玉井商船 【東証スタンダード:9127】「海運業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営理念及び経営方針
〔経営理念〕
「国内及び国際海上輸送を通して社会に貢献します」
〔経営方針〕
当社グループは、以下を経営方針として掲げております。そのうえで所有船舶の安全運航を第一の課題として位置付け、船舶管理を徹底する等、効率的な運行管理に日々努めております。
1.企業は株主・取引先・従業員・地域社会がその存在基盤であるとの認識のもと、調和のとれた経営を行い、社会的に尊敬に値する企業を目指す。
2.永年培った海運技術およびノウハウの蓄積と展開により、様々なニーズに柔軟に対応することで顧客に信頼される特色ある優良企業を目指す。
3.安定的に企業価値を高め、期待される株主利益を創出していくために、外部環境の変化に即応しつつ、投下資本全体に対する効率性を追求していく。
4.法令および社会的規範を遵守し、公正かつ透明な事業活動を行う。広く社会とのコミュニケーションに努め、企業情報を公正に開示する。
5.安全運行の徹底および海洋・地球環境の保全に努める。
(2)経営環境
① 海運市況
主に中国の旺盛な経済発展に起因した2002年後半から2008年のリーマンショックまでの継続的な海運市況の高騰に伴いオーダーされた船舶の竣工ラッシュが2008年頃から始まり、2013年頃にようやく収束しましたが、2014年からの中国の新常態や新興国の経済停滞に伴う2015年・2016年の貿易量の縮小・停滞等の要因により、海運市況は2012年以降長期に亘り低迷状態を継続し、2016年2月にはBDI始まって以来の最低値を記録しました。
その後2017年からスクラップ量の増大と竣工量の減少による船舶供給量の減少と貿易量の増加による相乗効果により、しばらく市況は回復傾向にありましたが、2019年暮れから新型コロナウイルスの世界的感染拡大に伴う世界経済の停滞が発生したことにより、2020年前半は海運市況は急激に落ち込みました。しかし2020年後半からはコロナ禍のリバウンド、季節的な石炭と穀物輸送の増加による影響等により、海運市況は即座に回復し、その後大幅に上昇しました。今後も船舶と世界トレードの需給バランス、更には環境規制強化に伴う運航船舶の減速から考察すると、市況は堅調に推移することが見込まれますが、2022年から続くロシアのウクライナ侵攻等の地政学的問題、また全世界におけるコロナ対策後の金融引き締めによる経済悪化や米国と中国の対立激化等に対して注意が肝要です。
② 環境保全に求められる対応
当社グループの環境保全に対する取組み内容は、(4)対処すべき課題、及び2.「サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
(3)経営戦略
当社グループは、以下の戦略を実践して参ります。
① 事業戦略
[外航海運業]
・長期契約獲得による、収益の安定化
・契約の中長期化による業績ボラティリティの抑制
・地政学的リスク及び環境変動に対応した航路選定
・バラスト航海短縮による効率的配船
今後も引き続き、長期に渡り信頼関係を構築し継続してきた顧客各社、日本軽金属株式会社・全国農業協同組合連合会・伊藤忠商事株式会社・Lafarge Holcim Trading Ltd.・吉野石膏株式会社・その他顧客の求める短期ニーズに対してはもちろんのこと、中長期のニーズに対しても連携・協調・対応し、各社との中長期的なコア輸送事業の契約を、効率的かつ安定的に実行して参ります。更には経済的ロスを減少し、環境保護に配慮・適応しつつ事業の継続・拡大を目指し、海運市場に呼応して顧客・時代・社会の要求に適う船舶を建造して参ります。今後も当社船を効率良く配船のうえ、同時に新規カーゴの獲得に努め、またバランスの取れた短・長期用船を計画して参ります。そのうえで当社の事業規模拡大の為、将来を見据えた人材採用・育成を実践して参ります。
[内航海運業]
・内航海運業の安定収益の拡大
・取引先との価格交渉を含めた、船舶別採算の改善
今後も、定期用船している貨物船1隻は、水酸化アルミニウム等の安全輸送・効率輸送に努めて参ります。所有船2隻(第二興玉丸 白油 3,767G/T ・ 第二十一いづみ丸 液化ガスばら積み船 748G/T)及び子会社で裸用船しているケミカルタンカー(第七鈴鹿丸 749G/T)の定期貸船の安全運航に努め、コスト削減のうえ安定収益の確保を図って参ります。
上記の事業戦略を実現することにより創出されたキャッシュフローを投資戦略の原資とし、「財務戦略」を進めて参ります。
② 投資戦略
海運市況および経営環境の変化に耐えうる財政状態を確保しつつ、主力である外航海運業・内航海運業への再投資を進めるべく判断して参ります。
[外航海運業]
船舶と貨物、バランスを保つ投資判断。
・リプレイスを含めた船舶への継続投資への検討
・新規取引先(貨物)開拓に向けたマーケティング活動
[内航海運業]
船員・船舶・貨物のバランスを保つ投資判断
・持続的な船員確保体制の構築
・新規貨物・船舶新造船機会獲得の為の営業活動強化
また、以下「対処すべき課題」に記載のとおり、安全運航・環境保全に対応する設備投資について今後増額することが予想されます。当社グループでは、安全・環境に配慮しつつ効率的・経済的な投資戦略を速やかに判断実行し、企業価値向上に努めて参ります。
(4)対処すべき課題
① 外航海運業
1.当社支配船(長期用船)の隻数に見合う、中長期安定的な輸送契約の獲得に努め、市場の上下に拘らず安定的な収益をあげられる様努力します。
2.上記の結果、顧客のニーズにより、年間輸送量よりも貨物量増となりバランスが取れなくなった場合には、当初は市場からの短期用船の輸送契約として対応し、更なる輸送の拡大と長期化を図る為、その市場に応じた長期用船、または買船・新造船計画を立案し、安定収益の拡大を図って参ります。
3.長期的な視野に立ち、社員のOJTを充実させ、国際的な人材を育成し、新規カーゴの国際間輸送契約の獲得を目指して参ります。
4.可能な限り、顧客との交流を図り、相互の信頼関係を構築し、新規カーゴの獲得に努めて参ります。
5.世界の日々の変化に対応すべく、あらゆる情報網を駆使して情報収集し、中長期視点で海運市況を分析・勘案し、業務を遂行することで、安定的な収益の向上に繋げて参ります。
当社グループは、外航海運業の営業施策として、コスト競争力のある船舶を市場に投入することにより、収益基盤を確立する必要があると考えております。
当連結会計年度では、パナマ運河渇水による通行困難問題、スエズ運河の地政学問題などにより、海運収益に影響が出ました。現在パナマ運河は回復しつつありますが、今後も引き続き主要4隻の外航船舶による南米から日本向の水酸化アルミニウム輸送や北米から日本向の穀物輸送の復航貨物の契約確保、往航貨物の獲得による採算向上及び営業収益の計上に努めて参ります。
1航海当たりのCO2排出量の減少を図る為、最善と思慮される輸送契約(COA数量積輸送契約)の長期的・安定的な確保と、タイムリーなスポット貨物の獲得に注力いたします。
② 内航海運業
現在船員の高齢化及び急激な船員不足となり、縮小化が進行する内航海運業界においての最重要課題は「若手船員の確保・育成」です。平均年齢34歳の有望な船員を保有する子会社大四マリン株式会社の優位性を最大限に生かしつつ、国土交通省認定の「日本船舶・船員確保計画」に基づいて若年船員を計画的に雇用、教育訓練を重ね積極的に船員派遣を行い、安定収益の確保に繋げて参ります。
また、2022年4月施行の海事産業基盤強化法における「船員の働き方改革」を着実に実現し、労働環境の改善を図り、若年船員の定着率上昇に繋げて参ります。
今後は、定期用船している貨物船1隻、保有するタンカー2隻、大四マリン株式会社の収益性を改善する為、かかるコストの抜本的見直しを行ったうえで適正な用船料・運賃等の改定交渉を進め、運航採算性の向上を図って参ります。
③ 資本コスト・株価を意識した経営計画の策定
現在当社グループでは、各セグメントごとの収益性や中長期の船舶投資等に伴う中期計画を策定中です。その中で、ROE・EBITDA等を指標とし、上記①②の経営課題に取組むことで収益財務基盤の安定化を図り、ひいては配当による株主還元、企業価値の向上、株価を意識した経営を目指して参ります。
④ 環境保全に求められる対応
環境への対策として、当社グループは事業による海洋環境及び生態系への影響を認識し、海洋環境への影響を最小化するために最大限の取組みを行います。内外航船における船舶の安全運航を徹底し海難事故を防止し、環境規制遵守を行い、海洋環境の保護に努めて参ります。国際海事機関(IMO)では、大気汚染防止措置としてSox低減規制を発効しており、燃料油の硫黄分濃度の上限を順次引き下げております。欧州、アメリカ、カナダの指定海域(ECA:Emission Control Area)で使用する燃料油の硫黄分濃度上限は、2015年1月から1.0%から0.1%に引き下げられており、地中海においても2025年5月1日より同規制が開始されます。一般海域で使用する燃料油の硫黄分上限は、2020年からは、0.5%となりました。当社グループでは規制適合油を使用し、規制に対応しております。また燃料油を燃焼させると大気汚染の原因となるNOxが生成されますのでNOxを低減させるための規制も発効されており、2011年以降の建造船は2次規制に対応しています。また、今後の建造船については3次規制に対応して参ります。
⑤ 安全運航と環境保全に対応する設備に関して
温室効果ガス(GHG)排出の抑制対策は IMO にて規制され、(1) 2030年までにCO2排出量40%以上削減(輸送量あたり、2008年比)、(2) 2050年までにGHG排出量50%以上削減(2008年比)、(3) 今世紀中なるべく早期の排出ゼロ、という目標が設定されております。2013年にEEDI(エネルギー効率設計指標:Energy Efficiency Designed Ship Index新造船に対する指標)が施行され、また2023年より「EEXI(既存船燃費規制: Energy Efficiency Existing Ship Index)・燃費実績(CII: Carbon Intensity Indicator)格付け制度」が施行されました。EEXI規則に適合させるために機関出力制限(Engine Power Limitation、EPL)を設置し規則に対応して参ります。また、CO2排出量の削減について、保有船舶に対して下記の対策を行い環境保護の推進に努めております。減速による燃料消費の削減、PBCF(Propeller Boss Cap Fin: プロペラハブ渦により失われるエネルギーを回収しプロペラ効率を向上させる設備)の設置、燃費の低減を図り環境に優しい船体塗料を使用、電子機関の設置等順次CO2の排出削減を行っております。
2025年の竣工船にはEEDI(Phase3)を先取り適用し環境対策を行っております。新燃料に対する長期的な船体整備計画においては、次世代燃料である水素・アンモニア・LNG/LPG・メタノール・エタノール燃料等の開発状況を視野に置き慎重に検討を行っております。
その他、当社グループの環境規制に対する取組み内容は、2.「サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
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