笹徳印刷 【東証スタンダード:3958】「パルプ・紙」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、お客さまの心からの満足、感動と信頼を第一に考え、お客さまと共に成長する企業であり続けるために「お客様の信頼第一」を基本理念の一番に掲げております。お客様と共に成長するためには、私たち一人ひとりが新分野・新技術へのチャレンジをするとともに、成長への自律的な努力に対し惜しみない協力と援助を行うことにより、人を活かし、人を大切にできる心豊かな企業であり続けるために「価値ある人財へ」を二番目に掲げております。さらには、私たちが決めた仕事の手順などのルールや、国内外の法とコンプライアンスを順守し、環境調和を常に考え、堅実・誠実・公正な活動の実践で全てのステークホルダーに貢献できる企業であり続けるために「きっちり 『ルール』、しっかり 『マナー』」を三番目に掲げ、常にお客様からの心からの「ありがとう」を目指しております。
当社グループは、時代に即したコミュニケーションでお客さまとマーケットをつなぎ、満足され、感動される品質で信頼を築く良きパートナーであり続けるために、「Good Communication, Good Partner」を企業スローガンとしております。(図3)
図3:基本理念、明日への宣言、ものづくり標語、企業スローガン
■中期経営方針
当社グループは、上記の基本理念および企業スローガンのもと、将来のあるべき姿として、2024年6月期から『2026中期ビジョン 「コミュニケーション」と「包む」技術で、お客様と新しい感動を創り、未来へつなげる。』を掲げ、お客さまに寄り添って「新しい感動」を創ることで、お客様の利益や幸せ、豊かさにつなげ、そして、私たちの未来にもつなげる事業を目指しております。(図4)
その実現に向けて、市場環境の変化を見据えた事業戦略及び生産体制の合理化を推進する経営基盤を構築し、持続的な成長と企業価値向上を確かなものとするため、中期経営計画(2024年6月期から2026年6月期までの3ヵ年計画)の実現に向けて、全社視点での重点施策及び、各事業における施策を着実に実行することで計画達成に邁進しております。(図5)
図4:2026中期ビジョン
図5:2026中期ビジョン 成長ストーリー
(2) 経営戦略等
あらゆる産業を顧客に持つ印刷産業は、印刷技術をベースに事業分野を拡大して社会のニーズに対応をしており、その事業分野の裾野は広く2023年度の市場規模は約7.6兆円(出典:経済産業省 経済構造実態調査)と大きな市場であります。当社グループは、創業134年に渡り印刷事業で培ったノウハウを活かし、印刷技術と情報技術を融合して、拡大する多様なソリューションに対応しております。
また、当社グループの顧客は上場企業(グループ会社を含む)が半数以上(グループ会社を含む)を占めており、7割以上の企業と長年にわたって取引が持続しております。「お客様の信頼第一」の元、創業より長年築いた大手優良企業との信頼関係により、安定的な収益基盤を確立しております。(図6)
図6:強固な顧客基盤について(2024年6月期当社グループの売上高)
さらには、4つの成長領域における幅広い業界の優良企業と豊富な取引実績を有しており、特定の業界や顧客に依存するリスクを分散し、外部環境の影響を受けにくい全天候型の事業構造を実現していることも当社の強みとなっております。(図7)
図7:当社グループの顧客は、4つの成長領域に分散
特に当社グループの祖業であるパッケージング分野では、紙器、軟包装、輸送包装に加え、フルフィルメントサービスまで手掛けており、顧客企業の小ロット生産を可能にする戦略的イノベーションパートナーへの展開を図っております。一方のコミュニケーション分野においては、プリントメディアからデジタルメディアへのシフトが加速する中、印刷事業で培った企画力と情報技術力を融合したコンテンツ制作技術により、プリントメディアに関連する新たな事業領域(コンテンツマネジメントサービス、クロスメディア、ソフト制作、画像処理、映像制作など)を拡大する取り組みを展開しております。
さらに当社は、FSC®森林認証(Forest Stewardship Council)を取得し、適正に管理された森林から切り出された木材から作られたFSC®森林認証紙の利用を促進してカーボンニュートラルを推進しております。
また、ユニバーサルデザインの概念を基本に、パッケージの易開封性、文字の視認性に配慮するなど、生活者の文化・言語・国籍・年齢・性別・能力などの違いに係わらず、全ての人が使いやすい、人にやさしいパッケージを提供することで、ダイバーシティインクルージョンを推進しております。
このように、環境と多様性に配慮した製品開発と高次元の品質で、印刷に係わる前後の領域を拡大していくことが成長戦略のひとつであると考えております。
当社グループは、お客様とマーケットを『グッドコミュニケーション』でつなぎ、『発想から発送までのワンストップソリューション』を提案し、前術のカーボンニュートラルやダイバーシティインクルージョンに配慮した製品を提供し、お客様と一緒になって、当社グループのソフトとハードの総合力で新しい高付加価値を創出することにより、社会の持続的な発展に貢献する取り組みを展開しております。(図8)
図8:発想から発送までのワンストップソリューション
(3) 目標とする経営指標
当社グループは、お客様の良きパートナーとして共に発展していくことにより、収益性を確保し、当社グループ全体の売上高営業利益率を高めることを目標とし、企業価値の増大に努めてまいります。
(4) 経営環境及び対処すべき課題
わが国の今後の経済状況は、社会経済活動の正常化に伴う個人消費の持ち直しや、インバウンド需要の回復などから、景気は緩やかな回復基調で推移する一方、不安定な世界情勢や円安の長期化による原材料価格やエネルギー価格の高騰などの影響により、依然として先行き不透明な状況が続いております。
印刷業界におきましては、デジタルシフトによる紙媒体の需要縮小や、競争の激化、価格の低迷という構図が長期化し、厳しい経営環境が続いておりますが、パッケージング分野においては、人流の拡大も寄与し堅調な需要が続いております。さらには、広報活動や販売促進活動が回復傾向にあることから、イベント関連の需要も徐々に回復基調となっております。
このような環境下において当社グループでは、2026年中期経営計画として『「コミュニケーション」と「包む」技術で、お客さまと新しい感動を創り、未来へつなげる』を掲げ、最適な環境未来パッケージの開発やデジタルを活用した新たなコンテンツにより事業構造改革を進めるとともに、引き続き「発想から発送までのワンストップソリューション」を推進して、企業価値を高める取り組みを進めております。
当社グループが属する印刷産業は、デジタル化とインターネットの普及により商業印刷は縮小傾向ですが、印刷技術と情報技術を融合した多様なソリューションが拡大し、特にパッケージ、軟包装、BPO、販売促進、顧客データベース管理、情報加工、クロスメディア、ソフト制作、画像処理、エレクトロニクス産業資材の分野において成長しており、2023年度の市場規模は約7.6兆円(出典:経済産業省 経済構造実態調査)となっております。(図9)
※(注)1.出典 経済産業省「工業統計調査」、「経済構造実態調査売上金額」
2.経済産業省「工業統計調査」は、2020年の調査をもって終了いたしました。
3.製造品出荷額等の数値は、2019年~2020年は「工業統計調査」を記載し、
2021年以降は「経済構造実態調査売上金額」を記載しております。
4.2023年の製造品出荷額等の数値は、2024年6月30日時点で公表されておりません。
5.工業統計調査および経済構造実態調査売上金額の「印刷・同関連業」は、
紙および紙以外の印刷業、製版業、製本業、印刷物加工業、校正刷業、
刷版研磨業、印刷物結束業、印刷校正業となっております。
図9:印刷産業の市場規模
当社グループの祖業であるパッケージにおける包装印刷の市場規模は、2023年度922億円(出典:経済産業省 経済産業省生産動態統計)となり2019年度比で約10%伸長しております。包装印刷は印刷市場の中で好調な分野であり、足元では食品・菓子、日用品、化粧品市場において需要が拡大しております。今後も通販市場やEC市場の拡大、インバウンド需要の回復、さらにはプラスチックごみによる海洋汚染問題から、脱プラ化による紙器需要のニーズが高まっているため、包装印刷市場は堅調に推移することが予測されております。(図10)
※(注)1.出典 経済産業省「経済産業省生産動態統計」
2.経済産業省 生産動態統計の包装印刷は、包装印刷に関わる印刷前工程(企画・編集・製
版など)、印刷後工程(加工など)、用紙代などを除く、「印刷工程の販売金額」となって
おります。
図10:包装印刷市場
フルフィルメントサービスを含むBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング 注)の市場規模は、㈱矢野経済研究所の調べによると2022年度の非IT系BPO市場規模は前年比2.3%増の1兆9,191億円、2025年以降は約2兆円の市場規模が予測されております。昨今の労働力不足・人財不足を背景として、働き方改革やDX(業務自動化を中心としたデジタル技術による業務変革)に取り組む企業が増え、自社内リソースの再構築が課題となっております。
さらに、それらの企業では、抜本的な事業体制の見直しに伴い、委託業務内容は拡大基調で推移するとみられており、今後もコア業務からコンサルティング業務までを一気通貫でアウトソースする機運が高まっております。
従いまして、フルフィルメントサービスは、製造企業の戦略的イノベーションパートナーへと移行することが予測されております。(図11)
※(注)BPO(Business Process Outsourcing)とは、企業の業務プロセスを一括して外部に委託するアウトソーシングの一種の形態で、企業はBPOサービスを利用することにより、企業の売上の源泉である「コア事業」に人的リソースや資金を集中させることが可能となり、競合優位性の向上につながるサービスのことをいう。
※(注)1.出典 2023年 ㈱矢野経済研究所調べ
2.事業者売上高ベースとなっております。
3.IT系BPOとは、発注企業からシステム運用管理業務を委託され代行するサービスとし、
非IT系BPOとはその他の業務を委託され代行するサービスとなっております。
4.2023年度以降は、㈱矢野経済研究所の予測値となっております。
図11:国内BPO市場規模推移・予測
広告市場は、プリントメディアからインターネットメディアへの転換が進んでおり、2023年度のインターネット広告市場は、全広告費に占める割合が45.6%の約3.3兆円規模(資料:電通 2023年 日本の広告費)まで拡大しております。プリントメディアからデジタルメディアへと変化する中、デジタルコンテンツ制作のニーズは年々高まっていると考えております。(図12)
※(注)1.資料:電通「2023年 日本の広告費」
2.インターネット広告費(インターネット広告媒体費、インターネット広告制作費、
物販系ECプラットフォーム広告費の合算)は、前年比107.2%の3兆3,330億円と、
引続き市場拡大をけん引しております。
図12:日本の広告費
このような状況の中、当社グループでは「守りの成長」と「攻めの成長」に焦点をあて、当社の祖業であるパッケージング分野を強化するとともに、印刷事業で培った印刷に係わる前後の領域を成長へと導いていくことを目標とした取組みを実施し、これからもお客様を大切にしながら収益をあげる企業構造への転換に努めてまいります。
また、多様性のある人財を最大限に活用し、当社製品やサービスの品質保証責任と供給責任を果たすことが、社会的課題の解決に貢献し、企業価値の向上と持続的成長に繋がるものと考え、以下の課題に取り組んでまいります。
① 販売戦略
当社グループがお客様と共に成長する企業であり続けるには、祖業であるパッケージング分野を安定的に拡大させることが重要と考えております。パッケージング分野は、長年の実績により培ったノウハウを、独自の紙器構造設計技術に活かし、サステナビリティを意識した環境配慮型製品の開発に注力し、今後も営業部門・企画開発部門・製造部門の連携による高機能パッケージの開発と提案を推進してまいります。
また、フルフィルメントサービスは、多くの業界そしてお客様の期待を具体化する形で需要が拡大をしております。主力製品である印刷製品をはじめ、付帯する商品企画、物流、在庫管理、発送代行、購買管理等の業務を一貫して請け負うサービスは、多くのお客様から厚い信頼をいただき、数多くの成果となっており、今後は、関東地区への拡大に注力してまいります。
さらに、市場開発本部・企画制作本部・デジタル制作本部が、三位一体となって活動することにより、当社グループの強みであるマーケティング解析、デジタルコンテンツ企画やクロスメディアソリューションの一環した提案力の強化につながっております。お客様からの信頼を第一に考え、販売促進企画や商品企画等の高付加価値を提案することで、お客様の販売拡大に寄与することを通じて、お客様との信頼関係を築いてまいります。(図13)
図13:印刷事業で培った印刷に係わる前後の領域を成長へと導く
「発想から発送までのワンストップソリューション」を実践するためには、企画・マーケティングの強化は、重要な施策となります。当社グループの組織力を最大限に活用してオリジナル商品の開発とサービスの拡充を図ってまいります。
そのために、優秀な人財の確保と育成への惜しみない投資を持続的に行ってまいります。(図14)
図14:企画・マーケティングの強化による成長ストーリー
当社グループが属する印刷業界は、顧客ごと案件ごとに仕様やコンテンツが変わるオーダーメイド商品であるという特徴を持っており、いわば、当社グループの事業はコンテンツ制作と密接に結びついております。広告産業においては、印刷メディア広告からインターネット広告へ変化しておりますが、デジタルコンテンツ制作の需要は安定的に推移しております。当社グループは印刷事業で培ったコンテンツ制作のノウハウをフルデジタルでのコンテンツ制作にも活かし、情報産業としての領域を拡大してまいります。(図15)
図15:マーケティング力によるコトづくりとモノづくりの融合
また、当社グループは、フルフィルメントサービス(図16)の拡大に注力しており、多くの業界そしてお客様それぞれの期待を具体化する形で実施展開をしております。主力製品である印刷製品をはじめ、付帯する商品企画、物流、在庫管理、発送代行、購買管理等の業務を一貫して請け負うサービスは、多くのお客様から、厚い信頼をいただき、数多くの成果となっております。さらに当社の強みであるマーケティング解析、デジタルコンテンツ企画やクロスメディアソリューションにより、お客様の販売促進企画や商品企画等の高付加価値提案をすることで、お客様の販売拡大に寄与し、その延長として当社グループの発展につながっております。(図17)
フルフィルメントサービス
ワンストップでサービス提供できるメリット
図16:フルフィルメントサービス
図17:フルフィルメントサービス(FFS)による成長ストーリー
当社グループが属する印刷産業は、社会のニーズの変化に対応して、印刷技術を応用・発展させることで、さまざまな分野にビジネス領域を拡大してきております。
当社グループは、印刷事業に隣接するデジタル領域を拡大させ、独自のデジタルコンテンツ制作やデジタルサービスの開発などに注力し、情報産業としての領域の発展を目指しております。(図18)
図18:デジタルメディアの更なる強化による成長ストーリー
② 低コスト生産体制の構築
当社グループが持続的な発展を行うためにも、価格競争力は重要な課題であると認識しております。原材料やエネルギー価格さらには人件費が高騰している中で、適正利益を確保するためには、基礎的な生産能力をしっかりと整備し、成長分野への人員増強と積極的な投資、適正な人員配置と省人化、合理化施策などにより、生産効率向上に取り組む必要があります。そのためには、外部とのネットワークを最大限に活用して、更なるデジタル化を進め、価格競争力の向上に取り組みます。
生産体制におきましては、これまで培ってきた製造技術(図19)と品質保証体制(図20)に加え、さまざまな分野から高次元の技術や知識を習得するなどのレベルアップに取り組んでおり、新製品開発から生産技術の開発まで、事業創造型の研究開発を行ってまいります。
また「材料費の削減」「品質の向上」「作業時間の短縮」「エネルギーの削減」「廃棄物の削減」「環境配慮型製品の開発」などに取り組み、製造利益最大化を追求してまいります。
図19:当社がこれまで培ってきた製造技術の事例
図20:当社の品質保証体制
さらには、顧客の生産計画に合わせて当社製品の生産をコントロールする「かんばん方式」への対応、環境対応付加提案や、当社独自技術を使った環境配慮型製品の開発を展開し、当社製品の付加価値を最大化する取り組みを行っております。(図21)
図21:当社独自技術を使った環境対応付加提案について
海外事業につきましては、現在、中国とインドネシアに拠点を設けて事業を展開しており、主に現地に進出している日系企業を中心とした顧客にパッケージを供給しております。
今後は、東南アジア全域に活動範囲を広げるとともに、製品構成もパッケージだけではなく、フルフィルメントサービス等も展開し、当社グループの認知度とブランド力向上に取り組んでまいります。(図22)
(注)世徳印刷科技(無錫)有限公司は、当社の連結子会社であった世徳印刷(無錫)有限公司を、2023年12月14日付で吸収合併いたしました。
図22:海外生産体制の強化による成長ストーリー
③サステナビリティ経営、人的資本経営の推進
基本理念に「価値ある人財へ」を定め、新分野・新技術へのチャレンジと、成長への自律的な努力に惜しみない協力と援助を行い、人を活かし、人を大切にできる心豊かな企業であり続けることが、持続的な発展につながると考えております。そのためには、社員の健康と安全を第一に考え、多様な価値観・個性を尊重し、働きがいのある職場環境の整備を進め、将来を見据えた全社員のレベルアップのため、人的資本への投資をさらに強化してまいります。
また、これまで134年に渡り培ってきたノウハウを活かし、環境に配慮したサステナブルな紙素材などと人にやさしい製品設計・開発により、「未来にやさしく環境を循環させるパッケージ」として、「ササエコ・パック」シリーズの開発と提供を進め、カーボンニュートラル社会の実現に向けた、カーボンフットプリントシステムの導入やGHG排出量の削減目標の設定に取り組んでまいります。
④ DXの推進
当社グループは、4つの重点施策「企画・マーケティングの強化」「デジタルメディアの強化」「フルフィルメントサービスの強化」「海外生産体制の強化」を実現するため、業務のデジタル(DX)化、自働化による労働生産性の向上は、最重要課題と認識しております。
そのためには、ICTリテラシーを向上させるための社員教育を強化し、業務プロセス、製造プロセスのデジタライゼーションによるDXを推進するとともに、未来を見据えたAI活用に向けての研究開発をスタートさせ、お客様に新たな価値を提案してまいります。
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