FIXER 【東証グロース:5129】「情報・通信業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
<ビジョン>
当社はビジョンを「FIXERのテクノロジーで日本中のDXを成就する」と定め、当社のコーポレートステートメントである「Technology to FIX your challenges.」と共に掲げております。
私たちFIXERはテクノロジーの力を信じています。情報化社会のビジネスシーンにおいて、DX(注1)というチャレンジの成功の鍵を握るのはテクノロジーです。コーポレートスローガンに込めた「FIX(=成就)」とは、お客さまのチャレンジを実現し、事業の価値を高めることです。そして「your challenges」は、お客さまとFIXERの全従業員、あらゆるステークホルダーのチャレンジを示しています。
<ミッション>
当社のミッションは「日本のエンタープライズシステムにグローバル品質のクラウドパワーを」です。FIXER は2008年に設立されて以来、エンタープライズシステムのクラウド化の事例を発表し、日本におけるクラウドの黎明期からMicrosoft Azureの普及の一翼を担ってきたものと考えております。2018年に政府情報システムにおける基本方針としてクラウド・バイ・デフォルト原則(注2)が示されて以降、クラウド環境へのリフト(移行)&シフト(進化)のニーズがますます高まるなかで、FIXERがこれまで培ってきたクラウドネイティブなテクノロジーで日本のDXを加速させてまいります。
<バリュー>
当社はお客様への提供価値を「世界一クラウドネイティブなシステム開発力と最高位パートナー認定「Azure Expert MSP」のマネージドサービス」と定めています。
クラウドを導入するプロジェクトでは、戦略と計画を立て、実行する組織を準備し、構築したデジタル資産を管理する一連のプロセスが重要となります。
Azureの最高位認定である Expert MSPとなるためには、海外の第三者機関によって営業から設計・構築・運用に至る一連のプロセスが、前述のMicrosoft Cloud Adoption Framework for Azure(CAF)に準拠しているか厳しく審査されます。2019年7月、FIXERはこのExpert MSPに認定されております。
(2) 経営戦略等
<経営戦略>
これまで当社は、プロジェクト型サービスにおける大規模開発案件(数千万円/月レベル)を通じて、さまざまなノウハウや部品(汎用化したプログラム)を蓄積してまいりました。
・パブリッククラウドが提供する認証サービスに、データベースサービス等を組み合わせた認証・認可基盤
・典型的な構成に対し、インフラの構築・設定・正常性確認の操作をプログラム化した、構築自動化ツール
・自動的に電話をかけ、又はSMSを送信するSaaS型自動架電サービス
・生成型AI (Azure OpenAI Service)を活用したエンタープライズAGIプラットフォーム「GaiXer」を開発
これらは、政府・自治体や金融機関といった、セキュリティ要件が厳しいお客様にもご活用いただいており、システムインテグレータに対してはクラウドに関する高い専門性、専業クラウドインテグレータに対しては大規模なシステム開発への対応力で、独自性の高いポジションを築いてきました。今後は中小規模開発案件においても、大型プロジェクトの知見・ノウハウを活かして顧客数を拡大し、成長の加速化を図ってまいります。
また、当社は2021年8月期まで大規模な広告展開等は実施しておりませんでしたが、顧客数拡大の実現に向けて、企業認知及びクラウドにおける純粋想起率(クラウドといえば? と聞かれて当社が想起される割合)の向上により、営業効率・採用効率を高めるため、2022年8月期より広告展開を強化しております。
2024年8月期はストック型SaaSとして販売しているGaiXerへの投資を進め、営業体制の構築と強化、マーケティング活動の強化を図ってまいります。
<経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等>
当社は継続的な企業価値向上を実現するために、事業および組織(人材)を規模・質の両面で強化し、そしてこれらを支えるマーケティング、ブランディング活動を実施します。
事業の規模については、顧客数を経営指標に設定しております。今後は積極的な広告宣伝によってクラウドにおける認知・想起を高めることで、顧客数を増加させていく所存です。
事業の質=収益性については、売上総利益率を経営指標に設定しております。今後はさらなるプロセスの自動化の推進や、クラウドネイティブな開発手法への習熟を通じて、利益率の向上に努めてまいります。
組織の規模については、採用人数を経営指標に設定しております。全国の高専や大学(院)の技術系学生団体との連携強化、テレビ局やソーシャルメディアとタイアップしたエンジニア勉強会開催等の施策を通じ、新卒・中途採用を強化してまいります。
これらの施策の結果としてモニタリングしている経営指標としては、1人当たり売上高と平均年齢があります。
2023年8月期の1人当たり売上高については、48,659千円(注3)となっており、外部環境の影響が大きいSaaSの自動架電を除いた1人当たり売上高は40,875千円となっております。今後自動化の推進により増加させていく方針であります。
また、2023年8月31日時点の平均年齢は、28.4歳(注4)となっております。今後も、クラウドを始めとする最新技術への親和性の高い、若手エンジニアの採用を継続的に強化します。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社がビジョンに掲げるDXの市場は、拡大しつつあります。Microsoft Azureパートナーとしての複数の受賞・認定によって裏付けられた当社の技術力と、顧客企業のDX実現を加速する企画提案力を活かした事業展開により、日本におけるDXの進展とともに、当社も成長してまいりたいと考えております。このような状況を踏まえ、当社は、次のような課題に対し計画的かつ迅速に対処してまいります。
① クラウドビジネスの強化・拡大
当社は創業当時、クラウドの黎明期からエンタープライズシステムのクラウド化に特化し、パブリッククラウド市場の発展とともに成長してまいりました。昨今は、企業のDXニーズに基づくクラウドサービスの普及に加え、ライフスタイル全般のデジタルシフト等の背景もあり、パブリッククラウド市場の成長加速が見込まれます。パブリッククラウド市場の変化に伴い、これまでオンプレミス形態の事業を主軸としていた大手システム開発ベンダーなどが同市場へ参入し、競争が激化することも想定されます。
当社としましては、a.当社内の更なるサービス開発体制の強化、b.Microsoftとの営業面での連携強化、c.過去の開発・運用実績の中で蓄積した技術的知見や情報資産を活用し、顧客企業に対し高い付加価値を提供しつづけることで競争の激しいクラウド市場においても高いポジションを築いてまいります。
② 優秀な人材確保・育成による開発体制の強化
人材の確保は当社の成長の礎であり、優秀なエンジニアをいかに多く獲得するか、及び在籍エンジニアのスキルをいかに高めていくかが重要な経営課題であると認識しております。
当社では、すでに高い技術力を有するエンジニアの中途採用だけでなく、高等専門学校生を中心とした、新しい技術に対する関心の高い新卒を積極的に採用することで、クラウドネイティブな開発手法の教育や、重要案件での登用を進めております。当社社員の平均年齢は28.4歳(2023年8月31日時点)であり、将来性のある若いエンジニアたちが当社の主要サービスの開発を支える体制が整いつつあります。
また、バーチャル環境における空間デザインや特定の技術領域への対応など、プロジェクトの要所で高い専門性を持つ人材が必要となる場合については、海外のプロフェッショナル人材も含め外部人材の活用を推進しております。
③ 独自サービスの強化及び技術革新への対応
新規参入が相次ぐクラウド市場において他社との競争優位性を担保するためには、技術革新への継続的な取組みが必須であると考えております。
当社では、パブリッククラウドにおける長年の経験を通じて蓄積した、クラウドサービスの組み合わせに係る以下のノウハウや部品(汎用化したプログラム)を磨き続けております。
・パブリッククラウドが提供する認証サービスに、データベースサービス等を組み合わせた認証・認可基盤
・典型的な構成に対し、インフラの構築・設定・正常性確認の操作をプログラム化した、構築自動化ツール
・他のシステムの指示に従って自動的に電話をかけたり、SMSを送信したりできる、SaaS型自動架電サービス
蓄積したノウハウ(クラウドサービスの組み合わせ、構築・運用自動化の技術やサービスの汎用化)に加え、パブリッククラウドベンダーとのリレーションを活かした先端技術の情報収集や、エンジニア採用・育成への投資を続けることで、技術による競争優位性を維持・拡大してまいります。
④ 事業展開のグローバル化
当社では現在、国内市場における事業拡大に注力しておりますが、中長期的な視点からは、デジタル化の波がボーダーレスに進展することが予想されます。特に、当社の顧客企業がデジタルで先行する海外勢としのぎを削る局面に備え、当社も自社サービスのグローバル展開に備えていく必要性を認識しております。
当社では、Microsoft のGlobal Award受賞により、グローバル市場での認知度を向上させていることに加え、グローバルで公開されているMicrosoft Azure及びAWSのマーケットプレイスに当社の商材を登録することで、グローバル市場へのリーチを拡大しております。
⑤ 事業ポートフォリオの拡大・安定した収益基盤の強化
当社の事業は、クラウドネイティブなシステムを開発するプロジェクト型サービス、クラウドやソフトウエアのライセンスを提供するリセール、パブリッククラウドの基盤構築・運用を行うマネージドサービス、開発ノウハウを元に独自サービスを展開するSaaSという4つの事業から構成されております。
期間の決まっている「フロー」であるプロジェクト型サービスで構築したシステムを、継続的に売上の上がる「ストック」であるリセール及びマネージドサービスでお預かりし運用することで、事業を拡大しております。
その上で、当社独自のSaaSアプリケーションサービスを展開し、当該サービスの継続的な利用料や、付随する事業企画コンサルティング、技術検証といった支援も得ながら収益を拡大し、収益基盤のさらなる安定化に寄与するサイクルを生み出してまいります。
⑥ 他企業との連携及び協業の推進
当社のサービス展開においては、問い合わせ窓口を起点とした自社営業チャネルに加え、Microsoft や広告代理店、顧客企業をチャネルとする機会創出や販売も推進しております。
Microsoft が考える製品・サービスのマーケティング戦略(どの製品・サービスを、どの業界の、どのような顧客課題に対して販売するかという、販売シナリオ)を踏まえ、当社サービスを市場に投入していくことで、効果的な営業活動を推進してまいります。
⑦ 認知度の向上
今後のクラウド市場の成長に伴い、競合他社との競争環境が激化することに備え、当社の事業成長をより一層加速させるためには、当社の企業認知度及びクラウドにおける純粋想起率(クラウドといえば?と聞かれて当社が想起される割合)向上に向けた施策が必須であると考えております。
当社が従前から活用してきたメディア(コーポレートサイト、自社テックブログ、媒体上でのスポンサーサイト)に加えて、テレビCM・インターネット広告、タクシー広告、屋外広告等の展開を積極的に検討してまいります。
⑧ 管理体制の強化
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて創り出された「ニューノーマル」という言葉に表されるように、これまで当たり前と認識されてきた常識が変化しております。当社におきましても、このような変化や今後の事業規模拡大などに対応できるよう、管理体制の強化・整備を課題の一つとして認識しております。
当社は事業継続の観点から、東京本社・四日市事業所・名古屋事業所を中心とした複数の事業拠点にまたがる営業・開発体制を整備しております。同時に、20代~30代の若手中心に事業を推進する社風を活かし外部環境の変化に応じたプロジェクト間での柔軟なリソースシフトを可能にしております。並行して、内部統制システムの整備を主とした内部管理体制の強化にも努めてまいります。
⑨ システム基盤の強化
マネージドサービスを中核としたクラウドサービス事業においては、サービスのセキュリティや安定稼働を担保することで、顧客企業の信頼度と満足度を高めることが重要であると考えております。
そのため、当社では自社サービスのセキュリティ強化並びに品質向上を図る取組みの一環として、各種の公的認証を取得しております。当社が取得しております公的認証はISO/IEC 27001(情報セキュリティマネジメントシステム)、ISO 9001 (品質マネジメントシステム)、ISO/IEC 20000(ITサービスマネジメントシステム)、ISO/IEC 27017(クラウドセキュリティ認証)及びプライバシーマークです。
⑩ 財務上の課題
財務基盤の安定性を維持しながら、事業上の課題を解決するための事業資金を確保し、新規事業開発のために機動的な資金調達を実施できるよう、内部留保の確保と株主還元の適切なバランスを保つことを、財務上の課題として認識しております。
(注) 1.デジタルトランスフォーメーションの略。最新のデジタル技術を駆使した、デジタル化時代に対応するための企業の変革という意味合いで使われております。経済産業省が2018年12月に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」では、デジタルトランスフォーメーションを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と、より詳細に定義しております。
2.2018年6月にデジタル庁が発表した「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」に記載されている「政府情報システムの構築を実施する際に、クラウドサービスの利用を第一候補」とする基本方針。
3.2023年8月期実績。売上高÷期中平均人員数により算出。人員数は、正社員、出向社員の合計。
4.正社員、出向社員の平均年齢。
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