清水建設 【東証プライム:1803】「建設業」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) シミズグループの中長期的な経営方針
当社は、1887年に相談役としてお迎えした渋沢栄一翁の教えである道徳と経済の合一を旨とする「論語と算盤」を「社是」とし、この考え方を基に、「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により、社会の期待を超える価値を創造し、持続可能な未来づくりに貢献する」ことを「経営理念」として定めております。
2019年5月、当社は、2030年を見据えたシミズグループの長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」と、当面5年間の基本方針と重点戦略を取りまとめた「中期経営計画〈2019‐2023〉」を策定しました。
「SHIMZ VISION 2030」
■目指す姿『スマート イノベーション カンパニー』
建設事業の枠を超えた不断の自己変革と挑戦、多様なパートナーとの共創を通じて、時代を先取りする価値を創造(スマート イノベーション)し、人々が豊かさと幸福を実感できる、持続可能な未来社会の実現に貢献します。
■シミズグループが社会に提供する価値
イノベーションを通じた価値の提供により、SDGsの達成に貢献します。
①安全・安心でレジリエント※1な社会の実現
地震や巨大台風、豪雨などの自然災害リスクが高まる中、生活と事業を災害から守ることが求められております。強靭な建物・インフラの構築を通じて、安全・安心でレジリエントな社会の実現に貢献していきます。
・強靭な社会インフラの構築
・建物・インフラの長寿命化
・防災・減災技術の普及
・ecoBCP※2の普及
※1 レジリエント:強くしなやかで復元力がある
※2 ecoBCP:平常時の節電・省エネ(eco)対策と非常時の事業継続(BCP)
対策を両立する施設・まちづくり
②健康・快適に暮らせるインクルーシブ※な社会の実現
高齢化や人口減少、都市化などの急速な社会変化が進む中、誰もが安心して快適に暮らせる社会が求められております。人に優しい施設やまちづくりを通じて、健康・快適に暮らせるインクルーシブな社会の実現に貢献していきます。
・ICTを活用したまちづくり
・ユニバーサルデザインの普及
・Well-beingの提供
・人類の活躍フィールドの拡大(海洋、宇宙へ)
※ インクルーシブ:すべての人が社会の一員として参加できる
③地球環境に配慮したサステナブル※な社会の実現
地球温暖化や森林破壊、海洋汚染などが深刻化する中、次世代に豊かな地球を残すことが求められております。環境負荷低減を目指す企業活動を通じて、地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現に貢献していきます。
・再生可能エネルギーの普及
・省エネ・創エネ、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化の推進
・事業活動におけるCO2排出量削減
・自然環境と生物多様性の保全
※ サステナブル:地球環境を保全しつつ持続的発展が可能な
■ビジョンの達成に向けて
3つのイノベーションの融合により、新たな価値を創造するスマート イノベーション カンパニーを目指します。
①事業構造のイノベーション
ビジネスモデルの多様化とグローバル展開の加速、及び、グループ経営力の向上
②技術のイノベーション
建設事業の一層の強化に向けた生産技術の革新と未来社会のメガトレンドに応える先端技術の開発
③人財のイノベーション
多様な人財が活躍できる“働き方改革”の推進と社外人財との“共創”による「知」の集積
■目指す収益構造
スマート イノベーション カンパニーへの進化により、2030年度に連結経常利益2,000億円以上を目指します。
連結売上利益の構成は、事業別では、建設65%、非建設35%、地域別では、国内75%、海外25%を想定しております。
「中期経営計画〈2019‐2023〉」
■中期経営計画の位置付け
企業価値の持続的成長を目指し、外部環境の変化に機敏に対応しつつ、利益水準を維持するとともに、2019年度から2023年度までの5年間を新たな収益基盤の確立に向けた先行投資期間として位置付けております。
■基本方針
建設事業の深耕・進化と、非建設事業の収益基盤確立及び成長を支える経営基盤の強化を図り、グローバル展開の加速とESG経営の推進により、シミズグループの企業価値向上を実現し、SDGsの達成に貢献します。
■経営数値目標(連結ベース)
建設事業での安定的な収益基盤を維持しつつ、非建設事業の着実な収益力向上により中長期的に収益構造を強化し、グループの持続的成長を実現します。
非建設事業の成長に資する投資を着実に実施しつつ、財務体質の健全性を維持します。
| (単位:億円) | |
| 中期経営計画〈2019‐2023〉 | |
| 2023年度 目標 | 財務KPI |
総売上高 | 18,800 | ROE 10%以上 自己資本比率 40%以上 負債資本倍率 0.7倍以下 (D/Eレシオ) 配当性向 30%程度※ |
建設事業 | 15,500 | |
非建設事業 | 3,300 | |
売上利益 | 2,350 | |
建設事業 | 1,850 | |
非建設事業 | 500 | |
経常利益 | 1,400 |
※ 2023年度は、40%程度へ引き上げる方針としております。
■資本政策
当社は「中期経営計画〈2019‐2023〉」において、政策保有株式の縮減とその売却代金の一部を原資とした自己株式の取得を方針としております。2022年度は大型工事の工事資金立替に伴う資金需要が大きく、自己株式の取得を見送りましたが、2022年度下期に政策保有株式の縮減が順調に進捗し、大型工事の工事代金回収も進んだため、2023年度に200億円の自己株式の取得を行うとともに、2019年度及び2021年度に取得した400億円の自己株式を2023年5月12日付で全て消却し、資本効率の向上による更なる企業価値向上を図ることとしました。
当社は、2026年度末までに政策保有株式の残高を連結純資産の20%以下とすることを目指すとともに、政策保有株式の縮減に合わせ、2024年度以降も自己株式の取得を継続する予定です。
なお、2023年度の連結配当性向については、従来の30%から40%程度へ引き上げる方針としております。
■政策保有株式の保有方針・縮減状況・議決権行使
①保有方針
当社は、営業政策上の必要性がある場合、主に「取引先との信頼関係の維持・強化」の目的で、政策保有株式として、取引先の株式を保有します。主要な政策保有株式については、取締役会が保有によって得られる当社の利益と取得額、株価変動リスク等を総合的に勘案して取得の可否を判断しております。保有株式については、毎年、個別銘柄毎に、株式保有に伴うコストやリスク、営業上の便益等の経済合理性を総合的に勘案のうえ、取締役会にて、保有の必要性を検証し、取引先との信頼関係を確認しながら、段階的に縮減を進め、資本の有効活用を図ります。
②縮減状況
2022年度に売却しました上場株式の銘柄数は21銘柄(一部売却を含む)、売却額は263億円となり、2018年度から2022年度までに縮減した上場株式の銘柄数は62銘柄(一部売却を含む)、売却額は879億円となりました。その結果、上場株式の銘柄数は、2018年度期初時点の187銘柄から、2023年3月末時点では143銘柄へと減少しております。なお、2023年度の売却金額については、300億円程度を見込むとともに、当社は、2026年度末までに政策保有株式の残高を連結純資産の20%以下とすることを目指しております。
③議決権行使
当社は、政策保有株式に係る議決権行使については、前述の「①保有方針」を踏まえ、議案の内容を検討し、当社及び取引先の企業価値向上に資するか否かの観点から賛否を総合的に判断し、適切に議決権を行使します。
■投資計画
長期ビジョン達成に向けた新たな収益基盤確立のため、5年間で7,500億円の投資を実施します。
項目 | 投資額(5ヶ年) | |
生産性向上・研究開発投資 | 1,000億円 | ・建設生産システムの進化(ロボット等) ・研究開発拠点の拡充 ・デジタル関連投資 他 |
不動産開発事業 | 5,000億円 | ・国内開発事業・賃貸資産の拡充 ・海外事業の拡大(ASEAN・北米等)他 新規投資額 5,000億円 売却による回収 ▲1,000億円 NET投資額 4,000億円 |
インフラ・再生可能エネルギー 新規事業(フロンティア事業他) | 1,300億円 | ・インフラ運営・BSP事業 ・再生可能エネルギー関連事業 ・宇宙・海洋・自然共生事業 ・次世代ベンチャー投資 他 |
人財関連 | 200億円 | ・高度プロフェッショナル人財 ・グローバル化・制度改革 他 |
5ヶ年投資額 合計 | 7,500億円 |
|
■非財務KPI
建設事業における労働生産性を向上させるとともに、ESGの観点から企業価値の向上を図り、SDGsの達成に貢献します。
主要KPI | 2023年度目標 | |
生産性向上 | 建設事業における生産性(2016年度比) 向上率 | 20%以上 |
環境(E) | 建設事業におけるCO2排出量(2017年度比)削減率※1 | 10%以上 |
社会(S) | 働きがい指標※2 | 4.0以上 |
ガバナンス(G) | 重大な法令違反件数 | 0件 |
※1 当社エコロジー・ミッション2030‐2050活動に対応する目標
2 当社従業員に対する「働きがい意識調査」による指標(5段階評価の平均)
■ESG経営の推進
シミズグループは、ESG経営を推進し、事業活動を通じて社会的責任を果たすことで、ステークホルダーからの信頼を高めるとともに、中長期的な企業価値向上と持続的な成長を実現します。
主な取組み
①「シミズめぐりの森」プロジェクトが始動
循環型の木材活用の推進に向けて、群馬県川場村において「シミズめぐりの森」プロジェクトを開始しました。この活動は、村有地約3haを借り受け、最大50年間にわたり自社施工建物で使う木材を生み出す森林を育成するものです。昨年10月には第1回の植林活動を行い、当社と協力会社の関係者約50名が、約2,000㎡の林地にカラマツの苗木約400本を植樹しました。
今後も継続して森林の育成に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
②「対話」と「サーベイ」による働きがいの向上
「働きがいと魅力あふれる職場」の実現に向けて、当社は様々な施策に取り組んでおります。
1on1ミーティングなどの対話によって、一人ひとりの意識・行動変革を促し、パルスサーベイ(簡易なアンケートを短期的なサイクルで繰り返し実施し、組織や個人の状態や変化を可視化する調査手法)によって、組織課題の見える化を図ることで、労働環境の改善や働きがいの向上を目指します。
③建物利用者のウェルビーイング向上に寄与
人の健康とウェルビーイングの観点から、働く人の健康を重視したワークプレイスが求められております。
2020年に竣工した自社開発ビル「横浜グランゲート」では、利用者の健康や快適性に着目した国際的な建物認証制度・WELL認証の「Core & Shell」区分で、国内初となるゴールドランク認証を取得しております。また、自社開発物件の認証取得だけでなく、WELL認証取得のコンサルティング事業も展開しており、顧客に従業員の健康増進、生産性の向上、さらには優秀な人財獲得といった様々な機会を提供していきます。
④建設キャリアアップシステム(CCUS)普及の推進
建設技能者の処遇改善、入職促進の基礎的インフラとなる建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及促進に、当社は一般社団法人日本建設業連合会のCCUS推進本部長会社として、積極的に取り組んでおります。
2023年3月末時点で、協力会社の事業者登録率89.1%(一人親方除く)、技能登録者率77.3%を達成しました。
(2) 対処すべき課題
■総労働時間の削減に向けた取組み
2024年4月から改正労働基準法による時間外労働時間の上限規制が建設業にも適用されるため、長時間労働の是正は喫緊の課題となっております。当社では総労働時間の削減に向けて2024年度までの活動ロードマップを策定し、「柔軟な働き方の推進」「ワークシェアリングの推進」「営業から施工までの生産プロセス全体の最適化」などに部門横断的に取り組んでおります。
また、時間外労働の上限規制への対応については、2022年4月に設置した「労働環境改善委員会」において組織的に取り組んでまいりましたが、2023年4月には専門の委員会である「2024年問題対策委員会」を設置しました。対応完了に向け、全社を挙げた取組みを加速してまいります。
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