企業兼大株主荏原製作所東証プライム:6361】「機械 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

(1)経営方針

<長期ビジョン「E-Vision2030」>

 当社グループは1912年の創業以来、創業の精神である「熱と誠」のもとに、「水と空気と環境の分野で広く社会に貢献する」ことを企業理念とし、事業を行ってきました。創業当時は日本の水インフラの整備に貢献し、「水を安全かつ安定的に供給するための事業を通じて国づくりに貢献する」という意思をもって社会の要請に応えてきました。第2次世界大戦からの戦後復興と高度経済成長期には、産業インフラや都市化による建設需要に対して、さまざまなニーズに基づく多種多様な風水力製品・サービスや、市民生活の高度化に伴って生じる廃棄物を処理する焼却設備等を提供してきました。さらに、情報化社会の進展に伴う半導体の爆発的な需要拡大に対して半導体製造装置・機器を開発し、進化する情報化社会に貢献しています。近年は持続可能な社会の要請に対して製品の省エネ化を徹底するなど、事業を通じて社会の様々な課題の解決に貢献してきました。

 今後100年の人類社会や地球環境を展望した場合、多くの課題が考えられますが、当社グループは、気候変動、特に温暖化現象の激化による異常気象と自然災害の激甚化、海面上昇による高潮、陸地の浸食、さらには食料や水の資源枯渇等を大きな課題と捉えています。また、高度情報化社会はますます進化し、デジタル社会の加速によりライフスタイルが大きく変化することが予想され、社会を支える半導体の技術革新はさらに進むとともに需要も拡大していくと考えられます。

 このように事業環境が見通しにくい中で、当社グループが今後も社会課題の解決を通じて更なる成長を続けていくためには、今後の社会の展望と課題を認識したうえで、将来のありたい姿を描き、その実現に向けた方針・戦略を明確にすることが不可欠と考え、2020年2月に長期ビジョン「E-Vision2030」を策定しました。


<5つのマテリアリティ>

 荏原グループは今後も “荏原らしさ”、培われた技術力および信頼性を強みとして、事業を通じてさらに広く社会に貢献し続けていきます。また、2030年に向けて荏原グループが解決・改善していく重要課題を「5つのマテリアリティ」として設定し、その実現プロセスを価値創造ストーリーとして策定・実践していきます。

① 持続可能な社会づくりへの貢献

 技術で、熱く、持続可能で地球にやさしい社会、安全・安心に過ごせる社会インフラ、水や食べるものに困らない世界を支えます。

② 進化する豊かな生活づくりへの貢献

 技術で、熱く、世界が広く貧困から抜け出す経済発展と、進化する豊かで便利なくらしを実現する産業を支えます。

③ 環境マネジメントの徹底

 二酸化炭素排出を実質的にゼロにするカーボンニュートラルに向けて、再生可能エネルギー利用を含めた二酸化炭素削減を推進します。

④ 人材の活躍促進

 多様な人材が働き甲斐と働き易さを感じながら活躍し、“競争し挑戦する企業風土”を具体化します。

⑤ ガバナンスの更なる革新

 成長へのビジョンを描き、グローバルで勝ち続ける経営を後押しする攻めと守りのガバナンスを追求します。

(2)2030年にありたい姿

 当社グループは、2030年までに、SDGsをはじめとする社会課題の解決に資する5つのマテリアリティの実現を通じて持続的に貢献し、①社会・環境価値と②経済価値を同時に向上させていくことで企業価値を向上させることにより、グローバルエクセレントカンパニーを目指します。2030年における企業価値向上の目安として、時価総額1兆円規模を設定します。

 <成果目標の代表例>

  ①社会・環境価値

  ・CO2約1億トン相当の温室効果ガスを削減する

  ・世界で6億人に水を届ける

  ・最先端の半導体デバイスである14オングストローム(100億分の1m)世代への挑戦により、くらしの進化に寄与する

  ②経済価値

  ・投下資本利益率(ROIC)10.0%以上

  ・親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)15.0%以上    

  ・売上収益1兆円規模

<ROIC経営>

「ROIC経営」は株主が重視する企業価値の最大化と、事業部門が重視すべき事業価値の最大化とを橋渡しする有用な経営手法と捉えています。当社の「ROIC経営」においては、管理すべき事業単位毎にWACC(ハードル・レート)を設定し、各事業単位でROIC・WACCスプレッドの最大化を目指した施策を展開しています。ROICツリーにより、事業単位で管理し易い指標にまで分解し、それらを各担当者レベルの評価指標として位置付けると共に、プロセスKPI*として進捗を月次でモニタリングしています。


(3)中期的な経営戦略と目標とする経営指標

<E-Plan2025の位置付け・方向性>

E-Plan2022での成果をベースに次のステージとして、それぞれの事業で更なる競争力強化を図るべく、E-Plan2025では「顧客起点での価値創造」をテーマとしています。その上で、E-Plan2025期間を、E-Vision2030に掲げる「2030年にありたい姿」に着実に近づき、2030年にそれを確実に実現するための3年間と位置付け、以下のとおり方向性を定めました。

1.マーケットインを強化していくことで、プロダクトアウトから脱却し、「顧客起点での新たな価値創造」を行う企業文化を根付かせる。

2.対面市場に向かってそれぞれの事業がパフォーマンスを最大限に発揮する体制となることを企図し、対面市場別5カンパニー制へと組織改変を行う。

3.「2030年にありたい姿」の実現をより確かなものとしていくための資本投下(成長投資/基盤投資)を積極的に行う。

4.効率性/収益性指標(ROIC、営業利益率)については、2022年に実現したE-Vision2030で掲げた目標水準(ROIC 10%など)を維持する。

5.“ROIC経営の深化”を継続的に進めつつ、「2030年に時価総額1兆円」の実現をより強力に推進するために、E-Vision2030で目標として掲げるROEを重要指標として加え15%以上を目指す。

6.グループ全体最適と機能毎のグループガバナンス高度化を目的としてCxO制を導入する。

 以上の1~6の実践を通じ、「2030年にありたい姿」実現への道筋がより確実に見通せる位置に到達していることがE-Plan2025の目標となります。事業成長については、E-Plan2025期間のトップラインのCAGRを7%と置くこととし、成長分野と位置付ける「建築・産業」と「精密・電子」の2事業を中心にそれを実現していくものとします。


<E-Plan2025のテーマと重点領域>

E-Plan2025では対面市場別組織が顧客起点での価値の創発を行うことで新たな事業創出を目指していきます。

 テーマ: 「顧客起点での価値創造=起業化」

 挑戦し続けるマインドセットをサポートする組織風土を醸成するとともに、会社全体を顧客の要望、課題に真摯に向き合う組織構造へと変化させ、ビジネスを創出する一連の流れを生み出すことにより、継続的な「起業」とそれによる価値創造を目指します。

 また、テーマ実現を支える5つの重点領域を以下のとおり定めます。

1. 対面市場・顧客起点

2. 新たな価値創発

3. グローバル事業基盤の確立

4. 経営インフラの高度化

5. ESG経営の推進


<事業セグメントの変更>

 当社グループでは、長期ビジョンの実現に向けた次の成長ステージとして、「E-Plan2025」の中で、より市場に向き合い顧客起点での価値創造を実現していくためには、従来の製品軸のセグメントから対面市場軸のセグメントへと事業セグメントを変更することが合理的と判断いたしました。

「風水力事業」「環境プラント事業」「精密・電子事業」の従来の3事業セグメントを、「建築・産業」「エネルギー」「インフラ」「環境」「精密・電子」の5事業セグメントに変更いたしました。

具体的には、ポンプ、コンプレッサ・タービン、冷熱機械等の製品軸で構成される現行の「風水力」セグメントを、「建築・産業」「エネルギー」「インフラ」の3つの対面市場別セグメントに再構成した上で、それらを「環境」「精密・電子」と並ぶ事業セグメントに位置づけています。


<目標とする経営指標>

E-Plan2025の最終年度である2025年度に達成すべき目標として以下の各項目を設定します。

 財務数値目標

分類

項目

2025年度目標

収益性

全社営業利益率

10.0%以上

<セグメント毎営業利益率>

- 建築・産業

7.0%以上

- エネルギー

12.0%以上

- インフラ

6.0%以上

- 環境

7.0%以上

- 精密・電子

17.0%以上

効率性

ROIC※1

10.0%以上

ROE

15.0%以上

成長性

建築・産業

売上CAGR(2022-2025年度)

6.0%以上

精密・電子

売上CAGR(2022-2025年度)

15.0%以上

健全性

D/E レシオ(倍)

0.3~0.5(管理目安)

※1 ROIC計算式

NOPLAT(みなし税引後営業利益)÷投下資本{有利子負債(期首期末平均)+株主資本(期首期末平均)}

 非財務目標

分類

項目

2023年度~2025年度

目標

環境(E)

CDP評価(気候変動)

B以上を維持

Scope1,2 GHG排出量

2018年比32%削減

Scope3/削減貢献量/他(バリューチェーン) 

2030年1億トン
削減に向けた合理的測定手法の確立

社会(S)

競争し、挑戦する風土へ変革し、多様な社員が働きやすさを感じて活躍できる環境づくりを目指す
・エンゲージメントサーベイスコア向上(連結) 

2025年度 83以上

2030年度 86以上

グローバルモビリティの向上を目指す

・Global Key Position(GKP)における

非日本人社員比率(連結)

2025年度 30%以上

2030年度 50%以上

男女の賃金差異解消
①GKP女性ポジション比率(連結)

②女性管理職比率(単体)

2025年度 8%以上

 2030年度 10%以上

2025年度 8%以上

性別に関係なく仕事と育児を両立できる企業風土を醸成

・男性育児休暇取得比率(単体)

2025年度 100%

※2023年度11月に目標設定

障がいのある社員の活躍促進

・障がい者雇用比率

(単体+グループ適用会社4社)

2025年度 2.6%以上

サプライヤ向けの人権デューデリジェンスの結果に基づく必要な施策の実施

ガバナンス(G)

取締役会の実効性の向上と G to V(Governance to Value)への貢献

E-Plan2025期間におけるキャッシュ・アロケーションの目安(3年間累計)

 項目

 内容

 2023~2025年度
3年間累計

成長投資

 事業ポートフォリオに基づく成長投資
(増産対応設備、研究開発、新規事業、M&A等)

 1,800億円~2,250億円
(内、研究開発費650億円)

基盤投資

 持続的成長を支える基盤の強化等
(維持更新設備、人的資本、ERP等のIT、ビジネスイ
ンフラ、ESG関連投資)

500億円~800億円

株主還元

 配当方針:連結配当性向35.0%以上
自己株式取得:親会社所有者帰属持分水準、他の投資対象、手元現預金水準、
株価の動向、業績の動向等を総合的に勘案し、適切な局面で機動的に実施する

(4)経営環境

E-Plan2025を策定するうえで前提とした経営環境は以下の通りです。


 表中「市場別・地域別トレンド」の矢印は市場の成長動向を示す。

(5)E-Plan2025期間中に対処すべき課題

(5-1)事業別の対処すべき課題

 各事業は、下記の基本方針と基本戦略で課題解決を行っていきます。

① 建築・産業
(ⅰ)基本方針

・建築・産業市場において、顧客視点でのポンプ・冷熱製品・サービスを組合せた新たなソリューション提供により、事業の更なる成長を目指す。

・DXを活用した業務・事業運営の高度化、効率化

(ⅱ)基本戦略

・ソリューション事業強化

-顧客へのソリューション提供によるモノ売りからコト売りへの転換

-新たなビジネスモデルの創出と展開

-IoT+クラウドを使った顧客との接点強化

・成長市場(海外)の取り込み

-M&A拠点製品(Vansan社、Hayward Gordon社)のグローバル展開

-高付加価値製品の投入による新市場の開拓

-食品、半導体市場を中心とした先進国の産業ユーティリティ市場への参入

-アフリカ地域での販路拡大と灌漑向け製品強化

-アフリカ、南米、アジア、北欧地域への新拠点の設立

・グローバルでの事業インフラ再構築

-海外生産拠点の拡充及び地政学リスクを考慮したグローバル調達・生産配分の見直し

② エネルギー
(ⅰ)基本方針

・エネルギーシフトをリードし、脱炭素社会に貢献するため、サステナビリティやサービス分野で新たなビジネスモデルを確立する。

・既存事業領域の収益性を更に向上させるため構造改革を行う。

・コンプレッサ・タービンとカスタムポンプの統合により、顧客や市場に新たな価値を提供する。

(ⅱ)基本戦略

・製品(New Apparatus)

選別受注の継続による、収益性の向上

-新規ソリューションの市場投入準備完了

・S&S(Global Service)

-サービス拠点の構造改革

-コンプレッサ・タービンとカスタムポンプのサービスリソース活用

-新たなS&Sビジネスの開発と市場投入

・グローバルでの生産体制(Global Manufacturing)

-荏原グループ全体最適化の視点でのエンジニアリングの最適化、統一の推進

-自動設計の対象機種拡大

-生産体制の再構築

-LCC(Low Cost Country)からの調達拡大による調達コストの低減

③ インフラ

(ⅰ)基本方針

・国内:生産工場との協働により製品開発力を強化し、底堅い官需のシェアと収益を維持する。

・海外:成長市場を見定めて、ポンプ設備や周辺技術、エンジニアリング技術を用いた新たな価値を創造する。

(ⅱ)基本戦略

・国内ポンプ市場でのシェア拡大

-製品開発力・エンジニアリング機能の強化

-大型機場の延命化提案の推進

-有資格技術者の増員と代理店の活用による、機会損失の低減

・海外ポンプ市場の深堀と利益確保

-国内で高評価を得ているエンジニアリング技術の海外拠点への展開による競争力の強化

-フロントローディングによる戦略受注の継続および収益性の確保

・国内外での生産性向上

-マーケットニーズに即した製品開発

-調達能力の強化

-生産拠点の連携の深化

-DX、AIを活用した生産技術の向上
④ 環境
(ⅰ)基本方針

・中核事業の基盤強化

・脱炭素や資源循環など市場の変化を適切に捉え、Life Cycle Assessment(LCA)を基軸とした、ソリューションプロバイダとしての取り組み強化

(ⅱ)基本戦略

・新規DBOの価格競争力向上・EPCの追加原価発生防止

     [EPC]

-工事費用・機器購入費・設計管理費などの削減

-設計の標準化や方針の見直しによる施設のコンパクト化

-設計の標準化や自動化等の設計業務プロセス改善成果の徹底活用

-計画精度の向上による、土木建築やプラント施工時の追加原価発生の防止

[O&M]

-長期包括案件におけるメンテナンスメニューの最適化、相見積によるコスト低減

・既設O&M案件の収益基盤のさらなる強化

-周辺業務の拡大

-施設運営期間の最大化

・LCAを基軸とした脱炭素・資源循環ソリューションプロバイダとしての取り組み強化

          -ケミカルリサイクル技術の精度向上と、実用化に向けたスキーム構築

          -ロボット開発による運転やメンテナンスなどの高度化

          -新技術やサービスの開発・提供

         ・地域戦略の推進

    -中国拠点との協業で、機器販売およびエンジニアリングビジネスの東南アジアへの拡大
⑤ 精密・電子
(ⅰ)基本方針

・製品・サービスを提供するのみでなく、顧客のプロセスやユーティリティにおける課題解決を通じてユニークな価値を提供する。

・地域戦略からグローバルアカウント戦略に転換し、顧客のグローバル展開に合わせた戦略立案とグローバル全体最適化によりシェア拡大を図る。

(ⅱ)基本戦略

・製品・ソリューション開発力の強化

[コンポーネント]

-顧客の半導体製造の脱炭素化への貢献、AI・DXを活用した新たな価値、半導体以外の産業領域への展開など、半導体工場のサブファブ領域全体に対する価値・ソリューション提供

-ドライ真空ポンプ、排ガス処理装置、半導体製造装置向けチラー、次世代EUV露光装置向け排気システムなどの製品開発

-データモニタリング、故障予知機能などのソリューション開発

[CMPおよびその他装置]

-マーケットインのソリューション開発体制構築

-研究開発施設の増強

-データサイエンス活用によるさらなる価値創造

・生産能力増強

[コンポーネント]

-ドライ真空ポンプは、自動化工場の稼働率向上、グローバルでのオーバーホール能力増強の実施

-EUV露光装置向け排気システムを含む各製品は、需要増に向けた設備投資

[CMPおよびその他装置]

-熊本事業所へ新棟建設

・事業規模拡大に対応したグローバルでの事業インフラ再構築

-ローカル中心の対応から、グローバルでの顧客サポート強化によるS&Sの強化

-サプライヤのマルチ化、海外調達拠点の設立、在庫戦略の再構築によるサプライチェーンの強靭化

-需要増に対応したグローバル組織体制の再構築

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