ADEKA 【東証プライム:4401】「化学」 へ投稿
企業概要
当社の研究開発体制は、既存事業に密着した6つの開発研究所(樹脂添加剤開発研究所、情報化学品開発研究所、電子材料開発研究所、機能化学品開発研究所、機能高分子開発研究所、食品開発研究所)、将来の柱となる新規事業の創出を担う2つのコーポレート研究所(ライフサイエンス材料研究所、環境・エネルギー材料研究所)、及びこれらを支援する研究企画部により構成されています。
国内の連結子会社である日本農薬㈱、ADEKAクリーンエイド㈱、ADEKAケミカルサプライ㈱、及びADEKA総合設備㈱でも、独自の研究開発を行っています。また、海外拠点においては、国内の研究所と連携しつつ研究開発のローカライゼーションを推進しています。
第162期(2023年度)の研究開発方針として、
① 持続可能な社会と人々の豊かなくらしに貢献する研究開発を推進する。
② 戦略製品と環境貢献製品を中心とした市場開発・新製品開発に注力し、更なる事業拡大へ繋げる。
③ エネルギー、環境、次世代ICT、ライフサイエンスなどフロンティア領域での新規事業創出を加速する。
④ カーボンニュートラルの実現に向けて、GHG排出量低減と、CO2の利活用に向けた研究開発に取り組む。
の4項目を掲げて研究開発活動を推進しました。当連結会計年度の研究開発費の総額は、16,130百万円です。
(1) 化学品事業
事業のさらなる拡大に向け、戦略製品を中心とした市場開発や新製品開発に注力しています。市場環境の変化やユーザーニーズを鋭敏に捉えて社内で共有することで、タイムリーな製品開発を推進しています。
① 樹脂添加剤分野
環境対応型製品アデカシクロエイドシリーズとして、バイオマス原料を活用した塩ビ用可塑剤や、生分解性バイオプラスチック用可塑剤、リサイクルプラスチックに従来のプラスチックと同等以上の機能を付与する添加剤パッケージなどを開発しています。また、新しい機能付与剤として、ポリプロピレンの靭性と衝撃性を向上するβ晶核剤や繊維向け帯電防止剤、3Dプリンタ用フィラメント向け改質剤の紹介を進めています。
② 情報・電子化学品分野
半導体向けでは、次世代DRAM用の新規高誘電ALD成膜材料の開発に注力しています。ロジック半導体向けの新規ALD材料も、ユーザーでの性能評価が進展しています。また、ArFやEUVなどの先端フォトレジスト向けに光酸発生剤や周辺材料の採用が拡大しています。3月には、ALD成膜材料の研究開発機能を強化するため、ADEKA KOREA CORP.の研究開発センターを華城市に移転、延床面積を7倍に拡張しました。
③ 機能化学品分野
一般社団法人日本接着学会より、「第45回技術賞」を㈱デンソーとともに受賞しました。共同開発した「カーボンニュートラル レーザ硬化型接着システム」が、省エネルギー化を達成し、CO2削減を可能にする接着技術として高く評価されました。一方、自動車エンジンオイル向け潤滑油添加剤サクラルーブは、海外市場開発が進展し、中国や米国を中心に海外での採用が拡大しています。化粧品原料は、自然由来化を進めており、皮膜剤、高粘度油剤、保湿剤など複数の製品を開発し化粧品メーカーへの提案を進めました。
子会社であるADEKAクリーンエイド㈱の業務用洗浄剤分野では、環境衛生用途のウェットワイプに含浸させる新たな薬剤を上市しました。本品は、各種業界のガイドラインに記載されている酸化剤を使用し、従来市販品よりも酸化剤安定性、除菌性、低材質影響性に優れています。また、あらかじめ薬液をワイプに含侵させているため、使い勝手にも優れており、お客様から好評です。食品工業用洗浄剤分野では、高濃縮対応の中性除菌洗浄剤を上市しました。本品は、高濃縮型のため地球環境に優しく、汚れの多い条件下でも十分な除菌・洗浄力を発揮し、お客様の衛生環境の改善に貢献します。
子会社であるADEKAケミカルサプライ㈱の湿式伸線剤分野では、取引先との共同研究において、中量試験に向け、新たに2製品を紹介しました。2024年2月に新たな試験機を導入し、開発スピードをいっそう加速していきます。粉末冶金用潤滑剤分野では、取引先との共同研究テーマにおいて、潤滑剤サンプルの実機レベル評価が決定しました。今後は、ナノ粒子配合サンプルの効果をより明確にするための評価を実施予定です。
(2) 食品事業
人々の健康で豊かなくらしに貢献する食品の創造を目標に掲げ、サプライチェーンのあらゆる場面での環境負荷の低減や食品ロス削減、労働力不足などの社会課題や、消費行動など市場ニーズを捉えた新製品開発を行っています。
2023年度新製品は、「おいしさと笑顔を食卓のあたり前に ~Healthy & Sustainable~」をテーマに、以下の製品を中心とした10製品をラインナップしました。年度新製品で原料にパーム油を配合する製品にあっては持続可能なRSPO認証パーム油を使用しています。
① プラントベースフード「デリプランツ」シリーズ
非動物性原料のみで“プラントベースフードの常識を覆すおいしさ”を実現した「デリプランツ」シリーズのラインナップを拡充しました。
(ⅰ) バターのような自然なコク味を持つ「デリプランツ コクバター」、(ⅱ) シュレッド加工やダイス加工など様々な用途に対応できる「デリプランツ チーズ(セミハード)」、(ⅲ) 昨年発売し好評の「デリプランツ オーツコンク」「同 ホイップ」「同 チーズ クリーミー」の小容量個包装タイプなど、計7製品を上市しました。今後もラインナップを拡充するとともにアプリケーションの開発を進め、市場への更なる浸透を図ってまいります。
② 食品ロス削減対応製品
パンの経時的な品質低下を抑制することで消費期限を延長し、食品ロス削減に貢献する機能が好評の製パン用練込油脂「マーベラス」のコンセプトを進化させた製品開発を推進しました。
(ⅰ) 油脂の使用量を従来よりも約40%低減が可能な高濃度タイプの機能性練込油脂「マーベラスCNC」、(ⅱ) パン、菓子、惣菜の製造時の品質を安定させ生産ロスを削減する高濃度タイプの機能性リキッド「フォーカスC」などの3製品を上市しました。より多彩となったラインナップでターゲット市場の拡大と展開を進めてまいります。
(3) ライフサイエンス事業
連結子会社である日本農薬㈱では、持続的な新規剤創出を目指したパイプライン化合物の拡充及びそれらの最速ステップアップのための選択と集中を推し進めるとともに、さらなる将来を見据え、AI活用を含むデータ駆動型創薬のための研究環境を整備し、新たなリード化合物の創出にも精力的に取り組みました。また、新規開発剤の価値最大化や既存剤価値の維持・拡大のため、海外グループ会社とも連携して戦略的かつグローバルな研究活動を推進しました。
当期における主な成果は以下のとおりです。
新規汎用性殺虫剤(開発コード:NNI-2101)は、本年度も一般社団法人日本植物防疫協会が実施する新農薬実用化試験に供試し、農薬登録申請に必要な有効な試験事例を集積しました。これら知見により幅広い殺虫スペクトル、既存剤に感受性の低下した害虫に対する有効性、優れた浸透移行性など、本剤の特長を示すことができたと考えています。また、多くの害虫や作物を対象に様々な処理方法で実用性が確認されつつありますので、利便性の高い害虫防除資材となるように農薬登録申請を準備中です。
水稲用殺虫剤ベンズピリモキサンは、日本ではオーケストラフロアブルに加えて混合剤(オーケストラロムダンモンカットエアー、オーケストラスタークルエアー、オーケストラロムダンモンカット粉剤DL)の販売を開始し、さらに新規混合剤(開発コード:NNIF-2241フロアブル)の開発も開始しました。また、水稲の農薬市場が大きいインドでは、既に販売を開始したOrchestra剤に加え、速効性に優れるピメトロジンとの混合剤Orchestra Duet(2023年6月登録取得)の販売を開始しました。インドでも本剤ビジネスの最大化を目指して混合剤開発を進めてまいります。
汎用性園芸殺菌剤ピラジフルミドは、国内では省力的で使いやすい製品を目指して、無人航空機散布やセルトレイ処理など幅広い処理法での適用拡大(登録内容の拡大)を進めました。また、各国での開発も進めており、カナダ、ヨルダン、ペルーでは新規に登録を取得し、米国、メキシコ、コロンビア、エクアドル、チリ、サウジアラビア、ベトナムでは登録申請中です。
(4) 新規事業の推進
エネルギー、環境、次世代ICT、ライフサイエンスなどフロンティア領域において、ADEKAグループの強みを活かした新規事業創出を推進しています。将来ニーズと時間軸を意識し、組織の壁を越えた技術の融合とオープンイノベーションにより、早期事業化に向けて取り組んでいます。
① ライフサイエンス分野
日本農薬㈱とライフサイエンス分野における新規事業創出を目指した共同研究を進めています。動物用医薬品の創出を目指した取り組みにおいて、抗寄生虫薬として期待される化合物群を見出し、本化合物群に関する特許出願4報が世界知的財産機構(WIPO)より国際公開されました。本化合物の動物薬メーカーへの導出を開始し、パイプラインの継続的な拡充に向けて本共同研究を加速していきます。
② 環境・エネルギー分野
硫黄変性ポリアクリロニトリル「SPAN」の開発と、SPANを用いて世界最軽量二次電池を実証したことが評価され、産経新聞社主催の「第36回 独創性を拓く先端技術大賞」において、「経済産業大臣賞」(社会人部門の最優秀賞)を受賞しました。また、公益社団法人新化学技術推進協会より、第22回GSC賞「奨励賞」を受賞しました。
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