企業兼大株主酉島製作所東証プライム:6363】「機械 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発活動は、当社研究開発部ほか技術部門が中心となり、ポンプ事業、新エネルギー・環境事業に係る市場ニーズに応えるため、当連結会計年度の研究開発関連費用としては総額938百万円を投入しております。

 前々連結会計年度より開発をスタートした省エネルギーをさらに加速させる効率改善型エコポンプについては、従来型の仕様範囲において、省エネルギーの観点でポンプ効率規制が進む欧州の効率指数MEI(Minimum Efficiency Index:最低効率指数)に対して最高値であるMEI= 0.70を達成し、2023年10月に「スーパーエコポンプ」として市場に投入し、順調に販売台数が増加しております。

 カーボンニュートラル社会実現に貢献すべく、エネルギーキャリアとして注目される液体アンモニアおよび液体水素を大量に輸送・昇圧するポンプの開発に鋭意取り組んでおります。

 液体アンモニア用ポンプに関しては、世界初となる大型商用石炭火力発電機における燃料アンモニア転換の大規模実証試験(熱量比20%)の払出しポンプに弊社立軸多段ポンプが採用され、実証試験が開始されました。そこでの安定稼働を確認し、今後も本分野におけるCO2排出量低減に貢献することが期待されます。

 加えて、将来のアンモニア貯蔵タンク大型化を見越し、インタンク型ポンプ開発にも着手しております。キャンドモータポンプの世界トップメーカであるドイツのHermetic社と業務提携を行い、Hermetic社技術と当社技術の特長を活かした液体アンモニアポンプを開発中です。開発は順調に進んでおり、今夏には実液を使用した大規模な検証試験を実施する計画となっています。今後も世の中のニーズを的確にキャッチし、製品開発を進めてまいります。

 液体水素を取り扱うポンプについては、水素サプライチェーン構築実現に向けて重要な役割を担う液化水素昇圧ポンプに着目し、製品化実現においてキーとなる技術に関して、学術機関および先端技術企業との協業体制を構築して、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より助成金を受け、開発を進めてまいりました。

2024年3月14日に当社ホームページ上でも情報開示させて頂いたとおり、同年3月6日、7日に国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の能代ロケット実験場(秋田県)で-253℃の液化水素を用いた運転試験を実施。想定通りの性能を確認することができました。液化水素ポンプとして世界最大流量、遠心ポンプによる昇圧量として世界最高圧を達成し、技術面・コスト面での大きな課題をブレークスルーする革新的な成果を挙げることができました。

 今後は、将来のサプライチェーン大型化を想定し、さまざまな場面で利用頂けるように、ポンプの高圧化、大流量化を進めて行く計画です。

 気候変動対策向けポンプによる減災技術の推進において、維持管理の簡素化(モータの冷却方式を水冷から空冷に変更)を図った改良型「耐水モータ一体型ポンプ(浸水してもポンプ運転が可能)」については、排水機場向けのみならず、下水処理場向けポンプへの適用範囲拡大を進めてきました。検証試験が完了し、国内外市場に向けたリリースの準備段階です。今年度は改良型「耐水モータ一体型ポンプ」の大容量化の一方で、これまでは立軸ポンプ向けとして開発してきたものを横軸ポンプに適用拡大していく計画です。加えて、防災・減災に寄与する当社技術のひとつである「二重ラッパカン及び渦対策リング」については、機能および組立・メンテナンス性を向上させた改良型を開発中であり、防災・減災という観点でさらなる貢献を目指します。

 海水淡水化分野について、世界最高水準の効率を有するRO(逆浸透)法海水淡水化プラント向け高圧ポンプの既存ラインアップに対して、さらなる大流量・高圧ニーズに応えるために、初段両吸込型多段ポンプの開発を行いました。既に市場投入し、順調に受注台数を伸ばしております。

 新たなトピックとして、近年、ノルウェーのWaterise社は従来のRO法よりも環境負荷が低い、深海での静水圧を利用したROシステムの開発を行っています。このシステムでは、陸上ROプラントで使用されるような高圧ポンプを必要としない一方、生成された淡水を陸上に送水するポンプなどが必要になります。この新たなポンプニーズに対して、当社はWaterise社と協業契約を締結し、現在、ポンプ開発を進行中です。

 省エネルギー需要の高まりから、ポンプの高性能・高速化をより早く実現することが社会ニーズとなっています。このニーズに対応していくため、人工知能(AI)技術を取り入れた新たな水力開発システムと3D プリンティング技術を組み合わせ、設計開発から製品化までのシームレス化実現に向けてシステム開発を行ってきました。AI を用いた設計システムのテスト検証も完了し、今後は試験的に設計開発プロセスに組込み、評価を行っていきます。

 ポンプの高速化時に課題となるキャビテーション壊食速度予測技術については、検証用試験ループを活用して物理データを収集し、高精度化を図ることで新製品の品質向上に継続的に努めております。また、ロータダイナミクス、構造および材料関連の各ポンプ要素に関連する技術については、大学やコンサルタント等の外部機関を積極的に活用することで、基礎的研究を共同で実施中であります。

 今後も多様な社会ニーズに応えるべく、新技術および新製品の開発に努めてまいります。

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