百十四銀行 【東証プライム:8386】「銀行業」 へ投稿
企業概要
当行グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループが判断したものであります。
当行は、地域社会を取り巻く様々な課題の解決に長期的な視点で取り組み、自らの成長につなげるサステナビリティ経営を実践することで、経営理念に掲げる「お客さま・地域社会との共存共栄」の実現をめざしております。
なお、当行のサステナビリティに関する取組状況は以下のとおりであります。
(1)ガバナンス及びリスク管理
① ガバナンス
当行では、サステナビリティ経営に関する取組みをさらに推進・強化するため、取締役会の監督のもと、サステナビリティ関連施策を推進する体制を構築しております。
具体的には頭取を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、気候変動を含む環境・社会に係る機会及びリスクへの対応方針や取組計画等を策定・実行しております。また、重要な事項については取締役会へ報告・付議しております。また、サステナビリティ経営の更なる推進に向け、2023年度以降の役員報酬については、サステナビリティ経営に関する目標(CO2排出量削減、女性管理職比率向上等)の達成状況を加味しております。なお、ガバナンスの状況についての詳細は、第4「提出会社の状況」4「コーポレート・ガバナンスの状況等」(1)「コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。
② リスク管理
当行では、経営を取り巻く様々なリスクを分析・把握することで経営の健全性及び安定性の確保につとめております。
取締役会で決定した「リスク管理基本規定」に基づき、対象リスクごとに所管部署と管理規定を定め、独立部署を設置し一元的な管理を行っております。
また、頭取を委員長とするリスク管理委員会や、その下部組織であるリスクごとの管理部会を設置し、定期的に評価・モニタリング等実施しているほか、必要に応じて取締役会への報告も行っております。
管理対象のリスクは、気候変動リスク・信用リスク・市場リスク・流動性リスク・オペレーショナルリスク等を認識しておりますが、詳細は、第2 「事業の状況」3「事業等のリスク」に記載しております。
(2)重要な戦略並びに指標及び目標
① サステナビリティ全般
イ. 戦略
(ⅰ) サステナビリティに関する戦略
経営理念の実現に向けて環境・社会及び当行グループのサステナビリティの優先順位をサステナビリティ委員会で協議を重ね、「百十四グループマテリアリティ」(以下「マテリアリティ」という。)として取締役会で決定いたしました。
設定したマテリアリティの解決に向けた様々な取組みを通じ、サステナビリティ経営を実践してまいります。
百十四グループマテリアリティ | 機会 | リスク | 主な取組み |
地域経済活性化への取組み | ・地域活性化に向けた産学官金連携領域の拡大 ・地域企業の経営課題の高度化・多様化に伴うコンサルティングニーズの拡大 | ・地域の人口減少・経済低迷による持続可能性の低下 ・地域企業の経営課題への対応遅れによる企業業績の悪化 | ・地方公共団体等との共創体制の構築による「まち」の活性化 ・百十四グループによる法人のお客さまの課題解決に向けた伴走 |
人生100年時代への対応 | ・人生100年時代に向けた資産形成・資産運用ニーズの拡大 | ・高齢化社会の更なる進展による社会構造変化への対応遅れがもたらす競争力の低下 | ・百十四グループによる個人のお客さまの一生涯のライフデザインへの伴走 ・将来世代に対する金融教育の実践 |
多様な人材が活躍・成長できる環境の整備 | ・職員のウェルビーイング実感による人材力の持続的成長 ・多様な人材の活躍推進による新たな価値創造 | ・社会構造変化や価値観の多様化への対応遅れによるエンゲージメント低下及び人材流出 ・職員の生活の質(QOL)低下による人材力低下 | ・D&I推進による多様な人材が活躍できる職場環境の整備 ・挑戦機会創出による「働きがい」と、ワークライフバランスの充実による「働きやすさ」の向上 ・健康経営推進に向けた、健康増進施策の実施 |
DXの実現と地域社会のデジタル化 | ・デジタル技術の進展による業務・サービスのデジタルシフト ・地域社会のデジタル化に向けたソリューションニーズの高まり | ・デジタル化への対応遅れ及び異業種参入による競争力低下 | ・デジタルを活用した業務プロセス改革及びデジタルチャネルの高度化 ・SNSやホームページ等のコンテンツ拡充 ・百十四グループによるお客さまのDX化推進 |
気候変動等、環境課題への取組み | ・環境課題解決に向けたファイナンス・ソリューションニーズの高まり | ・気候変動等への対応不足による社会的信頼の低下 ・異常気象の発生や脱炭素社会への不適応に伴う地域企業の業績悪化 | ・2050年カーボンニュートラルに向けた脱炭素・循環型社会への率先した取組み ・サステナブルファイナンス等によるお客さまの脱炭素化に向けた取組みの強化 |
持続可能な経営基盤の構築 | ・ガバナンス態勢の高度化及び収益構造改革等による事業基盤の強化 | ・ガバナンスの不足による社会的信頼の低下 ・サイバー攻撃、災害等への対応遅れによる事業活動中断や社会的信頼の低下 | ・ガバナンスの強化 ・収益構造改革による企業価値の向上 ・資本戦略の強化及びリスク管理態勢の高度化 ・システム・デジタル基盤の強化 |
(ⅱ) TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応
上記マテリアリティに設定しておりますとおり、当行では気候変動及び環境課題への取組みを重要な経営課題として捉えており、環境に配慮した商品・サービスのご提供はもちろんのこと、地域の環境・森林保全活動等にも積極的に取り組んでおります。また、2021年10月にTCFD提言に賛同して以来、同提言のフレームワークに基づいた情報開示の充実につとめております。
(a) シナリオ分析の実施
事業における気候変動の影響を具体的に把握するため、代表的な気候変動シナリオに基づき、2050年までのシナリオ分析を実施いたしました。
■機会
・中長期的な目線でお取引先や地域の気候変動対策や脱炭素社会への移行を支援することは、金融機関にとってビジネス機会の創出・拡大につながると認識しております。
・再生可能エネルギー事業へのファイナンスや、お客さまの温室効果ガス排出削減支援、環境負荷軽減を目的としたサービスの提供等を通じて、脱炭素社会の実現に取り組んでおります。
■リスク
・気候変動に関するリスクは、物理的リスクと移行リスクを認識しております。
・物理的リスクは、異常気象に伴うお客さまの資産の毀損や事業活動の停滞による信用リスク及び当行の営業店舗等の損壊等によるオペレーショナルリスクの増加を想定しております。
・移行リスクは、気候関連の政策・規制強化や脱炭素に向けた技術革新の進展等の影響を受けるお客さまに対する信用リスクの増加等を想定しております。
■シナリオ分析
移行リスク | IEA(国際エネルギー機関)の2℃シナリオ及び1.5℃シナリオを基に、炭素税が導入された場合の与信先(ポートフォリオ)の状況等を分析し、当行財務への影響度を試算しました。 分析については「電力・ガス」及び「海運」セクターに該当する与信先を対象としました。結果、与信費用増加は2050年までに累計で最大約105億円の見込みとなりました。 |
物理的リスク | IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の2℃シナリオ及び4℃シナリオを基に、当行営業地域全域で2050年までに想定される大規模水害による与信先(ポートフォリオ)への影響を分析し、当行財務への影響度を試算しました。 分析については、「担保毀損」「売上減少」の2点からアプローチしました。結果、与信費用増加は2050年までの累計で最大約42億円となりました。 また、当行営業店舗等の毀損による損失影響額は、2050年までの累計で最大約6億円となりました。 |
(b) 炭素関連資産
・2021年10月のTCFD提言改訂を踏まえた炭素関連資産4セクター(エネルギー、運輸、素材・建築物、農業・食料・林産物)の、当行貸出残高に占める炭素関連資産の割合は29.7%です。(2023年3月末)
・なお、エネルギー(石油・石炭)及びユーティリティ(電気・ガス)セクター向けの貸出金合計(ただし、水道事業、再生可能エネルギー発電事業等を除く)の当行貸出残高に占める割合は、2.5%です。(2023年3月末)
・今後も当該セクターとのエンゲージメントを通じて、サステナブルファイナンスのほか、脱炭素に向けた様々なソリューションの提供を検討してまいります。
(ⅲ)脱炭素社会実現に向けた取組み
環境負荷低減への取組みとして、本部・営業店の照明のLED化と効率的な空調設備への更新を進めているほか、一部店舗や研修所・福利厚生施設等を対象に都市ガスからカーボンニュートラル都市ガスへ切替えを行いました。
また、2023年3月に、当行保養施設跡地(香川県さぬき市津田)に津田太陽光発電所を建設いたしました。同発電所で発電した電力全量を自己消費し、事業活動で発生するCO2排出量の削減に取り組んでおります。
ロ. 指標と目標
百十四グループマテリアリティ | サステナビリティKPI | ||||||||||||||||||
地域経済活性化への取組み | ・地域の課題解決に向けた取組み件数:150件(2030年度までの累計) ・法人のお客さまへのコンサルティング等の提供件数:年間3,000件(2030年度) | ||||||||||||||||||
人生100年時代への対応 | ・資産形成をサポートする顧客数:16万人(2030年度) ・金融教育受講者数:1万人(2030年度までの累計) | ||||||||||||||||||
多様な人材が活躍・成長できる環境の整備 | ・詳細は後記「② 人材の多様性の確保を含む人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針 ロ.エンゲージメント醸成 (ⅱ) 誰もが安心して活躍できる場の創出」に記載しております。 | ||||||||||||||||||
DXの実現と地域社会のデジタル化 | ・デジタルで繋がる顧客数:40万人(2030年度) ・ICTコンサルティング取組み先の倍増(2030年度) | ||||||||||||||||||
気候変動等、環境課題への取組み
| ■当行のCO2排出量の長期削減目標と実績 (a)目標
※ Scope1:当行自身が燃料(ガソリン等)を燃焼等することにより直接的に発生するCO2排出量 Scope2:他社から供給された電気等を使用することにより間接的に発生するCO2排出量 (b)実績
なお、2022年度の当行グループ全体のCO2排出量(Scope1・2)の算定結果は、6,877tとなりました。
■当行のサステナブルファイナンス※投融資累計額の目標と実績 (a)目標
※投融資を通じて地域やお客さまのサステナビリティ向上への取組みをサポートするため、環境や社会に対して ポジティブな効果をもたらすプロジェクトに資金使途を限定した「114グリーンローン(環境系)」及び「114ソーシャルローン」等
(b)実績 2021年4月~2023年3月末(累計) 1,252億円 (うち環境系567億円)
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持続可能な経営基盤の構築 | ・政策保有株式の計画的削減 ・ステークホルダーとの対話拡充 |
② 人材の多様性の確保を含む人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
・当行は、「経営理念」のもと、役職員の行動規範を示した「百十四銀行 行動指針」を踏まえ、多様な属性・価値観を持つ職員が互いの個性を尊重しつつ、その能力を存分に発揮することを基本方針として、組織の持続可能性向上につとめております。
・働きがいと働きやすさの両立により職員のウェルビーイング最大化を図り、お客さま・地域の課題解決に熱意をもって取り組む人材力を強化するため、人事制度の改定及び行内資格制度の見直しを進めております。
・様々な教育・自己啓発制度等を通じて戦略実現に必要な人材を育成するとともに、休暇制度の創設等による職員の健康増進及びD&I推進を通じて多様な人材が活躍できる社内環境の整備に取り組んでおります。
イ.人材力強化
(ⅰ) 戦略遂行に向けた人材力の強化
当行では、中期経営計画「創ろうイ・イ・ヨ♪」(2023年度~2025年度)における重点戦略「総合コンサルティング・グループの進化」の実現を目指し、数多くの実践的な研修のほか、FP1級や中小企業診断士、経営コンサルタントなどの有資格者輩出にも注力しております。
加えて、当行独自の認定制度として行員が自発的に選択した分野に的を絞って資格取得にチャレンジできる「114マイスター制度」を2017年度より導入しております。銀行業務をコンサルティング、融資管理、ライフプラン、DXなど8分野に分類し、分野毎に「オフィサー」(初級)、「リーダー」(中級)、「マイスター」(最上位)の3段階の資格を設定、それぞれの認定基準に試験、研修・トレーニー、営業実績、上司評価を取り入れ、知識と実務能力を兼ね備えた総合力のある人材を育成しております。
当行では、中期経営計画の実現に必要となる優秀な人材ポートフォリオの確保に向け、キャリア採用の拡充や採用手法の多様化を図るとともに、教育・育成(リスキリング含む)への積極投資や計画的な配置を行ってまいります。
(ⅱ) 自律的なキャリア形成支援
当行では、職員の自律的なキャリア形成を後押しすることで、モチベーション向上や中核人材の育成を行うとともに、多様な働き方や能力開発の促進等を通じて、目指すキャリアの実現を支援しております。
2022年度は、短期間の本部業務経験を通じて、専門人材を育成及び発掘することを目的とした「行内留学制度」を開始。「本部職員公募制度」を通じた異動者は17名と過去最高となりました。
また、職員の自律的なキャリア形成の支援を通じて、モチベーション向上や成長を後押しすることを目的に2023年2月に「キャリア相談窓口」を設置いたしました。
引き続き、この流れを加速し、職員一人ひとりが自らのスキルや個性を生かし、働きがいを持って仕事ができる環境の整備につとめてまいります。
ロ.エンゲージメント醸成
(ⅰ) 挑戦を後押しする企業風土の改革
当行では、活気ある職場及び生産性向上には、組織へのエンゲージメントが欠かせないとの認識のもと、2021年度より1on1ミーティングを一部の営業店・本部で試行しております。
2年間の試行の結果、試行店におけるエンゲージメントスコア(株式会社アトラエが提供するエンゲージメントサーベイ「Wevox」の総合スコア)は66ptから69ptに上昇するなど、上司と部下の信頼関係構築において一定の効果が現れていると評価しております。
引き続き、上司のコーチングスキル向上等を通じた信頼関係やエンゲージメントの強化に加え、職員に気づきや自律的な行動を促すことで、生産性の向上や企業風土改革にもつなげてまいります。
(ⅱ) 誰もが安心して活躍できる場の創出
当行では、多様な属性や価値観を持つ職員の活躍を通じた、生産性及び持続可能性向上を目的にD&I推進に積極的に取り組んでおり、これまでの様々な取組みが評価され、厚生労働大臣より以下の認定を取得しております。
・女性活躍推進法に基づく「えるぼし(最上位)」 (四国初)(2016年7月) ・次世代育成支援対策推進法に基づく「プラチナくるみん」 (2017年6月)及び「プラチナくるみんプラス」 (香川県内企業初)(2022年11月) |
これらの結果、当行の全管理職に占める女性管理職の割合は、全国平均14.5%(令和3年度雇用均等基本調査)に対し、2023年3月時点で26.6%となっております。
[当行の女性管理職比率の実績]
2019年3月 | 2020年3月 | 2021年3月 | 2022年3月 | 2023年3月 |
23.1% | 24.0% | 24.4% | 25.1% | 26.6% |
引き続き、男女ともに仕事と育児を両立できる職場環境作りに銀行全体で取り組むことを目的に、残業を前提とした働き方の見直しや必要な時に有給休暇を取得できる職場環境の整備を図ってまいります。
また、当行は、お客さま・地域社会との共存共栄をめざし、地域社会に貢献していくためには、働く従業員とその家族が心身ともに健康であることが重要であると考えております。 2018年8月10日に「健康経営宣言」を行い、定期健康診断及び人間ドック100%受診、ストレスチェックによるメンタルヘルスケア等を通じた従業員の健康の保持・増進に取り組んだ結果、「健康経営優良法人」に5年連続で認定されております。 |
さらに、職員自身の資産形成を支援する取組み(ファイナンシャル・ウェルネス)として、ライフプランに関する研修に加え、従業員持株会のインセンティブ強化など福利厚生制度の充実を図っております。
[指標及び目標](上記方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績)
上記方針のもと、当行は以下の数値を重要な指標と考えております。その目標及び実績は以下のとおりであります。
| 実績 (2022年度) | 目標 (2025年度) |
人材育成投資額(注1) | 140,838千円 | 165,000千円 |
114マイスター制度「マイスター」認定者数(注2) | 63名 | 100名 |
年次有給休暇取得日数 | 11.8日 | 14日 |
エンゲージメントスコア(注3) | 66pt | 69pt |
(注)1.外部講師費用、行外研修派遣費用、試験及び通信講座補助、長期トレーニー派遣者人件費、研修会館管理費用等
2.当行独自の認定制度。銀行業務をコンサルティング、融資管理、ライフプラン、DXなど8分野に分類し、それぞれ3段階で設定した最上位資格。研修受講や営業実績に加え、FP1級や中小企業診断士等の難関資格取得を認定条件としております。
3.株式会社アトラエが提供するエンゲージメントサーベイ「Wevox」の総合スコア(2023年4月実施)
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