益構造

 当社の売上高は、レンタルスペースのマッチングプラットフォームである「インスタベース」の売上高が97.4%(2024年3月期実績)を占めております。このサービスの売上高は、スペース掲載者からいただくスペース利用料に対する手数料収益であるため、利用総額を増加させることが売上高拡大に直結すると考えております。

② 重要なKPI

 上記の当社収益構造を踏まえ、当社は「利用総額」を重要指標と考えております。「利用総額」は利用数に予約単価を乗じた数値となり、利用数を増加させるためには予約可能な掲載スペース数の増加が重要と考えております。予約単価は短期的な変動が小さいことから、「利用総額」を最大化するために、「利用数」と「掲載スペース数」の最大化を中心とした取り組みを行っております。各指標の具体的な内容については以下のとおりです。

・利用総額

「インスタベース」においてスペース利用者がスペースを利用したスペース利用料の総額(税抜)

・利用数

「インスタベース」においてスペース利用者がスペースを利用した件数

・掲載スペース数

 スペース掲載者が「インスタベース」にスペース情報を登録し、「インスタベース」でスペースページを公開した数





(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等

 当社が優先的に対処すべき主な課題は以下のとおりです。

① 優秀な人材の発掘及び育成

 今後の持続的な事業成長を目指す上で、開発部門・営業部門・管理部門それぞれの職種における優秀な人材を十分に確保し、その人材を育成するとともに、効果的かつ効率的な人員配置と体制整備を行っていくことが重要であると捉えております。

 特に、スペース掲載者及びスペース利用者の顕在化したニーズに合わせながらも、潜在的なニーズに対して先行してサービスを提供していけるよう企画・開発していくことが重要と考えており、顧客ニーズを適切に把握できる人材を強化・育成することが必要であります。当社のビジョン・ミッション・バリューや事業内容に共感し、意欲が高く優秀な人材を採用していくために採用活動を積極的に進めるとともに、一人ひとりの強みを活かしてモチベーション高く働ける環境や仕組みの構築に取り組んでまいります。

② 技術力及び開発力の強化

 当社の提供するサービスはインターネット関連事業を主たる事業としているため、顧客ニーズに即して迅速なサービス・機能提供や改善、大量のトラフィックにも耐えられるシステム設計、環境変化に対応した新規サービス開発などを必要としており、そのためにも技術力及び開発力の強化が重要であると考えております。

 また、急速な技術革新が進む中、常に新しい技術・ノウハウを収集し活用していけるよう、技術力及び開発力の強化を目的とした教育・研修の充実を図るとともに、優秀なエンジニアの採用も積極的に行うことで、開発に必要な環境への投資も含め、迅速かつ適切なサービス開発が行える体制や仕組みの構築に取り組んでまいります。

③ 情報セキュリティの強化

 当社の提供するサービスにおいて多くの個人情報を取得しており、これらの情報を保護・管理するために、情報管理体制の継続的な強化と情報セキュリティシステムの構築等を行っていくことが重要であると考えております。

 当社では個人情報保護方針を策定し、社内規程に基づきサービスを運営しており、2021年12月にプライバシーマークを取得するなど、適切な個人情報の取扱いを行える情報管理体制を整備しております。さらに外部のセキュリティ診断なども実施することで、システムとしての安全性と堅牢性の向上を図っております。

 これらの取り組みにより、情報管理体制を強化するとともに、従業員への継続的な情報セキュリティ教育を実施することで、情報セキュリティ体制を強化してまいります。

④ システムの安定性の確保

 当社では、サービス・機能リリースにあたり動作チェック等の事前テストや、過負荷や不正アクセスのログ監視、システム障害等に関する社内アラート通知などにて安定したシステム稼働が行える体制を整えております。

 しかしながら当社の予測不可能なコンピュータウイルスの感染や不正アクセス、急激なアクセス増加など様々な要因においてサービスの停止や不具合が生じる可能性があります。

 不測の事態を想定して未然に防ぐ対策として、安定的に稼働できるようにシステムに冗長性を持たせ、稼働環境の見直しを継続的に行っております。また、セキュリティ対策の強化とともに、定期的なサービスの脆弱性診断等、外部の専門家による検証も実施しております。

⑤ 認知度の向上

 当社では、これまでテレビや新聞、交通広告等の大規模なマスメディア向け広告の出稿を実施しておらず、主にSEOを中心とした検索エンジンからの流入及びWebマーケティングの有効活用により、各サービスのユーザー獲得を図ってまいりました。そのため、サービスの認知度は、同業他社と比較して高くありません。

 各サービスの更なる事業拡大を目指すためにも、当社ブランドのより一層の認知度向上とブランド力強化が重要であると認識しております。

 今後は積極的にPR活動にも投資し、当社ブランドの認知度の向上を図ることで、中長期的・継続的にユーザー基盤の拡大に努めてまいります。

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