荏原製作所 【東証プライム:6361】「機械」 へ投稿
企業概要
当社グループでは、2020年に策定した“価値創造ストーリー”である「E-Vision2030」の実現に向け、重要課題とした「5つのマテリアリティ」を解決するプロセスを通じて持続的に社会に貢献するため、各事業及び各事業と連携を取るコーポレート研究開発組織で研究開発に取り組んでいます。
各事業部及び各グループ会社では、新技術の実用化・新製品応用のための研究開発、及び技術や製品の高付加価値化に向けた研究開発を、業務提携などの外部との協業も活用して効果的に進めました。
コーポレート研究組織では、これらの事業を支える共通基盤と重要なコア技術の強化に加え、「研究開発戦略策定委員会」を設立し、2030年以降を見据えた中長期の技術開発戦略の策定を開始しました。本活動を継続的に発展させ、将来のあるべき姿に向けた研究テーマの立案と具体的な取組みを強化していきます。また、新事業創出のための制度であるEIX(Ebara Innovation for X)制度を活用し、仮想・拡張・複合現実(xR)技術を活用した作業支援・トレーニング手法の実装を複数部門において開始しています。さらに、金属3Dプリンタで製造した製品の実用化を推進し、製造現場のDX化を加速させています。
グループ全社で挑戦するCP水素関連事業プロジェクトでは、社会実装に向けた事業活動を始めました。荏原が有する技術やノウハウを活かし、「つくる」「はこぶ」「つかう」のすべての分野でクリーン水素関連技術の社会実装を目指した活動をさらに強化し、“共創”を基本理念に、産官学連携を強め、組織横断的に取り組むことで、水素がもたらす新たな社会の実現に貢献していきます。具体的には世界初の液体水素昇圧ポンプや水素焚き吸収式冷温水機、水素コンプレッサの開発が進んでいます。また、天然ガスを使ったターコイズ水素製造についてはNEDO事業にも参画し、クリーン水素製造に関する研究開発の取り組みも強化しています。さらに、衛星用ロケットや水素航空機用の燃料供給ポンプなど、より難易度の高い航空宇宙分野への挑戦も進めています。
また、「水や食べるものに困らない世界」への貢献に向けて、陸上養殖実証設備を袖ケ浦工場内に設け、高度生産システムの技術開発を進めており、バイオ関連においては自社ラボにて細胞培養を実際に行いながら高効率細胞培養システムの開発に取り組んでいます。
当連結会計年度の研究開発費は18,281百万円です。
セグメントごとの研究開発活動の状況は、以下のとおりです。
(建築・産業)
建築・産業分野では、標準ポンプ、送風機、冷熱機器の各製品とサービスの開発に加えて、これら製品の組合せによるソリューション技術を模索、提案することで、より複雑化した顧客の課題解決に取り組んでいます。
標準ポンプでは、グローバル市場向けに高効率な排水と非閉塞性を両立させた汚水水中ポンプの販売を開始しました。また、インバータ一体型PMモーターIVMを搭載した標準ポンプ製品群のラインアップ拡充を継続して進めており、省エネルギー性を検証する実装実験を市場で行っています。
冷熱機器では、廃熱回収できる吸収式冷凍機及び地球温暖化係数の小さい冷媒を使用するターボ冷凍機などのラインアップ拡充、応用範囲拡大を継続して進めています。また、半導体市場向けの温調装置では、安定稼働と省エネルギー効果を実証するため、装置メーカやエンドユーザーによる評価を進めています。
基盤技術に関しては、流体・構造数値シミュレーションによる性能と振動・強度評価手法の開発、3DCADの自動化や最適化設計も含めたデジタル設計・解析プロセスの効率化、ポンプ・送風機の運転データ分析による運転状態診断手法の構築を進めています。また、製品軸ごとに独立していた既存の遠隔監視システムを統合し、ポンプ・送風機・冷熱機器の運転状態を統合監視可能なシステムの構築を進めています。
当連結会計年度の研究開発費は4,598百万円です。
(エネルギー)
コンプレッサ・タービンでは、省エネ・省資源に貢献する新型高効率タービンの開発を完了し、上市いたしました。引き続き、CO2、水素向け圧縮機の開発、および圧縮機、タービン、クライオポンプの性能改善、信頼性向上に向けて、要素技術の開発を進めています。
カスタムポンプでは、エネルギー分野で脱炭素のニーズに応えるアンモニアポンプの開発を完了し、上市いたしました。
当連結会計年度の研究開発費は3,445百万円です。
(インフラ)
インフラ分野では、製品、システム技術および建設に関して国内外の各顧客の特徴に沿った最適化を実現するための開発を行っています。用途、使用環境による様々な要望に応える設備の実現のみならず、管理・運営技術の高度化、省エネ・省資源・環境負荷低減を目指した継続的な検討を行っています。
一方でカスタムポンプ製品の製造を担う富津工場では、インフラカンパニーのみならず、エネルギー、建築・産業分野における海外工場での開発支援および脱炭素のニーズに応える製品の供給に関しても継続して進めています。
当連結会計年度の研究開発費は690百万円です。
(環境)
環境分野では、廃棄物処理施設の建設工事(EPC)から施設運営・維持管理(O&M)までを一括して行うDBO事業、既存施設の延命化を提案する延命化事業、既存施設の長期にわたる運営委託を受ける長期包括事業に取り組んでいます。こうした中、施設更新に伴う機能強化、ライフサイクルコスト低減を可能とする新技術・新製品開発、保守運営技術の改良開発に加え、運転自動化の実現を視野に入れたAI/ICT技術の活用を推進しています。また、再生可能エネルギーの需要拡大を見込み、廃棄物処理施設やバイオマス発電施設における発電効率や運転の安定性を向上するための要素技術の開発に取り組んでいます。さらに、最近の世界的な動きとなっているカーボンニュートラルやプラスチックによる海洋汚染抑制に寄与すべく、廃プラスチックのケミカルリサイクルに適用する資源化技術の開発を行っています。
当連結会計年度の研究開発費は1,481百万円です。
(精密・電子)
精密・電子分野では、半導体デバイス製造プロセス装置において、チップの微細化や3次元集積化だけでなく、重要度が増している新しいパッケージング技術などの開発要求や、急成長するAI、IoT分野に関する技術開発要求にも対応するよう、装置の改良・改善及び新機種の開発に取り組んでいます。コンポーネント製品においては、更なる省エネ化及び環境負荷低減に貢献できる製品や総合排気機器メーカの強みを活かした製品の開発、さらには、DX技術やxR技術による生産性や品質の向上及びアフタービジネスの強化にも取り組んでいます。
また、顧客との共同開発・コンソーシアムへの参画、さらには各大学との共同研究などを通して、次世代半導体プロセス技術の研究も継続しています。
当連結会計年度の研究開発費は8,064百万円です。
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