企業荒川化学工業東証プライム:4968】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループにおいて研究開発活動は、当社、ペルノックス㈱、高圧化学工業㈱および山口精研工業㈱がおこなっております。顧客ニーズに対し提案型の製品開発をおこなうとともに、「つなぐを化学するSPECIALITY CHEMICAL PARTNER」というビジョンに基づき鋭意研究開発活動を展開しております。当社においては、2016年度に研究開発本部を設置し、第5次中期5ヵ年経営実行計画がスタートした2021年度よりコア技術・素材別に再編して一元化しました。加えてAI・MIの活用に注力すると同時に選択と集中による効率化と新規開発、持続可能性への貢献を加速するため、機能性コーティング開発部、水系ポリマー開発部、フォレストケミカル開発部、ファイン・エレクトロニクス開発部、AI・MI推進部、コーポレート開発部に開発推進部を加えた体制にしております。あらためて当社グループのコア技術・素材を事業ポートフォリオの中核に据え、長期的に経営資源を投入し、顧客ニーズに対して研究開発部門の自律性を高め、多面的に対応できる形へと組み替えました。事業分野は機能性コーティング事業、製紙・環境事業、粘接着・バイオマス事業、ファイン・エレクトロニクス事業であり、その研究テーマは多岐にわたっております。

 当連結会計年度の研究開発費は2,965百万円であり、主な研究成果は次のとおりであります。なお、研究開発費には、報告セグメントに配賦しない中長期での成長の源泉となるコーポレート研究開発費用408百万円を含んでおり、ライフサイエンス分野などへの本格参入に向けてのコア技術(ロジンや水系ポリマーなど)の展開、および千葉アルコン製造㈱の安定製造に向けた技術的対応を進めております。

(1) 機能性コーティング事業

当事業では、デジタルデバイス関連用途を中心に光硬化型機能性コーティング剤「ビームセット」「オプスター」や熱硬化型機能性コーティング剤「アラコート」の研究開発に注力しております。また、印刷インキや塗料用途において、環境負荷低減に向けた製品の研究開発をおこなうとともに、剥離紙・フィルム用離型剤としてシリコーン樹脂の開発もおこなっております。また、ポリマー合成技術を活かした機能性材料の新規用途開発にも積極的に取り組んでおります。

光硬化型機能性コーティング剤「ビームセット」「オプスター」では、5G関連分野への量産に向け、市場からの高品質要求への対応に注力しております。ディスプレイ用途において、耐傷つき性に加えて、難密着素材への密着性付与、光学調整技術の改良、フレキシブルデバイス用での技術対応を進め、それぞれで採用が得られております。また、光学用透明粘着剤(OCA)としての採用も進んでおり、さらなる拡大に向けて各用途に対応した機能性付与に取り組んでおります。水系化、無溶剤化による環境に配慮した製品の開発にも継続的に取り組んでおり、水系では塗料用を中心に顧客での高評価が得られています。

熱硬化型機能性コーティング剤「アラコート」は、非シリコーン系剥離コーティング剤の開発に取り組み、電子材料用途を中心に着実に実績が拡大しております。

 印刷インキ用樹脂では、BCPの観点から各種原料ソースを使いこなす技術開発を進め、顧客での使用形態に応じたワニス製品の開発も進めることで、持続可能な製品供給を目指しています。また、ロジンの研究開発により、バイオマス度向上と機能性付与を両立した製品を開発し、バイオマスインキ用に実績化が始まっています。

 塗料用樹脂では、水系製品の有機溶剤中毒予防規則対応や溶剤系製品の特定化学物質障害予防規則対応ハイソリッドの市場要求に応える製品を開発し、顧客での採用が得られました。

 剥離紙・フィルム用離型剤「シリコリース」は、硬化方式別に熱硬化型および光硬化型、形態別には溶剤系に加えて、環境に配慮した無溶剤系および水分散系を揃えており、顧客要求に適合した製品開発を進めております。また、従来からの剥離紙用途に加え、電子部材用途での実績が拡大しました。

 水系ポリマー技術の展開としては、ポリマー合成技術を活かした高機能化に取り組んでおり、被塗物表面への親水性付与、無機材料のバインダーや分散剤などの機能付与の検討をおこない、顧客での評価が進んでおります。

 当事業に係る研究開発費は871百万円であります。

(2) 製紙・環境事業

 当事業では、紙の強度を向上させる紙力増強剤や紙へのにじみ止め性を付与するサイズ剤など、紙の機能を向上させる薬品開発に加え、環境視点に基づいた水系ポリマーの技術と用途開発をおこなっております。顧客ニーズや年々悪化する古紙原料や抄紙条件に適応させ、紙のさらなる高機能化ならびに薬品の低コスト化、紙の生産性向上や合理化に寄与する技術の検討をおこなっております。また、水系ポリマー技術を活かした地球環境と社会に貢献できる開発テーマにも取り組んでおります。

 紙力増強剤では、内添紙力増強剤「ポリストロンシリーズ」で高分子量化技術を駆使した、高い紙力増強効果を発現する製品の販売が拡大しております。中国,台湾,ASEAN等の海外市場向け製品の開発は積極的に進めており、2022年3月に稼働を開始した荒川ケミカルベトナム社を中心に、特にASEANでの紙力増強剤の販売、マーケティングに注力しております。また、地球環境に配慮した新規製品として、バイオマス由来の機能性成分の配合および高濃度化による輸送頻度の低減を通じて、CO2排出量削減に寄与する製品の実績化が開始し、さらなる拡販に向けた取組みを進めております。

 内添サイズ剤では、バイオマス素材であり当社の強みでもあるロジンと、当社基盤技術である乳化剤及び乳化技術を組み合わせ、安定的な製品供給を目指しております。また、国内での長年の技術蓄積を活かしつつ、中国市場さらにはASEAN市場への展開を目指し、新規製品の開発を進めております。

 また、環境に配慮した独自の水系ポリマー技術による紙用機能性コーティング剤の製品開発も進めております。ガスバリア性や耐水耐油性などを紙に付与する機能性コーティング剤の開発を進め、脱プラスチックやフッ素系化合物の代替に向けて、顧客での評価が進んでおります。

 当事業に係る研究開発費は503百万円であります。

(3) 粘接着・バイオマス事業

 当事業では、多様化する粘着・接着剤用樹脂に対する顧客ニーズに対応した高機能性製品の開発に取り組み、グローバルに展開しております。環境に配慮した製品の開発も推進しており、脱溶剤化やCO2削減に貢献する水系エマルジョン型粘着付与樹脂製品の高機能化や光硬化型粘着剤向け粘着付与樹脂の提案も積極的に進めております。また、バイオマス素材としての利点を活かしたロジン誘導体事業の拡大と持続性確保に向けてロジンの基礎技術、変性技術の深化や持続可能な再生原料の有効活用を目指した開発にも取り組んでおります。

 ロジンエステル、超淡色ロジンなどのロジン誘導体や水素化石油樹脂は粘着付与樹脂として多く使用されておりますが、これまで培ってきた素材に関するノウハウや変性技術を活用して新規にプラスチック添加剤「PLAFIT」の市場浸透を進めています。流動性向上、相溶化、分散性、低誘電といった特長をキーワードに最近の技術トレンドや社会のニーズに対応すべく、新規顧客への提案を進めております。さらにはライフサイエンス分野での新規開拓を目指し、抗菌・抗バイオフィルム剤の開発にも取り組んでいます。

 当事業に係る研究開発費は241百万円であります。

(4) ファイン・エレクトロニクス事業

 当事業では、半導体・電子部品およびデジタルデバイス関連用途を中心として、精密部品洗浄剤や洗浄システム、はんだ関連材料、熱可塑性ポリイミド樹脂、機能性ファインケミカル材料、リチウムイオン二次電池向け材料の研究開発をおこなっております。ペルノックス㈱においては、車載用電子部品、各種センサー部品、半導体向けの絶縁封止材料や導電性材料の実績をベースに、最新のLEDやパワー半導体モジュール用の耐熱や信頼性に優れたエポキシ樹脂やシリコーン樹脂製品を大手電機部品メーカーや自動車部品メーカー向けに開発しております。また、山口精研工業㈱においてはハードディスク用アルミ基板やSAWフィルター用基板向けの精密研磨剤の研究開発をおこなっております。

 精密部品洗浄剤「パインアルファ」では、今後の伸長が期待されるパワー半導体分野向けにフラックス洗浄剤および洗浄機の実績化が開始しました。はんだ関連材料であるフラックスでは、洗浄性に優れた水溶性フラックスの新製品を開発し、市場への提案をおこなっております。

 溶剤可溶型低誘電ポリイミド樹脂「PIAD」では、5Gスマートフォンや5G基地局等に使用される高周波対応フレキシブルプリント回路基板用途、半導体パッケージ基板用途を中心に開発を進め、実績化が進みました。また、当社では初めてとなる一般社団法人日本有機資源協会の「バイオマスマーク認定」をミリ波対応可能な2製品にて取得、高まる環境ニーズに対応していきます。

 リチウムイオン二次電池向け材料では、当社のコア技術である水系ポリマーの技術を応用し、負極用バインダーやセラミックコーティングセパレータ用バインダーを市場に提案しており、顧客での評価が進展し徐々に採用が進んでおります。

 また、ファインケミカル材料では、半導体向け材料をはじめ各種機能材料の開発を行っています。当社グループの高圧化学工業㈱が保有する、耐腐食性に優れ、高温・高圧・水素化反応にも対応できる設備での新規受託案件数も着実に増加しており、今後さらなる伸長が期待される状況です。

半導体モジュール向け樹脂では、低熱膨張と高流動化を両立した高耐熱性液状注型樹脂の開発に成功し、実績が拡大しました。また、チップLED向け高接着力1液シリコーン樹脂の開発を進め、実績化が進みました。さらに、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics,炭素繊維強化プラスチック)用バインダーの開発・製造にも携わり、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH3ロケット開発及び試験機2号機打上げ成功への貢献に対して当該機構宇宙輸送技術部門長から感謝状が贈呈されました。

 精密研磨剤製品では、データセンター用ハードディスクの高容量化に合わせて、研磨剤の品質向上、生産性向上に注力しました。製品開発だけでなく、今後の需要拡大に備えて生産能力への投資を行い、昨年11月には山口精研工業(株)第2工場が完成しました。また、成長分野であるパワー半導体用研磨剤の開発へ人財を増員し、徐々に採用が進んでおります。

 当事業に係る研究開発費は939百万円であります。

 なお、当連結会計年度末における研究開発スタッフは227名であり、取得済特許権保有件数は、国内485件、海外402件、出願中のものは国内157件、海外197件であります。

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