第一三共 【東証プライム:4568】「医薬品」 へ投稿
企業概要
当社グループは、企業行動憲章に基づき、事業と一体となってサステナビリティ課題へ取り組むとともに、持続的な成長に向けた重要課題(マテリアリティ)を特定し、ESG経営を推進しています。当社グループを取り巻く環境変化や社会要請・期待を踏まえ、毎年、マテリアリティの改善を図るとともに、環境・安全衛生やコンプライアンス等の課題に特化した各委員会を通じてグループ全体での取り組みを推進しています。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結会社)が判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
① 企業行動憲章を基軸としたサステナビリティ方針とESG経営の推進
当社グループは、企業理念実践のために、すべての企業活動において遵守すべき行動原則を定め、事業を通じてサステナビリティ課題に取り組んでいます。各原則に基づき、法令及びルールなどを遵守し、生命関連企業としてふさわしい高い倫理観と社会的良識をもって行動し、多様な社会からの要請・期待に積極的に応えることで、持続可能な社会への貢献とともに、持続的な企業価値の向上を図ります。
また、当社グループのESG経営「ESGの要素を経営戦略に反映させることで、財務的価値と非財務的価値の双方を高める、長期目線に立った経営」を推進して参ります。
参照箇所:第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 第一三共の価値創造プロセスとESG経営
② マテリアリティ
(ⅰ) マテリアリティの特定とKPI目標設定
当社グループでは、当社グループの中長期的な企業価値に影響を及ぼす重要度と、当社グループのさまざまなステークホルダーを含む社会からの期待の両面から、中長期的取り組み課題を抽出し、取締役会メンバーによる複数回の議論を経て、2020年3月、持続的な成長に向けて取り組むべきマテリアリティを特定しました。そして、第5期中期経営計画と連動したマテリアリティ毎の長期目標、取り組み指標「KPI」を設定し、2021年4月に公表しています。
「事業マテリアリティ」として、当社グループの価値創造の根幹である「革新的な医薬品の創出」のほか、「高品質な医薬品の安定供給」、「高品質な医療情報の提供」、「医療アクセスの拡大」を定めています。また、「事業基盤マテリアリティ」として、「環境経営の推進」、「コンプライアンス経営の推進」、「企業理念の実現に向けたコーポレートガバナンス」、「競争力と優位性を生み出す多様な人材の活躍推進と育成」を定めています。
(ⅱ) マネジメントサイクル
毎年、KPI目標への取り組みの情報開示を通じ、ステークホルダーとの建設的な対話・ESG評価結果等から、新課題を抽出し、取締役会・経営会議での議論・承認を経て、マテリアリティの特定・進化・KPI設定を行っています。
2022年度の議論においては、当社の創出する「革新的な医薬品」を患者さんにより早く治療薬として届けることで、当社の掲げるMissionを体現しパーパスの実現を示す、新たなKPI項目として、「優先審査制度への指定数累計」を2023年度より追加することを決定しました。また、近年、脱炭素社会の実現に向け、サプライチェーン(Scope1・2・3)全体のCO2排出削減への要請が一層高まっていることを背景に、「ビジネスパートナー(Scope3、Cat.1)の70%以上が1.5℃水準(SBTレベル)の目標を設定」することを決定しました。
(ⅲ) 指標及び目標
各マテリアリティの長期目標、実現に向けた課題、KPI指標、2025年度の目標値、2022年度実績はコーポレートウェブサイトに示しています。
《コーポレートウェブサイト 関連ページ》
株主・投資家の皆さま- IRライブラリ- 第一三共株式会社 (daiichisankyo.co.jp)
(2023年7月上旬公表予定)
③ サステナビリティにおけるガバナンス体制
当社グループにおけるマテリアリティマネジメントでは、業績評価・目標管理制度や各委員会等を通じて各KPI目標値の進捗を確認するとともに、経営会議・取締役会にて全KPI目標値についての進捗報告や、KPI項目・目標値の追加や改善に関する審議を実施し、社内外役員における活発な意見交換が行われています。また、コンプライアンス経営、EHS経営、社会貢献活動に関わる事項については、各委員会(企業倫理委員会、EHS経営委員会、社会貢献委員会)にて活動方針を決定し全社推進を図るとともに、サステナビリティに関する重要事項については、経営会議や取締役会に報告しています。
・企業倫理委員会(事務局:コンプライアンス・リスク管理部)
国内外の法令及び企業倫理を遵守し、企業の社会的責任を果たすべく経営を推進し、役員及び従業員によるコンプライアンスの実践を確保するために設置
委員長:コンプライアンスオフィサー(ヘッド オブ グローバル コンプライアンス・リスク)
委員 :委員長が指名した社内委員12名のほかに、委員会運営の透明性、信頼性を確保するために社外弁護士1名を加え13名で構成
・EHS経営委員会(事務局:サステナビリティ推進部、人事部)
当社グループの企業活動全般において、環境の保全と健康と安全の確保に努め、持続可能な社会に貢献すると同時に、リスクが発生する可能性の高い環境(Environment)、健康(Health)、安全(Safety) マネジメントを一体的に運営、推進するために設置
委員長:EHS経営最高責任者(ヘッド オブ グローバル コーポレートストラテジー)
委員 :委員長が指名した14名で構成
・社会貢献委員会(事務局:サステナビリティ推進部)
良き企業市民として、企業の社会的責任の観点より社会貢献活動を推進するために設置
委員長:ヘッド オブ グローバル コーポレートストラテジー
委員 :委員長が指名した6名で構成
(2)人的資本への取組
① 人材育成方針
当社グループは、「人」を最重要な「資産」と位置付け、社員の高い参画意欲と貢献を促進することで、社員と会社相互の長期的な成長を実現します。当社の強みとなるサイエンス&テクノロジーを支える人材を育て、Core Behaviorの1つ「Develop & Grow」に基づき社員のキャリア自律を促し、継続的に必要な知識やスキルを研鑽するリスキリングのマインドを醸成しております。具体的には、仕事を通じた成長を人材育成の基本とし、上長による支援(役割付与や権限委譲、フィードバック)と、各育成施策(研修・セミナー、Learning Platform)を通じて、当社グループが求める人材を輩出しております。社員が業務経験から得られた学びを仕事に活かす「経験学習サイクル」を適切に回し、いかなる環境においても自律的に能力を高め、活躍できる人材を育てるため、必要な教育機会の提供と支援を行っております。加えて、持続的な社員の活躍と会社の成長を目的として、ビジネスニーズや環境変化に適応した人材も育成しております。
・グローバル人材の育成
グローバルな視野や異文化理解の知識を深められるプログラムを提供するなど、グローバルで働くビジネスパーソンに求められる要件を定め、それに基づき育成施策を展開しております。更に、国や地域を跨いだ人材交流(海外赴任や海外留学等)により、実際に異なる文化や考え方に触れ、多様性を尊重しながらパフォーマンスを発揮できる(グローバル連携によるシナジーが創出できる)人材を育てていきます。
・次世代リーダーの育成
ビジョンや中期経営計画の実現にあたり重要なポジションを特定し、後継候補人材の育成課題に沿ったリーダー育成施策(研修、役割付与など)を推進することで、人材の確保・定着を図って参ります。海外の各地域でも次世代リーダー育成の仕組みを整えており、その一例として、アジア・中南米地域では、一部の子会社トップマネジメントのサクセッションプラニングで、次世代リーダー候補者のリーダーシップ強化・開発に必要な育成機会を提供しております。
② インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)
当社グループでは、国籍・人種・性別・年齢などの属性面に加え、考え方・価値観・ライフスタイルなども含んだ多様な社員が共存し、そのすべての社員が受け容れられ、最大限に実力を発揮することが、グローバルな事業展開やイノベーション創出に繋がると考えております。Core Behaviorの1つに「Be Inclusive & Embrace Diversity(当社グループは一人一人を個として大切にし、仕事を進める上で多様な視点を積極的に受け入れることで、より大きな目標を達成します。)」を定めるとともに、2022年3月の国際女性デーには「Global I&D Statement」を発表し、社内外に当社グループのI&Dに対する姿勢や考え方を明示しています。2022年度は Core Behavior Monthを設け、「Be Inclusive & Embrace Diversity」をテーマに、グローバル全体で職場対話会を実施し、社員1人ひとりの相違点や類似点を認識・尊重する大切さを学ぶなど、I&Dの理解浸透・定着を図りました。また、多様性のあるインクルーシブな組織づくりを通じて、社員の柔軟性や探求心を高め、「学ぶ風土」の醸成にも注力しております。
・女性活躍推進
日本では、女性活躍推進の一環として、女性マネジメント職同士が互いの悩みを分かち合い切磋琢磨する場(ネットワーク)を構築し、リーダーシップやマネジメントの研鑽、経営との意見交換、次世代女性リーダーの育成支援などの活動を行っております。
・LGBT等セクシャルマイノリティ
当事者や周囲の社員が働きやすい職場を目指し、日本においてLGBT支援制度の導入や外部相談窓口の設置などを行っております。またグローバルでは、2022年6月のプライド月間に、グローバルリーダーからのビデオメッセージをSNSで全世界へ発信するなど、幅広い取り組みを進めています。
③ 社内環境整備方針
当社グループでは、多様な人材がいきいきと活躍できる環境の整備に取り組んでいます。
(ⅰ)社員の健康と安全
「健康・安全宣言」を社内外に発信するとともに、必要な投資を積極的に行い、社員の健康・安全の保持・増進に取り組んでいます。
<健康宣言・安全宣言>
「当社グループの企業理念およびビジョンの実現に向けて会社と従業員が共に成長を遂げるためには、従業員の心と体の健康・安全が不可欠であり、当社グループは、全ての従業員が安全に就業し、健康を保持・増進するための環境づくりに積極的に取り組むことをここに宣言します。」
健康経営体制として、EHS経営委員会にてグローバルで健康・労働安全に関する方針・目標・施策を定め、その方針に基づき、国内では最高健康経営責任者である社長をトップとした健康経営推進体制にて、会社と労働組合で合意した安全衛生管理の中期方針に基づいた安全衛生施策を推進しています。具体的には、現在、解決したい健康課題を、社員一人ひとりがいきいきと働けること、つまり生産性高く働けることと定めています。その上で、国内での重点領域を生活習慣病、がん、メンタルヘルス、運動機能の4つに定め、経営課題に対応した施策とその期待成果を図示化した健康・労働安全戦略マップに基づき、安全衛生施策を推進しています。なお、積極的な取り組みの結果、当社グループは、2018年から6年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定されています。
(ⅱ)ワークライフサイクル(働き方)
当社国内グループでは、仕事と生活の好循環を生み出すという意味を込めて「ワークライフサイクル(WLC)」というコンセプトを提唱し、社員のWLC支援に取り組んでいます。仕事での経験はもちろん、仕事以外の時間から相乗的にもたらされる、やりがいや充実感、多様な経験や視点・知識・考え方は、個人と組織の相互成長や継続的な価値創造を支える重要な源泉だと考えています。社員一人ひとりが目指すWLCの実現に向け、時間や場所に縛られない柔軟な働き方の推進(多様な労働時間制度・テレワーク制度など)や仕事とライフ(育児・介護・治療など)の両立支援、キャリア形成支援(キャリア支援休職・副業など)に加え、各種セミナーや対話会の実施などに取り組んでいます。
また、近年では、国・地域を跨いだコミュニケーションや会議の機会が増えてきたことを踏まえ、グローバルでの働き方に関する課題(文化、言語、仕事の習慣の違いや時差による負荷など)の解決を図る「Global Work Style」というプロジェクトを2021年度第4四半期からスタートしました。そして、2022年4月にGlobal Work Styleの基本コンセプト「Global Meeting Guideline」を、さらに9月に国・地域、ユニットを跨る共通施策「Global Meeting Measures」を、それぞれCEOメッセージとともにグローバル展開して、グローバルでの働き方に関する取り組みを推進しています。
(3) 気候変動への取組(TCFD*1に基づく開示)
地球温暖化や異常気象などの気候変動について、生活や仕事に影響する重要な課題と認識し、様々な環境問題に対し責任ある企業活動を行うために、第一三共グループ企業行動憲章及び第一三共グループEHSポリシーに基づき、環境経営を推進しています。 また、2019年5月にTCFD提言への賛同を表明し、2020年にはガバナンスやシナリオ分析結果など、TCFDの開示枠組みに沿った情報開示を行いました。さらに2021年10月に改訂されたTCFD提言に対応した情報開示を進めると共に、グローバルな課題である気候変動に積極的に応えていくため、気候変動に関するガバナンスや事業戦略の更なる強化を目指します。
*1: Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース
① ガバナンス
企業活動全般において、環境(Environment)の保全と健康と安全(Health & Safety)の確保に努めマネジメントを一体的に運営・推進するため、EHS経営最高責任者を委員長とし、関係組織長(取締役含む)、グループ会社社長を委員として構成する「EHS経営委員会」を設置しています。年2回グローバルEHS経営に関する方針や目標設定、活動の審議・報告を実施しており、審議・報告事項については、取締役会に報告し監督される体制となっています。2022年度は、Scope3削減に向けたビジネスパートナーエンゲージメントの推進及びインターナルカーボンプライシングの導入検討などについて審議しました。
② 戦略
地球への環境負荷が増大する中、持続可能な社会が実現されなければ、企業活動を行っていくことはできません。特に、生命関連製品である医薬品は、気象災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や医薬品供給能力の低下は大きな事業リスクであり、社会リスクでもあります。したがって、当社事業の環境負荷低減・脱炭素化を推し進めていくと同時に、ビジネスパートナーとの協働によりサプライチェーン全体の脱炭素化も推進し、カーボンニュートラルの達成と物理的影響を緩和することが重要であると考えています。
一方で、CO2排出量は事業から直接排出される排出量(Scope1、Scope2)は少なく、サプライチェーンから排出される排出量(Scope3)が多いことが特徴です。このような認識に基づき、気候変動に伴う当社ビジネスへの影響を把握し、当社のレジリエンス(強靭性)を明確にするため、シナリオ分析を実施しました。
(ⅰ)シナリオ分析の方法
2021年度には部門横断のタスクチームを立ち上げ、関係部門に対し、シナリオ分析の概要及びIEA(国際エネルギー機関)・ IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表するネットゼロシナリオなどに関する勉強会を実施し、2030年以降の事業リスク及び機会について検討を行いました。IEA・ IPCCのシナリオを用い、「移行」及び「物理」双方について、バリューチェーン全体のリスク・機会を洗い出し、洗い出されたリスク・機会については、2022年度にEHS経営委員会で審議・評価を行い、承認を受けています。具体的には「調達」「直接操業」「製品・サービス需要」の観点からリスク・機会を洗い出し、6つに分類しました。IEA・IPCCの脱炭素化シナリオ(1.5℃)と、脱炭素化が達成されないシナリオ(4℃)について選択したのは、移行リスク・物理的リスクの両方において、その極端なケースを想定し、予め備えることが重要であると判断したためです。それぞれについて、「発生頻度」「事業影響・財務影響」「投資家の関心有無」の観点から2030年と2050年までを対象に総合的なリスク・機会の評価を実施し、事業への潜在的影響及びレジリエンスを整理しました。
(ⅱ)シナリオ分析の結果と第一三共のレジリエンス
1.5℃シナリオ(移行が進んだ世界)
環境の変化 | リスク・機会 | 当社グループへの潜在的影響 | 影響度 | 当社グループのレジリエンス | 事業リスク |
脱炭素関連の政策・法規制強化 | 炭素税導入 | 2030年時点の炭素税が130$/t-CO2に上昇すると想定しても、年間のコスト負担は約15億円~30億円。 | 小 | 財務的インパクトは限定的であり、1.5℃目標に引き上げた気候変動対策を推進することで更に軽微なものにしていく。 | 低 |
再エネ導入に伴う炭素税負担回避 | 将来的な炭素税導入・上昇の対策として、再エネ調達による排出量削減が重要。 | 小 | 再生可能エネルギーを積極的に活用することにより、2030年時点の年間の炭素税負担回避額は約16億円~32億円。 国内外事業所の電力は、2030年度までに100%再生可能エネルギー由来に転換する。 | 機会 | |
再エネ設備導入コスト増 | エネルギー源は電気・ガスが中心。地域によっては既に再エネ電力を調達。 既存の電力をすべて再エネにした場合、年間のコスト負担は約3~6億円。 | 小 | 再エネ・省エネ設備の追加費用は低下傾向であり、対策の推進によりコスト削減に繋げる。 | 低/機会 | |
エネルギーコスト等増加 | エネルギー事業会社の脱炭素対策が実施されるが、対策自体の導入・運用コストが増加すると将来的なエネルギー調達コスト増を予想。 | 小 | 化石燃料由来のエネルギーコストの上昇が予想されるが、現時点では影響は限定的。 | 低 | |
調達コストへの価格転嫁 | ビジネスパートナーが自らの炭素税負担を価格転嫁することで調達コストが上昇する可能性があり、供給網全体での排出量削減が重要。 | 中 | ビジネスパートナーとの協働により、Scope3の削減を進め、炭素税負担の回避に繋げることで調達コストの上昇を抑える。 | 低/機会 | |
企業評価に対する脱炭素への取組の影響増大 | 企業価値の増大 | 脱炭素への取組がESG投資家から評価され、株価上昇など企業価値向上。 | 大 | 脱炭素社会に向けた取り組み、TCFD提言への積極的な対応、株主・投資家の期待に応える情報開示を行うことで評価向上に繋げる。 | 機会 |
4℃シナリオ(物理的影響が大きくなる世界)
環境の変化 | リスク・機会 | 当社グループへの潜在的影響 | 影響度 | 当社グループのレジリエンス | 事業リスク |
気象災害(大雨・洪水・台風)の発生頻度増、規模拡大 | サプライチェーン寸断 | 安定供給に支障をきたすリスクの高まり。 生産・出荷不能により、工場停止や売上減などのリスク。 | 大 | 在庫管理を強化し、災害時でも安定供給に努める 複数社からの購買を実施、複数社から購買できていない原料については今後検討していく。 | 中 |
自社拠点の一時操業停止 | 重要な研究・製造拠点が浸水する可能性(水災リスクは総計約94億円)。 製造拠点の一部は河川に近くとも浸水の可能性は低いが、交通寸断などにより一時操業停止の可能性。 | 大 | 事業継続計画(BCP)の観点から拠点の水災リスク評価を実施し、強靭化を進めている。 緊急事態訓練における洪水対応・減災対策を強化し、水災マニュアルの整備・実証を担保してレジリエンスを高める。 | 低 | |
異常気象(浸水)による不良在庫化 | 物流拠点などの浸水に伴い、操業停止に加えて製品在庫も被害を受ける可能性。 | ||||
気温上昇 | 気候変動に伴う疾患増加等 | 悪性黒色腫、循環器、呼吸器疾患、各種熱帯病などに対する関連医薬品の需要拡大と社会からの要請・期待の高まり。 疾病構造の変化に伴う既存製品の需要減少の可能性。 | 大 | 需要拡大に応える生産ラインの確保、在庫管理強化に努める。 疾病構造の変化やパンデミックも含め、アンメットメディカルニーズ・社会要請の高い疾患に対する研究開発を外部リソースとの連携も合わせ検討する。 | 中/機会 |
空調設備のコスト増 | 本社、研究開発、製造拠点ともに屋内作業が基本であり、気温上昇に伴い空調コスト増が予想されるが影響は限定的。 | 軽微 | コスト増は吸収可能な範囲であり、財務影響は軽微であるが、引き続きエネルギー効率改善に努める。 | 低 | |
保険料/BCPコストの増加 | 気温上昇に伴う風水害の激甚化により、現在でも火災保険料が上昇傾向にある。ただし、将来的な保険料の上昇見通しは限定的。 | 軽微 | 日本では4℃上昇時、洪水発生頻度が4倍上昇すると予想されているが、その結果、保険料が数倍に上昇したとしても財務影響は軽微である。 | 低 |
環境の変化 | リスク・機会 | 当社グループへの潜在的影響 | 影響度 | 当社グループのレジリエンス | 事業リスク |
水不足 | 自社拠点の一時操業停止 | 最も取水リスクの高い工場である中国とブラジルでの操業停止の可能性。 その他地域で想定を超える短期的な渇水の可能性。 | 中 | 雨水タンク設置・リサイクル水活用などの渇水対策を推進する。 長期に渡り渇水となった場合、薬事規制の動向をみつつ、他拠点活用・製造委託などの緊急時供給対応を検討する。 | 中
|
生物多様性の喪失 | 天然化合物由来製品の生産性低下 | 生物多様性の喪失により原料が入手できず生産が止まってしまった場合、約20億円/年の損失を予想。 | 中 | 数年分の原料在庫は確保されており、リスクが顕在化する前に迅速な対応を実施する。 | 低 |
*影響度は、軽微(1億円未満)、小(1億円~50億円)、中(50億円~100億円)、大(100億円~300億円)を基準に評価
*事業リスクは影響度と発生頻度を考慮し総合的に評価
事業活動に対する直接的な移行リスクは限定的であると認識していますが、サプライチェーンについては、今後、炭素税や移行対策などのコスト上昇がリスクとして考えられます。また、物理的リスクについては、気象災害などの激甚化による安定供給についての懸念があります。このような分析結果に基づき、移行リスクについてはこれまでの省エネ対策の推進に加え、再生可能エネルギーの活用や脱炭素技術の導入、ビジネスパートナーとの協働により、炭素税などの負担回避によるコスト低減を機会として創出していきます。また、物理的リスクについては、水害対策を含めたBCPの深化、サプライチェーンの安定性を高める予防策の実施、多様性の確保、支援策の確保、代替策の確保等の対策を実施することで、当社グループにおける毀損を回避し、持続的な企業価値向上を目指していきます。 シナリオ分析で評価・特定された重要なリスク対策については、EHS経営委員会及び取締役会でグループ全体の進捗管理を行っていきます。
③ リスク管理
気候変動や水に関するリスクなど、事業活動の変更を余儀なくされる可能性のあるリスクを把握し、当社グループのリスクマネジメントシステムの一環としてリスク対応策を実施しています。EHS経営委員会は、気候変動による影響が当社ビジネスにどのようなリスクと機会をもたらすのか、その財務的なインパクトを評価・管理し、レジリエンスを高める重要な役割を果たしており、重大リスクの懸念がある場合は取締役会に報告し、総合的リスク管理に統合されます。加えて、長期的なカーボンニュートラルへの移行を目指し、中期及び短期での目標・実施計画を審議・決定しています。
<リスク>
1.5℃シナリオ IEA SDS(WEO2021), IEA NZE 2050 | 炭素税導入、再エネ設備導入コスト増、不十分な開示によるレピュテーショナルリスク発生 |
4℃シナリオ IPCC RCP8.5 | サプライチェーン寸断、自社拠点の一時操業停止、気温上昇に伴う空調コスト増、取水リスクによる操業困難化、天然化合物由来製品の生産性低下 |
<機会>
1.5℃シナリオ | SBT達成に向けた各種施策によるコスト削減や負担回避・投資家からの評価向上 |
4℃シナリオ | 気候変動に伴い増加する疾患への貢献 |
④ 指標及び目標
バリューチェーンごとに事業への潜在的影響及び気候関連のリスク・機会を評価・管理する指標と目標として、第5期中期経営計画におけるKPI及び環境に関する目標を定めています。第5期中期経営計画の進捗を踏まえ、2021年度に気候変動に関わるKPIの見直しを行った結果、Scope1及びScope2については1.5℃の世界に対応した目標水準へ引き上げを行うとともに、2022年度には、Scope3についてもサプライヤーエンゲージメント目標として、サプライヤーに要請するCO2排出量削減目標の設定を「1.5℃水準」へと更新しました。
CO2排出量(Scope1+Scope2) | 2025年目標:2015年度比42%減 2030年目標:2015年度比63%減 |
CO2排出量(Scope3、Cat.1) | 2025年目標:2020年度比売上高原単位15%減 |
ビジネスパートナー・エンゲージメント(Scope3、Cat.1) | 2025年目標:2025年目標:ビジネスパートナーの70%以上が1.5℃水準の目標を設定 |
再生可能電力利用率 | 2025年目標:60%以上 2030年目標:100% |
CO2排出量 単位:t-CO2
| 2020年 | 2021年 | 2022年 |
Scope1 | 86,785 | 88,249 | 84,558 |
Scope2 | 96,080 | 103,150 | 23,418 |
*2022年度から国内自社拠点における使用電力を再生可能エネルギー化し、Scope2のCO2排出量を大幅に削減
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