石油資源開発 【東証プライム:1662】「鉱業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)基本的な考え・取組み
当社は、「エネルギーの安定供給」が使命であり、事業活動そのものがCSRであると考えています。この考えのもと、持続可能な社会実現に向けた社会的課題の解決に積極的に取り組むという、サステナビリティ活動に関する方針と中長期の価値創造を実現するための5つのCSR重点課題「SHINE」にもとづいたサステナビリティ活動を推進しています。そして、重点課題および個別課題に沿ったCSR実行計画を毎年設定し、その達成状況のレビューならびに次年度の目標設定を社長が委員長であるサステナビリティ委員会で行うことでPDCAサイクルを回しています。
2023年、CSR重点課題「SHINE」と経営計画とをつなぐものとしてマテリアリティを定義し、自らの持続的成長のために今特に取り組むべき4つの課題をCSR重点課題「SHINE」の中から特定しています。
「SHINE」が意味する5つのCSR重点課題および4つのマテリアリティの対応関係は次のとおりであります。
CSR重点課題 | 個別課題 | マテリアリティ | ESG | 対応するSDGSの要素 | |||||
[S] エネルギー安定供給 Stable and sustainable energy supply | ①エネルギー安定供給 ②新技術の開発 ③気候変動への対応 | ・エネルギー安定供給 ・カーボンニュートラル事業の確立 ・デジタル・トランスフォーメーション(DX) | E、S |
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[H] 企業文化としてのHSE HSE as our culture | ④労働安全衛生の確保 ⑤汚染防止・資源循環 ⑥生物多様性・生態系保全 |
| E、S |
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[I] 誠実性とガバナンス Integrity and governance | ⑦ガバナンス ⑧危機管理 ⑨コンプライアンス |
| G |
| |||||
[N] 社会との良好な関係構築 Being a good Neighbor | ⑩ステークホルダーとの共生・発展 |
| S |
| |||||
[E] 選ばれる魅力ある職場 The Employer of choice | ⑪人材育成とダイバーシティ推進 ⑫公正で働きやすい職場 | ・人材育成とダイバーシティ推進 ・デジタル・トランスフォーメーション(DX) | S |
|
・「エネルギー安定供給」は、個別課題①のうち、石油・天然ガスの開発にかかるものと対応します。
・「カーボンニュートラル事業の確立」は、個別課題②と③のうち、CCS/CCUS等にかかるものと対応します。
・「人材育成とダイバーシティ推進」は、個別課題⑪と⑫のうち、人材育成、ダイバーシティおよびこれに関連するものと対応します。なお、個別課題⑪については、これまで「従業員の多様性尊重と人材育成」と記載しておりましたが、マテリアリティ「人材育成とダイバーシティ推進」と表記を揃える形で名称を更新しています。
・「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」は、SHINEのどの個別課題ともかかりますが、具体的な設定目標としては個別課題①と⑫と対応します。
また、各マテリアリティの内容は次のとおりです。マテリアリティの進捗に関しては、当社ウェブサイトや統合報告書で適宜公表していく予定です。
<「事業を通じた社会貢献」に向けた課題> エネルギー安定供給 ・2050年カーボンニュートラル社会においても、石油・天然ガスは社会に必要不可欠なエネルギーであり続けると考えます ・この考えのもと、今後も石油・天然ガスの開発を通じて、エネルギー安定供給に取り組みます。
カーボンニュートラル事業の確立 ・将来においてもエネルギーの安定供給を実現するため、CCS等を事業として確立し、カーボンニュートラル社会に貢献します。
<「経営基盤の強化」に向けた課題> 人材育成とダイバーシティ推進 ・人材は価値創造の源泉であり、当社の経営計画実現の要です ・人材育成により従業員一人ひとりの価値創出能力を高めるとともに、ダイバーシティを進めることで会社全体としての総合力強化を図ります。
デジタル・トランスフォーメーション(DX) ・データとデジタル技術の戦略的活用により付加価値の高い業務に専念できる職場環境を実現し、さらなる企業価値向上へと挑戦を続けていきます。 |
(2)気候変動
当社は、気候変動対応を経営上の最重要課題のひとつに位置づけています。気候変動に対する世界的なイニシアティブや、政府の掲げる「2050年カーボンニュートラル」への貢献を目指し、子会社関連会社を含むJAPEXグループ全体で、GHG排出量削減やCCSなどの新技術開発を通じた事業ポートフォリオの変革に取り組んでいます。
<ガバナンス>
取締役会による監督のもと、適切な意思決定を行う体制を構築しています。
気候変動を含む業務執行上の重要事項は各種委員会および経営会議で審議された後、取締役会にて決議あるいは報告が行われます。気候変動対応を含む中長期的な方針や計画などの執行上の重要事項が決議対象であり、「JAPEX2050~ カーボンニュートラル社会の実現に向けて~」(JAPEX2050)、「JAPEX経営計画2022-2030」は取締役会で決議された事項です。そのほかに、GHG排出削減目標の進捗、ESG外部評価結果やESG活動状況などが取締役会において毎年報告されます。
気候変動対応は、経営会議に加えて、サステナビリティ委員会、経営リスク委員会、投資評価委員会においても扱うこととしています。各会議体での審議、報告、事業部門と各会議体の相互の情報連携や統制管理により、気候変動対応のPDCAサイクルを構築しています。
2021年度に当社の各取締役および各監査役の知識・経験・能力を一覧化したスキル・マトリックスを作成し、ESG・サステナビリティに関するスキルは同スキル・マトリックスの項目としております。
<戦略>
当社は化石資源を扱う事業特性から、気候変動対応を事業戦略検討上の重要課題のひとつと位置づけており、気候変動が当社事業に及ぼす中長期的な影響を評価するため、シナリオ分析を実施しています。2022年3月の「JAPEX経営計画2022-2030」の策定にあたっては、中長期的な損益に与える影響を詳細に評価するため、例年よりも多い4つのシナリオで財務影響分析を実施しました。具体的には、国際エネルギー機関(IEA)の「World Energy Outlook(WEO)」のなかで示される4つのシナリオ(NZE※1、SDS※2、APS※3、STEPS※4)で公表されている炭素価格および油価をパラメータとしたシナリオ分析を実施し、その結果をサステナビリティ委員会での経営計画の検討に活用しました。
気候変動の視点でのリスク資産への投資割合については、継続的に評価を行っており、最も条件が厳しいNZEシナリオにおいても、持続可能な事業ポートフォリオの策定を目指します。
※1 Net Zero Emissions by 2050 Scenario:ネットゼロシナリオ
※2 Sustainable Development Scenario:持続可能な開発シナリオ
※3 Announced Pledges Scenario:発表誓約シナリオ
※4 Stated Policies Scenario:公表政策シナリオ
<リスク管理>
当社は全社的なリスクの抽出・評価プロセスである統合リスクマネジメントのなかで気候変動リスクを管理しています。リスクの「発生時の影響度」と「発生の蓋然性」をもとに定量評価を行い作成するリスクマトリックスのなかで、気候変動による移行リスクは影響度の大きい「主要なリスク」と位置づけており、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しています。
経営リスク委員会では上述のリスクマトリックスの確認に加え、GHG排出削減目標の進捗確認や、既存の主要プロジェクトのリスク管理などを行っています。また、サステナビリティ委員会では中長期の気候変動リスク対応、投資評価委員会では新規プロジェクトの投資評価における炭素税等の気候変動リスクを管理するなど、多様な気候変動リスクを管理するプロセスを構築・運用しています。
<指標と目標>
自社操業の排出量(Scope1+2)について、2050年ネットゼロ目標、およびマイルストーンとしての2030年度目標を設定しています。
・2050年:ネットゼロ達成
・2030年度:当社操業のGHG排出量(Scope1+2)の排出原単位(GHG排出原単位※)を、2019年度比で40%削減
※当社の供給するエネルギー1TJ(テラジュール)当たりの、CO2排出量(トン-CO2)
また、自社サプライチェーン排出量(Scope3)については、削減に寄与する事業領域の強化を目指す定性目標を設定しています。
下表のとおり、2022年度におけるGHG排出原単位の削減率は2019年度比で11%となり、2021年度から悪化しております。主な理由は、国産原油・天然ガスの販売量減少(原単位分母の減少)や、生産設備の不具合に伴う放散等によるGHG排出量の増加(原単位分子の増加)です。
GHG排出原単位推移
目標 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度※ |
GHG排出原単位 (トン-CO2/TJ) | 3.97 | 3.44 | 3.20 | 3.56 |
基準年からの削減率(%) | - | △13% | △19% | △11% |
※GHG排出量(Scope1+2)は、2020年度から信頼性向上のため第三者保証を取得しておりますが、2022年度の同数値については、有価証券報告書提出日現在において当該第三者により検証中であるため、同年度のGHG排出原単位及び基準年からの削減率は、暫定値を記載しております。
(3)人的資本
<戦略>
当社は、「JAPEX経営計画2022-2030」のもと、総合エネルギー企業への成長を目指すため、人材戦略を支える基本的な考え方を次のとおり定めています。会社・従業員の行動や人材育成のための環境整備については、「人材育成基本方針」、「社内環境整備方針」、加えて人材の多様性の確保について、「JAPEXダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)方針」を制定しております。また、社長を責任者として健康経営を推進するにあたり、「JAPEX健康経営宣言」を制定しています。
これらの考え方をもとに、各種施策を実施しています。
[人材育成基本方針] 会社と従業員は共に総合エネルギー企業への持続的成長を目指して、 1.従業員は、変化に柔軟に対応する自律したプロフェッショナルとして力を発揮し、事業への貢献を通じて個人の成長を実現する。 2.会社は、従業員に成長の機会を提供し、エネルギーや気候変動に関する技術的、社会的課題の解決にチャレンジできる人材へ育成する。
[社内環境整備方針] 会社は、人材育成のために整備する環境として、 1.持続的成長のために、新しく高い目標にチャレンジする仕事の機会を提供する。 2.個人の知識・経験を高め、能力を最大限発揮するためのキャリア支援を行う。 3.それぞれの個性を活かして活躍し、仕事へのやりがいを感じられる風土づくりを行う。 4.自律的に学習し、成長する文化を醸成する。 |
[JAPEXダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)方針] 私たちは、事業環境の変化に対応し、総合エネルギー企業としてさらなる成長を図るために、「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)」推進を重要な経営課題ととらえ、多様な従業員一人ひとりが持てる能力を十分発揮して活躍・成長し、新しい価値を生み出すことにより、企業競争力の強化および持続的な発展を目指します。
性別・国籍・年齢・障がいの有無や、キャリア・パーソナリティ・価値観などの違いを尊重し、こうした特徴や違いに起因する社会的な不均衡を是正することによって、すべての従業員が生産性高く活躍できる組織風土を実現します。
①多様性を活かす組織風土の醸成 すべての従業員が多様性をポジティブに受け入れ、違いを尊重し、それぞれの特長や資質を活かす組織風土の醸成を通じて、生産性の向上やイノベーションの創出を図ります。 ②多様な人材の活躍促進 性別・国籍・年齢等によらず優秀な人材の確保を進め、適時適切な配置・育成、各々の従業員に合わせたキャリア・能力開発支援を行うことで、あらゆる人材が自律的なプロフェッショナルとして力を発揮し活躍できる仕組みを整え、個々人のエンゲージメントを高めます。 ③多様性を尊重する環境の整備 育児や介護、障がい、LGBTQ+など個人の置かれた状況や特性に配慮し、どのような場合でも最大限に力を発揮できる職場環境の整備を推進します。 |
[JAPEX健康経営宣言] JAPEXグループはエネルギーの安定供給を通じた社会貢献を使命とし、企業としての持続的な発展と企業価値の最大化を図ることとしており、この実現には、HSE(労働安全衛生・環境)に留意した行動が最優先事項であると認識しています。
企業の成長、持続的発展のためには「従業員一人ひとりの健康が大事である」という考えのもと健康経営を推進することを宣言します。
・労働安全、健康を常に意識し、その確保と労働災害の防止に努めます。 ・健康維持・増進に努めるために、ワーク・ライフ・バランスの推進をはじめ、心身ともに快適で働きやすい職場環境づくりに取り組みます。 ・個人の多様な価値観、個性、プライバシーを尊重し、差別的取扱いやハラスメント等の防止に取り組みます。 ・従業員と従業員家族が健やかに過ごし健康寿命を延ばすことができるよう、健康保険組合・労働組合と協働して心身の健康づくりを推進します。 |
<2023年3月期の主な取り組み>
・人材育成に関すること
「JAPEX経営計画2022-2030」の実現に向け、DX推進や新しい事業分野への転換を進める人材育成のためのリスキリングプログラムを開始しました。DXの基礎教育については、役員をはじめ全社員が受講し、関連する資格を取得した場合は支援を行うことにより、自律的に学習する風土の醸成を目指しています。また、新たな事業を推進する人材を育成するため、専門性の向上を目的としたプログラムも開始しました。加えて、従業員の主体的・自律的な学びによる自己成長・キャリア開発の後押しを企図し、社内講師による講義動画などを中心とした教育コンテンツを体系的に展開する社内大学(JAPEX UNIVERSITY ジャペックス ユニバーシティ)を新たに設立しています。
・キャリア形成に関すること
個人が主体的にキャリアを描き、実現するためのサポートとして、社内人材公募制度の充実を図るとともに、社内各部の業務や求める要件を具体的に記載した「業務に関する説明書」を社内で公開しました。また、年代ごとのキャリア研修を実施するほか、社内にキャリア相談窓口を開設し、個別の相談に応じる体制を整えています。加えて、役員、部長等のキャリアを社内公開し、希望者は、直接話が聞ける仕組みを整えました。
・ダイバーシティ推進に関すること
「JAPEX経営計画2022-2030」実現に繋がりうる多様な見方、考え方の確保のため、多様な経験を持つキャリア採用者を積極的に採用するとともに、中核的ポジションへ就けるよう、管理職への登用を進めています。女性活躍については、相対的に不足している総数と管理職数を課題と捉えて新規学卒採用と管理職登用で目標を定めています。また、多様な人材が活躍できるよう、社員の個別の事情に合わせた働き方の推進に力をいれており、在宅勤務制度やフルフレックスタイム制度を導入しているほか、転居を伴う異動は本人同意を原則としています。男性の育児休業取得にも力を入れ、育児休業取得に積極的な風土醸成を目指しています。 このほか、ダイバーシティ推進の障壁を取り除くため、数年前よりアンコンシャスバイアス研修を管理職から開始し、2022年度は、一般社員も含め全社員に拡大し、実施しました。
・従業員の健康維持・増進に関すること
従業員の健康への配慮が成長と持続的発展に資するという考えのもと、健康経営宣言を制定し、社長を責任者とする推進体制を整えています。2022年度は、健康診断や健康サーベイ等の結果を踏まえ、当社が3大健康課題と捉えている「生活習慣改善」「禁煙」「女性の健康課題」について重点的に取組みました。各人がいつでも健診結果や健康関連データを管理できるシステムや健康に関するe-Learningの導入、就業時間内・オフィス内禁煙実施に向けた禁煙タイム設定、禁煙サポート品の会社補助、全従業員を対象とした女性特有のがんに関するセミナー実施等、従業員の健康維持・増進の取り組みを強化しています。
<指標と目標>
[DE&I方針に関する目標及び実績]
①従業員における女性管理職登用目標と実績
目標 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
2025年度までに25名以上 | 19名 | 19名 | 18名 |
②新規学卒における女性採用比率目標と実績
目標 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
2025年度までに毎年30%以上 | 38.5% | 33.3% | 33.3% |
③管理職における中途採用者比率目標と実績
目標 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
2025年度まで20%以上を維持 | 20.1% | 24.5% | 25.9% |
④採用に占める中途採用者比率目標と実績
目標 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
2025年度まで毎年50%以上 | 63.8% | 56.4% | 52.1% |
⑤男性社員の育児休業取得率
目標 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
2025年度までに80%以上 | 45.3% | 75.6% | 58.9% |
(4)人権の尊重
持続可能な社会実現に向けた社会的課題解決へ取り組むにあたり、「JAPEXグループ倫理行動規範」のもと、事業活動に関わるステークホルダーの人権の尊重をバリューチェーン全体で推進するという、当社の基本姿勢を定めた人権方針を制定しています。また、2022年度の人権デューデリジェンスとして、当社の人権尊重に関する取り組みの現状把握と課題抽出を実施しました。2023年度以降も継続的な人権デューデリジェンスを実施し、その範囲を当社グループ会社、バリューチェーンにも広げて当社事業活動に関わるステークホルダーの人権を尊重するよう努めていきます。
(5)調達方針
持続可能な社会実現に向けた社会的課題解決へ取り組むにあたり、JAPEXグループの調達活動におけるCSR要素への取り組みについて定めたCSR調達方針を制定しています。これに加え、JAPEXグループの取引先と協働してCSR調達を推進していくための具体的事項を「CSR調達ガイドライン」に示すことで、本方針への理解と協力を求め、より良いパートナーシップの構築を目指します。
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