企業兼大株主ENECHANGE東証グロース:4169】「情報・通信業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの経営方針、経営環境、経営戦略並びに対処すべき課題等は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、別段の表記がない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

(1)経営の基本方針

 当社グループは、「エネルギーの未来をつくる」をミッションとして掲げ、エネルギー分野特化型の「エネルギーテック」企業グループとして、エネルギーに関するデータの活用促進を通じ、相互シナジーを活かした事業展開を行い、脱炭素化社会の実現に向け、GXを推進する企業というユニークなポジショニングで、エネルギーテック領域でカテゴリーリーダーとなることを目指しております。脱炭素社会を実現するためには、①電力網の脱炭素化、②交通の電化、③食の改善、④自然保護、⑤製造業の浄化、⑥二酸化炭素の除去といった手法が有効とされており(注1)、当社グループでは①電力網の脱炭素化及び②交通の電化に貢献する事業を展開しております。

 ①電力網の脱炭素化においては、電力の送配電や小売側の技術革新が必要と考えております。当社グループは、エネルギーテック事業者として、変化する環境下において最適と判断するサービスを各種ステークホルダーに提供していく方針です。また、エネルギー業界の構造転換に柔軟に対応しつつ、規制及び環境の変化によって生み出される潜在的なニーズに対してエネルギーデータ解析技術を軸として高い精度のオペレーションを継続することによってそのニーズを満たしていくことが必要であり、それを実現するための施策に継続的に取り組んでいく方針です。

 ②交通の電化においては、EVの普及と同時にEV充電インフラを整備することが急務であると考えております。EVドライバーにとっては、どこでも簡単に充電できる環境の整備が必要とされており、駐車場を持つ施設にとっては、駐車場を利用するEVドライバーのニーズに対応するため、EV充電設備の導入・運用を安定的に行うサービスが求められています。当社グループとしては、これらのニーズを満たすため、EV充電サービス事業者として、EV充電設備の導入・運用にかかる手間を最小限に抑えたオールインワンのサービスを提供し、日本全国に積極的にEV充電設備を設置することで、快適なEV充電の利用環境の整備に継続的に取り組む方針です。

 注)1.ジョン・ドーア著「Speed & Scale」参照。

(2)経営環境

 当社グループが属するエネルギー業界を取り巻く環境におきましては、ロシア・ウクライナ情勢の悪化以降、資源価格高騰の影響を受けた電力会社の財務状況の悪化が見られましたが、電気料金の値上げや卸電力市場価格の落ち着きに伴い、一部電力会社においてユーザー獲得に前向きな動きが見られる状況です。

 長期的な観点でのエネルギー業界を取り巻く環境におきましては、引き続きグリーントランスフォーメーション(GX)が進展しました。日本政府による2022年12月22日の第5回GX実行会議において「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~」が掲示され、150兆円のGX投資を官民で実現していくため、日本政府としても20兆円規模の先行投資支援を実行する旨の意見表明がなされる中、こうしたGXの動きの中心となる電力業界においては、2016年4月の電力の小売全面自由化以降、当社のベース市場である電力販売額は約18兆円(注1)と拡大しております。また、乗用車の新車販売におけるEVをはじめとした電動車比率を2035年までに100%とする目標が掲げられる(注2)など、EVの普及とそれに併せたEV充電インフラの需要が高まることが見込まれております。さらに、経済産業省が掲げる2030年の充電器の設置目標が15万口から30万口に倍増(普通充電器の設置目標は12万口から27万口に増加)(注3)、さらに、2024年には合計360億円を充電インフラ整備の予算に配分することが発表される(注4)など、EVの普及とそれに併せたEV充電インフラの需要がますます高まることが見込まれています。

(注)1.電力・ガス取引監視等委員会「電力取引報」より、2022年12月時点の電力販売量から算出。

   2.経済産業省「第6次エネルギー基本計画」(2021年10月22日)、電動車は電気自動車(EV)、プラグイ ンハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HV)を含む。

   3.経済産業省 「充電インフラ整備促進に向けた指針」(2023年10月18日)より記載

   4.クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等国の導入促進補助金、2023年度補正予算及び2024年度予算

(3)経営戦略等

 単一制度におけるエネルギー自由化市場としては世界最大規模の電力市場(注1)を有し、近年の電力・ガス自由化、スマートメーターの普及等により競争環境が整備されつつある日本市場において、当社グループの強みは、「エネルギーテック」企業グループとして、エネルギー分野に特化した技術開発力を基盤としたデータ分析力と、幅広い顧客基盤を有していることにあると認識しております。

 当社グループのTAMについては、「第1 企業の概況 3.事業の内容」に記載のとおり、「EV充電事業」は2.2兆円(国内のガソリンスタンド売上高約9兆円に、目的地充電の利用率25%を乗じて試算)、「エネルギープラットフォーム事業」は約3,600億円(2022年の電力市場規模18兆円に、電力切替後の継続報酬料率相場である2%を乗じて試算)、「エネルギーデータ事業」は1,800億円(2022年の電力市場規模18兆円に、売上高IT予算比率約1.00%を乗じて試算)と推定しております。

*1 帝国データバンク「ガソリンスタンド経営企業の総売上高」(2017年)より

*2 電力・ガス取引監視等委員会「電力取引報結果」より、2022年の電力販売額合計

*3 電気料金に対する継続報酬売上料率、当社調べ

*4 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査」のエネルギー業界(社会インフラ)の売上高に占めるIT予算比率

*5 マッキンゼー・アンド・カンパニー「Building the electric-vehicle charging infrastructure America needs」(2022年4月18日) / 「What Norway's experience reveals about the EV charging market 」(2023年5月8日)を基に当社想定

 なお、電力・ガス自由化以降の競争環境の整備、スマートメーター設置の普及等「エネルギーの4D」の浸透、さらには「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において産業・運輸・家庭部門の電化によって現状より最大40%電力需要が増加すると想定されているとおり、電力市場の規模は今後も継続的に拡大するものと想定しております。

 当社グループでは、以下の戦略を持って、シェア拡大に取り組んでおります。

 「EV充電事業」においては、今後EVの普及とともにEV充電インフラの需要が高まるものと認識しております。当社グループでは、営業体制及びパートナー連携の強化に取り組むと同時に、駐車場を持つ施設並びにEVドライバー双方にとって利便性の高いサービス開発に取り組んでまいります。

 「エネルギープラットフォーム事業」においては、中立的な立場でサービス提供をすることが、提携する電力・ガス会社数や取得可能なデータ量の拡大に繋がっていると認識しております。今後も当社グループでは、中立的な立場でのサービス提供を前提に、オンラインのみならず、不動産仲介業者や金融機関等とのパートナーシップを拡大することで、オフラインでの集客力を強化し、ユーザー数の拡大に努めてまいります。また、電力切替に加えて、ガスセットでの切替、クリーンエネルギーの付加価値販売等のクロスセルを通じたARPU(注2)の向上により収益基盤の強化を目指してまいります。

 「エネルギーデータ事業」においては、今後、電力・ガス会社間での競争がより激化すると見込んでおり、顧客開拓から電力調達に至るまでの電力・ガス会社にとってのバリューチェーン全体におけるデータ活用に対するニーズがより一層高まると考えております。当社グループはそのようなニーズに対して、「エネルギーデータ事業」で展開しているデジタルマーケティング支援や、電力データ解析サービスによる業務効率化支援を行うことで、電力・ガス会社のデジタル化推進のサポートを通じた競争力強化により事業成長を目指してまいります。

(注)1.Central Intelligence Agency 「The World Factbook」(2022年3月時点)。日本の電力需要は中国、アメリカ、インドに次ぐ4位。アメリカは一部の州で自由化実施、その他の国は自由化未実施の状況です。

   2.ARPUは、Average Revenue Per Userの略称であり、1ユーザー当たりの平均収益を意味しております。

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、長期においてはフリーキャッシュ・フローの最大化による企業価値の向上、そして中期においては売上高の成長を重視しております。そのために、売上高を「顧客数」×「ARPU」と定義し、高い売上高成長率とともに安定した経営基盤を構築するために、積極的な成長投資を通じた「顧客数の最大化」と「継続的なサービスラインナップの拡充による顧客提供価値の増大によるARPUの向上」に取り組んでまいります。

 「EV充電事業」においては、EVユーザーから充電設備利用に応じて受け取る充電収入と、施設から受け取るソフトウエアライセンス料がストック型収益の基盤となり、その収益の源泉となる充電設備の設置口数および各充電設備の稼働時間が重要な指標となります(当社グループが注力する目的地充電(6kW以上)の設置口数は2023年12月末時点で累計2,076口)。今後、当社グループの充電設備の設置が進むことで、ストック型収益基盤は拡大する見込みであり、加えて、国内にEVが普及していくことで充電設備の利用回数および稼働時間が増加し、充電設備1口あたりのストック型収益のさらなる増加が見込まれるため、各種稼働率向上施策を実施することで知名度を向上させ、当社が注力する目的地充電の分野における更なるシェアの拡大を目指します。

 「エネルギープラットフォーム事業」においては、家庭・法人ユーザーの電力契約切替以降、提携電力・ガス会社より継続的に収受するストック型の切替報酬並びにプラットフォームの基本利用料が、ストック型収益の基盤であり、そのため、ユーザーの電気・ガス代の従量制で継続的に発生するストック型の切替報酬の対象となる継続報酬対象ユーザー数が重要な指標となります(2023年12月期 573,139人)(注1)。電気・ガスの利用自体は、長期にわたり予見性が高いインフラであることを考慮すると、今後もストック型収益基盤は拡大していく見込みです。また、効果的なプロモーション活動やパートナーシップの拡大を継続していき、「エネチェンジ」ブランドの知名度を向上させる方針です。

 「エネルギーデータ事業」においては、月額のソフトウエアライセンス料(保守運用費を含む)がストック型収益の基盤であるため、当社の提供サービスを導入している顧客数が重要な指標となります(2023年12月期 61社)。また、エネルギー業界特化型のSaaS事業者としては、直接的な対象顧客は電力・ガス事業者であることから社数が限定的になるため、利用者数に応じた従量課金体系を採用することで、電力・ガスを利用するエンドユーザーを、サービスの間接的な顧客として収益基盤の継続的な拡大を目指しています。そのためにも「エネチェンジクラウドMarketing」及び「エネチェンジクラウドDR」の継続的なプロダクト開発と営業活動を推進してまいります。また、「EV充電エネチェンジ」アプリのノウハウを活用した、EV充電アプリの開発運用や全国のEV充電スポット情報のAPI提供などのEVサービス向けソリューション「エネチェンジクラウドEV」を展開することで、EV充電関連のサービス展開の強化も図っております。


(注)1.継続報酬対象ユーザー数は、一般家庭ユーザーの電力容量は平均的に4キロワットとみられているため、法人ユーザーの総獲得容量から割り戻した一般家庭ユーザー相当への換算値と一般家庭ユーザー数の合計値を用いております。

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

1.事業上及び財務上の課題

 世界的な脱炭素社会への転換に向けた潮流のもと、エネルギー業界を取り巻く環境は、日本政府による「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定(注1)されるなど、長期的な観点でグリーントランスフォーメーション(GX)の推進が重要視されております。

 脱炭素社会を実現するためには、1電力網の脱炭素化、2交通の電化、3食の改善、4自然保護、5製造業の浄化、6二酸化炭素の除去といった手法が有効とされております(注2)。そのような環境において、当社グループは、「エネルギーの未来をつくる」というミッションを掲げ、1電力網の脱炭素化及び2交通の電化に貢献する事業を展開しております。

 これらの分野において、エネルギー分野特化型の「エネルギーテック」企業グループとして、エネルギーに関するデータの活用促進を通じ、相互シナジーを活かした事業展開を行い、GXを推進する企業というユニークなポジショニングで、エネルギーテック領域でカテゴリーリーダーとなることを目指しております。

 また、当社グループは、長期においてはフリーキャッシュ・フローの最大化による企業価値の向上、そして中期においては売上高の成長を重視しております。そのために、売上高を「顧客数」×「ARPU」と定義し、高い売上高成長率とともに安定した経営基盤を構築するために、積極的な成長投資を通じた「顧客数の最大化」と「継続的なサービスラインナップの拡充による顧客提供価値の増大によるARPUの向上」に取り組んでまいります。

<外部調査委員会による調査報告書で指摘を受けた課題>

 そのような中、当社は、2024年3月27日付け「外部調査委員会の設置及び2023年12月期有価証券報告書の提出期限延長申請の検討に関するお知らせ」にてお知らせしたとおり、2023年12月期より本格的に立ち上げた新規事業である「EV充電事業」において、当社グループが採用するSPCスキームにおけるSPCであるEV充電インフラ1号合同会社を、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」で定められている支配力基準に基づく実質的な支配があるものとして、当社の連結範囲に含めることといたしました。

 SPCスキームの遂行及び会計処理を行うに当たって、EV充電インフラ1号合同会社の連結要否の検討に必要な情報が当社取締役会等に適時かつ十分に報告又は共有がされていなかった等の内部統制上の問題点があるのではないかとの指摘を受け、当社は、EV充電インフラ1号合同会社を非連結とした従来の会計処理について、公正性を確保した調査により、前提となる事実関係を明らかにするとともに、当該会計処理の検討過程の検証、当該会計処理と類似する事案の存否、事実関係の調査及び評価、並びに内部統制上の課題を評価していただく必要性を認識し、2024年3月27日開催の取締役会において審議の上、外部調査委員会を設置することといたしました。

 当社は、2024年6月21日付「外部調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ」のとおり、同日、調査報告書を受領いたしました。かかる調査により、本調査の結果認められた問題点として、内部統制の観点、上場企業の連結財務諸表の作成に責任を負うべき経営者として不適切な言動の観点、会計監査人とのコミュニケーションの観点についての指摘、および、その原因分析として下記の指摘を受けております。

①EV充電事業の事業リスクに対応し得る態勢の不足

 「EV充電事業」に内在する課題として、「EV充電事業」が、EVの販売動向に影響される一方で、EVの販売動向が、そのインフラである充電機器等の整備の程度に相互に影響されるため、事業の見通しに不確実性があり、その分、資金調達にも困難が伴い、SPCスキームのような新規性の高いスキームの組成を試みる、また、その際に出資者に対し何らかのリスク軽減措置をとるといった通例とは異なる対応が必要な事業であったことが挙げられる。このような非通例の取り組みにおいて、それが各種の法令・会計基準等との関係で問題にならないよう、会計・法務コンプライアンス等の観点から十分な事前検討を行いつつ進めていく必要があるが、当社においては、それらの検討を十分に行えるだけの社内体制の整備が不十分であり、また、そのことにも起因して経営メンバーにおける本スキームの会計上のリスク認識は不十分であった。

②当該会計処理に関わった経営メンバーにおいて、会計監査人との適切なコミュニケーションが不足しており、また、そのような状況について認識を共通化することができていなかった。

 新規性の高いSPCスキームを採用するに当たっては、当然、会計上の判断の不確実性も高いものとなることが予想されることから、会計監査人との間では、緊密なコミュニケーションが必要であり、それによってこれらの点について会計監査人との間で理解に齟齬が生じることを避ける余地も相当程度あったと考えられるが、当該会計処理に関わった当社の経営メンバーにおいては、本スキームの会計上のリスク認識が不十分であり、その結果、会計監査人との間のそのような適切なコミュニケーションが不足していた。

③株価の上昇を強く志向する一方でコンプライアンスを軽視した経営トップその他の経営幹部の姿勢

 当社においては、役員(社外・執行役員を含む)における株価との連動性が高い報酬体系を背景に、プライム上場を目標として、売上確保のために本スキームを非連結で実施するインセンティブが強く生じている状況にあった。当社の経営トップその他の経営幹部においては、株価の上昇を強く志向する一方でコンプライアンスを軽視する姿勢が見られ、これらが、SPCスキームの実施という結論優先で検討が進む方向に拍車をかけていた。

④実効性のある内部統制及びガバナンスが構築されず、当該会計処理を採用するにあたって十分な牽制・監督機能を果たすことができていなかった。

 当社においては、代表取締役CEOの城口氏に牽制を及ぼすことができる執行側の社内人材の不足により、城口氏を牽制できる役割をもった執行側の人材や部署が十分に機能していなかったため、重要なリスク要素について、未報告ないし説明不足となり、取締役会が十分な監督機能を果たす機会を得られていなかった。また、SPCスキームを推進したい経営メンバーを牽制する立場から検討を行う社内の法務コンプライアンス部門の関与が望まれたが、社内の法務コンプライアンス態勢が脆弱であったため、そのような関与が行われていなかった。

 当社は、外部調査委員会の再発防止策の提言に沿って、下記を含む再発防止策を策定・実行し、適正な内部統制の整備・運用を図ってまいります。

①コンプライアンス意識の向上

 経営トップを筆頭に当社の役職員においては、コンプライアンスに係る認識を改め、上場企業として求められるコンプライアンス意識を徹底いたします。まずは、役職員全員に対して、コンプライアンス意識を浸透させ、正しい行動を促す企業風土を醸成するため、経営理念や行動規範等を見直し、すべての役職員が守るべきコンプライアンスの基本的な考え方や指針を明文化するとともに、浸透の徹底を図るべく取り組みを継続的に行う態勢づくりを進めます。

 具体的には、コンプライアンス・リスク管理委員会が主導して実効性あるコンプライアンスプログラムの立案・計画、推進を図るとともに、モニタリングを通して継続的に取り組んでまいります。また、役職員の意識変革を着実に推進するために、体系的な研修プログラムの計画と実施、社内のコンプライアンス意識の定着度や醸成を図るための定期的な意識調査を実施いたします。併せて、役職員の人事評価制度の見直しや内部通報制度の実効性を高めるための取組みを行ってまいります。

②権限分散による牽制機能の強化

 経営トップに対して、適切な牽制や抑制を図ることができる態勢上の見直しを図ることで経営トップの権限行使を適切に牽制あるいは抑制できる態勢を構築いたします。

 具体的には、業務執行取締役を複数名選任し牽制態勢の実効性を担保するとともに、現在、経営トップに集中している権限を適切に分有させることや、執行サイドの経営メンバーと社外役員との連携を強化いたします。

③取締役会の監督機能の強化

 取締役会の監督機能をより一層強化するため、社外役員に対して必要な社内の情報が適時適切に到達するよう、社内情報にアクセスできる機能を強化し、その機会も拡充いたします。

 また、取締役会でのリスクマネジメントに関する議論の高度化のため、オペレーションリスクのほか、事業戦略に起因するリスク等について、取締役、執行役員及び監査役間での徹底した議論を行うことで、役員間でリスク認識を共有し、経営課題と一体的に取り組めるようにいたします。特に、法務上及び会計・経理上の重要なリスク要因については、社外役員、経営メンバーがその具体的内容や検討状況を把握できるような環境を整備いたします。

④法務コンプライアンス及び会計・経理に係る機能の強化、会計監査人との信頼関係の構築

 法務コンプライアンス機能を強化するとともに、社内の重要なプロジェクトに前広に関与させ、かつその業務執行の独立性が尊重される態勢を併せて整備いたします。

 会計・経理面に関しては、会計リスクの洗い出し、会計論点の専門的かつ慎重な検討の実施を事業部門から独立した立場からできる態勢を作った上で、会計判断が必要な事象については、事業部門だけで判断することがないよう、客観的な検証プロセスを確立いたします。

 これらの態勢整備及びその他の再発防止措置を講じた上で、会計監査人との十分な信頼関係を構築し、コミュニケーションの充実を図ります。

 さらに、上記に加えて、当社グループとして取り組むべき主な課題は以下の項目と認識しており、課題の解決に向けた取り組みを進めております。

<競争優位性の確保について>

①ストック型収益基盤の強化

 当社グループは「EV充電事業」「エネルギープラットフォーム事業」と「エネルギーデータ事業」を展開しておりますが、今後持続的な成長を維持するためには、ストック型収益基盤のより一層の強化が必要であると考えております。

 「EV充電事業」においては、EV充電設備所有者から受け取る充電収入や、施設から受け取るソフトウエアライセンス収益がストック型収益の基盤となります。今後、当社グループの充電設備の設置が進むことで、ストック型収益基盤は拡大する見込みです。加えて、国内にEVが普及していくことで充電設備の利用回数が増加し、充電設備1口あたりのストック型収益のさらなる増加が見込まれるため、積極的なプロモーションを実施して知名度を向上させ、当社が注力する目的地充電の分野における更なるシェアの拡大を目指します。

 「エネルギープラットフォーム事業」においては、家庭・法人ユーザーの電力契約切替以降、提携電力・ガス会社より継続的に収受するストック型の切替報酬並びにプラットフォームの基本利用料が、ストック型収益の基盤であり、そのため、ユーザーの電気・ガス代の従量制で継続的に発生するストック型の切替報酬の対象となる継続報酬対象ユーザー数が重要な指標となります。電気・ガスの利用自体は、長期にわたり予見性が高いインフラであることを考慮すると、今後もストック型収益基盤は拡大していく見込みです。また、効果的なプロモーション活動やパートナーシップの拡大を継続していき、「エネチェンジ」ブランドの知名度を向上させる方針です。

 「エネルギーデータ事業」においては、月額のソフトウエアライセンス料(保守運用費を含む)がストック型収益の基盤であるため、当社の提供サービスを導入している顧客数が重要な指標となります。また、エネルギー業界特化型のSaaS事業者としては、直接的な対象顧客は電力・ガス事業者であることから社数が限定的になるため、利用者数に応じた従量課金体系を採用することで、電力・ガスを利用するエンドユーザーを、サービスの間接的な顧客として収益基盤の継続的な拡大を目指しています。そのためにも「エネチェンジクラウドMarketing」及び「エネチェンジクラウドDR」の継続的なプロダクト開発と営業活動を推進してまいります。また、「EV充電エネチェンジ」アプリのノウハウを活用した、EV充電アプリの開発運用や全国のEV充電スポット情報のAPI提供などのEVサービス向けソリューション「エネチェンジクラウドEV」を展開することで、EV充電関連のサービス展開の強化も図っております。

②EV充電事業の新規立ち上げおよび早期拡大

 急速に変化し続けるエネルギー業界において、当社グループが企業価値を向上させ、高い成長を実現していくためには、既存事業の規模の拡大と収益源の多様化に加え、積極的な新規事業の発掘と育成が課題と認識しております。このような考えのもと、当社グループにおいては、2021年11月からEV充電サービスを「EV充電エネチェンジ」のブランド名で提供を開始いたしました。事業の立ち上げ以降、エンジニア・セールス人員を中心とした採用の拡大による組織体制の構築や、テレビCM等の積極的なマーケティングの実施等先行投資を進めた結果、「EV充電エネチェンジ」の目的地充電(6kW以上)分野における設置口数は2023年12月末時点で累計2,076口(注3)となりました。

 今後の事業環境は、乗用車の新車販売における電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド車(PHV)の比率が過去最高水準を維持する中、経済産業省が掲げる2030年の充電器の設置目標が15万口から30万口に倍増(普通充電器の設置目標は12万口から27万口に増加)(注4)、さらに、2024年には合計360億円を充電インフラ整備の予算に配分することが発表される(注5)など、EVの普及とそれに併せたEV充電インフラの需要がますます高まることが見込まれています。そのような中、当社グループは、「EV充電エネチェンジ」の更なる充電収入拡大のため、EV充電設備の稼働が見込まれる適地の開拓・選定、および土地利用許諾の取得サポートや、EVユーザーに対するマーケティングなどの積極的な営業活動を通じた新設の充電設備の設置を進めてまいります。併せて、既設のEV充電設備の稼働時間の向上のため、EVユーザーの更なる利便性の向上に資する取り組みも継続いたします。

③エンジニア主体によるプロダクト開発の強化

 エネルギー業界においては、今後のデジタル化の更なる進展に伴い、ビッグデータ解析やAIといった技術を活用したプロダクト開発の重要性がますます増してくるものと見込まれます。そのような中、当社グループでは、高いエンジニア比率を有する組織構造を保つことでエンジニア主体によるプロダクト開発を強化しています。コア技術を自社開発することを基本方針として、技術部門の陣容を強化しつつ、必要に応じてライセンス調達等を組み合わせながらプロダクトの開発強化を推進してまいります。これらの実現には、高い採用力を維持・強化することが必要であり、今後も採用活動には人的・資金的投資を積極的に行い、当社グループのミッションへの共感を軸とした採用力強化に注力していきます。

(注)1. 2022年7月27日から岸田内閣総理大臣を議長とするGX実行会議が開催され、2022年12月に基本方針が取りまとめられ、その後、パブリックコメント等を経て、2023年2月10日に閣議決定

   2. ジョン・ドーア著「Speed & Scale」参照

   3. EVsmartの「EV充電器の統計情報」より6kW充電スポットのみを抽出して作成(基礎充電は含まず)

   4. 経済産業省 「充電インフラ整備促進に向けた指針」より記載

   5. クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等国の導入促進補助金、2023年度補正予算及び2024年度予算

④財務体質の強化

 当社グループの連結貸借対照表の状況は、当連結会計年度末において1,479,226千円の債務超過、現金及び預金は2,179,715千円となっております。これは主に2022年度より本格的な先行投資を開始した「EV充電事業」の影響で、2022年12月期並びに2023年12月期の2期連続で営業損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローとなった結果によるものです。他方、このような先行投資負担が発生することに鑑みて当社は、2024年2月9日の取締役会において、第三者割当増資について決議し、2024年2月26日に3,999,899千円の資金調達が完了しております。しかしながら、今後も更なるストック型収益基盤の強化を図るにあたり、「EV充電事業」における積極的なプロモーション・営業活動やプロダクト開発等、及び「エネルギープラットフォーム事業」における効果的なプロモーション活用やパートナーシップの拡大並びにM&Aの推進、並びに「エネルギーデータ事業」における「エネチェンジクラウドMarketing」及び「エネチェンジクラウドDR」に関して、成長をより加速させるための資金需要が生じる可能性があり、資金需要が顕在化した際には、適時に資金調達を検討してまいります。

 なお、当社は「EV充電事業」において、EV充電インフラ1号合同会社のリース債務を保証していることに加え、EV充電インフラ1号合同会社の社債権者との間で、事前の定めにより、出資後3年経過時点で保有する社債が匿名組合出資持分(TK)に転換された以降、当社が出資簿価にて出資者のTK出資持分を買いとる権利(コール・オプション)を有し、また、当該出資者がそのTK持分を当社もしくは当社が指定する第三者に出資簿価で売り渡す権利(プット・オプション)を有しています。そのため、当社がコール・オプションを行使してEV充電インフラ1号合同会社のTK出資持分を取得する場合や、出資者がプット・オプションを行使して当社がEV充電インフラ1号合同会社のTK出資持分を取得する場合においては、EV充電インフラ1号合同会社のTK持分の買取に係る資金需要が発生する可能性があります。かかる状況に備え当社グループにおいては、金融機関との協議を進める他、財務体質を強化する取組を進めています。

 なお、EV充電インフラ1号合同会社のTK持分取得の判断は当該時点における当社の経営方針、資金状況、その他状況等を総合的に勘案の上で決定するため、現時点ではTK持分の取得に関して決定した事実はありません。

<管理体制の強化について>

①情報管理体制の強化

 当社グループが運営する事業においては、顧客情報や個人情報を多く取り扱っており、これらの情報管理体制の一層の強化が重要であると考えております。

 当社はプライバシーマークを取得しており、関連する個人情報保護法令等に基づき、個人情報の適切な取り扱いに十分配慮しながら事業を遂行しております。また、「個人情報保護方針」を含む社内規程の整備並びに運用の徹底、個人情報に関する内部監査や社内研修の実施を通じて、これらの情報については厳正に管理しております。引き続き社内システムの一層のセキュリティ強化、社内研修の整備等を図り、情報管理体制を強化していく方針です。

②システムの安定的な稼働

 当社グループが提供する各種サービスはインターネットを利用したサービスであり、システムの安定的な稼働が不可欠です。そのため、「システム管理規程」に基づき、不正アクセス対策、コンピュータウィルス対策、データの管理等の徹底を図っております。データベースについては、原則としてクラウドサービス上で構築・運用をすることでセキュリティを担保しており、クラウドサービスでカバーされない範囲については、データベースの暗号化やセキュリティパッチの自動適用等、必要と考えられる対策を行っております。今後はユーザー数の増加や取り扱いデータ容量の拡大に伴うシステム投資、適切な人員体制の拡充を計画的に行うとともに、データのバックアップ体制強化についても努めてまいります。

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