阿波製紙 【東証スタンダード:3896】「パルプ・紙」 へ投稿
企業概要
研究開発の基本方針
当社グループは、保有している基盤技術の深耕による既存事業の拡大を図るとともに、マーケットイン型R&Dの実行による次世代中核事業の創造を研究開発の基本方針として、既存事業における次世代製品の開発ならびに新規事業の創出にかかる開発に取り組んでおります。
中期経営計画に定める中期事業戦略遂行のために、知的財産は重要な経営資源と捉えており、当社企業活動のさまざまな場面で創造される価値を当社の優位性に確実に結びつけるべく、知財活動に取り組んでおります。その範囲は発明生産支援、特許出願・権利化といった典型的な知的財産活動に加えて、共同開発により得た成果を事業化するために各事業部門との連携強化などが含まれます。
これまでのモノづくりで培ってきた知識・ノウハウ・特許を組み合わせた相乗効果の創出と活用により事業成長に貢献するとともに、ビジネスリスクの低減にも取り組み、企業価値向上を目指して参ります。
当連結会計年度の研究開発費の総額は389,758千円、国内で出願された特許は2件となり、研究要員は31名であります。なお、当連結会計年度における品目別の研究の目的、主要課題、研究成果は次のとおりであります。
(1)自動車関連資材分野
エンジン用濾材は、用途として主に吸気用、潤滑油用、燃料用フィルターに使用されております。
天然パルプ、コットンリンター、ポリエステルなどの合成繊維を主原料として、空気中のゴミ、他車から排出されるスス、潤滑油中のカーボン粒子、燃料中のゴミ、水分などを取り除き、エンジンに清浄な空気、燃料を供給すること及び潤滑油の性能を維持することができます。当該分野では小型かつ高効率、ダストの高捕捉量を満たすフィルターが求められており、これらニーズに対応するための研究開発を行っております。
また今後の環境規制に対応すべく、さらなる高精度濾材の開発にも取り組んでおり、お客様から良好な評価結果を得ております。一部供給不安のあった原材料については、供給不安のない他メーカーへの切り替えを行うことで、お客様へ安定供給できております。またエンジン用濾材で培った、孔径や通気性・通気抵抗を制御・設計する技術を、他分野にも適用した開発にも取り組んで参ります。
(2)水処理関連資材分野
① 分離膜支持体用不織布
分離膜支持体用不織布は、主に世界の水処理用分離膜メーカーが製造する逆浸透膜モジュールに分離膜支持体として使用されております。
当商品は、専用の抄紙機及び加工機で製造されたポリエステル繊維100%の湿式不織布であります。耐水強度が高く、平滑性に優れることから水処理用の支持体として最適です。用途市場としては、海水淡水化や廃水処理などのインフラ用途をはじめ、工業用、家庭用浄水器など高度な水の需要に対応する分離膜に幅広く使用されており、高い伸び率で成長しております。
当連結会計年度においては、コストダウン品を開発しお客様へ提案しております。また、従来とは少し異なる設備で開発品は現行品よりも良好な評価をいただいております。
市場の幅広いニーズに対応するために、ポリエステル繊維以外を原料とした製品開発や、当社の優位性を高めるために、付加価値を高めた製品開発にも引き続き取り組んでおります。
② M-fine(エム・ファイン)
M-fine(エム・ファイン)とは、当社が提供するメンブレン(ナノレベルの微細な孔径を有する分離膜)及び水処理などのモジュール・ユニットの総称であります。
当社の事業領域の拡大の一環として、廃水処理に使用されるMBR(膜分離活性汚泥法)用浸漬膜及びユニットの事業化推進に取り組んでおります。品質のさらなる向上や高性能化に向けた開発を継続的に行っており、M-fine ユニット新型 Generation 2の開発に努めております。今回の新型は、特に散気量削減によるCO2削減効果が期待でき、またユニットの構造的にも当社の薄くて軽い膜の強みを生かした製品となっております。
排水、廃水の再利用、汚泥濃縮による廃棄物の削減等、様々なニーズにお応えできるよう事業の川下化に向けた取り組みを積極的に行ってまいります。
(3)一般産業用資材分野
一般産業用資材分野の電気・電子部品用機能紙は、主に電子機器などの断熱部材や放熱部材としてのいわゆるサーマルマネジメント材として使用され始めており、電子機器の過酷な発熱環境下における厳しい要求が強まり高い伸び率が期待されている分野です。また、主に耐熱プレス用の工程紙として使用される耐熱クッション紙や金型の製造工程で発生する粉塵を除去するためのワイヤーカット用濾紙などがあります。その他、食品用として主に加工食品の鮮度保持用に使用される脱酸素剤の包材として使用されております。
当連結会計年度においては、産業用フィルターの採用が1件と自動車の電動化による成長が期待されるサーマルマネジメント材(M-Thermo)のリチウムイオンバッテリー用断熱材に2件の採用が決まりました。
また、音響部材の振動板として炭素繊維やセルロースナノファイバー(CNF)を原料とした製品が採用されております。幕張メッセ及び東京ビッグサイトで開催された「オートモーティブワールド」(2023年9月及び2024年1月)に一部商材を展示し、顧客要求に直結した製品開発を行っております。
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