企業Laboro.AI東証グロース:5586】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1) 経営方針等

 当社は、「すべての産業の新たな姿をつくる。」「テクノロジーとビジネスを、つなぐ。」をミッションに掲げ、各産業の代表的な企業と協働し、顧客企業だけでなく、産業全体、さらには社会全体の本質的な構造転換への貢献を目指しています。そのために、顧客企業固有の成長戦略や事業課題に合わせたオーダーメイドのAI開発とAI導入・事業変革のコンサルティングを行う「カスタムAI」サービスを、主に顧客企業の成長と構造転換に直結する新規製品・サービス創出やビジネスモデル変革に関連するAIテーマ(当社では「バリューアップ型AIテーマ」と定義)を対象に提供しております。このサービスにより、各産業におけるイノベーションを促進し、持続可能な成長を支える新たな価値創造を実現していくことを目指しております。最先端技術とビジネス戦略の結びつきを強化することで、産業全体の進化を牽引し、社会に貢献する企業であり続けることを経営方針としております。

(2) 経営戦略等

 当社では、AIプロジェクトの伴走支援能力(「ソリューションデザイン」)をノウハウ化し、範囲の経済を効かせることによる事業成長を目指しています。そのため、顧客企業の新規製品・サービスの創出、及びビジネスモデル変革へのAI技術活用テーマに注力領域を絞っています。さらに、先行する取組を通じて構築したノウハウと技術を別の取組にて応用できる形で蓄積し、それを応用する取組を増やし拡大することを繰り返すことで、高単価かつ長期的な顧客取引を獲得するアプローチをとっております。このアプローチは、SaaSのような低価格で即時導入可能なAIプロダクトを展開することで短期的に中規模な事業規模の確立を狙うアプローチとは異なっております。この戦略を実現するために、市場におけるポジショニング(差別化された領域への位置取り)の確保とケイパビリティ(組織能力)の構築を行うことによって、安定的かつ成長性のあるビジネスモデルの確立に取り組んでおります。

① ポジショニング(差別化された領域への位置取り)確保

 当社では、新規製品・サービス創出やビジネスモデル変革等、ビジネスの新しい施策展開により顧客企業に大きな成長をもたらし、かつアカデミア(学術研究)発の最先端のAI技術の自前実装が求められる難易度の高い取組みを「バリューアップ型AIテーマ」と定義し、このような顧客企業の中長期的成長を左右する重要テーマへの取組をメインターゲットとすることで、一般的な受託開発やコンサルティングサービスに比べ、強固な顧客基盤、長期安定的かつ持続的に拡大可能な収益を生みやすいポジショニングを取っております。

 さらに、「バリューアップ型AIテーマ」を開拓する切り口として、「研究開発型産業分野」と「社会基盤・生活者産業分野」の二つの分野に重点的に取り組む立ち位置を取っております。これらは、産業のバリューチェーンの川上と川下において、特にAI技術が長期的に大きな付加価値を生む可能性の高い産業分野と考えております。

「研究開発型産業分野」とは、半導体、産業機械、材料、化学、ライフサイエンスなどの研究開発を通じて革新的な製品・サービスの創出を目指す分野を指し、当社はこの分野でAIを用いたR2Bプロセス(Research to Business、研究開発から事業化までのプロセス)の変革を通じて革新的な新製品の開発を狙う取組を、様々な顧客企業と進めております。これは、国内産業が国際競争力を堅持している希少な領域への貢献という観点で重要度の高い取り組みです。

 こうした産業領域では、研究開発の開始から事業化までの期間を五〜数十年の長期で捉え、毎年売上高の数%以上の投資を継続的に行うため、R2Bプロセスの変革に取り組むプロジェクトは長期化・大規模化する性質を持っています。一方で、このような研究開発活動は情報の機密性が高いため、多くの企業では外部委託を行わず自社内で推進されるため、AIベンダーにとっては参入障壁が高い状況にあります。

 その中で、当社は、各企業では自前での獲得が難しいAI技術開発力と導入に向けたノウハウ(「ソリューションデザイン」)が顧客企業に評価された結果複数の取組実績を有しており、高い参入障壁の中でも、グローバルトップ企業とのパートナーシップを築き、各社の全社的・中核的なビジネステーマに関わる共同プロジェクトを推進するに至っております。

「社会基盤・生活者産業分野」とは、主に消費材、流通・小売、交通・都市インフラ、メディア、金融、エンターテイメントなど消費者・生活者に直接製品・サービスを提供したり社会インフラを担う分野を指し、当社はこの分野でAIを用いた新たなデジタルサービスの開発や顧客との1to1コミュニケーション(一人ひとりの顧客に合わせたコミュニケーション)の活性化、AIによる交通運行や都市管理の最適化などの社会インフラの変革に取り組んでおります。

 こうした産業領域では従来、単一または少品種の製品・サービスをマス向けに提供するビジネスモデルが目指される傾向にありました。しかし、各種ビッグデータの取得が可能になったことを背景に、AIを用いた商品・サービスのデジタル化・パーソナライゼーションに向けた技術が高度化し、新たな顧客体験の提供が可能になっています。こうした先端技術の活用により製品・サービスをアップデートする取り組みは、当領域における企業にとって新たな収益源の創出に直結するため、プロジェクトが長期化・大規模化する傾向があります。当社は、すでに複数企業における新規サービスの創出やデジタル/AIを前提とする新たなビジネスモデルへの変革の支援実績を有しております。

② ケイパビリティ(組織能力)構築

 当社では、前述のポジショニングを実現するに当たり必要なケイパビリティ(組織能力)を構築するためには、優秀な人材の獲得・育成と再利用可能な技術的資産の蓄積の2点が重要と考えております。

 優秀な人材の獲得・育成においては、顧客企業のイノベーションをテーマにした、野心的で難易度が高く実現時のインパクトが大きなプロジェクトへの取り組みが、優秀な人材を惹きつける起点になると考えております。加えて、幅広い業界の代表的な企業との通算200を超えるAI導入プロジェクトを通して培ってきたAI技術の設計及びプロジェクトマネジメントのノウハウである「ソリューションデザイン」を体系化してきたことによって、当社の各人材がスキルを高め、キャリアを磨くことができる有効な機会を提供しているものと考えております。実際に当社では、戦略コンサルティング、総合コンサルティング、システムインテグレーション、データサイエンス、および事業会社での事業企画・開発などの経験を有する人材を厳選して採用し、OJT/Off-JTを通してソリューションデザインの体系を習得した当社独自人材である「ソリューションデザイナ」を育成・組織化するに至っています。

 再利用可能な技術的資産の蓄積においては、各プロジェクトを通して獲得したノウハウや技術をAI開発運用の社内共通基盤として蓄積しながら、共通性の高いプロジェクトテーマを他企業・他産業に効率的・効果的に横展開する、バリュー・ディストリビューション事業として展開しております。具体的には、主要なAIアルゴリズムやシステムアーキテクチャの設計、また技術検証や事業検証を行うために参照可能なプログラムソースコードや開発及びコンサルティングの方法論に関するドキュメントをまとめた「ソリューション開発ノウハウ」、センサーを搭載したハードウェア(センシングデバイス)と取得したセンシングデータのAI処理基盤をセットとして整備した「ハードウェア一体型基盤」、繰り返し使う基礎機能やプログラムソースコードの基本テンプレートをあらかじめ一つにまとめ開発者を支援するツール・開発環境として整備した「AI開発フレームワーク」の3種類の資産を新たなプロジェクトにて応用可能なノウハウ・技術プラットフォームとして、プロジェクトの遂行に活用しております。

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、より高い成長性及び収益性を確保する点から、売上高成長率及び売上高総利益率を主な経営指標と捉えております。加えて、顧客企業との長期的な関係性を構築し共創する付加価値を拡大させていくことを重視する観点から継続顧客からの売上高成長率、産業全体のイノベーション促進を目指すことから新規顧客の獲得件数を重要な経営指標と考えております。

(4) 経営環境

 2000年以降のインターネットの普及によるビッグデータの集積と、2012年頃から本格化した深層学習技術に代表されるアルゴリズムの発展により、AI技術は幅広い産業で実用に向けた実証実験が実施され、様々なAIサービスやAIソリューションが市場に登場しております。国内のAI全体市場(AIビジネス市場)は2021年に1兆1,609億円、2025年には1兆7,422億円に拡大すると予測されており、当社がビジネスを行うAI構築サービス市場はその半分程度を占め2021年に5,844億円、2025年には8,596億円に拡大すると予測されております。(出所:株式会社富士キメラ総研「2022 人工知能ビジネス総調査」、2022年8月)
 一方で、日本企業においては2021年度のIT予算の76%と大半が業務効率化など現行ビジネスの維持・運営に関連する投資(ランザビジネス予算)への配分になっており、新規製品・サービスの創出やビジネスモデル変革などにつながるビジネスの新しい施策展開を目的とする投資(バリューアップ予算)の構成比は24%と低い水準になっております。(出所:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査報告書 2023」、2023年3月)

 また、デジタル関連の取組が先行する米国企業と日本企業における取組成果の状況を比較すると、アナログ・物理データのデジタル化(デジタイゼーション)や業務の効率化による生産性の向上(デジタライゼーション)に関する取組では日米ともにすでに成果が出ている企業の割合が8割程度と同水準であるのに対し、新規製品・サービスの創出や顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革(デジタルトランスフォーメーション)に関する取り組みでは、すでに成果が出ている企業の割合が、米国では7割程度であるのに対し日本では2割強と三分の一程度の水準となっております。(出所:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書2023」、2023年3月)
 以上から当社は、国内企業におけるバリューアップ関連取組への投資及び成果創出は先行マーケットに比べ遅れた状況にあり、そうしたテーマへの取組を支援するバリューアップ型テーマ市場は、成長率の高いデジタル/AI関連市場の中でも特に高い潜在成長力を持つと考え、バリューアップ型のAIテーマを支援する市場をメインのターゲット市場と定めております。こうした「バリューアップ型AIテーマ市場」の正確な規模推計は存在しないものの、当社では、AI構築サービス市場におけるバリューアップ型テーマとランザビジネス型テーマの比率は概ねIT投資における両予算の配分比率と現在同傾向にあり、また今後は各社のバリューアップ予算配分の増加意向を反映する形でバリューアップ型の比率が拡大するであろうと考え、2021年にはAI構築サービス市場の24%を構成する1,400億円程度の規模が存在し、2025年には33%を構成する2,800億円程度へ拡大すると予想しております。
 バリューアップ型AIテーマ市場における競合環境は、現状ではデジタル/AI市場の他領域に比べ空白余地が大きい状況であると認識しております。その要因としては、こうした領域へのAI導入では、AI技術自体とそれを導入する事業の特性や環境の双方を深く理解した上で企業活動全体がどう転換するかを描きながら、他方で最先端のAI手法を組み合わせた複雑なソフトウェアを開発する、という難易度の高い取り組みを進める必要があり、その推進を取り仕切れるプロフェッショナル人材(専門家人材)と複雑なAIソフトウェアの開発運用を支えるノウハウや技術基盤が不足しているからだと考えております。結果として、AIソフトウェアを開発提供するAI SaaS企業や受託開発AIベンダーは主にデータのデジタル化や業務効率化などランザビジネス型テーマに対応しており、他方で顧客企業のデジタルトランスフォーメーションの支援を行う戦略コンサルティングファーム等はAIソフトウェアの開発には対応しておらず、AIを用いて顧客のバリューアップを支援できる企業は希少な存在であると捉えております。

(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題

 ① サービス形態の発展による市場におけるポジショニング(市場領域の位置取り)の強化

 当社は、各業界の代表的な企業にとって、産業・社会的インパクトの大きい重要なイノベーションテーマにおける推進パートナーとして当社を選択いただけるために、ポジショニング(注力領域における差別化された位置取り)の強化が重要な課題と認識しております。そのため、ターゲット領域に合わせたより解像度の高いサービス・プロダクトラインアップの拡充に努めてまいります。

 ② ケイパビリティ(組織能力)の更なる強化

 当社は、当社の競争力の源泉が高度な専門的能力を有するイノベーション・プロフェッショナル人材と再利用可能な技術的資産の蓄積にあると認識しております。両点の強化において、継続的な優秀人材の採用と育成、および共通基盤の企画開発を行ってまいります。

 ③ 内部管理体制の強化

 当社は、事業の拡大・成長に応じた内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。経営の公正性・透明性を確保すべく、コーポレート・ガバナンスを強化し、適切な内部統制システムの構築を図ってまいります。

 ④ 情報管理体制の強化

 当社は、サービス提供やシステム運用の遂行過程において、機密情報や個人情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を強化していくことが重要な課題であると認識しております。現在、情報セキュリティ管理規則等に基づき管理を徹底しておりますが、今後も社内教育・研修実施やシステム整備などを継続して行ってまいります。

 ⑤ 財務基盤の強化
当社は、更なる事業の拡大・成長に向け、採用活動およびマーケティング活動に注力するとともに、AI開発に不可欠なインフラの整備に積極投資を図る方針であります。自己資金による資金の循環サイクルを確立することを基本方針としておりますが、顧客プロジェクトが長期かつ大型化するに伴い、投資が先行することが想定されます。当該資金需要に対応するため、エクイティファイナンスや内部留保により、財務基盤の強化に努めてまいります。
 

 ⑥ SDGsの取り組み

 当社は、各業界の代表的な企業と産業・社会的インパクトの大きい重要なイノベーションテーマにて協働する方針をとっており、各取り組みがSDGs(持続可能な開発目標)に掲げられる各目標達成に繋がっていくと認識しております。特に研究開発へのAI技術活用により科学技術イノベーションを推進する各取り組みは「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「13.気候変動に具体的な対策を」に、AI技術により新たな生活者サービスや社会基盤を創出する各取り組みは「3.すべての人に健康と福祉を」「8.働きがいも経済成長も」「11.住み続けられるまちづくりを」に、そして幅広い企業や研究機関との協働を通したイノベーション共創戦略は「17.パートナーシップで目標を達成しよう」に密接に同期しております。今後も、これらのテーマにおける具体的な成果の創出に努めてまいります。

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