田辺工業 【東証スタンダード:1828】「建設業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営理念
当社グループは、「お客様・従業員・株主・業務関係者そして社会の、みんなに喜ばれる親切で的確な仕事をしよう」を社是に掲げ、技術をもってお客さまの「ものづくり」への貢献を通じ、社会の発展に貢献することを経営理念として事業を展開しております。
(2)経営方針
当社グループは時代に即応した顧客が求める製造設備、インフラ設備の企画・製作・建設、メンテナンスまで一貫して幅広く対応し、長年培った技術の蓄積とエンジニアリングをコアに、お客様が満足する製造設備を提供してまいります。また、現場、現実、現物の三現主義の徹底をベースに技術、施工レベルを絶え間なく向上させ、ニーズを的確に捉えた設備を提供することで、「ものづくり」に貢献してまいります。
当社グループは、技術力、総合力の強化により、企業価値を高めることを経営の基本方針としております。
(3)当社グループを取り巻く経営環境と中期的な経営戦略
国内外経済に影響を与える不確定な要素が多いなか、物価高や金融引き締めに伴う景気減速懸念に加え、地政学リスクによる経済への影響など、依然として不透明な状況が想定され、先行きは予断を許さない厳しい状況が続くものと思われます。当社グループの主要セグメントである設備工事事業におきましては、不透明感が強まる国内外の景気動向により、お客様の設備投資の抑制や受注競争の激化による受注価格の下落が懸念されます。
また、タイ国で事業展開しております、表面処理事業も同様、景気の変動によりHDD部品・自動車部品の需要減が懸念され、予断を許さない状況が当面続くものと思われます。
このような厳しい経営環境ではありますが、当社グループは次の基本戦略のもと、環境変化に対応し、「常に世の中から必要とされ、存続する企業」として、ものづくりを通じてサステナブル社会の実現に貢献する企業を目指してまいります。
〈基本戦略〉
①安定収益基盤の確保(コア事業を強化する)
②海外事業の強化
③成長基盤の確立
④人材基盤の強化
⑤コンプライアンス体制のさらなる強化
⑥重要課題(マテリアリティ)の解決に向けたESG経営の推進
〈中期経営計画〉
2020年度から推進中でありました中期経営計画における目標のうち、連結売上高(500億円以上)については、大型EPC案件の受注拡大や当社グループの技術力と機動力を活かした設備改修・修繕工事等の安定的な受注確保、自動化・省力化機器・システムの業績拡大等が寄与し、その目標を達成したものの、連結営業利益率(8%以上)、ROE(10%以上)、海外比率(15%以上)の目標は未達成であり、課題を残す結果となりました。残された課題については、現在策定中であります新中期経営計画において解決を図ってまいります。なお、次なる「進化」に向けた新中期経営計画は、確定次第、開示する予定です。
(4)目標とする経営指標
売上高及び営業利益率は、企業経営の基本的な指標であり、会社の本来の業務における収益性の判断材料として重要な指標としております。また、資本効率の観点からROEも重要な指標としております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の景気動向は、物価高や金融引き締めに伴う景気減速懸念に加え、地政学リスクによる経済への影響など、依然として不透明な状況が想定され、先行きは予断を許さない厳しい状況が続くものと思われます。
一方、このような状況のなかでも、各製造業・メーカーでは社会構造の変化(環境・カーボンニュートラル・EV・通信技術・デジタル化等)に対応した設備投資が加速すると考えられます。
当社グループとしましては、常に前向きに新製品・新ビジネスに挑戦している成長分野のお客さまのニーズを的確に捉え、お客様の事業計画段階から参入し、お客様のエンジニアリングパートナーとしての関係構築を図る等、中期的な目標達成を目指し、基本戦略に沿って次の諸施策の取り組みを優先的に加速させてまいります。
①安定収益基盤の確保(コア事業を強化する)
◆大型・高レベルのEPC案件の拡大
当社グループの主要セグメントである設備工事部門が当社グループの安定収益基盤です。同部門の事業拡大・発展を目指しており、大型・高レベルのEPC案件(産業プラント・電気計装、建築・土木・設計一括型)の受注拡大を目指しております。具体的な施策として建築部門の人材補強、社内プロジェクト体制の確立を進めており、機械・電気計装部門の設計、積算部門を集約した機能をもつ幕張エンジセンターを設置し(2020年4月設置)、大型EPC案件の受注確保に取り組んでまいりました。その成果としてEPC案件を取り込む等の効果が現れております。その他、エンジニアリング力・技能向上、技術・技能者及びプロジェクトマネージャーの計画的な教育を図っております。また、採用、購買部門の強化等の諸施策を着実に実施することにより、今後も更に大型・高レベルのEPC案件の受注拡大を図り、安定収益基盤を確立してまいります。
同部門のコア・コンピタンスの一つである「総合力」を遺憾無く発揮し、企画から設計、開発、調達、施工からメンテナンスまで一貫したお客様が満足する製造設備を提供し、安定収益基盤の確保を図ります。
◆地域エリア及び事業領域の拡大
設備工事部門のコア・コンピタンスの一つに「機動力」があります。同部門は特徴として、他社にはあまり例を見ない、当社従業員から構成される直営部隊(高度な技能を有した技能者集団)を有しており、お客さまへ迅速できめ細かな対応が可能であります。その強みを活かし、多店舗化による地域エリアの拡大を進めてまいりました。今後につきましては中京地区(名古屋・豊橋)、関西地区、九州地区(大牟田)において社内ジョイント及び協力会社を含めた施工体制の強化を図るとともに、「ものづくり」に関するあらゆる産業分野を網羅する広範囲な事業フィールドの拡大を図ってまいります。
②海外事業の強化
現状、当社グループは国内中心に事業展開しておりますが、一部に工場設備の国内回帰の動きもみられるものの、長期的視点においては、海外市場を「成長市場」と位置付け、タイ、シンガポール、中国(上海)、マレーシアにて子会社を設立し、高い経済成長や人口増加傾向の見られるアセアン域内中心に事業を展開しております。
海外事業は当社グループ全体の将来の成長に大きく貢献するものと期待し、積極的に経営資源を投入するも、ここ数年は各社とも海外経済の減速により、業績は低迷しております。この状況を打破すべく、具体的には次の諸施策の取り組みを加速し、海外事業の強化を目指します。
タイ国で事業展開している表面処理事業はHDD部品・自動車部品の表面処理需要の減少に備えて、自動車のEV化に伴う、電子部品をターゲットとした新ラインを設置し、新部品の表面処理需要を取り込んでおります。
また、タイ及びアセアン周辺諸国の市場開拓を目的に、タイ国の首都バンコクに開設したバンコクビジネスセンターを拠点とし、営業、市場調査、新規事業開発を行っております。
シンガポール、マレーシアで展開している設備工事事業においては、現地におけるEPC案件等の需要の取り込みを図っております。また、タイにおいても新たな子会社を設立し、現地における設備工事事業の需要取り込みの拡大を図っております。
なお、中国の子会社については、コロナ禍による事業活動の停滞や中国経済の先行きの不透明感から、当社グループの成長に資する業容の拡大は困難と判断し、その他の成長市場への経営資源の集中を図るため2024年度中の清算を予定しております。
当社グループ全体としては海外子会社との連携を強化し、グループシナジーを早期に創出してまいります。
③成長基盤の確立
◆オリジナル製品の確立
現状、当社グループの収益基盤の中心である設備工事事業は、基本的に「請負ビジネス」であり、需要の予測をある程度機械的に見込むことが困難である事等の課題を有しております。その課題解決に向け、「成長が見込まれる事業領域における当社のオリジナル製品の確立」を重点項目と定め、新製品の開発に取り組んでおります。例えば、工場や施設で自動走行させることができるAGV(無人搬送車)や双腕ロボットを用いた薬液充填ロボットセル等は、人手不足や重労働、危険作業等解消を目的とした当社の製品です。
人手不足、少子高齢化などを背景に、社会システムの無人化・非接触化、生産・サービスの無人化(ロボット化)、自動化・省力化が更に推し進められると思われます。当社グループは、その需要を取り込むべく、更にオリジナルの技術・装置・システムの拡充を加速し、また、各メーカーとの技術融合による高付加価値の装置・システムの確立を図ります。
◆新ビジネスモデル構築に向けた取り組みへの加速
当社グループは新たなビジネスモデルとして、ICT(情報通信技術)を活用した映像コミュニケーションサービスの提供に取り組んでおります。同サービスは東日本電信電話株式会社(NTT東日本)と業務提携を行い、遠隔地から現場と映像・音声をリアルタイムに繋ぎ活用する仕組みを提供するものです。
同サービスの販売と通信系ビジネスへの連携を拡げるため、社内に専門部署(デジタルイノベーションセンター)を設け、同センターにおいては、市場開拓、顧客ニーズの調査等を重ねており、ニーズに応じた機種ラインナップの拡充、販売代理店との連携強化などの販売網の拡充を通して、販売拡大に向けた取り組みを行っております。今後も、同ソリューションの他、環境関連や通信関連分野の新しいビジネスモデル構築に向けた取り組みや、EV材、カーボンニュートラル等ものづくりの最先端技術への積極的なアプローチを図り、また、社会課題(ESG、SDGs対応)へ向けた取り組みを推進します。
④人材基盤の強化
当社グループの経営において、大切な経営資源は「人」です。優秀な人材確保のための求人対策として、採用プロジェクトにより、新人・中途社員の採用を積極的に取り組んでおります。また、人材育成と専門技術の伝承を目的とした教育訓練センター(2016年に設置)を活用し、「見て触って体験できる」を基本コンセプトとし、教育・実務訓練に取り組んでおります。今後も、主要な拠点に同センターを設置するなどし(大牟田に新たな教育訓練センターを建設中。千葉においても教育訓練センターの建設を着手。)、少子高齢化により若手層の就業者の確保が困難になりつつある状況下、当社グループは自社の人的資源を充実しつつ、併せて協力企業との連携を強化し、更に人材の確保・早期育成、戦力化に取り組んでまいります。
⑤コンプライアンス体制のさらなる強化
コンプライアンス委員会の設置や経営課題・戦略等をテーマとする経営会議を社外取締役・社外監査役の有効な活動を通じ、更なる取締役会の実効性向上、及び適切かつ透明性のある情報開示に努めてまいります。
また、当社グループの成長と成功には優秀な従業員の確保が必要であり、従業員がさらに高いパフォーマンスを発揮できるよう、「働き方改革」に向けた諸施策の実施による効率的・効果的な働き方を追求するため、改善提案活動や社内のDX化に取り組んでおります。2021年4月より新基幹系システムを稼働しており、更なるシステムの有効利用を図り、また、設計・施工・購買管理等の全社的なデジタル化に取り組み、効率的な働き方を追求してまいります。DX化の基盤となる情報インフラについては、社内ネットワークの整備、情報機器管理体制の整備を進行しており、セキュリティ対策の更なる強化に努めてまいります。
⑥重要課題(マテリアリティ)の解決に向けたESG経営の推進
持続可能な社会の実現と当社の持続的成長の両立を図るため、社会・自社が抱える様々な重要課題(マテリアリティ)を特定しました。その解決に向けての取組を今後積極的に推進してまいります。
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