ADワークスグループ 【東証プライム:2982】「不動産業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
2024年2月8日付「第2次中期経営計画」の中長期的な取組みに「Corporate Agilityの獲得」を掲げ、「耐久性」&「機動性」&「柔軟性」の向上を目指してまいります。そのための指標として、自己資本利益率(30%程度の維持)、ノンアセット事業シェア(中長期的に30%を目指す)、固定費カバー率をモニタリングしてまいります。
(2) 経営環境
① 当期の経営環境
当連結会計年度における国内経済は、各種国内政策の効果もあり緩やかな回復基調が見られました。新型コロナウイルス感染症が感染症法上において「第5類感染症」へ移行したことによる社会経済活動の正常化や、構造的な賃金上昇機運の高まりなどの事象から、デフレーションからの脱却への兆しが見えつつあります。
国内の収益不動産売買市場においては、低金利の資金調達環境や海外投資家からの投資需要を背景に、引き続き活況を呈しました。
当社グループの拠点がある米国ロサンゼルスにおいては、政策金利の大幅な引上げにより資金調達環境が変化したことから、収益不動産売買市場においては価格の先安観が見られました。
世界規模では、金融引き締めに起因する金融資本市場の変動、物価上昇による原材料価格の高騰、急激な為替変動など、景気を下押しするリスクが依然として存在しております。
② 今後の見通し
2023年12月期は、当社の第1次中期経営計画の最終年度でしたが、計画どおり税前利益20億円に到達しました。
今後3か年については、2024年2月8日公表の「第2次中期経営計画」に掲載のとおり「事業成長を軌道に乗せ、同時に持続可能な社会への貢献を行う“Sustainable Business, Sustainable Growth”」の段階と位置付けています。
事業環境については、特に大都市部においては、引き続き不動産への資金流入が期待できる一方で、日銀によるマイナス金利政策解除の可能性も想定しておく必要があります。
当社グループからの視点においては、2024年1月末時点にて当社の株価はPBR1倍未満であり、課題と認識しております。PBRを上げる、すなわち株式時価総額を上げるためには「業績計画上の利益成長率」「計画実現の確度」の二点が肝要です。
前者の「業績計画上の利益成長率」については<表1>のとおり、3年後の2026年12月期に2023年12月期の約1.5倍となる「税前利益30億円」に到達し、ビジネスの成長の結果として、プライム市場上場企業に相応しい評価をいただくことを目指します。業績計画達成のキーとなる「人材生産性」を高めると同時に「財務健全性」の維持にも留意する中で、最終的なアウトプット指標であるEPS(一株当たり純利益)を毎期10%以上高め、株主及び投資家の皆様の期待に応えたく存じます。
後者の「計画実現の確度」について当社グループは<表2>のとおり、期初に公表した業績計画をほぼ100%達成してまいりました。<表1>掲載の業績計画も、不確定要素を出来るだけ織り込まない範囲で策定しております。ADワークスグループの業績計画の蓋然性の高さについては、今後積極的に公表資料等に掲載いたします。
<表1> (百万円)
連結 | FY2021 (2021年12月期) | FY2022 (2022年12月期) | FY2023 (2023年12月期) | FY2024 (2024年12月期) | FY2025 (2025年12月期) | FY2026 (2026年12月期) |
実績 | 実績 | 実績 | 計画 | 計画 | 計画 | |
売上高 | 24,961 | 27,856 | 41,342 | 47,000 | 52,000 | 58,000 |
営業利益 | 933 | 1,376 | 2,441 | 3,000 | 3,300 | 3,700 |
税前利益 | 650 | 910 | 2,066 | 2,300 | 2,600 | 3,000 |
収益不動産残高 | 28,914 | 41,476 | 44,798 | 45,000 | 46,000 | 50,000 |
株主資本 | 14,724 | 15,217 | 16,369 | 17,500 | 18,500 | 20,000 |
ROE | 2.2% | 3.5% | 9.0% | 9.2% | 9.6% | 10.4% |
ROIC | 1.8% | 2.2% | 4.0% | 4.3% | 4.6% | 4.8% |
人材生産性 | 24百万円/人 | 25百万円/人 | 31百万円/人 | 33百万円/人 | 34百万円/人 | 35百万円/人 |
財務健全性 | 35.1% | 29.6% | 29.1% | 30%程度 | 30%程度 | 30%程度 |
株主価値 | 7.22円 | 11.32円 | 29.85円 | 32.95円 | 36.35円 | 41.76円 |
(注)1.収益不動産残高:販売または賃料収入を目的として保有する不動産の合計残高
2.ROE:親会社株主に帰属する当期純利益÷平均株主資本(「自己資本当期純利益率」とは数値が異なる可能性があります)
3.ROIC:(親会社株主に帰属する当期純利益+支払利息+借入手数料)÷(平均株主資本残高+平均有利子負債残高)
4.PH総利益:売上総利益 ÷ 平均従業員数(Per Head 売上総利益)
5.EPS:親会社株主に帰属する当期純利益÷期中平均株式数(Earnings Per Share)
なお、<表1>における(計画)は経営として目指すターゲットであり、いわゆる「業績の予想」または「業績の見通し」とは異なるものであります。
<表2> (百万円)
税前(経常)利益 | FY2013 | FY2014 | FY2015 | FY2016 | FY2017 | FY2018 | FY2019 | FY2020 | FY2021 | FY2022 | FY2023 |
計画 | 450 | 500 | 600 | 800 | 900 | 1,000 | 890 | 400 | 600 | 800 | 2,000 |
実績 | 450 | 540 | 650 | (835) | 924 | 1,043 | 933 | 432 | 650 | 910 | 2,066 |
達成率 | 100% | 108% | 108% | (104%) | 103% | 104% | 105% | 108% | 108% | 114% | 103% |
(注)1.2014年3月期から2017年3月期は経常利益、2018年3月期から2023年12月期は税前利益
2.2017年3月期は、固定資産に区分された不動産売却益86百万円を特別利益に計上した。経常利益は748百万円であったが、税前利益835百万円は実態的に経常利益であると解釈し、経常利益計画800百万円(FY2016は税前利益計画を公表せず)に対する実績として掲載している。
(3) 対処すべき課題
① 第2次中期経営計画における課題
当社グループは、2024年2月8日付公表の「第2次中期経営計画」(2024年12月期~2026年12月期)において、収益不動産販売事業への収益依存度が高い現状に対し、以下の課題を認識しております。
- 不動産セクターの環境に、事業基盤が左右される。
- バランスシートリスク(市況リスク)が大きい。
- 期間損益がボラタイルである。
② 資本コストについての考え方
<主旨>
トータルリターン(値上がり益+配当)にて株主の皆様の期待(資本コスト)を充足する。 |
株式市場から期待されている成長率が低い。実態から導かれる期待成長率はより高いことを示していく。 |
a. 資本コストの定義及び水準
資本コスト(株主資本コスト)とは、
「株主の皆様が、トータルリターン、つまりキャピタルゲイン(値上がり益)及びインカムゲイン(配当)にて期待する投資利回り」
である、と当社は認識しています。
当社の株主資本コストについて調査したところ、6%台~11%台との結果になりました。コーポレートガバナンス報告書で自社の株主資本コストを開示した企業の平均値が6%台であったとの2024年1月の報道なども踏まえ、成長過程にある当社の株主資本コストは従前通り8%を想定いたします。
よって、株主資本コストが8%である当社は、
「年間8%以上のトータルリターンを株主の皆様に提供する」
ことを目標といたします。
以下、論旨を簡潔に示すため「非事業資産」「自己資本比率の増減」「負債の簿価と時価の差額」「株価変動とそれに伴う配当利回りの変動」等を考慮しない前提で記載いたします。
b. キャピタルゲイン(値上がり益)
株価を上げるためには、株式市場(株主及び投資家の皆様)から合理的に期待される一株当たり将来キャッシュ・フローの現在価値を引き上げる必要があり、当該現在価値の主要な構成要素は「業績計画上の利益成長率」「計画実現の確度」であると当社は考えます。
〇「株式市場から合理的に期待される利益成長率」の現状について
<ADモデル>
※ 直近の株式時価総額と財務諸表情報から定数を取得し、株主資本コストと利益成長率を互いに従属する関数にするモデル。
※ 論旨を極力簡潔にするため、当社の現況に鑑み、「非事業資産」「運転資本の増減」「自己資本比率の変動」「負債の簿価と時価の差額」等を考慮していません。
※ 継続成長モデル[将来キャッシュ・フローの現在価値=FCF÷(r-g)]を流用しています。
※ WACCは2024年12月期12ヶ月平均にて算出すれば3.1%となりますが、ここでは期末簿価にて算出した3.4%を採用しています。
株主資本コストを8%とした場合、利益成長率は約△0.2%となりました。安定的に利益を出している同業他社全般に当てはまることですが、金融情勢に伴う収益不動産市況の先安観の影響等から長期的には、自社が公表している中期計画を下回る成長率を見込まれていることを示すものであり、株主価値向上のためにも、この状況を払拭したく考えております。
〇当社が公表している「業績計画上の利益成長率」について
当社は、一株当たりキャッシュ・フローの近似指標としてEPS(一株当たり純利益)を重視し、(2)経営環境に掲載の<表1>のとおり「EPS毎期二桁成長」を掲げております。連結純利益についてもEPS同様、毎期二桁成長の計画です。
〇計画実現の確度について
(2)経営環境に掲載の<表2>掲載のとおり、10期以上連続して業績計画を達成している実績があります。
過去、公表した計画を達成してきた当社が今後3か年「利益二桁成長」の計画を公表する一方で、継続利益成長率△0.2%前提の株価がついている状況です。今後の業績進捗と、開示資料での計画達成蓋然性の説明を両輪に、株式市場からの期待利益成長率を高めることができれば株価には大きなプラスの影響があり、株主の皆様のご期待にキャピタルゲインの面から応えることは可能と考えます。
c. インカムゲイン(配当)
配当政策はトータルリターンに影響を与えない、との趣旨の理論もありますが、配当という形で利益を還元することは株主の皆様との信頼を繋ぐ意味があり、また、成長の見通しの強さを示すアナウンスメント効果も期待できます。よって、インカムゲインを増やす施策(当社にとって手元資金が減る施策)は、前述のプロセスで獲得したキャピタルゲインを打ち消さず、場合によってはアナウンスメント効果によりキャピタルゲインにプラスになる可能性もあります。財務健全性及び成長資金を確保したうえで、株主の皆様にご安心いただくに足る配当を今後も継続する方針です。
d. 補足
株主価値創造に際してのKPIについてはいくつかの考えがありますが、当社として以下のように整理し、株式市場からの期待成長率を上げていくことに取り組みます。(株主資本コストを下げる、というアプローチについては以下では記載しておりません)
株式市場からの期待成長率(当社はこれをKPIとする)を上げることで株主期待の充足を目指す | 期待成長率を正確に算定する術がほぼ無い点が短所だが、概算は可能。当社株価の現状を説明しやすい。 |
株主資本コストを上回る増益率を達成することで株主期待の充足を目指す | PERが一定との前提では基準として分かりやすい。 |
株主資本コストを超えるROEを実現することで株主期待の充足を目指す(エクイティスプレッド) | 株主資本コストを超えるROEでの将来キャッシュ・フローが株価に折込済である場合は多く、その場合はエクイティスプレッド目線での目標設定は株価に悪影響を与え得る。 |
③ 継続して対処すべき課題
a. 好循環事業サイクルへの転換
当社グループの主力事業である収益不動産販売事業は、一定量の優良な収益不動産残高を保有することにより、不動産の相場と顧客ニーズとの双方を睨みながらコントローラブルに販売を展開し必要な収益を確保すると同時に、保有する収益不動産から得る賃料収入によって収益の安定化を生み出すビジネスモデルです。これに対し現状は、収益の拡大基調にあるため、残高拡充のための仕入れが収益確保のための販売を追従する状態にあります。通常期にも増して積極的な仕入れを展開することにより、好循環の事業サイクルに転換する必要があります。
b. 資金調達手段の多様化
当社グループは、収益不動産販売事業のバリエーションとして、不動産小口化商品事業や開発事業などを国内外において積極的にラインナップし、事業全体の拡大を図っております。いずれも旺盛な資金需要があるため、金融機関からの借入を中心としつつクラウド・ファンディングやSTO※を活用するなど、資金調達手段をさらに多様化する必要があります。また継続的な超過利潤の創出のためには、EquityとDebtの最適なバランスを検討しつつ資本効率を高める必要があることから、資金調達手段の多様化はますます重要となってまいります。
※ STO…Security Token Offering:ブロックチェーンを活用したデジタル証券による資金調達
c. 人的資本投資の強化
複雑化する事業環境や加速する変化の中にあり、当社グループが更なる成長を果たしていくためには、経営戦略に合致した人的資本への投資が必要不可欠です。当社は予てより新卒採用に注力してまいりましたが、こうしたファーストキャリア人材の早期戦力化をはじめ、中堅社員のマネジメント力強化、また幹部候補社員の選抜と育成など、すべての階層において適切な教育プログラムを導入し、成長を促進する必要があります。また多様な人材が最大限の能力を発揮するための組織文化の醸成や職場環境の整備も、継続して実施する必要があります。
d. DX推進の加速
当社グループが持続的に成長を果たしていくためには、事業や経営のスピードと効率を格段に高めること、すなわち生産性の向上が喫緊の課題です。DX(デジタル・トランスフォーメーション)の活用はそのキーとなるものであり、優先度を高めかつ全社横断的に取り組む必要があります。またDXはスピードや効率化といったオペレーション改革に留まらず、それを活用した新たな事業機会の創出や獲得まで視野に入れるべきであり、「収益に寄与するDX」を掲げ積極的に取り組んでまいります。
e. 新たな事業の柱の構築
当社グループは国内における収益不動産販売事業を主力として成長をしてまいりましたが、今後それに匹敵する第二・第三の事業の柱を構築する必要があります。既存事業の延長においては、海外事業や不動産小口化商品事業の成長に期待し経営資源を相応に充当してまいります。加えて既存の不動産事業領域を超えた事業を構築するために、CVC事業やM&A等の手法を果敢に活用し、新たな事業機会の創出を企図します。そうした手法を活用しやすくするという狙いで、すでに持株会社体制への移行を実施しており、今後はその具現化を進めてまいります。
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