企業兼大株主花王東証プライム:4452】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1)リスクと危機の管理体制

 花王グループ中期経営計画「K27」では、基本方針として、1.持続可能な社会に欠かせない企業になる、2.投資して強くなる事業への変革、3.社員活力の最大化を掲げて取り組んでいます。詳細については「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」を参照ください。

気候変動をはじめとする環境問題や人権問題、高齢化社会の進行等の社会課題はますます深刻化するとともに、政治的・社会的情勢の不安定化に端を発する地政学リスクの継続等、事業環境は不透明な状況が続いています。また、事業がグローバルに拡大し、様々な分野で構造的変化が進む中、事業を取り巻くリスクの変化に迅速かつ適切に対応する必要があります。このような事業環境に対して、当社グループは、次のようなリスクと危機の管理を進めています。

 リスクとは経営目標の達成や事業活動の遂行に対し、不確かさがもたらす影響のことです。内部統制委員会の下の関連委員会の一つであるリスク・危機管理委員会が、「リスク及び危機管理に関する基本方針」に基づいて、脅威をもたらす「リスク」並びにリスクが顕在化した状態である「危機」の管理体制と活動方針を定めています。そして、部門、子会社、関連会社は、この活動方針に基づいて、リスクを把握、評価し、対応策を策定、実行することでリスクを管理しています。また、危機発生時には、緊急事態のレベルに応じた対策組織を立ち上げ、迅速かつ適切に対応することで、被害、損害の最小化を図ります。リスクと危機の管理活動は、経営会議が定期的(年1回)及び適時確認し、取締役会が承認しています。内部統制委員会はリスクと危機の管理状況をモニタリングし、管理の有効性を確認しています。詳細については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください。

 持続的な利益ある成長と社会のサステナビリティへの貢献に悪影響を与えるリスクとして、特に重要な次の15の主要リスクを、リスク・危機管理委員会、経営会議の審議の下で選定しています。また、少なくとも四半期に一度、その時の事業環境の変化を踏まえた主要リスクの見直し(追加等の検討)を行っています。そして、これら主要リスクの中で、経営への影響が特に大きく、対応の強化が必要なリスクを「コーポレートリスク」としてテーマを決めて取り組んでいます。コーポレートリスクのテーマは、年1回、社内リスク調査の結果分析、外部環境の分析、経営幹部ヒアリングをもとに、リスク・危機管理委員会で検討を行い、経営会議でリスクテーマとリスクオーナー(各リスクテーマの責任者:執行役員)を決定しています。リスクオーナーは対策チームを立ち上げて検討を進め、年4回開催するリスク・危機管理委員会で進捗管理を行っています。

 リスクと危機の管理活動のプロセス


これら主要リスクは、5年以内に顕在化する可能性があるリスクです。なお、主要リスクの記載順は重要性を反映しており、当連結会計年度末における認識です。記載されたリスク以外のリスクも存在し、それらが投資家の判断に影響を与える可能性があります。

(2)主要リスク

15の主要リスクのうち、「コーポレートリスク」として取り組んでいるものについて表示(〇)しています。また、主要リスクのリスク評価(影響・蓋然性の認識)の変化を対前期で三段階(上昇、状態が変わらない、低下)で示します。

主要リスクの名称

コーポレートリスク
としての取り組み

リスク評価の変化

原材料調達

 


社会課題への対応


地政学


大地震・自然災害・事故


製品等の品質


情報セキュリティ


レピュテーション


パンデミック


流通環境の変化

 


海外事業

 


事業投資

 


コンプライアンス

 


人財確保

 


為替変動

 


訴訟

 


リスク評価(影響、蓋然性の認識)の変化


:上昇


:状態が変わらない


:低下

原材料調達

 

(背景)

当社グループで使用している天然油脂や石油関連の原料の市場価格は、世界景気、地政学的リスク、需給バランス、異常気象、為替の変動等の影響を受けます。

また、原材料はパーム油や紙・パルプ等の自然資本に大きく依存しており、省資源、地球温暖化防止、生物多様性保全等の環境側面、安全・衛生、労働環境、人権等の社会側面に十分配慮し、持続可能な調達を実現することで、企業としての社会的責任を果たしていく必要があります。

 

(リスクと影響)

・原材料の市場価格に急激な変動が生じた場合、目標とする利益が得られない可能性があります。

・原材料には、調達上希少な原材料も一部含まれており、安定調達に関わるリスクがあります。需給の変動等による市況の急激な変化や、サプライヤーのトラブル発生により製品の市場への供給に支障をきたした場合、目標とする売上高、利益が得られないだけでなく、当社グループの信用の低下につながる可能性があります。

・サプライチェーン上の何らかの理由で、持続可能で責任ある調達への取り組みが不十分と見なされた場合、当社グループのブランドイメージ、信用の低下につながる可能性があります。

 

(対応)

当社グループは、原材料価格の上昇に対して、原価低減や売価への転嫁等の施策を行い、その影響の軽減を図っています。安定調達に関わるリスクに対しては、主力サプライヤーでの設備増強と、リスク分散のためのセカンドサプライヤーの育成を実施しています。また、サプライヤーとの契約見直しや協働を積極的に行い、リスク低減を進めています。

一方、持続可能で責任ある調達の実践に向けて、“お取引先とのESG推進活動”ガイドラインを公表し、サプライチェーン上での人権保護や環境保全の確認を進めています。特にリスクの高いサプライチェーンをハイリスクサプライチェーンと定義し、本質的な課題解決に向けて、サプライヤー並びにNGOとの連携の下、取り組んでいます。また、原材料の使用量削減や、非可食バイオマス由来の原材料等への転換にも取り組んでいます。

Sedexによるサプライヤーのモニタリング、サプライヤーのコンプライアンス違反ゼロに向けた監査体制の整備、CDPサプライチェーンプログラムの取り組み、また、“お取引先に求めるパートナーシップ要件”ガイドラインを定め、サプライヤーとの連携を強化しています。

ハイリスクサプライチェーンとして位置づけているパーム油の持続可能な調達を目指し、インドネシアの小規模農園に対し、「生産性向上と持続可能なパーム油に対する認証取得を支援するプログラム」を現地のパートナーと協働で実施しています。

これらの取り組みを積極的かつ透明性をもってステークホルダーに公開しています。

 

社会課題への対応

 

(背景)

気候変動、プラスチックごみ問題、水資源の枯渇、原材料調達に関する環境問題、サプライチェーン上の人権問題、そして、高齢化社会の進行や衛生等の社会課題の増大は、生活者の環境や健康等に対する意識を高め、エシカル消費の潮流やサステナビリティに対する顧客ニーズの高まりをもたらしています。

これら社会課題の解決に向けて、中期経営計画「K27」を実行するとともに、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(KLP)を推進しています。原材料の調達から生産、製品の使用、廃棄に至るあらゆる段階でのイノベーションを目指すとともに、社会・環境の両視点から花王が優先的に取り組むべき19の重点取り組みテーマについて目標を設定し、全社全部門がそれぞれの役割の中で取り組んでいます。それらの推進並びに進捗管理を通じて、社会のサステナビリティへの貢献を目指すと同時に、活動内容を積極的にステークホルダーに開示しエンゲージメントをすることに努めています。

 

(リスクと影響)

・社会課題の解決に向けた取り組みが目標に対して不十分である、あるいは不十分と見なされた場合、製品やサービスを消費者や顧客に受け入れていただけず、目標とする売上高、市場シェアが得られない可能性があります。

・KLPでコミットメントしたKPIの進捗状況を十分に示せないと、「グリーンウォッシュ」※1と捉えられる等企業価値の低下につながる可能性があります。

・気候変動については、※2に記載している移行リスク(炭素税の導入・引き上げ、プラスチック規制の導入、原材料価格の上昇、生物多様性の保全)と物理的リスク(自然災害)があります。

・人権侵害や人権への配慮不足は、サプライチェーンの維持等の事業活動に支障をきたす可能性があります。

 

(対応)

KLPと事業のより一層の一体化を目指して、ESGコミッティのもとに、重点的に取り組むべきテーマを推進する4つのESGステアリングコミッティを2022年4月に発足させ、ガバナンス体制を強化しました。ESGステアリングコミッティは「脱炭素」「プラスチック包装容器」「人権・DE&I」「化学物質管理」からなり、各テーマごとに役員クラスの責任者を置き、それぞれのテーマに関する機会とリスクを社会・環境・事業インパクトの面から分析・把握し、計画を立案、推進することで、ESGよきモノづくりの実施を確実に行い、社会課題解決と事業成長の両立を目指します。

気候変動に関する対応は、上記ガバナンス体制の下で実施しており、各リスクへの対応策は、※2で示した移行リスクと物理的リスクの「花王グループの戦略」に記載しています。

人権侵害ゼロに向けて、サプライチェーン上のリスクアセスメントを定期的に実施して、リスクを把握し対応を進めるとともに、社員に対して人権問題に関する啓発を行っています。

また、コーポレートリスクとして、社会課題への取り組みに対するステークホルダー等の評価をグローバルで把握することで、レピュテーションリスクの低減に取り組んでいます。

 

※1 グリーンウォッシュ

企業が、製品やサービスについて、環境及びサステナビリティに関する特徴を誇張もしくは大げさに主張したり、それらに関する活動について十分な根拠なく訴求すること。

※2 詳細については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応(TCFD提言への取組)」を参照ください。

地政学

 

(背景)

当社グループが事業展開している欧州や東アジアにおいて地政学リスクの高い状態が続いています。また、原材料調達を実施している国・地域においても地政学リスクが高まる可能性があります。

 

(リスクと影響)

地政学リスクの高まっている国・地域において、政治的・社会的情勢の不安定化、外交関係の緊迫化、そして、紛争等により、事業を取り巻く環境が悪化し、人的被害の発生、サプライチェーンの寸断による操業の一時停止、生活者の購買行動の変化が発生した場合、当社グループが目標とする売上高、利益が得られない可能性があります。

 

(対応)

地政学リスクの高まっている国・地域においてリスクシナリオを作成し、特に注意すべき国・地域に対しては、対応体制を整備し、政治的・社会的状況をモニタリングしています。社員の安全確保に関するガイドラインを策定し、また、原材料調達等のサプライチェーン寸断に伴う事業への影響を確認してサプライチェーンネットワークの強化を進めています。

なお、「地政学」は、コーポレートリスクとして取り組んでいます。

 

大地震・自然災害・事故

 

(背景)

化学プラントでの事故や、自然災害が多く発生している昨今、大規模化学プラントを有する企業への安全操業に対する要求はますます高まってきています。

 

(リスクと影響)

・大地震や気候変動に伴う大型台風、洪水等の自然災害により、従業員、設備、サプライチェーン等の被害で、市場への製品供給に大きな支障をきたした場合、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループの工場で、火災・爆発事故等により従業員や周辺地域に大きな被害が発生した場合、経営成績に重大な影響を及ぼすとともに、社会の信用を失う可能性があります。

 

(対応)

火災、爆発及び化学物質漏えいを防止し、安全で安定な操業を維持するために社内監査に加えて外部機関による定期的な評価を通じて保安力の強化に努めています。大地震、大型台風、洪水等を初めとする自然災害の発生を想定した対応体制の整備、設備対応並びに社員の教育・啓発、定期訓練を行い、緊急事態に備えています。

コーポレートリスクとして、日本の長期操業停止を想定した首都直下地震、南海トラフ地震、富士山噴火等に対する影響分析と対応検討を進めています。また、海外拠点のBCP強化に取り組んでいます。

 

製品等の品質

 

(背景)

当社グループの品質保証活動の基本は、「花王ウェイ」で示された消費者・顧客起点の心を込めた“よきモノづくり”です。原材料から研究開発、生産、輸送、販売までのすべての段階において、徹底した消費者・顧客視点で、高いレベルで製品の安全性を追求し、絶えざる品質向上に努めています。市場においては、消費者の品質価値の多様化、化学物質の安全性への懸念や環境問題への意識の高まり、さらには、企業の透明性を促す情報開示要求等の変化が起こっており、また、ボーダレス化の進展によるグローバルな商品流通が増加しています。そのような中、各国・地域は、持続可能な社会や消費者保護の強化を目指して、新たな法規制の枠組み作りに動き出しています。

一方、当社グループは、市場の多様化と価値観の変化を機会と捉え、新規技術開発に挑戦し、新規分野への事業展開も計画しています。

 

(リスクと影響)

・重大な品質問題の発生はブランドの問題だけではなく当社グループ全体の信用低下につながる可能性があり、また新たな安全性や環境問題の発生や各国・地域の急激な法規制の変更に対して適切かつ迅速に対応できない場合には、タイムリーな商品提供機会を失う可能性があります。

 

(対応)

当社グループでは、製品関連法規の遵守並びに自主的に設定した厳しい基準に従って、設計、製造を行っています。発売前の開発段階では、徹底的に試験、調査研究を行い、品質と安全性を確認しています。発売後には、消費者相談窓口を通じて、商品への意見、要望等をくみ上げ、さらなる品質向上に努めています。

化学物質の安全性懸念や環境問題に対する要求に先回りした商品開発の推進、積極的な情報開示による品質保証活動の見える化とステークホルダーとのコミュニケーション強化に取り組んでいます。さらには、各国・地域の新たな法規制に対する影響分析、法規制への適合性を迅速に確認できるシステムの構築に取り組んでいます。

また、コーポレートリスクとして、品質問題により重篤な被害が生じた場合に被害を最小化するための全社対応の強化と、重大品質問題発生防止に向けた社内啓発の強化を進めています。

 

情報セキュリティ

 

(背景)

当社グループは、ITを活用して事業や業務を効率的に進めるとともに、データを活用したビジネスを進めています。研究開発、生産、マーケティング、販売等に関する機密情報(トレードシークレット(TS))を保有し、また、販売促進活動、会員サイト運営やEコマースを進める上で、多くのお客様の個人情報を保有しています。

当社グループは、情報セキュリティポリシーのもと、TS・個人情報及びハードウェア・ソフトウェア・各種データファイル等の情報資産の保護を目的とした情報セキュリティの強化を図っています。

 

(リスクと影響)

・サイバー攻撃を含む意図的な行為や過失等により、機密情報や個人情報が外部に流出する可能性があります。また、サプライチェーン等の事業活動が一時的に中断する可能性があります。このような事象が発生した場合、信用の低下や、目標とする売上高、利益が得られない可能性があります。

 

(対応)

情報セキュリティの人的・組織的対策としては、日本と海外の情報セキュリティ委員会が花王グループ全体で規程や体制を整備し、PDCAサイクル(啓発活動、自己点検、改善目標の設定)によるTS・個人情報・情報セキュリティの保護推進活動を実施しています。また、SOC(Security Operation Center)の整備等のインシデント発生時の対応体制を強化しています。技術的対策としては、セキュリティ対策の戦略ロードマップを作成し、これに沿ってセキュリティ対策の強化を実施し、定期的に経営会議や監査役に報告を行っています。また、サプライチェーンのセキュリティリスクを把握するために過去にサードパーティ・ロジスティックス、サプライヤー、製造委託先のセキュリティ対策のヒアリングを実施しています。重大なインシデントに備えサイバー保険への加入も行っています。

新事業においても顧客・委託先・協業先等の取引先とTSや個人情報(RNA等の個人関連データを含む)の扱いについて契約で取決めを行い、さらに取扱いや運用のルールを作成し情報管理の徹底を図っています。

なお、「情報セキュリティ」は、コーポレートリスクとして取り組んでいます。

 

レピュテーション

 

(背景)

ソーシャルメディアの発展と普及は、個人による情報発信とその拡散を容易にし、生活者同士又は生活者と企業との多岐にわたる相互コミュニケーションを可能としました。ソーシャルメディアによる情報発信の中には企業に対する批判的な評価や評判も含まれており、それらが拡散されることで、ブランド価値や企業の信用が低下し、財務的、又は非財務的な損失を被る「レピュテーションリスク」の増加が懸念されています。

 

(リスクと影響)

・当社グループにおいても、ソーシャルメディアを用いた様々な情報発信やブランドのマーケティング活動は年々増加しており、それらの活動で使用された不適切、又は不用意な表現に対する批判的な評価等がSNS等を通じて拡散された場合、当社グループのブランド価値や企業の信用を著しく低下させる可能性があります。

 

(対応)

当社グループでは、ESGの観点を含め、広告の不適切表現を防止する対策として、事前チェック体制の整備と社内教育に取り組んでいます。また、国内外におけるソーシャルメディアのモニタリングを行い、早期のリスク発見にも努めており、事業及びブランドの活動に悪影響を及ぼすレピュテーションリスク事象が発生した場合は、迅速に対応すると同時に、必要に応じて適切なタイミングで、情報や企業姿勢を公表する等、当社グループのレピュテーション(評判・信用)の維持に努めています。

なお、「レピュテーション」は、コーポレートリスクとして取り組んでいます。

 

パンデミック

 

(背景)

新型コロナウイルス感染症は、病原性が低いとされるオミクロン株が主流となり、多くの人が自然感染あるいはワクチン接種で免疫を獲得したことによってエンデミック対応に移行しています。しかしながら、引き続き感染力の高い変異ウイルスの出現に注意が必要です。一方、人口増加や環境破壊による病原体を保有する動物とヒトとの接触頻度の増加による新たなウイルスによる感染症の流行、耐性菌による抗生物質が効かない感染症の再来等、新興再興感染症によるパンデミックの発生が危惧されています。

 

(リスクと影響)

・パンデミックが発生すると、当社グループの拠点やサプライチェーン上での集団感染の発生やロックダウン等により、製品やサービス提供に支障が生じる可能性があります。

・パンデミックにより外出等の日常生活ができなくなると購買行動にも変化をもたらし、化粧品市場等が縮小する可能性があります。

・このような事態が発生した場合、目標とする売上高、利益から大きな乖離が生じる可能性があります。

 

(対応)

新型コロナウイルス感染症への対応は、エンデミック対応に移行したため、緊急事態対策本部(本部長:代表取締役社長執行役員)を解散し、引き続き変異ウイルスの影響をモニタリングしています。

また、コーポレートリスクとして「パンデミック対応」に取り組み、新型コロナウイルス感染症へのこれまでの対応を踏まえて、次のパンデミックに備えて初動対応を強化するために、ガイドライン、行動計画、備蓄品等の見直しを進めています。

 

流通環境の変化

 

(背景)

デジタルツールの発展や普及とSNSの影響で、流通環境と購買行動は年々変化が見られます。大手Eコマース(EC)プラットフォームやメーカー直販ECでの購買行動の日常化に加え、ソーシャルコマース※1、ライブコマース※2といった新たなECチャネルも年々増加し、流通環境は一層多様化しています。また、リアル店舗とECのシームレスな購買(OMO※3)が進み、生活者はより利便性が高くパーソナライズされた購買体験を求めるようになりました。

物流に関しては、物量増に伴うドライバー不足やガソリン等燃料費の高騰によって、物流コストの増加が顕在化しており、また、働き方改革関連法に伴うドライバーの時間外労働の上限規制が、2024年から物流業界にも適用されることもあり、大きな環境変化が見込まれます。

 

(リスクと影響)

・流通環境と購買行動の多様化・複雑化に対し適切な販売・マーケティング活動を展開できない場合、目標とする売上高、市場シェア、利益が得られない可能性があります。

・物流環境の変化に適切に対応できない場合、配送の滞りや、物流コストの大幅な増加等、当社グループの事業活動にも影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応)

こうした環境の変化を受け、当社グループではEC専業企業との取り組み、リアル流通とのOMOへの取り組みや自社によるライブコマースの推進等、生活者の購買行動変化への対応を進めています。また、SNS花王公式アカウント「花王トクトクニュース」の積極的な会員獲得を推進しており、2023年は380万人まで拡大しました。会員への情報発信やキャンペーンを通じた店頭への送客等を行い、流通業との共創を進めています。さらに、生活者と直接つながる双方向デジタルプラットフォーム「My Kao」を新たに立ち上げ、生活者に役立つ鮮度や信頼性の高い情報の発信や、利便性を重視した花王公式オンラインショップ、資源循環型社会の実現に貢献するアウトレットモールを運営しています。これら生活者とのダイレクトコミュニケーションを通じ、様々な流通環境の変化や多様な情報があふれる中でも、生活者にとっての利便性向上はもとより、花王に対する信頼性やロイヤリティ向上等につながる活動を進めています。

物流に関しては、国土交通省や経済産業省等が進める「ホワイト物流」推進運動に参加し、物流効率化や生産性向上に取り組んでいます。自社での取り組みに加え、流通業や他メーカー、物流事業者とも連携して、トラック待機時間削減等のドライバー作業環境改善、物流平準化、積載率向上等、持続可能な物流体制の構築を目指しています。

 

※1 ソーシャルコマース

SNSに商品を購入できる機能を追加した販売チャネルの1つ。

※2 ライブコマース

インターネットでの動画ライブ配信で商品紹介と物販を組み合わせた販売手法。

※3 OMO(Online Merges with Offline)

 オンラインとオフラインの両者を融合させる販売戦略。

海外事業

 

(背景)

当社グループは、成長戦略のひとつとして海外事業展開を進めており、特に経済成長率が高く、市場規模が大きくなることが予想されるアジア等の強化を重視しています。

 

(リスクと影響)

・新型コロナウイルス感染症の影響以外にも、各国における経済成長の鈍化、政治的・社会的に不安定な情勢、急激な法規制・税制の変更、模倣品の氾濫、レピュテーションリスク等が発生する可能性があります。これらの影響により事業計画に大幅な遅れが生じた場合、目標とする売上高、利益が得られない可能性があります。

 

(対応)

当社グループでは、生産・販売国の経済・政治・社会的状況に加えて、事業に関連する各国法規制の情報を日々収集し、必要な対応を行っています。特に各国の環境関連規制の強化、製品の安全性・品質関連規制の強化、また、輸出入関連規制の変更の当社グループへの影響に注視しています。一方、模倣品等の知的財産権の侵害については、特にアジア地域を中心とした模倣品対策に注力しており、消費者・顧客に安心して製品を使用していただけるよう取り組んでいます。

 

「レピュテーション」を参照。

事業投資

 

(背景)

当社グループは、企業価値と相関関係の高いEVAによる投資判断のもと、事業成長やESGのために積極的な設備投資、M&A等を進めています。これら投資を今後も進めるとともに、継続的なEVA改善を通して企業価値の向上に努めていきます。

 

(リスクと影響)

・投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、計画との乖離等により期待される効果が生み出せない場合、設備投資により計上した有形固定資産や、M&Aにより計上したのれんや無形資産の減損処理により、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応)

当社グループは、重要な投資に対して、期待される効果が計画から大きく乖離していないかを四半期決算毎に確認し、経営会議で報告しています。乖離した場合には、関係部門が必要に応じて今後の方向性や業績改善のための対策を検討しています。

 

コンプライアンス

 

(背景)

事業活動を行う上で、製品の品質・安全性、知的財産、環境保全、保安防災、労働安全、化学物質管理、取引管理、情報開示等の法規制等に対する企業の取り組みの強化が求められています。

 

(リスクと影響)

・世界的競争が激化する中で、差別化、販売スケジュールや製品納期の遵守、業績目標達成等の圧力により不正リスクが高まることが懸念されます。

・コロナ禍を契機とした在宅勤務と出社を組み合わせた新しい働き方・ハイブリッドワークが当たり前となり、働く意識や働き方への希望はこれまで以上に個別・多様化の傾向を強くしており、ハラスメントや労務管理上のコンプライアンスリスクが増加する可能性があります。

・当社グループ及び委託先等が重篤なコンプライアンス違反を起こした場合は、当社グループの信用、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応)

当社グループは、「正道を歩む」(法と倫理に則って行動し、誠実で清廉な事業活動を行う)をコンプライアンスの原点と位置づけ、すべてのステークホルダーの支持と信頼にこたえていくための指針とし、行動規範である「花王ビジネスコンダクトガイドライン」の継続的な教育やコンプライアンス通報・相談への適切な対応等の活動を進めています。ハラスメントや労務管理上のコンプライアンスリスクについては、ケーススタディ等を通じて気づきを与えています。さらに、職場での相互理解を深めるための取り組みとして、対話促進活動「対話フェス」も行っています。また、重篤なコンプライアンスリスクの低減にフォーカスした活動として、事業に適用される法令遵守推進を計画的に実施し、特に重要な法令についてはその実施状況をコンプライアンス委員会がモニタリングしています。重篤なコンプライアンス違反を発見した場合、すぐに経営陣に報告され適切な対応を行えるよう、風通しの良い職場の実現を目指した活動を推進しています。

 

人財確保

 

(背景)

当社グループは、経営計画を実行する上で、多様な人財が挑戦・共創できる場の創出に努めています。しかし、グローバルでの競争激化により、企業には変化に柔軟に対応していく変革力が従来に増して求められています。また、個人のキャリアや働き方に対する価値観がこれまで以上に多様化し、社会全体で人財の流動化がより一層進んでいます。

 

(リスクと影響)

・大きな環境の変化を先取りし、各分野で必要とする高度な専門性を持つ人財や、変化を先導するリーダーとなる人財の獲得と育成が推進できない場合には、中期経営計画「K27」の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応)

当社グループで最も重要な資産は「人財」であるという認識のもと、社員活力の最大化に向けて、多様なバックグラウンドや専門性を持つ人財が、大きな挑戦と国や地域、組織を超えた共創により、能力と個性を最大限に発揮するための取り組みを推進しています。

多様な人財が集い、活躍できる場を整備(フレキシブルな働き方の推進、DE&I推進、社内公募制度等)することで、人財獲得においての優位性を維持できると考えております。また、自学共生の機会の提供(業務を通した経験の拡大、DX等の先端教育を自律的に学べるプログラムの導入等)や自律的なキャリア形成を促進することで社員のさらなる成長が期待できます。

これらの取り組みに加えて、持続的な成長を支える人財の配置・育成や効果的な組織運営について、経営トップをメンバーとする人財企画委員会で毎月議論し、推進しています。

 

為替変動

 

(背景)

為替相場の変動は、外国通貨建ての売上高や原材料の調達コストに影響を及ぼします。また、連結決算における在外連結子会社の財務諸表の円貨換算額にも影響を及ぼします。

 

(リスクと影響)

・当社グループの機能通貨である円に対して外貨の為替変動が想定以上となった場合、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応)

外国通貨建て取引については、外貨預金口座を通じての決済、為替予約や通貨スワップ等のデリバティブ取引により為替変動リスクをヘッジすることで、経営成績に与える影響を軽減しています。なお、投機的なデリバティブ取引は行っていません。また、主要通貨の変動と事業への影響をモニタリングし、適時、経営会議に報告しています。そして、必要に応じて経営陣指示のもと、関係部門は事業への影響を軽減する対策を検討しています。

 

訴訟

 

(背景)

当社グループは、グローバルで多岐にわたる事業展開をしており、様々な訴訟等を受ける可能性があります。

 

(リスクと影響)

・当連結会計年度において、当社グループに重要な影響を及ぼす訴訟等は提起されていません。しかしながら、訴訟等が提起された場合、その動向によっては、当社グループの信用、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応)

当社グループは、事業に関わる各種法令を遵守するとともに、安全・安心な製品の提供、知的財産権の適正な取得・使用、契約条件の明確化、相手方との協議の実施等により紛争の発生を未然に防ぐよう努めています。また、グローバルで、重要な訴訟の提起や状況に関する報告が迅速かつ確実になされる仕組みを構築するとともに、当社グループ各国の担当者及び弁護士事務所等と連携し、訴訟等に対応する体制を整備しています。

 

(3)主要リスクの中期経営計画「K27」との関連性

15の主要リスクのうち、「原材料調達」、「社会課題への対応」、「製品等の品質」、「流通環境の変化」、「海外事業」、「事業投資」、「人財確保」を中期経営計画「K27」との関連性が特に大きいリスクと認識して対応しています。

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