HOYA 【東証プライム:7741】「精密機器」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社は指名委員会等設置会社の体制をとっており、取締役会はモニタリングボードとして、執行側を監督し、グループ全体の経営方針に関する重要事項を審議し決定しています。経営に対する監督機能と客観性を担保するため、当連結会計年度では取締役8名中6名を独立社外取締役としております。社外取締役には経営者としての十分な経験や国際感覚に加え、6名中3名は「人材育成/ダイバーシティ」のバックグラウンドをもつ人物を選定、また気候変動に関してもマネジメントとして気候変動に対する重要な意思決定を行った経験を有する人物を配しています。当社グループのサステナビリティに関する基本方針、マテリアリティ、TCFDやRE100などの重要施策はESG推進室において起案し、取締役会で審議・決定しています。また、取締役会は、チーフサステナビリティオフィサー(CSO)から気候変動への対応含むサステナビリティ関連課題に関し定期報告を受け(当連結会計年度の期間においては年4回)、多角的な観点から助言をおこなっています。またHOYAグループ全体の人事施策についてはグループCHROが定期的に取締役会に報告を行っています。
なお、ポートフォリオマネジメントによる事業部制での経営をおこなっていることから、各事業部の気候変動や人的資本を含むサステナビリティ関連課題への具体的な対応方針は各事業の経営戦略、経営計画、年間予算に反映されており、取締役会で承認・決定されます。
また、各事業部にもサステナビリティ/ESG担当チームを設け、グループ目標に整合したKPIをCSOと協議の上、各事業部が設定し、設定されたKPIに向けた施策を展開し、活動や進捗はCSOから取締役会へ報告され、取締役会によりモニタリングされています。
なお、当連結会計年度より、執行役報酬の中長期インセンティブであるパフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)においてESG指標を導入し、外部機関による評価や重視するESGテーマの取組状況に応じた目標を設定しており、さらに翌連結会計年度からは各事業の事業部長の年次インセンティブについても各事業部で設定したESG関連目標のうち重要なKPIを評価項目(例:再生可能エネルギー使用比率。以降、「再エネ率」)とするなど実効性を高めています。
サステナビリティに関する社内体制
当社は2022年3月、CSOならびにグループ本社にESGの専任部門であるESG推進室を設けました。CSOおよびESG推進室が中心となってHOYAグループ全体のサステナビリティ/ESGに関する活動を推進しています。さらに、ESG推進室と連携をおこなうESG担当を各事業部に設置し、CSO、ESG推進室、各事業部のESG担当による連携を通じて経営層の議論も反映し、グループで一体的な活動を促進していきます。
(2)戦略
当社は、2021年10月に「温室効果ガス(GHG)の削減」「製品品質・安全」「従業員エンゲージメント・ダイバーシティ&インクルージョン」「サプライチェーンマネジメント」の4つのESGマテリアリティを特定し、各マテリアリティに対する取組を進めています。
気候変動問題においては、当連結会計年度にTCFD提言に基づくシナリオ分析を開始し、気候変動に関するリスクおよび機会の特定と財務インパクトへの評価を実施し、その対応策の策定、実施の取組を進めています。
人的資本においては、HOYAグループは、人材を最優先すべき資本の一つと位置付けており、継続的な投資を行うことで、継続的な競争優位性を確保することを目指して人材戦略を策定しています。
HOYAグループは多様な事業の最適地生産・最適地販売をグローバルで推進しています。その中で当社において人材の多様性は強みであり持続的な価値創造の源泉であると考えています。そのうえで、経営理念と経営基本原則に記されたHOYAグループの基本的な理念と価値観に従って、HOYAグループの従業員が業務を遂行する中で遵守すべき基本的な指針として定めた「HOYA行動基準」を27言語でグループ内に周知徹底させており、多様な従業員へHOYAグループ従業員としての一体感を醸成しております。
一方、個人の尊重を経営基本原則の1つに据えており、個人の自主性と創造性を最大限に発揮できる機会の拡大と、安全で働きやすい環境の確保で、従業員のゆとりと豊かさの実現に最大限努力しております。
なお、新たな価値創造を目指して、従業員のウェルビーイングを重視した、多様な人材が活躍できる環境作りに努めることは、HOYAグループにおけるサステナビリティ方針の1つです。優秀な人材確保の世界的な競争激化がリスクとして存在する一方、多様な人材の確保・育成による価値創造イノベーションの機会は増加していると考え、国内外投資家を含むステークホルダーの意見・フィードバックを参考にした総合評価で「従業員エンゲージメント、ダイバーシティ&インクルージョン」をHOYAグループのマテリアリティの一つとして特定しています。
a) 気候変動:
重要性に鑑み、当連結会計年度のTCFD開示においてはビジョンケア事業部(メガネレンズ)とMD事業部(ハードディスク用ガラスサブストレート)の2事業部を対象としました。当該2事業部のCO2排出量の合算で、HOYAグループ全体の7割近くを占めています。物理リスクに関しては、両事業部において最も規模の大きいタイならびにベトナムの工場を主な分析対象としました。
シナリオ分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)といった専門機関が想定する1.5℃ならびに4℃のシナリオに基づき、移行リスク・物理リスク・機会の3つの側面から分析を行い、重要度を発生可能性と財務影響度から3段階で評価しました。なお、期間としては短期(1~3年)、中期(2030年)、長期(2050年)を設定し、今回は2030年時点での影響を想定しています。
※TCFD提言に基づくシナリオ分析の詳細は、「TCFD提言に基づく情報開示」をご参照ください。
URL:https://www.hoya.com/wp-content/uploads/2023/04/TCFD-Disclosure-J_Final-1.pdf
表1 ビジョンケア事業部のリスクおよび機会の一例(3段階評価の内、中程度以上を抜粋)
| 内容 | 対応策 |
移行リスク | ・消費者の気候変動に対する意識向上への対応遅滞による市場シェア低下と売上減少 ・顧客のサプライヤー選定に気候変動対策/情報開示が導入され、これに遅滞した場合の顧客喪失、売上減少 ・CO2排出量削減や水リサイクル等の環境関連課題への不十分な対応によるレピュテーション低下と売上減少 | ・製品へのCO2排出量表示検討 ・マーケティング戦略の見直し:製品イノベーションを通じた気候変動影響低減、情報発信強化 ・顧客をはじめ、外部ステークホルダーに対するESGの進捗状況の定期的な報告 ・TCFDやCDP開示など、気候変動関連の情報開示の拡充 |
物理リスク | 異常気象をきっかけとした感染症の発生による生産活動やサプライチェーンの乱れ、ロックダウン等の行動制限による顧客であるメガネ小売店の営業制限による需要減 | ・自社工場に関するBCPの策定とアップデート ・生産拠点の分散化 |
異常気象による生産や販売活動の停滞、洪水による生産拠点の水没や損壊 | ・生産拠点分散と個々の水害対策の推進 ・材料や在庫の確保をはじめとするBCPの策定 | |
機会 | 低炭素製品へのニーズが高まり、製品開発にいち早く成功することで売上が増加 | ・カーボンフットプリントの表示 ・環境負荷低減のマインドセットの製品を開発戦略へ組み込む ・材料メーカーとの連携 |
リサイクル/リユースが容易な製品へのニーズが高まり、製品開発にいち早く成功することで売上が増加 | ・サプライヤーや顧客との協業を通じた循環型社会に焦点を当てた製品戦略構築 | |
DX等による製造工程の効率化の実現 | ・生産効率向上によるCO2削減と関連コストの削減 ・DXならびにDXトレーニングへの投資 | |
BCP策定、自社生産拠点と仕入先の多様化 | ・BCPの導入と訓練 ・各工場の改修、拠点の地理的分散など |
表2 MD事業部のリスクおよび機会の一例(3段階評価の内、中程度以上を抜粋)
| 内容 | 対応策 |
物理リスク | 異常気象をきっかけとした感染症の発生による生産活動やサプライチェーンの乱れ、顧客の工場稼働低下による需要減 | ・自社生産拠点に関するBCPの策定とアップデート ・生産拠点の分散化の推進 ・顧客での気候変動リスクを低減するプランの検討 |
機会 | ESGや気候変動への取組と情報開示により金融市場での評価向上、資金調達コスト低減 | ・TCFDでの開示とESG開示への展開 ・CDPでの開示とランクアップ |
低炭素製品へのニーズが高まり、製品開発にいち早く成功することで売上が増加 | ・カーボンフットプリントの表示 ・製品戦略の見直し ・技術開発予算の増額 ・材料メーカーとの連携 | |
地球温暖化による水資源不足の結果、水の再利用・使用量削減技術を開発し費用削減 | ・使用水量の少ない製造方法の確立 ・水の高度処理技術導入、再利用増 | |
DX等による製造工程の効率化の実現 | ・生産効率向上によるCO2削減と関連コストの削減 ・DXならびにDXトレーニングへの投資 | |
BCP策定、自生産拠点と仕入先の多様化 | ・BCPの導入と訓練 ・各工場の改修、拠点の地理的分散など |
b) 人材育成方針
HOYAグループは多様性を尊重して受け入れ、その「違い」を積極的に活かすことで、変化し続けるビジネス環境や多様化する顧客ニーズに柔軟に対応し、ひいては企業価値の創造に繋がると考えています。ライフケア事業と情報・通信事業の更なる成長に向けて、多様な人材を採用するとともに、育成・活用していくことを人材戦略の要として位置づけています。
すべての人が持てる力を最大限に発揮して、切磋琢磨しながら組織や事業に貢献する、これがHOYAの目指す従業員像です。従業員の多種多様な能力開発ニーズにこたえ、また業界に必要な専門知識やスキルを習得してもらうため、HOYAグループでは、事業部や地域ごとに最も適した人材育成を進めています。
多様な人材の採用
必要な時に必要な人材を採用するという考え方のもと、当社はこれまでも国籍・性別等にとらわれず各個人の能力に基づく採用を進めてきました。従業員の90%以上が日本以外の拠点に属しており、また現地の優秀な人材を積極的に登用し活躍の機会を増やすことで、グループ全体のグローバル化を進めています。その結果、現在では海外現地法人の9割で日本人以外が責任者を務めています。今後も多くの優秀な人材に機会を均等に提供していきます。
多様な能力開発ニーズに応えるためのキャリア開発プログラム
企業の競争力を維持するうえで、継続的な知識のアップデートやリスキリングが重要であると考えています。HOYAグループでは、オンデマンドによるオンラインの学習プラットフォームを提供し、HOYAの成長戦略を支える従業員の再教育、従業員の生涯学習の活性化などの様々なキャリア開発ニーズをサポートしています。
事業・地域に最適化された人材育成プログラム
HOYAグループでは、事業部や地域ごとに最も適した人材育成プログラムを個別に展開しています。例えば、ライフケア事業における「コンタクトのアイシティ」を運営するアイケア事業部では、店舗で販売業務に従事するスタッフ“アイ-コンシェルジュ”の接客スキル向上とホスピタリティマインドの醸成などを目的とした育成プログラムを事業部内で設計し、内容の充実に取り組んでいます。
c) 社内環境整備に関する方針:
多様な人材が能力を発揮して活躍できる環境と、より生産性高く効率のよい働き方を可能とする制度を整えることで、仕事のやりがいと個人の成果の充実を実現し、企業価値との両立を図っていきます。
HOYAグループでは、基本的人権を保護し、人種、国籍、性別、宗教、信条、出生、年齢、心身の障がい、性的指向、その他の法的要件による差別やハラスメントを行わず、従業員が最大限に能力を発揮できる職場環境を提供することを「HOYA行動基準」に明文化しています。私たちはこれに基づき従業員の安全と健康に配慮するとともに、人権を尊重し、差別やハラスメントがなく、多様な人材がそれぞれの能力や専門性を最大限に生かし自律的かつ柔軟に働くことができる職場環境の整備をしていきます。
HOYA行動基準の浸透
全ての従業員が本行動基準を理解していることを確認するために、HOYAグループでは1年に1度、各国において適切な方法で、本行動基準についての見直しと確認を実施します。多様な従業員への周知徹底のため、27言語に翻訳のうえ、年に一度所属グループでの読み合わせやオンライン教育・確認テストなどを実施しています。また、内部監査を実施して、上記の手順が実施されていることを確認します。当連結会計年度のグループ全従業員対象の本行動基準の順守に関する確認書の提出率は97%でした。
従業員エンゲージメントサーベイ
「HOYA」という職場が、会社が「求める行動」を従業員個人が体現しつつ、個人をより一層成長させていける“フィールド”であるために、エンゲージメントサーベイを通して改善点を見出し理想とする職場に近付けていくことが、従業員・会社の双方にとって重要な取組と捉えています。HOYAでは、グローバル全従業員を対象に定期的な調査を実施しており、サーベイの結果を受けて各職場でディスカッションを行い、結果をより深く理解した上で改善点を特定して行動計画へとつなげています。2022年9月(当連結会計年度)に調査を実施後得られた結果を分析の上、主に「タレントマネジメント」「キャリア開発」2つの分野に焦点を当て、一連の施策を実行に移しています。(2022年9月実施分の回答率97%)
パフォーマンス・マネジメント(業績評価制度)
従業員の能力発揮を促すには、成果を公正かつ客観的に評価できる仕組みの整備が不可欠であると考えています。そのためにこれまでのHOYAグループのパフォーマンス・マネジメント(業績評価制度)のフレームワークを発展させ、当連結会計年度からグローバル共通の仕組みとして新たな評価制度の運用を開始しました。業績評価で得られた結果を報酬に反映させていくことのほか、人材育成のための定期的かつ効果的なフィードバックへとつなげています。
健康経営
HOYAグループでは、「従業員の健康保持・増進に関する取組は経営上の“投資”である」との認識にたち、会社の支援とすべての従業員の協力により、健康経営に取組んでいます。
CEOによる健康経営宣言とともに、「HOYAグループ社員が守る7ヶ条」が従業員へのメッセージとして配信されています。 HOYAグループでは、従業員の豊かなライフプランと企業の永続的な発展の実現を目指し、従業員が健全な心身で生き生きと働けるように、生活習慣病予防及び重症化予防対策、メンタルヘルス対策、喫煙対策など施策を通じて、健康の保持・増進にグループ全体で取組んでいます。2017年に「健康経営優良法人認定制度」が開始されて以降、連続して認定を取得しています。
(3)リスク管理
当社グループはポートフォリオ経営をおこなっており、経営環境の変化に対してポートフォリオを見直すことで対応をおこなっています。また、グループ本社にコンプライアンス、薬事規制対応、サイバーセキュリティー、安全衛生など当社にとってリスクの大きいと考える機能について責任者を置き、事業部ごとにおける同機能の責任者を通じてリスクの特定と予防をおこない、年に一度グループ本社の各責任者より取締役会に報告されています。
気候変動に関するリスク管理
気候変動を取り巻く状況変化については、CSOのもとESG推進室が外部専門家も交えてモニタリングし、分析をおこないます。当連結会計年度は、当社グループの中でGHG排出量が多く気候変動の影響が大きい2事業部の海外拠点についてリスクおよび機会の分析を行いました。今後対象地域および事業を順次拡大していきます。
モニタリングの結果、状況が大きく変化した場合は、気候変動に関連した物理リスクについては本社ESG推進室、IR、環境安全衛生部のメンバーを含む本社TCFDプロジェクトと事業部門が協働でリスクを見直し、その対応は各事業責任者の統括のもと各事業部内の適切な部門(例:生産本部、店舗開発部門、調達部門)が連携し、おこなっていきます。
また気候変動による事業環境の変化に伴うリスク(移行リスク)についても、シナリオ分析に基づき世界各国にいる事業部門のサステナビリティ/ESGチーム・担当者やサステナビリティに関連する環境、品質保証、調達などの部署と共有し、それぞれの事業部門に適した対応策を策定していきます。
(4)指標及び目標
a) 気候変動
気候関連のリスクと機会の評価に使用する測定値として、スコープ1・2の温室効果ガス排出量、および事業活動で使用する電力の再生可能エネルギー比率を指標としています。
当社グループの温室効果ガス排出量(スコープ1・2の合計)の97%はスコープ2であり(2021年度実績より)、その大部分が購入電力由来の間接的排出であることから、電力の再エネ化に積極的に取組むことで温室効果ガス排出抑制へ効果的に繋げることができるため、2023年1月にRE100へ加盟し、2040年再エネ率100%(中間目標:2030年再エネ率60%)を会社目標に設定し、再エネ化の取組を加速させています。
各事業部では会社目標に沿って再エネ化計画を策定し、RE100(再エネ化)目標の達成度を各事業責任者の年次インセンティブに反映することで実効性を高めています。
脱炭素化に向けて、従前から実施している高効率設備への更新や省エネルギー活動、および社用車のエコカー(ハイブリッド車・電気自動車など)への切り替え、照明のLED化に加えて、太陽光パネルの設置や再生可能エネルギー由来の電力への切り替え等の取組を国内外で開始しています。さらに今後は化石燃料をエネルギー源とする設備の電化も検討していきます。なお、スコープ3については、2023年度より算出準備を進めていきます。
項目 | 2021年度実績 (基準年) | 2030年度目標 | 2040年度目標 |
再生可能エネルギー電力比率(%) | 1% | 60% | 100% |
HOYAグループCO2排出量 (スコープ1・2) | 522千-CO2 | 60%近い削減 | 100%近い削減 |
※当連結会計年度(2022年度)の実績は会社ウェブサイトにて2023年7月に公開予定です。
URL:https://www.hoya.com/sustainability/environment/environment/
※2021年度実績は、63製造拠点(国内10拠点、海外53拠点)および45非製造国内拠点(アイシティの小売全店舗、10集計単位を含む)の集計データです。また、限定的保証業務により第三者検証を実施しております。
b) 人的資本・多様性
女性活躍推進法に基づく実績・目標を「従業員の状況」に記載しております。そちらをご参照ください。
- 検索
- 業種別業績ランキング