企業兼大株主武田薬品工業東証プライム:4502】「医薬品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 タケダの企業理念と「私たちの約束」

当社の企業理念は、当社が誰であるか、何を行うか、どのように行うか、なぜそれが重要なのかというタケダの豊かなストーリーを伝えています。当社は、240年以上前の創業から現在に至るまで、社会にも役立つ誠実さで患者さんに貢献しています。当社は、「私たちの価値観」(バリュー)に基づき、「私たちの約束」を果たすことを通じて「私たちが目指す未来」(ビジョン)と「私たちの存在意義」(パーパス)を実現することを目指しています。「私たちの約束」とは、データ、デジタルおよびテクノロジー(DD&T)の力を活用し、「Patient」(すべての患者さんのために)、「People」(ともに働く仲間のために)、「Planet」(いのちを育む地球のために)に取り組むことです。

 私たちの存在意義(パーパス)

「世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献する」

 私たちが目指す未来(ビジョン)

 当社のビジョンは、「すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために。私たちはこの約束を胸に、革新的な医薬品を創出し続けること」です。

 私たちの価値観(バリュー):タケダイズム

 タケダイズムとは、まず誠実であること。それは公正・正直・不屈の精神で支えられた、当社が大切にしている価値観です。当社は、これを道しるべとしながら「1.患者さんに寄り添い(Patient)、2.人々と信頼関係を築き(Trust)、3.社会的評価を向上させ(Reputation)、4.事業を発展させる(Business)」を日々の行動指針とします。

 私たちの約束(インペラティブ)

 当社には、患者さん、ともに働く仲間、そして地域社会に対して果たすべき責任があります。この「私たちの約束」は「私たちの存在意義」と「私たちが目指す未来」を実現するために欠かせない要素です。

 すべての患者さんのために

・私たちは、倫理観をもってサイエンスの革新性を追求します。そして、人々の暮らしを豊かにする医薬品の創出に取り組みます。また、私たちの医薬品を、より多くの人々に迅速にお届けします。

 ともに働く仲間のために

・私たちは、理想的な働き方を実現します。

 いのちを育む地球のために

・私たちは、自然環境の保全に寄与します。

 データとデジタルの力で、イノベーションを起こします

・データを活用して導き出された成果をもとに、もっとも信頼されるバイオ医薬品企業として、これからも変革し続けます。

当社は、最も信頼される、データ主導型で成果に重きを置いたデジタルバイオ医薬品企業に変革することを目指しています。当社は、中核とする事業を通じて、患者さん、株主、社会に対して長期的な価値を提供するとともに、ともに働く仲間や地域コミュニティ、さらには地球に対して良い影響を与えることができるように努めています。

事業環境

世界の製薬産業においては、イノベーションのスピードはかつてよりも速くなっており、がん免疫療法、細胞療法、遺伝子治療等の新たな医療技術の登場によってさらに促進されていると考えています。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大が契機となり、世界中の人々に命を救うワクチンや治療薬を驚異的な速さで提供するといった新しいイノベーションの時代が到来しました。このような医療イノベーションによる成果が現れてきた一方、高齢化や生活スタイルの変化、複合疾患に対するより高度で先進的な治療法の利用等によってヘルスケアに対する投資額はここ10年、先進国の国内総生産や国内総所得を上回る速度で増加してきました。

このため、保険者は保険償還対象となる医薬品をより厳格に選定するようになっています。各国政府は後発品やバイオシミラーの使用を促進し、薬価引き下げの圧力を強めています。また、英国の償還価格決定制度に見られるように予測不能で急激な支払率の引き上げは、イノベーションに対する影響が懸念されます。さらに、医療アクセスの格差が拡大していることから、医療の公平性に対処するための医療アクセスの改善や政策に対する必要性が高まっています。当社は、現在主流の「出来高払いの診療報酬モデル」から、成果に基づく支払と品質の確保を目指す「価値に基づく保険医療モデル」への移行により、医療費の増加のペースを抑えるとともに、対象となる患者さんを拡大し、公平性を改善することができると考えています。

地政学的な視点では、地域紛争や多国間紛争により世界経済の先行きが不透明となる中、グローバル企業はさらなるリスクに晒されており、リスクが一段と高まっていると考えています。長引く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行による影響と、これらの地政学的要因とが相まって、主要産業における供給の途絶、エネルギー価格の上昇、労働市場における圧力の上昇が引き起こされています。しかしながら、世界的なパンデミックが経済や健康に及ぼす影響を認識しつつも、次のパンデミックに備えた世界の取り組みの進展は依然として十分ではありません。新たに世界的なパンデミックが生じた場合、計画や対策不足の結果、最も脆弱な人々が被害を受けることになります。さらに、公衆衛生は気候変動が及ぼす影響と密接に結びついており、気温上昇に伴い拡大する疾患や影響を受ける地域の患者さんの医療アクセスに関連した課題が生じます。

現在のこのような事業環境の下では、当社の患者さんへのコミットメントと、患者さんをサポートするための取り組みは、これまで以上に重要になっています。

Patient(すべての患者さんのために)

当社は、患者さんやコミュニティに高品質の医薬品やワクチンをできる限り早くお届けするために、希少疾患とより一般的な疾患の両方において、最も高いアンメットニーズに集中して取り組んでいます。私たちは、患者さんの人生を変え得る科学の力を追求し、開発の加速と承認取得に繋げるデータを創出し、イノベーションを推進するためにデジタルの規模を拡大しています。当社の研究開発プログラムは、ヒトにおけるバリデーションがなされたターゲットに基づき、多様なモダリティ(創薬手法)を網羅するものであり、細胞治療やデータサイエンスの領域で蓄積された研究能力を活用して進められています。 当社は、パイプラインの開発加速から、品質と効率性の向上を図るための製造工程におけるデジタル化、医療従事者や患者さんの対応に至るまで、データ、デジタルおよびテクノロジー(DD&T)を幅広く活用しています。DD&Tには、当社の事業に変革をもたらし、患者さんの人生を変え得るより良い治療経験と治療結果を生み出す可能性があると考えています。

パイプラインには成果が現れています。2022年度には、デング熱ワクチンのQDENGAが流行国を含む多くの国で承認されました。当社は、当社の価値観に基づき、疾病負荷が最も高く、医薬品やワクチンへのアクセスの障壁が特に複雑な国を優先しています。さらに、当社の段階的な価格設定戦略に沿って、より広範なアクセスを確保するため、各国の経済発展段階や医療制度の成熟度に応じて当ワクチンの価格を調整することに取り組んでいます。主要な研究開発活動の内容および進捗の詳細については、「6 研究開発活動」をご参照ください。

QDENGAの製造施設では、デジタル技術が製品品質と生産性の向上に役立っています。ドイツのジンゲンでは、ワクチン生産を強化するために、最新の工程設備を備えたワクチン施設を建設しました。また、偽造防止技術を活用し、正規のサプライチェーンに入るすべての製品が真正品であること、偽造ワクチンを容易に特定できることを保証し、ワクチンの信頼性と接種の向上を支援しています。

People(ともに働く仲間のために)

当社は、科学や技術がどれだけ進歩しても、意義のある変革をもたらすことができるのは人の力であることを認識しています。私たちは、どこでも、いつでも、どのようなときでも、患者さんのためにイノベーションを加速することを支援する、特別で包括的な職場環境を作ることを目指しています。私たちは、柔軟性の確保、定期的な対面での交流によるインクルージョンの促進、データや知見に重点を置いた働き方を進化させることでこれを行っています。また、ピープルリーダーは、チームにとって最善の働き方を実行するため率先して取り組んでいます。

当社は、このような取り組みの一環として、当社オフィスを従業員の心身の健康の維持(ウェルビーイング)と学びを中心とした 「タケダ・コミュニティスペース」 に変革しています。これらの空間は対面での交流を最大化するために設計されており、持続可能な環境において人々が集中し、協力し、より密接につながることができるものとなっています。

また、従業員のスキルアップやケイパビリティを開発し、持続的な成長に向けて、機動的で柔軟な組織を構築しています。当社のオンラインの学習プラットフォームであるBloomは、従業員が専門的な学習計画を設計することを可能にし、個人の能力の最高に到達できるよう、生涯学習の文化を醸成することを支援しています。

健康改善への取り組みの一環としては、当社は行動保健プラットフォームであるThriveと提携し、従業員の全体的なウェルビーイングの改善、精神的回復力の構築、生産性の向上を支援しています。

これらは、ウェルビーイングを促進し業績を向上させ、柔軟性を受け入れて定期的な対面での交流の価値を重視することにつながるなど、従業員の理想的な働き方の実現を支援する取り組みであるとともに、変革を推進することで当社の競争優位性にもなり得るものと考えています。

Planet(いのちを育む地球のために)

当社は、地球温暖化や環境汚染が人々の健康に影響を及ぼすことを認識しており、環境課題に対する高い意識とリーダーシップをもって取り組んでいます。「私たちの存在意義」(パーパス)を実現するためには、人々の健康には健全な地球環境が必要であり、人々の健康に貢献するだけでは充分ではないと考えております。当社では、環境負荷を低減するためにクリーンエネルギーを優先的に使用するだけでなく、ネットゼロの達成およびバリューチェーン全体で温室効果ガス排出を無くすべく取り組んでいます。具体的には、当社の環境サステナビリティの取り組みとして、Science Based Targets initiative (SBTi)企業ネットゼロ基準に従った2040年までのネットゼロの達成、天然資源の保全、サステナビリティ原則を念頭に置いた製品の設計に注力しています。

当社は、温室効果ガス排出量削減の目標に向けて顕著な進展を遂げています。2022年9月に米国のEnel North America社と締結した12年間のバーチャル電力販売契約では、当社の現在の事業活動におけるスコープ1および2の温室効果ガス排出量の約20%に相当する最大で年間35万メガワット時(MWh)の再生可能エネルギークレジットを創出する見込みです。

当社はまた、2023年3月に、当社初のポジティブ・エネルギーを達成したビルをシンガポールに開設したことを公表しました。建物のエネルギーの少なくとも115%は現地の再生可能電源から供給されており、消費量よりも多くの電力を発生させています。

財務実績

当社の財務実績は、当社が新たな局面を迎えるにあたり、持続的な推進力を有していることを示しています。財務規律により創出されるフリー・キャッシュ・フロー、利益率の向上、およびレバレッジ低下策の推進などを通じて、当社は、成長ドライバーやパイプラインの強化に向けたさらなる投資が可能となり、株主還元も実施しています。また、将来予測に基づき、当社の財務プロファイルを計画・管理することによって、インフレ耐性を高め、金利上昇に対するエクスポージャーを最小限に抑えています。このような財務状況のもと、当社は、現在、臨床段階にある約40の開発プログラムについて、社内の研究開発エンジンおよび200社以上との提携を通じて多様なパイプラインの拡充に向けた取り組みを進めています。さらに、長期的な成長力を獲得するため、社内外の投資機会に戦略的に投資を行っています。

TAK-279は、乾癬や炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデスを含む複数の免疫介在性疾患において、ベスト・イン・クラスになり得る高度に選択的な経口アロステリックチロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬であり、非常に大き成長する可能性を有しています。当社は2025年度から2027年度にかけて、乾癬を適応症として当局に承認申請を行っていくことを目指しており、さらに、今後10年の成長に向けた取り組みを強化してまいります。

短期的には、2023年度に主に米国の注意欠陥/多動性障害治療剤「VYVANSE」の独占販売期間が満了することにより逆風に晒されることが想定されますが、中長期的には、タケダの成長製品・新製品*が売上収益の成長を牽引していくことを見込んでいます。2022年度には、当社のトップ製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「ENTYVIO」(国内製品名:「エンタイビオ」)について、グローバル売上の持続的な成長見通しとバイオシミラー参入時期の想定の見直しに基づき、将来売上予測のレンジを引き上げました。今後の新製品の上市も売上収益の伸長をさらに加速させるものと見込んでいます。

中長期的には、当社は競争力のある利益率を維持し、潤沢なキャッシュ・フローを創出してまいります。当社は、研究開発、血漿分画製剤事業や新製品の上市に対して、また、株主還元のコミットメントに向けて引き続き資金を配分してまいります。

* タケダの成長製品・新製品(2023年度以降)

消化器系疾患:ENTYVIO、アロフィセル

希少疾患:タクザイロ、LIVTENCITY

血漿分画製剤(免疫疾患):GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、HYQVIA、CUVITRUを含む免疫グロブリン製剤、

                          HUMAN ALBUMIN、FLEXBUMINを含むアルブミン製剤

オンコロジー:アルンブリグ、EXKIVITY

その他:QDENGA

(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)影響軽減のための当社の取り組み)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行が発生してから3年が経過し、多くの国でCOVID-19に対するワクチンや治療薬が広く普及し、移動制限などの厳格な感染拡大防止策が緩和されてきています。当社は、当社プロトコールに加えて、各国・地域の公衆衛生関連規制を引き続き遵守し、従業員の健康と安全や当社医薬品を必要とされている患者さんへの提供を確保するため、新しい変異株を含め、COVID-19が当社の事業活動に及ぼす潜在的な影響を注視してまいります。

当社は、当年度、Novavax社からライセンス供与と技術移転を受けた組換えスパイクタンパクを抗原としたCOVID-19ワクチン「ヌバキソビッド筋注」を当社の光工場において製造し、日本国内において供給を行いました。当社は、Novavax社と協力しオミクロン株を含む変異株に対応したワクチンの開発を進めています。また、Moderna社との提携を通じて、引き続き、COVID-19に対するmRNAワクチンである「スパイクバックス筋注」(オミクロン株対応の二価ワクチン)の日本国内における流通支援を行ってまいります。

(ウクライナとロシアにおける事業について)

すべての患者さんと従業員を大切にするという私たちの変わらぬ約束は、危機の中において、より重要なものとなっています。当社は従業員の安全を確保し、ウクライナや周辺地域の患者さんに必要な医薬品を提供し続けるために、あらゆる努力を重ねています。

当社は、患者さんへの医薬品の安定供給を維持するために必要不可欠な活動を除き、ロシアにおける活動を中止しました。これには、すべての新規投資の中止、広告・宣伝活動の中止、新規の臨床試験を実施しないこと、および進行中の臨床試験への新規患者登録の中止が含まれております。当社はタケダイズムと患者さんを中心に考えるという私たちの価値観、そして私たちの医薬品や治療法を必要とするウクライナやロシア、周辺地域の患者さんへの倫理的な責任に基づいた必要不可欠な活動に注力します。それと同時に、当社はロシアに課せられたすべての国際的な制裁を遵守しています。

また、ウクライナで被害を受けた方々への寄付金や医薬品の無償提供などの人道的支援活動を実施しました。そして、地域の患者さんに対する支援についても検討を続けます。

当年度のロシア/CISにおける売上収益は、連結の売上収益4兆275億円の2.2%でした(「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析、(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容、①当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容、(a)当年度の経営成績の分析、(iii)当年度における業績の概要」の地域別売上収益をご参照ください)。これら国々における危機による当年度の当社業績に対する重大な影響はありませんでした。しかしながら、今後の事態の進展によっては、当社の業績や財務状況に悪影響が生じる可能性があります。

[主要製品一覧]

消化器系疾患領域における主要製品は以下の通りです。

ENTYVIO(ベドリズマブ):「ENTYVIO」(日本の製品名:エンタイビオ)は、中等症から重症の潰瘍性大腸炎・クローン病に対する治療剤です。「ENTYVIO」は、2014年に米国および欧州において発売以来、売上が伸長しており、2023年3月期の当社グループの売上トップ製品です。現在、「ENTYVIO」は世界70カ国以上で承認されています。当社は本剤の可能性を最大化するため、その他の国においても本剤の承認取得を進め、さらなる適応症の開発を行うとともに、皮下注射製剤の開発を行います。2023年3月期におけるENTYVIO」の売上収益は7,027億円となりました。

・アロフィセル(ダルバドストロセル):「アロフィセル」は、非活動期/軽度活動期の成人の管腔型クローン病患者さんにおける、少なくとも一回以上の既存治療または生物学的製剤による治療が効果不十分であった複雑痔瘻に対する治療薬です。「アロフィセル」は、2018年に欧州の中央審査により販売承認(MA)された、欧州初の同種異系幹細胞療法であり、日本でも2021年に承認されました。2023年3月期における「アロフィセル」の売上収益27億円となりました。

・タケキャブ/VOCINTI(ボノプラザンフマル酸塩):酸関連疾患の治療剤「タケキャブ」は、2015年に日本で発売され、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制などの効能により飛躍的な成長を遂げました。「タケキャブ」(中国の製品名:VOCINTI)は、2019年に胃食道逆流症の治療剤として中国で承認されました。2023年3月期における「タケキャブ/VOCINTI」の売上収益は1,087億円となりました。

・GATTEX/レベスティブ(テデュグルチド[DNA組換え型]):非経口(静脈栄養)サポートを必要とする短腸症候群(SBS)の治療薬です。成人用および小児用の効能を有する「GATTEX/レベスティブ」が米国、欧州、日本において承認されました。2023年3月期における「GATTEX/レベスティブ」の売上収益は931億円となりました。

DEXILANT (dexlansoprazole):「DEXILANT」は、全グレードのびらん性逆流性食道炎の治療およびその維持療法、症候性非びらん性胃食道逆流症(GERD)に伴う胸やけの緩和・治療など、胃酸関連疾患の治療薬です。当年度において一時的に売上が伸長しましたが、後発品の市場参入により、売上は引き続き減少傾向にあると見込まれます。2023年3月期における「DEXILANT」の売上収益694億円となりました。

希少疾患領域における主要製品は以下の通りです。

・タクザイロ(ラナデルマブ):「タクザイロ」は、遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作予防に用いられます。「タクザイロ」は、HAEの患者さんにおいて慢性的に制御不能な酵素である血漿カリクレインに選択的に結合し、減少させる完全ヒト型モノクローナル抗体です。「タクザイロ」は2018年に米国と欧州にて、2020年に中国にて、2022年に日本にて承認され、さらなる地理的拡大を目指しています。2023年3月期における「タクザイロ」の売上収益は1,518億円となりました。

・LIVTENCITY (maribavir):「LIVTENCITY」は、成人患者さんと小児患者さん(12歳以上で体重35 kg以上)に対する、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、またはシドフォビルに対して遺伝子型抵抗性(無しも含みます)を示す難治性の移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症治療薬であり、2021年12月に米国において発売され、2022年11月に欧州において承認されました。「LIVTENCITY」はpUL97プロテインキナーゼとその天然基質を標的として阻害する経口投与可能な最初で唯一の抗CMV治療薬であり、発売当初から売上が順調に伸長しています。2023年3月期における「LIVTENCITY」の売上収益は105億円となりました。

・エラプレース(イデュルスルファーゼ):「エラプレース」は、ハンター症候群(ムコ多糖症II型またはMPS II)に対する酵素補充治療薬です。2023年3月期における「エラプレース」の売上収益は853億円となりました。

・リプレガル(アガルシダーゼ アルファ):「リプレガル」は、ファブリー病に対して米国以外の市場で販売され、2020年に中国でも承認された酵素補充療法治療薬です。当社は、2022年2月に大日本住友製薬株式会社から「リプレガル」の日本における製造販売承認を承継し、同剤の販売の移管を受けました。ファブリー病は、脂肪の分解に関与するリソソーム酵素α‑ガラクトシダーゼAの活性の欠如に起因する遺伝子性の希少疾患です。2023年3月期における「リプレガル」の売上収益は667億円となりました。

・アドベイト(抗血友病因子(遺伝子組換え型)):「アドベイト」は、血友病A(血液凝固第Ⅷ因子欠乏)の治療薬であり、出血の制御と予防、周術期管理および出血の頻度を予防または軽減するために行う定期補充療法に使用されます。2023年3月期における「アドベイト」の売上収益は1,182億円となりました。

・アディノベイト/ADYNOVI(抗血友病因子(遺伝子組換え型) [PEG化]):「アディノベイト/ADYNOVI」は、血友病A治療薬であり、遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤です。「アディノベイト/ADYNOVI」は遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤「アドベイト」と同じ製造工程で作られ、当社がネクター社より独占的にライセンス取得しているPEG化(体内での循環時間を延長し、投与頻度を減らすための化学修飾処理)技術を追加したものです。2023年3月期における「アディノベイト/ADYNOVI」の売上収益は666億円となりました。

血漿分画製剤(免疫疾患)領域における主要製品は以下の通りです。

・GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG(静注用人免疫グロブリン10%製剤):「GAMMAGARD LIQUID」は、抗体補充療法用免疫グロブリン(以下、「IG」)の液体製剤です。「GAMMAGARD LIQUID」は、原発性免疫不全症(PID)の成人および2歳以上の小児患者さんに対して使用され、静注または皮下注のいずれかの方法で投与します。また、「GAMMAGARD LIQUID」は、成人の多巣性運動ニューロパチー(MMN)患者さんに対しても静注投与にて使用されます。「GAMMAGARD LIQUID」は、米国以外の多くの国で製品名「KIOVIG」として販売されています。「KIOVIG」は、欧州においてPIDおよび特定の続発性免疫不全症患者さん、ならびに成人のMMN患者さんへの使用が承認されています。

HYQVIA(ヒト免疫グロブリン注射製剤10%)):「HYQVIA」は、ヒト免疫グロブリン(IG)および遺伝子組換え型ヒトヒアルロニダーゼ(Halozyme社よりライセンス取得)からなる製剤です。「HYQVIA」は、PID患者さんに対して最長で1ヶ月に1回の投与で、1回あたりの注射部位一ヶ所でIGの全治療用量の投与が可能な唯一のIG皮下注用治療薬です。「HYQVIA」は、米国では成人PID患者さんへの使用、また欧州においてPID症候群および骨髄腫患者さんまたは重度の続発性低ガンマグロブリン血症および回帰感染を伴う慢性リンパ性白血病患者さんへの使用が承認されております。

 CUVITRU(ヒト免疫グロブリン皮下注用20%製剤):「CUVITRU」は、原発性体液性免疫不全症の成人および2歳以上の小児患者さんに対する補充療法に用いられます。「CUVITRU」は、欧州では特定の続発性免疫不全の治療薬としても承認されています。「CUVITRU」は、プロリン不含で、投与部位1ヶ所あたりの耐用量内で最大60 mL(12g)および1時間あたり60 mLまで投与可能な唯一の20%皮下IG治療薬であり、従来の皮下IG治療薬と比較してより少ない投与部位および短い投与時間での使用が可能です。

2023年3月期における「GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG」「HYQVIA」「CUVITRU」を含む免疫グロブリン製剤の売上収益は5,222億円となりました。

・FLEXBUMIN(ヒトアルブミンバッグ製剤)およびヒトアルブミン(ガラス瓶製剤):「FLEXBUMIN」および「ヒトアルブミン」は、濃度5%および25%の液体製剤として販売されています。両製品とも、血液量減少症、一般的な原因および火傷による低アルブミン血症、ならびに心肺バイパス手術時のポンプのプライミングに使用されます。また、「FLEXBUMIN」25%製剤は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)およびネフローゼに関連する低アルブミン血症、ならびに新生児溶血性疾患(HDN)にも適応されます。2023年3月期における「FLEXBUMIN」および「ヒトアルブミン(ガラス瓶製剤入り)」を含むアルブミン製剤の売上収益は1,214億円となりました。

オンコロジー領域における主要製品は以下の通りです。

・アルンブリグ(ブリグチニブ):「アルンブリグ」は、非小細胞肺がん(NSCLC)治療に使用される経口投与の低分子未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤であり、2017年に米国で迅速承認され、2018年に欧州において、2021年に日本において、販売承認を取得しました。2020年5月に米国で初めて、新たにALK陽性転移性NSCLCと診断された患者さんに対する効能が追加され、2022年3月に中国において承認されました。2023年3月期における「アルンブリグ」の売上収益は206億円となりました。

・EXKIVITY(mobocertinib):「EXKIVITY」は、プラチナ製剤ベースの化学療法を実施中あるいは実施後に病勢が進行した上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う局所進行または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療薬であり、2021年9月に米国において迅速承認制度のもとで承認され、2023年1月に中国の国家薬品監督管理局(NMPA)により承認されました。発売以来、高度医療機関および開業医において売上が急速に伸長しています。2023年3月期における「EXKIVITY」の売上収益は37億円となりました。

・リュープリン/ENANTONE(リュープロレリン):「リュープリン/ENANTONE」は、前立腺がんや乳がん、小児の中枢性思春期早発症、子宮内膜症、不妊の治療や、子宮筋腫による貧血の症状改善に用いられる治療薬です。リュープロレリンの特許期間は満了していますが、製造の観点から後発品の市場参入は限定的です。2023年3月期における「リュープリン/ENANTONE」の売上収益は1,113億円となりました。

・ニンラーロ(イキサゾミブ):「ニンラーロ」は、多発性骨髄腫(MM)治療に対する初めての経口プロテアソーム阻害剤です。「ニンラーロ」は、再発又は難治性の多発性骨髄腫の効能で、2015年に米国で承認されて以来、2016年に欧州、2017年に日本、2018年に中国で承認されております。日本においては、多発性骨髄腫の維持療法の治療薬としても承認を受けております。2023年3月期における「ニンラーロ」の売上収益は927億円となりました。

・アドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチン):「アドセトリス」は、ホジキンリンパ腫(HL)および全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の治療に使用される抗癌剤で、2020年5月には中国で承認され世界70カ国以上で販売承認を受けております。当社は、Seagen社と「アドセトリス」を共同開発し、米国およびカナダ以外の国での販売権を保有しています。2023年3月期における「アドセトリス」の売上収益は839億円となりました。

ニューロサイエンス領域における主要製品は以下の通りです。

・VYVANSE/ELVANSE(リスデキサンフェタミンメシル酸塩):「VYVANSE/ELVANSE」は、6歳以上の注意欠陥・多動性障害(ADHD)患者さんおよび成人の中程度から重度の過食性障害患者さんの治療に用いられる中枢神経刺激剤です。2023年に米国において後発品が市場に参入することにより、今後売上は減少することが見込まれます。2023年3月期における「VYVANSE/ELVANSE」の売上収益は4,593億円となりました。

・トリンテリックス(ボルチオキセチン臭化水素酸塩):「トリンテリックス」は、成人大うつ病性障害の治療に適応される抗うつ薬です。「トリンテリックス」はH. Lundbeck A/Sと共同開発し、当社は米国および日本での販売権を保有しており、米国では2014年、また日本では2019年より販売しています。2023年3月期における「トリンテリックス」の売上収益は1,001億円となりました。

売上収益の地域別内訳は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 事業セグメントおよび売上収益」をご参照下さい。

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