AobaーBBT 【東証スタンダード:2464】「サービス業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループの事業目的は、「Lifetime Empowerment(生涯学び続け、自分をアップデートする学習プラットフォームの提供)」という当社ビジョンに基づき、全ての年齢層が生涯学び続け自らをアップデートし続ける環境を提供し、世界に通用する人材を育成することです。
この目的に沿い、プラットフォームサービス事業においては、世界標準の「国際バカロレア」「ケンブリッジ大学国際教育機構」認定カリキュラムに立脚した、幼児から18歳までの一貫教育(幼・小・中・高等学校)を、英語・日本語を含む多言語で提供しています。
そしてリカレント教育事業では、当社の創業以来の強みであるオンライン学習システム(AirCampus®)と18,000時間を超える教育コンテンツを積極的に活用した教育を提供しています。
このように、幼児から大学・大学院、ビジネスパーソン、最高経営責任者、起業家までをカバーする「生涯教育プラットフォーム」を構築し、全世界の人々に対し、世界水準の教育サービスを提供しております。
これらの企業活動を通じ、絶えず教育を革新し、新たな価値を創造する人材を輩出し続けることを基本方針としております。当社グループは、このような基本方針に基づいて事業を展開し業績の向上を図るとともに、株主利益や社会環境にも十分に配慮し、企業価値の向上に努めていく所存であります。
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
(経営環境)
日本並びに先進国経済は、コロナ禍の影響が安定化へ向かう一方、2022年2月以降のロシア・ウクライナ紛争によるエネルギー、食糧、レアメタル等の市場ひっ迫、半導体を含む供給不足をトリガーとするインフレが継続的に進みました。今後の企業経営においては、経営者と経営陣はより一層「自社、外部環境、顧客」を高く・広く・深く掘り下げた経営が求められるようになったと思料され、また従来の「モノ」への投資から、無形の資産、特に「人的資本」への投資の優劣が、企業競争力のそれを律速する競争へシフトしつつあります。
また、2020年からのコロナ禍が引き金となり、従来のように大学キャンパスに通学することなく大学を卒業する学生が増えました。このような流れから学位の価値が低下し、4年をかけて学位を取得するという従来型の大学のモデルそのものに疑問を抱き、より短期で身近なスキルアップに関心を持つ層が増えております。
さらに2022年後半から大きな話題となっているChatGPTをはじめとした生成系AIが多くの産業・社会活動領域に影響を与えています。中期的に俯瞰すると、人間の業務の一定割合は、AIやテクノロジーが代替するフェーズが一段階進んだと考えられます。特に、企業における働き方・人材育成のあり方、政府における人材政策、大学・大学院等を始めとする学校経営の根本において、以下に例示する人材ニーズ増加にみられるとおり、大規模な人材ニーズの変化が生じております。
・AIで代替できない「構想力」を有する人材ニーズ
・AI/DXを担うデジタル人材ニーズ
・AIで代替できないリーダーシップ・起業家精神・問題解決力を発揮する人材へのリスキリングニーズ
・高等教育を含む学校におけるデジタル技術活用、オンラインと集合研修を組合わせたブレンド型教育ニーズ
・あらゆる領域における一括教育から個別最適化教育への根本的なシフト
これらの変化は「Lifetime Empowerment(生涯学び続け自分をアップデートする学習プラットフォームの提供)」をビジョンに掲げ、子どもから経営者に至る全年齢層を対象に、AIに代替されない本質的な力を身につけた「世界で活躍するリーダーの育成」をミッションとした教育を一貫して提供してきた当社グループにとって、非常に大きな成長機会となります。この成長機会を確実に掴むため、オンライン教育の事業会社から世界の教育の最前線を走るEdTechカンパニーへ進化すべく、教育プラットフォームとコンテンツの両面において積極的な先行投資を行っております。当該先行投資と、以下のような当社グループが有するノウハウと資産を活かし、企業価値向上に繋げてまいります。
・対話と集合知を重視したオンライン学習プラットフォーム
・経営者が知るべきビジネスやマネジメントの最前線をカバーする18,000時間超のコンテンツ・ライブラリー
・オンライン教育、ブレンド型教育の設計・開発・運営ノウハウ
・グローバル人材育成のための各種カリキュラム体系・小中高等学校教育における2大世界標準である「国際バカロレア」、「ケンブリッジ国際」の認定を有する日本唯一の国際教育機関
(中長期的な会社の経営戦略)
当社グループは、2023年3月期から2025年3月期の3か年を対象とする『中期経営計画2022-24』を策定いたしました。しかしながら、2024年3月期の通期連結業績について、急激な物価上昇や 円安進行等を背景とした個人消費意欲の減衰、厳しい経営環境が継続したこと等により、増収ではあったものの当初計画を下回る結果となりました。特に、以下の事業分野において期初に想定していなかった要因が発生いたしました。
・University 事業系は、BBT大学経営学部において、若い世代を中心に4年間をかけて学位を取得するニーズが低下し、短期集中型のスキル系プログラムにシフトした結果、入学者減となりました。BBT大学大学院経営学研究科は、CEOに求められる経営を実践的に学ぶMBAニーズは堅調なものの、コロナ後の消費分散の流れを受け大都市圏における40代以上の男性の出願数が減少しました。
・英語教育事業系は、教育のオンライン化の潮流と、買収した子ども向けオンライン英語事業を梃子に、中期経営計画を策定しましたが、法人向けが堅調な一方、個人向けは消費意欲の減衰を背景に、2024年3月期は前期比5%の成長にとどまりました。
・ITマネジメント事業系は、既存のIT サービスマネジメント領域の認定教育事業は堅調に成長した一方、アジャイルやDevOps、DX推進等の新興領域の売上はマーケティング施策が効果に結びつかなかったため、前期比約10%の成長にとどまりました。
これらの影響を勘案し、2024年5月15日において中期経営計画の最終年度である2025年3月期の数値目標を修正、2025年3月期は以下のような取組方針を通じ、売上高8,313百万円(前期比11.2%増)、営業利益501百万円(同30.8%増)を見込んでおります。
・リカレント教育事業については、各事業の中で最も高い成長を見込むのは法人向け人材育成事業系となります。ポストコロナ時代におけるリカレント・リスキリングニーズの高まりを受け、デジタル時代に勝ち抜く新しい形の人材育成のニーズは一層高まっております。このような法人顧客のニーズを捉え、売上高及び営業利益の向上を図ってまいります。
・University事業系は、BBT大学、BBT大学院、Bond-BBT MBAの3つの組織をより統合し、人件費の抑制と事業の効率化を図るとともに、ニーズが高まる法人派遣の獲得にも注力してまいります。
・ITマネジメント事業系は、AI/DX人材ニーズの高まりを背景に法人中心に事業を拡大する予定です。
・英語教育事業系は、英語のみならず法人のグローバル人材育成ニーズに応えた開発を行い、事業拡大を図ります。
・引き続き、売上高及び営業利益に寄与するのはプラットフォームサービス事業となります。2013年のアオバジャパン・インターナショナルスクールの買収によってスタートしたプラットフォームサービス事業においては、これまでM&Aと拠点開設の先行投資を行ってまいりました。2024年3月期以降は拠点開設の計画が無いため、設備・人材への先行投資が一段落することから、先行投資拠点の順調な生徒数の増加と共に、売上だけでなく利益額・利益率も向上が期待できます。
・世界でも事例は僅かで日本国内で初めてとなる、国際バカロレアのDP(ディプロマ・プログラム、高等学校教育課程)のオンラインパイロット事業認可は、当社グループのオンライン教育ノウハウを生かせる領域であるだけでなく、今後の事業拡大に大きく資することが期待できます。日本の国際バカロレア教育のニーズの高まりだけでなく、世界の国際バカロレア教育の拡大も視野に入れた、当社グループのグローバル市場展開の布石となるプロジェクトと考えております。
以上、今後とも変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業の持続的な成長と価値創造を実現するための戦略をさらに進めてまいります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記で述べた外部環境の変化は、当社グループの成長にとって非常に大きな事業機会が存在すると考えています。かかる事業機会を獲得するために、以下の項目に取り組んでまいります。
① 幼児から高等学校までの国際的視野に立った世界標準の全人教育への世界標準の普及
世界規模で人類社会の未来を前向きに変革することが出来るという意味でのグローバルリーダー人材輩出のためには、幼少期から高等学校までの全人教育の充実が非常に重要です。そこで提供される教育は、世界標準であることが必要です。現在、当社は、2大世界標準カリキュラムとして認識されている「国際バカロレア」、「ケンブリッジ国際」の双方の認定校を幼児から高等学校まで一貫して運営する国内唯一の教育機関です。国際バカロレアの普及においては、自社で国際学校(アオバ・グループ)を運営するのみならず、6年前から文部科学省の受託を受けて「文部科学省 IB教育推進コンソーシアム事業」の事務局を運営しております。また、アオバジャパン・インターナショナルスクールは、オンラインでIB教育を提供することが可能なパイロット校として、国際バカロレア協会から、世界で5校(アジア・オセアニア地区では唯一)の1校として選抜されました。
以上の取組を通じて獲得した世界標準の教育ノウハウを梃子として、今後は物理的キャンパス拡大よりも投資対効果に優れ、かつ当社の強みでもあるオンラインを通じ、国内のみならず、アジア・オセアニア市場においても顧客層を拡大してまいります。リカレント教育、リスキリング教育といった「大人の学び直し」だけではなく、幼少期からの教育の構造的、質的向上についても大いに貢献したいと考えております。
② 法人研修市場でのシェア拡大と営業力強化
今や政府も重要な政策として掲げる、日本労働市場の生産性向上や活性化、超高齢化社会に備えた大人の生涯規模での学び直し(リカレント教育)、AI革命に対処するためのリスキリング、給与所得者の賃金の継続的向上等のためには、法人企業における人材育成やキャリア教育の大幅な向上が必須です。各種統計からも、日本は①個人が自ら学ばないことに加えて、②企業が社員・従業員の人材育成に投資しないことが明示されて久しい状況です。
こうした現状を打破するためには、法人研修事業において、顧客数の増加と1社当たりの取引額の拡大を重視し、市場カバレッジの強化を図る必要があります。これを実現するために、組織構造を見直し、まず人員面での営業力を強化いたします。また1社当たり取引額の拡大と収益性確保の観点から、企業全体のマネジメント教育を「新人から経営層まで」一括して引き受けられ、また当社の強みである、顧客の経営戦略に直結した「次世代経営人材育成」サービスを更に獲得できるよう大型提案に経営資源を集中する等、コンサルティング型の法人営業を強化していく方針です。
加えて営業関連業務のDX化についても、これまで全体最適化を達成すべく業務のボトルネックの解消を目指しペーパーレス化、ハンコレス化を実現してまいりました。その結果、顧客管理・営業事務フロー・販売管理面において、業務効率を高め生産性を大幅に改善させてまいりました。今後も業務のムダを取り除き、省人化、自働化に寄与する投資を積極的に実施し収益性の改善に繋げてまいります。
提供するサービスにおいては、財務・戦略・マーケティングといった経営人材に必須のスキルを提供するだけでなく、「AIを使いこなす能力」「AIで代替できない能力=構想力」にも焦点を当ててコンテンツを開発してまいります。これらの取り組みにより、企業研修市場における当社のポジショニングを強化し、持続可能な成長を確保します。
③ 教育と業務に革新をもたらすテクノロジー・AIへの投資
当社グループが、今後オンラインを中心とした遠隔型マネジメント教育事業の業態拡大を目指すためには、オンライン教育プラットフォームとコンテンツのオープンな拡張性とUXが非常に重要なものとなります。今後は独自で設計開発してきたオンライン教育プラットフォームである“AirCampus®”及び“AirSearch®”に、AIやデジタル技術を活用した機能強化を促進し、プラットフォームの垣根を越えた連携性、拡張性を推進することでこれまでにないUXを創出することでAI革命後の時代にふさわしい「学び舎(Air Campus)」「図書館(Air Search)」として進化してまいります。
また、上述の通りアオバジャパン・インターナショナルスクールは、国際バカロレア機構(IB)が主導するオンライン・ディプロマ(DP)教育のパイロット校に、アジアで初めて選出されました。このアジア・オセアニア地域への事業機会を着実に新たな収益源とすべく、国際学校におけるAI・デジタル技術とブレンド型学習モデルのR&Dを促進し、プラットフォームサービス事業の一層の収益拡大に努めてまいります。
またテクノロジー面のみならず、中等教育(アオバ)、高等教育(BBT大学・大学院)における学習モデル・経営モデルを自ら革新していくとともに、オンラインまたはブレンド型の教育提供を通じ、日本の高等教育等のビジネスモデル及び教育モデルの変革支援にも取り組んでまいりたいと考えております。
テクノロジー・AIの活用は教育面のみならず業務改善にも焦点をあてて取り組み、グループ全社で収益性の改善に努めてまいります。
④ 人材の確保と育成
当社グループの事業拡大には、優秀な人材の確保と育成が欠かせません。当社グループでは、目的達成のために主体的かつ積極的に行動できる起業家的な人材の確保、当社グループの企業カルチャーと企業ミッションを共有化できる人材の育成が課題と考えております。
⑤ 社会情勢による事業の運営リスクの対応
日本並びに先進国経済は、コロナ禍の影響が安定化へ向かう一方、ロシア・ウクライナ紛争によるエネルギー、食糧、希少金属、半導体を含む供給不足をトリガーとするインフレが継続的に進みました。また、生成系AIが多くの産業・社会活動領域に影響を与えています。当社グループでは、こうした社会的影響を受けることなく、円滑な運営が継続できる対応策を検討し実施してまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、主として「売上高」及び「営業利益」をグループ全体の成長を示す経営指標と位置づけております。また、今後数年間において大きな飛躍を遂げるため、With/Postコロナ時代において出現・拡大する事業機会の獲得に必要となる先行投資、支出を行ってまいります。
- 検索
- 業種別業績ランキング