第一稀元素化学工業 【東証プライム:4082】「化学」 へ投稿
企業概要
研究開発活動の方針等
当社はこれまでジルコニウム化合物の精製、酸化ジルコニウムの凝集制御をコア技術とし、これらに他元素との複合化技術を併用することで、ジルコニウム化合物の新機能開発と用途拡大に取り組んできました。
今後は、半導体・エレクトロニクス分野、エネルギー分野、ヘルスケア分野を戦略分野と位置付け、多様化・高度化する顧客ニーズに応える製品を開発することによりジルコニウムの更なる用途拡大に向け、継続的に行動していくことを基本方針としております。
また開発された新規材料は独創的で付加価値の高いものであるため、原則として知的財産権を取得し、当社グループの事業領域において活用していきます。
当連結会計年度には、事業環境の変化に柔軟に対応できる研究開発体制を整備し、新たな事業基盤を整えることを目的に新規拠点として研究開発センター(大阪市住之江区)での研究開発活動を開始いたしました。研究開発センターは、新設した研究棟に、リニューアルしたパイロットプラントを併設しています。当社は、新製品開発と新規用途開拓の加速、資源循環やカーボンニュートラル関連の技術開発の促進において、本拠点を最大限に活用し、社会課題を解決する製品・技術・サービスの提供にこれまで以上に取り組んでまいります。
研究開発センターの機能と役割は、以下の通りです。
(1)戦略分野の研究開発力を強化
従来の分析・評価設備に加え、当社製品及び開発品の新規特性や機能性を評価するための設備を新規導入し、中期経営計画『DK-One Next』で戦略分野と位置付ける半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケアの分野において、新製品開発と新用途開拓を加速させます。
(2)イノベーション拠点への進化
オープンな実験スペースとワーキングスペースを確保し、研究開発に携わる役職員の部門や専門分野を超えたコミュニケーションの機会を増やすことにより、新たな価値の創造と次世代への技術継承を促進します。
(3)スピーディな量産化と環境に配慮した工程設計
研究開発センターに同時にリニューアルしたパイロットプラントを併設することで、量産化にかかる期間の短縮に加え、資源循環やカーボンニュートラル関連の技術開発を促し、環境負荷の少ない量産工程の早期実装を目指します。
分野別の研究開発方針は、以下の通りです。
(1)戦略分野
①半導体・エレクトロニクス分野
・圧電素子、コンデンサなど電子部品の小型化、高性能化及び半導体の高集積化、微細化に対応する、高純度かつ高機能なジルコニウム系材料を開発します。
②エネルギー分野
・正極材NMC系のリチウムイオン電池の耐久性向上に加え、酸化物系全固体電池の早期実用化に貢献する、高純度かつ高機能な二次電池材料を開発します。
・固体酸化物燃料電池(SOFC)や固体酸化物電解セル(SOEC)の実用化段階を早めるために技術課題の解決につながる電解質・電極材料を開発し、提案します。
・カーボンニュートラルに向けたCO2の利用と排出量削減に関連した研究開発並びに実用化技術の開発を加速します。
③ヘルスケア分野
・強度・靭性、審美性に加え、新たな機能を付加した歯科材用などのジルコニアセラミックス材料を開発します。
(2)自動車排ガス浄化触媒分野
自動車の電動化は進むものの、自動車メーカーが新エンジンを開発する動きを見せるなど、当面は従来の内燃機関の活用が主流であると考えています。とりわけ、インド・東南アジアなどのグローバルサウス市場においてはハイブリッド車を含む内燃機関搭載車が引き続き主流となるため、強化される自動車排ガス法規制に対応し、助触媒機能としてより高機能な触媒材料を開発していきます。また当社の助触媒開発は、触媒である貴金属の使用量削減に繋がり、資源保護並びに環境負荷の低減に大きく寄与します。
(3)基盤分野
①熱遮蔽コーティング用途
・発電用ガスタービンや航空機等のエネルギー効率を向上させるなど、耐熱性を有するジルコニウム系材料を開発します。
②アルミニウム接合用途
・自動車用熱交換器や家庭用エアコンなどのアルミろう付け用途において、顧客生産過程における省エネルギー化や簡便化に貢献するセシウムフラックス及びフラックス内包ろう材を開発します。
③工業用触媒用途
・火力発電所や工場等から排出される有害物質の浄化や化学製品の高効率な合成を目的とした触媒機能を有する材料を開発します。
研究開発体制
当社の研究開発活動は、中長期的な視野でのジルコニウム化合物の新機能の発掘及び新規用途開拓、並びに新規材料の調査・研究を研究開発室が担当し、既存用途での材料開発及び既存材料での用途開発は技術部が担当しています。生産技術部は、量産プロセス設計に加え、資源循環やカーボンニュートラル関連の技術開発及び設備設計を担当しています。一方、知的財産権に関する業務については知財管理室が担当します。2024年3月期実績としては、国内特許出願11件(海外出願を含めると36件)を実施いたしました。現在保有している国内特許は96件(海外特許を含めると214件)で、その事業分野ごとの内訳は、戦略分野が27件、その他新規分野が19件、自動車排ガス触媒分野が35件、基盤分野が15件となっております。今後も部門機能ごとに専門性を高め連携しながら、研究開発活動を実施します。また大学・研究機関を対象に、ジルコニウム及びハフニウム並びにセシウム化合物を利用した独創的な研究、創意、工夫に対して使途の自由度が高い研究助成金制度を実施しています。ジルコニウム及びハフニウム並びにセシウム化合物の素材を利用した研究活動への支援を通して、当社で対象としていない領域も含むこれら材料の新たな可能性が拡大されることを期待しております。2023年度は、38件の応募があり、20件を採択して助成しました。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は1,173百万円であります。
研究開発テーマ | 内容 | 成果 |
ジルコニウム化合物の基礎研究 | 大学や公的研究機関との共同研究 | ドライリフォーミング触媒、自己治癒セラミックスに関する学術誌への論文掲載 |
ジルコニウム化合物の用途拡大 | 半導体分野への用途拡大 | 知的財産権の取得 |
二次電池材料の開発 | 電池性能・耐久性・加工性の向上 | 正極材コート材料の採用拡大 |
機能性構造材料の開発 | 低温焼結技術の応用 審美性、セラミックス強度、靭性の向上 | 知的財産権の取得 新規開発抗菌セラミックスの業界紙掲載 日本セラミックス協会技術賞の受賞 |
自動車排ガス浄化触媒材料の開発 | 浄化性能・加工性向上 | 次世代触媒への採用拡大 |
アルミ溶接材料の開発 | 加工性向上 | 家電・BEVへの採用拡大 |
カーボンニュートラルに向けた生産技術の開発 | バイオマス由来熱源の導入 産学連携によるマイクロ水力発電機の研究開発及び設備設計 | 再生可能エネルギーの生産プラント利用 江津工業高校による設備設計開始 |
- 検索
- 業種別業績ランキング