田中化学研究所 【東証スタンダード:4080】「化学」 へ投稿
企業概要
当社は「正極材開発で培ってきた独自技術を基盤に独創的な新製品を生み出すことを通じて、地球環境課題の解決に挑戦し、持続可能な社会の実現を目指します。」という経営理念を掲げ、蓄電デバイス用材料の開発を中心に研究開発活動を行っております。
蓄電デバイスとは、化学電池分野を中心に民生用途及び車載用途のニッケル水素電池並びにリチウムイオン電池であり、これらの二次電池に用いられる正極用材料の研究開発活動が中心となっております。
昨今、民生用途においてはスマートフォンを含むタブレット機器の需要の伸長が一段落していることもあり、全体として成長率は鈍化しているものの、電動工具・定置用蓄電池向けなども含めると需要増加の期待も出てきております。また車載用途においてはカーボンニュートラルの実現に向けて各自動車メーカーでは環境対応新車種の販売が活発化しており、充電インフラの整備の促進や1回の充電での走行距離を伸ばすための電池材料及び電池の開発が急がれております。いずれの市場におきましても、高エネルギー密度化、長寿命化及び高信頼性・安全性に加えて低コスト化の要求がますます強くなっております。
当社はこのようなニーズに的確に応えるために、省エネルギーを目指した新プロセス技術開発のみならず、より高度な材料解析技術や電気化学評価技術なども活用しながら、既存材料の改良、さらには次世代新規材料の研究開発を推進しております。
研究開発活動における基本スタンスは、粒子形状制御、複数元素共沈、粒子径制御、結晶制御、表面コーティング、化学酸化等のコア技術を基盤に顧客ニーズ・市場ニーズを融合させ、さらなるブラッシュアップを図り、積極的に技術を提案することであります。
また、材料設計に関する基礎科学的な知見の収集と整理による種々の化学反応過程の可視化を通した、生産過程の合理化に必要な研究開発も実施しております。
研究開発活動に従事する人員は、2024年3月31日現在管理職を含めて40名であります。当事業年度の一般管理費に含まれる研究開発費の総額は1,020百万円(売上高比2.1%)となっております。(損益計算書上は試作品売却収入602百万円を控除した418百万円を計上しております。)なお、当社は二次電池事業の単一セグメントであるため、セグメントごとに記載しておりません。
当事業年度における各研究開発の目的、主要課題及び研究成果は次のとおりであります。
①リチウムイオン電池用正極材料の研究開発
民生用リチウムイオン電池は、スマートフォンを含むタブレット機器の普及による、薄型・軽量化・高容量化などの要求とともに、電動工具・定置用蓄電池向けなど用途拡大により、高出力化・長寿命化などの要求が高まっております。一方、車載用途を中心とした中・大型リチウムイオン電池用途では、高容量、高出力、長寿命、高安全及び低コストといった正極材料を強く要望されております。
これらの幅広い要求を充足させるために、当社の主力製品であります三元系(ニッケル、コバルト、マンガン)正極材料を基本に、よりニッケルの比率を高める等の組成改良によって高容量化を図るとともに、水酸化ニッケルの開発時に培った異種元素固溶や表面修飾といった技術を用いることにより、より優れた性能を発揮することを目論んだ材料の開発並びに新たなプロセス技術開発も行っております。
②ニッケル水素電池用正極材料の研究開発
ニッケル水素電池は、サイクル特性の向上や長寿命化など引き続き特性向上が求められております。特に環境対応車や定置用途などの中・大型電池用途においては、長期信頼性・耐久性が求められております。
現在、顧客ニーズに応えるべく材料の結晶性や表面状態の制御などの改良を進め、新技術の製品への展開を順次図っております。特に、水酸化ニッケルコバルトコート表面処理品について、コア材料の水酸化ニッケルへの添加元素の最適化や結晶性改良等、粉体特性の最適化を図り、さらなる電池特性の向上に向けた取り組みを進めております。また、リチウムイオン電池と同様に環境対応車普及のためには電池価格の低減が必須の課題であり、当社としては材料設計の側面からの合理化を図り、コスト低減に向けた開発を行っております。
③新規分野の研究開発
全固体電池向け正極材料開発をはじめとする環境・エネルギービジネス分野において、当社のコア技術を適用することが可能な新たなアイテムにつきまして鋭意マーケティングを行い、提案型研究開発活動を行ってまいります。
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