武田薬品工業 【東証プライム:4502】「医薬品」 へ投稿
企業概要
当年度の研究開発費の総額は7,299億円であります。なお、当社の研究開発費の予算は、全社的に決定されており、特定の支出は開発の結果および優先事項に応じて再配分の対象となる場合があるため、当社の研究開発費について、疾患領域あるいは臨床試験段階毎の内訳を報告しておりません。
医薬品の研究開発のプロセスは、長期にわたり多額の費用を伴い、その期間は10年を越えることもあります。このプロセスには、新薬の有効性および安全性の評価のための複数の試験、データを審査し販売承認の可否を判断する規制当局に対する申請が含まれます。こうした精査の過程を通過し、臨床での治療に用いることができる候補物質はごく僅かです。承認取得後も、上市後の製品に対しては、ライフサイクルマネジメント、メディカルアフェアーズやその他の投資を含め、継続的な研究開発活動による支援が行われます。
臨床試験は、地域的および国際的な規制ガイドラインを遵守し、通常5から7年もしくはそれ以上を費やして実施されるものであり、相応の費用を伴います。通常、臨床試験は医薬品規制調和国際会議(ICH)が制定したガイドラインに沿って実施されます。これに関わる規制当局は、米国では食品医薬品局(FDA)、欧州連合では欧州医薬品庁(EMA)、日本では厚生労働省(MHLW)、中国では国家薬品監督管理局(NMPA)です。
ヒトの臨床試験は以下の3相で実施されます(各相が一部重複することもあります):
・臨床第1相(P-1)試験
少人数の健康な成人の志願者を被験者として、薬物の安全性、吸収、分布、代謝、排泄について評価するために実施
・臨床第2相(P-2)試験
少人数の志願患者さんを被験者として、安全性、有効性、用量および用法を評価するために実施
臨床第2相試験はP-2aとP-2bの2つのサブカテゴリーに分割されることがあります。P-2a試験は通常臨床上の有効性または生物学的活性を示すためにデザインされたパイロット試験であり、P-2b試験は薬物が最少の副作用で生物学的活性を示す最適用量を探索するために行われます。
・臨床第3相(P-3)試験
大人数の志願患者さんを被験者として、既存の薬剤またはプラセボと比較した安全性および有効性を評価するために実施
これら3相のうち、臨床第3相にかかる開発費用が最も大きく、臨床第3相試験へ進めるか否かの決定は、医薬品開発における重要なビジネス判断となります。臨床第3相試験を通過した候補薬物については、管轄の規制当局に新薬承認申請書(NDA)、生物製剤承認申請(BLA)または医薬品販売承認申請(MAA)を提出し、規制当局より承認を取得した場合に上市が可能となります。NDA、BLA、MAAの作成には、膨大な量のデータの収集、検証、分析が必要であり、多額の費用が伴います。製品上市後も、保健当局により有害事象の市販後調査や、当該医薬品のリスク・ベネフィットに関する追加情報を提供するための市販後試験の実施を求められることがあります。
当社の研究開発は、サイエンスにより、患者さんの人生を根本的に変えうるような非常に革新性が高い医薬品を創製することに注力しています。当社は、「革新的なバイオ医薬品」、「血漿分画製剤」および「ワクチン」の3つの分野において研究開発活動を実施しています。「革新的なバイオ医薬品」に対する研究開発は、当社の研究開発投資の中で最も高い比率を占めています。「革新的なバイオ医薬品」における重点疾患領域(消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、オンコロジー)には、希少疾患および有病率がより高い疾患のいずれにおいても、未だ有効な治療法が確立されていない高い医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)が存在する疾患に対し、当社はベスト・イン・クラスあるいはファースト・イン・クラスとなりうる画期的な新規候補物質を創出してまいりました。当社は希少疾患に対してコミットしており、当社が探求している患者さんの人生を根本的に変えうるような医薬品の多くは、当社の重点疾患領域および血漿分画製剤領域における希少疾患を治療するものとなります。当社では新たな研究開発能力、さらには次世代プラットフォームに対して社内および外部との提携によるネットワークを通じて投資し、細胞療法および遺伝子治療の領域の強化を図っています。また、当社はデータとデジタル技術を活用し、イノベーションの質を向上させ、実行を加速させています。
当社のパイプラインは、当社事業の短期的および長期的かつ持続的な成長を支えるものです。初回の承認取得後も上市後の製品に対して、地理的拡大や効能追加に加え、市販後調査および剤型追加の可能性を含めた継続的な研究開発活動による支援体制が整っています。当社の研究開発チームは、販売部門との緊密な連携を通じ既発売品の価値の最大化を図り、販売活動を通じて得られた知見を研究開発戦略やポートフォリオに反映します。
自社の研究開発機能向上への注力に加え、社外パートナーとの提携も、当社研究開発パイプライン強化のための戦略における重要な要素の一つです。社外提携の拡充と多様化に向けた戦略により、様々な新製品の研究に参画し、当社が大きな研究関連のブレイクスルーを達成する可能性を高めます。
当社の主要な研究開発施設には以下を含みます:
• グレーターボストン地区研究開発サイト:当社のボストン研究開発サイトは米国マサチューセッツ州ケンブリッジに位置しています。本サイトは当社のグローバルでの消化器系・炎症性疾患領域、オンコロジー、ならびにその他の希少疾患品目の研究開発の中心であり、加えて血漿分画製剤やワクチンなど他の疾患領域の研究開発や免疫調節および生物学的製剤の研究も支援しています。最先端の細胞療法の製造施設を備えた、当社の細胞療法研究の拠点です。さらに当社は、ケンドール・スクエアに新たに建設中の約60万平方フィートの最新鋭の研究開発およびオフィス施設について、15年間のリース契約を締結し、2026年より入居する予定です。
• 湘南ヘルスイノベーションパーク:日本の神奈川県藤沢・鎌倉地域に位置する湘南ヘルスイノベーションパーク(以下、「湘南アイパーク」)は、当社の湘南研究所を外部に開放する形で、2018年に設立された日本初の製薬企業発サイエンスパークであり、当社のニューロサイエンス研究の主要拠点です。当社はより多様なパートナーを招致し、湘南アイパークのさらなる成功を目指すため、2020年に信託設定、2023年には湘南アイパークの運営事業を当社が設立した会社に承継しました。当社は、アンカーテナントとして今後も日本におけるライフサイエンスの研究活性化に注力します。
• サンディエゴ研究開発サイト(注):米国カリフォルニア州サンディエゴにある当社の研究開発拠点であり、消化器系・炎症性疾患およびニューロサイエンス領域における研究開発を支援しています。本研究サイトは、バイオテックのような形態で研究を行う拠点であり、構造生物学および生物物理学などの社内技術を駆使し、社内外で行われる研究を促進します。
• オーストリア ウィーン研究開発サイト:オーストリア ウィーンに位置する当社の研究開発サイトであり、研究開発および血漿分画製剤のプログラムを支援しています。本研究サイトは、生物学的製剤の研究開発に注力するとともに血漿分画製剤の製造施設を備えています。ウィーンのドナウシュタット地区には、アクセシビリティ、快適性、環境の持続可能性に関する基準に準拠したTotal Quality Building(TQB)としての認証を受けられるようデザインされたグリーンビルディングとして、新たな研究開発施設が2026年に設立される予定です。
(注)2024年5月、当社はサンディエゴ研究開発サイトを閉鎖することを決定しました。
当社の2023年4月以降の主要な研究開発活動の進捗は、以下のとおりです。
研究開発パイプライン
消化器系・炎症性疾患
消化器系・炎症性疾患において、消化管疾患、肝疾患および免疫介在性の炎症性疾患の患者さんに革新的で人生を変えうるような治療法をお届けすることにフォーカスしています。炎症性腸疾患(IBD)においては、ENTYVIO(国内製品名:エンタイビオ)に関する皮下注射製剤の開発および活動性の慢性回腸嚢炎をはじめとする適応症拡大を含め、フランチャイズのポテンシャルを最大化しています。加えて、GATTEX/レベスティブの地理的拡大により当社の消化器系疾患におけるポジショニングの拡大を目指しています。また、当社は、自社創製、社外との提携および事業開発を通じて炎症性疾患(消化器系、皮膚科系、リウマチ性の疾患に加え、厳選した希少血液疾患および腎疾患(mezagitamab (TAK-079)など))、肝疾患、神経性消化器疾患における機会を探索し、パイプラインの構築を進めております。そのうち、後期開発段階にあり、複数の免疫介在性炎症性疾患の治療薬としてベスト・イン・クラスとなる可能性を有する経口アロステリックチロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬zasocitinib(TAK-279)は、事業開発を通じて獲得した候補物質の一例です。また、後期開発段階にあるfazirsiran(TAK-999)は、α-1アンチトリプシン欠損関連肝疾患に対するファースト・イン・クラスのRNA干渉治療薬となる可能性があり、社外との提携を通じたパイプライン構築の一例です。
(注)アジンマ(apadamtase alfa/cinaxadamtase alfa(遺伝子組換え)(開発コード:TAK-755))およびmezagitamab(TAK-079)は、2023年度第4四半期より消化器系・炎症性疾患領域において開発が継続されています。
[ENTYVIO/エンタイビオ 一般名:ベドリズマブ]
- 2023年4月、当社は、ENTYVIO点滴静注製剤による導入療法後の成人の中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎に対する維持療法として、ENTYVIO皮下注射製剤の生物学的製剤承認申請(BLA)を米国食品医薬品局(FDA)に再提出し、受理されたことを公表しました。今回の再提出は、2019年12月の審査完了報告通知(CRL)におけるFDAの指摘内容に対応することを目的としていました。CRLの受領以降、当社はFDAと緊密に連携し、当局の指摘内容に取り組んでまいりました。今回の再提出パッケージには、ENTYVIO皮下注射製剤の使用について検討するために収集した追加データが含まれていました。同通知の内容は、ENTYVIO点滴静注製剤、臨床安全性および有効性データ、ならびにENTYVIO皮下注射製剤のBLAを支持する検証試験であるVISIBLE1試験の結論とは関連していませんでした。VISIBLE1試験では、0週および2週時点に非盲検下にてENTYVIO点滴静注製剤を2回投与後、6週時点で臨床的改善が得られた中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎の成人患者216例を対象に、ENTYVIO皮下注射製剤の維持療法としての安全性および有効性を評価しました。主要評価項目は、52週時点における臨床寛解であり、これは完全Mayoスコアが2ポイント以下、かつすべてのサブスコアが1以下と定義しました。2023年9月、当社は、ENTYVIO点滴静注製剤による導入療法後の成人の中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎に対する維持療法として、ENTYVIO皮下注射製剤が、FDAによって承認されたことを公表しました。
- 2023年9月、当社は、中等症から重症の活動期クローン病の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)を効能または効果として、エンタイビオ皮下注108mgペン/同皮下注108mgシリンジ(エンタイビオSC)について、厚生労働省より製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、エンタイビオSCの中等症から重症の活動期クローン病の維持療法としての有効性および安全性を評価した国際共同臨床第3相試験であるMLN0002SC-3031試験およびMLN0002SC-3030試験に基づくものです。
- 2024年4月、当社は、ENTYVIO点滴静注製剤による導入療法後の成人の中等症から重症の活動期クローン病に対する維持療法として、ENTYVIO皮下注射製剤がFDAにより承認されたことを公表しました。本承認は、VISIBLE2試験(SC CD試験)のデータに基づきます。本試験は、0週および2週時点に非盲検下にてENTYVIOの点滴静注製剤による静脈内投与を2回実施後、6週時点で臨床的改善を達成した、中等症から重症の活動期クローン病成人患者全409例を対象に、ENTYVIO皮下注射製剤による維持療法の安全性と有効性をプラセボと比較して評価した無作為二重盲検臨床第3相試験です。52週時点における長期の臨床的寛解率において、ENTYVIO皮下注射製剤108mgを維持療法として2週間ごとに投与した群では、プラセボ投与群と比較し統計学的に有意に高い結果(ENTYVIO皮下注射群:48%、プラセボ投与群:34%、p<0.01)を示しました。臨床試験において、ENTYVIO皮下注射製剤の安全性プロファイルは、点滴静注製剤の既知の安全性プロファイルと概ね一致していましたが、皮下注射製剤の副作用として注射部位反応(注射部位の紅斑、発疹、そう痒症、腫脹、挫傷、血腫、疼痛、蕁麻疹、浮腫)が追加されました。
[アロフィセル 一般名:ダルバドストロセル]
- 2023年10月、当社は、クローン病に伴う複雑痔瘻の治療薬アロフィセルの有効性および安全性を評価する臨床第3相ADMIRE-CD II試験において、主要評価項目である24週時点の複合寛解率を達成しなかったことを公表しました。アロフィセルの安全性プロファイルは過去の試験と一致し、安全性に関する新たな所見は認められませんでした。データ解析から得られた結果は、今後、医学学会または査読付き学術誌において発表する予定です。アロフィセルは、これまでに完了しているADMIRE-CD試験の良好な結果に基づき、欧州連合(EU)、イスラエル、スイス、セルビア、英国および日本において承認されています。
[アジンマ 一般名:apadamtase alfa/cinaxadamtase alfa(遺伝子組換え)(開発コード:TAK-755)]
- 2023年6月、当社は、先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)に対する予防的治療法として、TAK-755補充療法の安全性および有効性を評価する無作為化対照非盲検クロスオーバー国際共同ピボタル臨床第3相試験の中間解析の良好な結果およびTAK-755の薬物動態(PK)の特性に加えて、臨床第3b相継続試験からのTAK-755の予防効果に関する長期データを2023年の国際血栓止血学会(ISTH)で発表しました。本ピボタル試験では、TAK-755の予防的治療を受けている期間中に急性TTPイベントが発現した患者はいませんでした。また、TAK-755は、血漿製剤を用いた治療(血漿療法)と比較して血小板減少症事象の発現率を60%低減させました(ハザード比[HR]0.40;95%信頼区間[CI]:0.3–0.7)。試験治療下で発現した有害事象は、血漿療法群で50%であったのに対し、TAK-755の投与を受けた12歳以上68歳以下の患者において10.3%であり、良好な安全性および忍容性プロファイルが確認されるとともに血漿療法よりも安全性が高い可能性が示されました。加えて、12歳以上のcTTP患者36例を対象に、単回輸注後(0~168時間)のADAMTS13の薬物動態の特性を評価し、血漿療法と比較しました。TAK-755による治療を受けた患者は、血漿療法を受けた患者と比較して、ADAMTS13の活性レベルが5倍増加し(Cmax:TAK-755群 100% vs. 血漿療法群 19%)、かつ変動が少ないという結果でした(変動係数[CV]:23.8% vs. 56%)。
また、cTTP患者29例を対象にTAK-755の長期予防投与の安全性および有効性を評価した臨床第3b相継続試験の中間解析の結果、TAK-755の予防投与による安全性プロファイルは一貫して良好であり、中和抗体の産生は認められませんでした。TAK-755の予防投与期間中に発現した急性TTPイベントはなく、亜急性TTPイベントおよびTTP症状の発現率は、ピボタル試験におけるTAK-755予防投与時の発現率と同程度でした。
- 2023年11月、当社は、米国食品医薬品局(FDA)により、cTTPの成人および小児患者の予防的治療薬ならびに酵素補充療法としてADZYNMAの承認を取得したことを公表しました。本剤は、cTTPを対象としたファスト・トラック指定、希少疾病用医薬品指定および希少小児疾患指定を受け、生物学的製剤承認申請(BLA)は優先審査指定を受けていました。また、FDAは本承認に対して希少小児疾患優先審査権を付与しました。本承認は、cTTPを対象とした初の無作為比較非盲検クロスオーバー臨床第3相試験の有効性、薬物動態、安全性および忍容性データの解析、ならびに継続試験のデータを含む包括的なエビデンスに基づきます。ADZYNMAは、欠乏したADAMTS13酵素を補充することによりcTTP患者のアンメット・メディカル・ニーズに対応するFDAに承認された初めてかつ唯一の遺伝子組換えADAMTS13(rADAMTS13)です。
- 2024年3月、当社は、アジンマ静注用1500について、12歳以上の患者を対象に、cTTPを効能または効果として、厚生労働省から製造販売承認を取得したことを公表しました。本承認は、主に12歳から68歳のcTTP患者(日本人5例を含む)を対象とした初のグローバル臨床第3相試験である281102試験における有効性、薬物動態、安全性および忍容性の中間解析データ、および継続試験であるTAK-755-3002試験における長期的安全性および有効性のデータに基づくものです。
- 2024年5月、当社は、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)が、cTTPの小児および成人患者のADAMTS13欠乏症の治療薬としてTAK-755の承認を例外的な状況下において推奨したことを公表しました。欧州委員会の肯定的見解は、cTTPを対象とした初の無作為化比較対照非盲検クロスオーバー第3相試験から得られた有効性、薬物動態、安全性および忍容性データの中間解析を含む包括的エビデンスによって支持されました。
[EOHILIA 一般名:ブデソニド(開発コード:TAK-721)]
- 2024年2月、当社は、米国食品医薬品局(FDA)より、11歳以上の好酸球性食道炎(EoE)患者を対象に12週間の投与を適応としてEOHILIA(ブデソニド経口懸濁液)の承認を取得したことを公表しました。今回のFDAによるEOHILIAの2mg1日2回投与の承認は、EoE患者(それぞれ11~56歳および11~42歳)を対象にした2つの多施設共同無作為化二重盲検並行群間プラセボ対照12週試験(試験1および試験2)の有効性および安全性データに基づくものです。
[開発コード:TAK-279 一般名:zasocitinib]
- 2023年11月、当社は、活動性の乾癬性関節炎患者を対象としてzasocitinibを評価する無作為化二重盲検プラセボ対照臨床第2b相試験の良好な結果を、米国リウマチ学会(ACR)Convergence 2023のLate-Breaking Sessionにおいて発表しました。本試験では、1日1回投与した患者群において12週時点で米国リウマチ学会が定めた基準による20%以上の改善(ACR20)を示した患者の割合がzasocitinib群では53.3%(15mg)および54.2%(30mg)であり、プラセボ群の29.2%と比較して統計学的に有意に高く(p=0.002)主要評価項目を達成しました。本試験においてzasocitinibは重要な副次評価項目でも改善を示し、安全性および忍容性プロファイルは、尋常性乾癬を対象とした臨床第2b相試験と一致していました。本臨床第2b相試験の結果に基づき、乾癬性関節炎を対象としたzasocitinibの臨床第3相開発プログラムを開始する予定です。また当社は、2023年度第3四半期に尋常性乾癬を対象としたzasocitinibの臨床第3相開発プログラムを開始済みであり、クローン病、潰瘍性大腸炎などの免疫介在性炎症性疾患を対象としてzasocitinibを評価する予定です。
[開発コード:TAK-079 一般名:mezagitamab]
- 2024年6月、当社は、持続性もしくは慢性の一次性免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病:ITP)の患者を対象としたmezagitamabの安全性、忍容性および有効性を評価する臨床第2b相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(TAK-079-1004試験)の良好な結果を第32回国際血栓止血学会(International Society on Thrombosis and Haemostasis Congress:ISTH)の口頭Late-Breakthrough Sessionで発表しました。TAK-079-1004試験は、慢性もしくは持続性のITP患者を対象に、3つの用量(100 mg、300mgおよび600 mg)を週1回、8週間にわたり皮下投与した後に8週間を超えて安全性追跡調査を行い、プラセボと比較評価しました。主要評価項目は、グレード3以上の有害事象、重篤な有害事象、および投与中止に至った有害事象を含む、試験治療下で有害事象を発現した患者の割合です。副次評価項目は、血小板反応、血小板反応の完全寛解、臨床的に意義のある血小板反応、止血血小板反応です。臨床第2b相試験の結果、評価した3つの用量すべてにおいて、mezagitamabの投与により血小板反応がプラセボと比較して大幅に改善することが示されました。Mezagitamab群では、血小板数の迅速かつ持続的な増加(治療閾値50,000/μL以上)が認められ、その効果が最終投与(8週目)から16週目まで8週間持続したことから、血小板反応に対する迅速な効果および治療後の効果が示されました。本試験で新たな安全性シグナルは検出されず、ITP患者においてmezagitamabの良好な安全性および忍容性プロファイルが示され、安全性プロファイルはこれまでに実施されたmezagitamabの試験と一致していました。当社は、ITP患者を対象としたmezagitamabの国際共同臨床第3相試験を2024年度下期に開始する予定です。なお、mezagitamabは米国食品医薬品局(FDA)よりITPを対象にオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定を取得し、本プログラムはファストトラック(優先審査)の対象とされています。
ニューロサイエンス(神経精神疾患)
当社は、高いアンメット・ニーズが存在する神経疾患および神経筋疾患を対象に、革新的治療法に研究開発投資を集中させ、当社の専門知識やパートナーとの提携を生かし、パイプラインを構築しています。疾患の生物学的理解、トランスレーショナルなツール、革新的なモダリティの進展により、当社は希少神経疾患、特にオレキシン2受容体作動薬フランチャイズ(TAK-861、danavorexton(TAK-925)など)によるナルコレプシーや特発性過眠症などの睡眠・覚醒障害、およびsoticlestat(TAK-935)による希少てんかんの治療薬の開発に注力しています。当社はさらに、神経筋疾患、神経変性疾患および運動障害のうち患者セグメントを明確に定義できる疾患に特化した投資を行っています。
[開発コード:TAK-861]
- 2024年2月、当社は、ナルコレプシータイプ1(NT1)の患者を対象として開発中のTAK-861の無作為化二重盲検プラセボ対照反復投与臨床第2b相試験の良好なトップライン結果が得られたことを公表しました。当社は、ナルコレプシーにおける臨床第2b相試験として、NT1を対象とした試験とナルコレプシータイプ2(NT2)を対象とした試験の2つの試験を実施しました。本試験結果と世界各地の医薬品規制当局との協議に基づき、当社はNT1を対象とするTAK-861の国際共同臨床第3相試験を2024年度上期に速やかに開始する予定です。現時点では 、NT2を対象としたTAK-861の開発を進める予定はありません。NT1およびNT2を対象とするいずれの試験においても、TAK-861の安全性および忍容性は概ね良好でした。
- 2024年6月、米国睡眠学会および睡眠研究学会の第38回年次総会であるSLEEP2024において、NT1を対象としたTAK-861の臨床第2b相試験の良好な結果を発表しました。NT1患者112名を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照反復投与試験であるTAK-861-2001試験で、主要評価項目と副次評価項目において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が示され、有効性は8週間の投与期間にわたり持続しました。主要評価項目の覚醒維持検査(MWT)では、プラセボと比較して本試験で評価したTAK-861のすべての用量で統計学的に有意かつ臨床的に意味のある睡眠潜時の延長が認められました(プラセボとのLS平均差はすべてp≤0.001)。エプワース眠気尺度(ESS)および1週間あたりのカタプレキシー発現率(WCR)を含む主な副次評価項目でも一貫した結果が得られ、眠気およびカタプレキシー(筋緊張の突然の消失)の頻度に関する主観的評価項目がプラセボと比較して顕著に改善しました。本試験を完了した被験者の大部分は長期継続投与(LTE)試験に登録され、一部の患者は投与期間が1年に達しました。TAK-861の安全性および忍容性は概ね良好であり、治験薬と関連のある重篤な有害事象または有害事象による投与中止はありませんでした。臨床第2b相試験および現在実施中のLTEにおいて、肝毒性や視覚障害の事例は認められていません。主な有害事象は不眠症、尿意切迫、頻尿および唾液分泌過多でした。大部分の有害事象の重症度は軽度から中等度であり、そのほとんどが投与後1~2日以内に発現し、一過性でした。米国食品医薬品局(FDA)は、臨床第2b相試験のデータに基づき、TAK-861をNT1患者の日中の過度の眠気(EDS)治療薬としてブレークスルーセラピーに指定しました。
[開発コード:TAK-935 一般名:soticlestat]
- 2024年6月、当社は、soticlestatについてSKYLINE試験およびSKYWAY試験のトップラインデータを発表しました。SKYLINE(TAK-935-3001)試験は、難治性のドラベ症候群(DS)患者を対象としてsoticlestat+標準治療とプラセボ+標準治療を比較評価した臨床第3相多施設共同無作為化二重盲検試験です。Soticlestatは、プラセボと比較した、けいれん発作の発現頻度のベースラインからの減少という主要評価項目をわずかに達成しませんでした(p値=0.06)。6つの重要な副次評価項目のうち、soticlestatは16週間の投与期間にわたり、レスポンダーの割合、介護者および医師による全般印象改善尺度-改善の指標、並びに発作強度および持続時間のスケールにおいて臨床的に意義があり、名目上有意な結果を示しました(すべてp値≤0.008)。SKYWAY(TAK-935-3002)試験は、難治性のレノックス・ガストー症候群(LGS)の患者を対象としてsoticlestat+標準治療とプラセボ+標準治療を比較評価した臨床第3相多施設共同無作為化二重盲検試験です。Soticlestatはプラセボと比較して、major motor drop(MMD)発作の発現頻度のベースラインからの減少という新たな主要評価項目を達成しませんでした。SKYLINE試験およびSKYWAY試験では、事前に特定したサブグループの患者において、soticlestatは16週間の投与期間にわたり、主要評価項目および副次評価項目である介護者および医師の全般印象改善尺度-改善、並びに発作強度および持続時間スケールで臨床的に意義があり、名目上有意な治療効果が示されました。SKYLINE試験およびSKYWAY試験のいずれにおいてもsoticlestatの忍容性は概ね良好であり、これまでの臨床試験と一致する安全性プロファイルが示されました。今後の方針を決定するため、(SKYLINE試験、SKYWAY試験および臨床第2相試験のELEKTRA試験で)得られているデータ全体について規制当局と協議をする予定です。また、当社は両臨床第3相試験の結果を今後の学会で発表する予定です。
オンコロジー
オンコロジー領域では、患者さんを通じて得られるインスピレーションおよびあらゆるイノベーションを活用することで、がんの治癒を目指しています。本疾患領域では、(1)既発売品(ニンラーロ、アドセトリス、アイクルシグなど)を通じた血液がん領域におけるさらなるプレゼンスの構築、(2)既発売品(アルンブリグ、FRUZAQLA(米国において上市、中国本土、香港およびマカオを除く他の地域における開発が進行中))による固形がん領域の拡充、(3)高度に革新的な治療薬候補および基盤技術からなる最先端のパイプラインの進捗の3つの分野にフォーカスしています。
[カボメティクス 一般名:カボザンチニブ]
- 2024年1月、当社は、1種類の新規ホルモン療法による1回の前治療歴があり転移を有する去勢抵抗性前立腺がんで測定可能な軟部組織病変を有する患者を対象に、カボメティクスと抗PD-L1(Programmed Death-Ligand 1)ヒト化モノクローナル抗体アテゾリズマブの併用療法と、2剤目の新規ホルモン療法(NHT群)を比較した、Exelixis社が主導する国際共同臨床第3相CONTACT-02試験の結果が、2024年米国臨床腫瘍学会泌尿器癌シンポジウム(ASCO GU)の口頭セッションで発表されたことを公表しました。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)ITT(intent-to-treat)集団(400例)の追跡期間中央値14.3ヵ月において、ハザード比(HR)は0.65(95%信頼区間[CI]:0.50-0.84、p=0.0007)であり、PFS中央値(mPFS)は、カボメティクスとアテゾリズマブ併用群で6.3ヵ月であったのに対し、NHT群は4.2ヵ月でした。これはITT集団(507例)のPFSとほぼ同じでした(HRは0.64(95%信頼区間:0.50-0.81、p=0.0002))。もうひとつの主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、ITT集団の追跡期間中央値12.0ヵ月において、カボメティクスとアテゾリズマブ併用群の16.7ヵ月に対し、NHT群では14.6ヵ月であり(HR:0.79、95%CI:0.58-1.07、p=0.13)、改善傾向を示しました。本試験で認められたカボメティクスおよびアテゾリズマブの安全性プロファイルは、それぞれの単剤で既知の安全性プロファイルと一致しており、併用レジメンによる新たな安全性への懸念は特定されませんでした。
[アドセトリス 一般名:ブレンツキシマブ ベドチン]
- 2023年10月、当社は、欧州委員会(EC)より、未治療のⅢ期CD30陽性ホジキンリンパ腫成人患者に対するドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン(AVD)との併用療法として、悪性リンパ腫治療剤アドセトリスの承認を取得したことを公表しました。この決定は、2023年9月の欧州医薬品評価委員会(CHMP)の承認を推奨する肯定的見解に沿ったものです。本承認は、未治療のⅢ期またはⅣ期の成人ホジキンリンパ腫患者を対象に、アドセトリス+AVD療法をドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチンおよびダカルバジン併用群(ABVD)と比較した無作為化臨床第3相ECHELON-1試験の結果に基づきます。本試験では、主要評価項目である修正無増悪生存期間(PFS)および重要な副次評価項目である全生存期間(OS)が達成され、未治療のⅢ期またはⅣ期古典的ホジキンリンパ腫に対してアドセトリス+AVD併用療法を受けた成人患者のOSに統計学的に有意な改善が示されました。アドセトリスの安全性プロファイルはこれまでの臨床試験と一致しており、新たな安全性シグナルは認められませんでした。
- 2023年11月、当社は、アドセトリスについて、再発又は難治性のCD30陽性の皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)を新たな効能・効果として、厚生労働省より製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。本承認は、再発または難治性のCD30陽性のCTCL患者を対象とした、海外臨床第3相臨床ALCANZA試験ならびに国内臨床第2相医師主導SGN-35-OU試験の結果に基づきます。
- 2024年6月、当社とファイザー株式会社は、第60回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会および第29回欧州血液学会(EHA)年次総会において、German Hodgkin Study Group(GHSG)が、アドセトリスと化学療法との併用療法を評価する臨床第3相HD21試験の良好な結果についてレイトブレーキングオーラルプレゼンテーションにて発表することを公表しました。GHSGが発表する4年時点での解析では、欧州における現在の標準治療レジメンと比較して優れた無増悪生存率(PFS)と忍容性の改善が示されました。HD21試験は、臨床第3相無作為化国際共同前向き非盲検試験であり、IIb/III/IV期古典的ホジキンリンパ腫と新たに診断された患者を対象に、アドセトリスとエトポシド、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ダカルバジンおよびデキサメタゾンの併用療法(BrECADD)を、標準治療であるブレオマイシン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびprednisone(eBEACOPP)と比較して評価するデザインです。ASCOにおける発表では、GHSGが実施したHD21試験の4年PFS解析の詳細が発表されます。48ヵ月後、BrECADDはBEACOPPと比較して優れた有効性を示しました[BrECADD群PFS:94.3%、eBEACOPP群PFS:90.9%、ハザード比(HR):0.66(95% CI:88.7-93.1; p<0.035)]。3年時点の解析ですでに報告したように、BrECADDによる治療はBEACOPPと比較して治療関連罹患(TRMB)の発現率の有意な低下(n=738、42% vs 59%、p<0.001)ならびに臨床的に意味のある有害事象の減少とも関連していました。BrECADD群の患者におけるアドセトリスの安全性プロファイルは、承認された他のアドセトリス併用レジメンと一致しており、安全性に関して新たなシグナルは認められませんでした。
[ニンラーロ 一般名:イキサゾミブ]
- 2023年9月、当社は、ニンラーロカプセル 2.3mg/3mg/4mgの剤形追加として、厚生労働省に対しニンラーロカプセル0.5mgの製造販売承認申請を行ったことを公表しました。当社は多発性骨髄腫患者の維持療法における、より適切な用量調節の実現を目指し、ニンラーロの低用量製剤による新たな治療選択肢(1.5mg用量(0.5mg/カプセル×3))を提供すべく、今回の製造販売承認申請を行いました。
[EXKIVITY 一般名:mobocertinib]
- 2023年10月、当社は、プラチナ製剤ベースの化学療法を実施中あるいは実施後に病勢が進行した上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異陽性を伴う局所進行性または転移性非小細胞肺がんの成人患者の治療薬EXKIVITYについて、米国食品医薬品局(FDA)との議論の結果、米国における自主的取り下げに向けてFDAと協働していくことを公表しました。EXKIVITYが既に承認されている国においては全世界で同様に自主的取り下げを開始する予定であり、現在販売されているその他の国では規制当局と今後の対応について協議を進めています。この決定は、臨床第3相EXCLAIM-2検証試験の結果に基づいています。この試験で主要評価項目が達成されなかったため、FDAから付与された迅速承認および他の国々における条件付き承認の検証データの要件を満たしませんでした。EXCLAIM-2試験は、EGFRエクソン20挿入変異を伴う局所進行または転移性非小細胞肺がんの一次治療におけるEXKIVITY単剤療法とプラチナ製剤ベースの化学療法との安全性および有効性を検討するために計画された臨床第3相多施設共同非盲検試験です。EXCLAIM-2試験において新たな安全性シグナルは認められませんでした。試験の全データは、今後の医学学会もしくは査読付き学術誌にて発表する予定です。
[FRUZAQLA 一般名:フルキンチニブ]
- 2023年6月、当社とHUTCHMED社は、治療歴を有する転移性大腸がん(mCRC)患者を対象にフルキンチニブを評価する臨床第3相試験FRESCO-2試験結果がThe Lancetに掲載されたことを公表しました。FRESCO-2試験は、治療歴を有するmCRC患者を対象に、フルキンチニブ+最良支持療法(BSC)群とプラセボ+BSC群を比較検討する、米国、欧州、日本およびオーストラリアで実施された国際共同臨床第3相試験です。FRESCO-2試験は主要評価項目および重要な副次評価項目を達成し、フルキンチニブの投与により、統計学的に有意で臨床的に意味のある全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の改善が示されました。FRESCO-2試験におけるフルキンチニブの安全性プロファイルは、これまでに報告されたフルキンチニブの試験結果と一致しています。
- 2023年9月、当社は前治療歴を有するmCRCに対する治療薬フルキンチニブについて、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったことを公表しました。今回の製造販売承認申請は、国際共同臨床第3相FRESCO-2試験および臨床第3相FRESCO試験に基づくものです。
- 2023年11月、当社は、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、およびイリノテカンを含む化学療法、抗VEGF療法、および抗EGFR療法(RAS野生型で医学的に適切な場合)の治療歴があるmCRC成人患者に対し、FRUZAQLAが米国食品医薬品局(FDA)によって承認されたことを公表しました。FRUZAQLAは、バイオマーカーのステータスにかかわらず、治療歴を有するmCRC患者の治療薬として、米国で承認された初めてかつ唯一の3種類のVEGFRキナーゼすべてに対して選択性を有する阻害薬です。FRUZAQLAの承認は、中国で実施されたFRESCO試験およびグローバル試験であるFRESCO-2試験の2つの大規模臨床第3相試験のデータに基づきます。
- 2024年6月、当社は、フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤、オキサリプラチン、およびイリノテカンを含む化学療法、抗VEGF療法ならびに抗EGFR療法による治療歴があり、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合剤又はレゴラフェニブのいずれかによる治療中に進行した、もしくはこれらに不耐のmCRC成人患者に対する単剤療法として、FRUZAQLAが欧州委員会によって承認されたことを公表しました。今回の承認は、国際共同第3相試験であるFRESCO-2試験の結果に基づいています。
[アイクルシグ 一般名:ポナチニブ]
- 2024年3月、当社は、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ ALL)と新たに診断された成人患者の化学療法併用下での治療薬としてのアイクルシグについて、米国食品医薬品局(FDA)より、医薬品承認事項変更申請(sNDA)の承認を取得したことを公表しました。本適応症は、グローバル臨床第3相PhALLCON試験から得られた導入療法終了時の微小残存病変(MRD)陰性完全寛解(CR)率の達成に基づく迅速承認において承認されました。アイクルシグはイマチニブと比較して優越性を示し、本試験におけるアイクルシグの安全性プロファイルはイマチニブと同等であり新たな安全性シグナルは確認されませんでした。本適応症の承認継続には、検証試験における臨床的有用性の確認と説明が条件となる場合があります。本迅速承認申請は優先審査指定を受け、リアルタイムオンコロジーレビュー(RTOR)プログラム(完全な申請書を提出する前に申請の構成要素の審査を可能にすることでがん治療薬の提供を迅速化することを目的とするFDAイニシアチブ)下で評価されました。
[ベクティビックス 一般名:パニツムマブ]
- 2024年2月、当社は、ベクティビックスの切除不能進行再発大腸がんの初回薬物療法に関する国内臨床第3相試験であるPARADIGM試験に参加した患者から、治療開始前に採取した血液を用いて血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を解析し、治療効果との関連を検討したバイオマーカー研究に関する論文が、生物医学ジャーナルNature Medicineに掲載されたことを公表しました。本研究の結果、抗EGFR抗体薬の治療耐性との関連が報告されている10個の遺伝子異常(KRAS、NRAS、BRAF(V600E)、PTENおよびEGFR細胞外ドメインの変異、HER2及びMET増幅並びにALK、RET及びNTRK1融合)を認めない集団において、mFOLFOX6+ベバシズマブ併用療法群と比較し、mFOLFOX6+ベクティビックス併用療法群で原発巣の占拠部位に関わらず全生存期間の延長を認めました(ベクティビックス併用療法群:40.7か月、ベバシズマブ併用療法群:34.4か月、HR:0.76(95% CI: 0.62-0.92))。なお、本研究におけるベクティビックス投与時の安全性プロファイルはこれまで公表された臨床試験結果と同様の内容でした。本研究の結果、原発巣占拠部位による治療選択と比較し、患者の血液を用いた血中循環腫瘍DNAの解析はベクティビックスによる治療がより有用となりうる患者の特定に繋がる可能性を示唆しました。
その他の希少疾患品目
当社の研究開発は、3つの重点疾患領域(消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、オンコロジー)にわたり、希少疾患および有病率がより高い疾患のいずれにおいても、未だ有効な治療法が確立されていない高い医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)が存在する疾患に注力しています。その他の希少疾患品目においては、高いアンメット・メディカル・ニーズが存在する複数の疾患に焦点をあて取り組んでいます。遺伝性血管性浮腫においては、タクザイロをはじめとするライフサイクルマネジメントプログラムへの継続的な研究開発投資を通じて、既存の治療パラダイムの変革を目指します。希少血液疾患においては、アドベイト、アディノベイト/ADYNOVIを通じて、出血性疾患治療における現在のニーズへ対応することに注力しています。また、LIVTENCITYにおいては、移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症の治療を再定義することを目指しています。当社は、希少疾患の患者さんに対し革新的な医薬品を届けるという当社のビジョンを実現するための取り組みに注力します。当社は、希少疾患において当社が有する専門能力の活用が可能であり、希少疾患に対する当社のコミットメントおよびリーダーシップを高める可能性のある、後期開発段階の事業開発機会の探索を今後も継続する予定です。
[アディノベイト/ADYNOVI 一般名:ルリオクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)]
- 2023年6月、当社は、アディノベイトについて、用法および用量に関する製造販売承認事項一部変更承認を日本において取得したことを公表しました。本承認により、患者の臨床状態や活動レベルに応じ、投与量だけではなく投与間隔を含む用法および用量を調整することで、最適な定期投与による個別化治療への貢献が可能となります。今回の承認は、主に国際共同臨床第3相試験であるCONTINUATION試験および海外臨床第3相試験 PROPEL試験の成績に基づくものです。
[オビザー 一般名:スソクトコグ アルファ(遺伝子組換え)]
- 2024年3月、当社は、グリコシル化されたBドメイン欠損遺伝子組換えブタ血液凝固第VIII因子オビザー静注用500について、後天性血友病A(AHA)患者における出血抑制を効能または効果として、厚生労働省から製造販売承認を取得したことを公表しました。本承認は、主に18歳以上の日本人AHA患者5例を対象とした国内臨床第2/3相試験および18歳以上の非日本人AHA患者を対象とした海外臨床第2/3相試験に基づくものです。
[LIVTENCITY 一般名:maribavir]
- 2023年12月、当社は、LIVTENCITYについて、造血幹細胞移植(HSCT)または固形臓器移植(SOT)後の、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、シドフォビルまたはホスカルネットによる治療に対して難治性(遺伝子耐性有無にかかわらず)のサイトメガロウイルス(CMV)感染・感染症の成人患者を対象として中国国家食品薬品監督管理局(NMPA)より承認を取得したことを公表しました。NMPAによる本承認は、臨床第3相SOLSTICE試験の結果に基づきます。LIVTENCITYは2021年に中国医薬品審査評価センター(CDE)によりブレークスルー・セラピー指定を付与されていました。LIVTENCITYは中国において本適応症を有する初めてかつ唯一のCMV特異的UL97プロテインキナーゼ阻害薬です。
- 2024年6月、当社は、リブテンシティ錠200mgについて、臓器移植(造血幹細胞移植も含む)における既存の抗CMV療法に難治性のCMV感染症を効能または効果として、厚生労働省から製造販売承認を取得したことを公表しました。本承認は、主にHSCTまたはSOT後で既存の抗CMV治療に難治性のCMV感染・感染症を有する患者を対象とした海外第3相非盲検試験(SOLSTICE 試験)および日本人のHSCTまたはSOT後でCMV 感染・感染症を有する患者を対象とした国内第3相非盲検試験に基づくものです。
血漿分画製剤
当社は、血漿分画製剤(PDT)に特化したPDTビジネスユニットを設立し、血漿の収集から製造、研究開発および商用化まで、エンド・ツー・エンドのビジネスの運営に注力しています。本領域では、様々な希少かつ複雑な慢性疾患に対する患者さんにとって生命の維持に必要不可欠な治療薬の開発を目指しています。本領域に特化した研究開発部門は、既発売の治療薬の価値最大化、新たな治療ターゲットの特定および血漿収集から製造に至るまで血漿分画製剤のバリューチェーン全体にわたる効率性の最適化という役割を担っています。短期的には、当社の幅広い免疫グロブリン製剤ポートフォリオ(HYQVIA、キュービトル、GAMMAGARD LIQUIDおよびGAMMAGARD S/D)における効能追加、地理的拡大および総合的な医療テクノロジーの活用を通じたより良い患者体験を追求しています。血液製剤およびスペシャリティケアのポートフォリオにおいては、PROTHROMPLEX(4F-PCC)、ファイバおよびセプーロチンにおける効能追加や剤型追加の開発機会の追求を優先しています。また、当社は、グローバルに販売している20種類以上にわたる治療薬ポートフォリオに加え、20% fSCIg(TAK-881)およびliquid low IgA IG(TAK-880)といった次世代の免疫グロブリン製剤の開発、およびその他の早期段階の治療薬候補(高シアル化免疫グロブリン(hsIgG)を含む)の開発を行っています。
[HYQVIA 一般名:遺伝子組換えヒトヒアルロニダーゼ含有皮下注(ヒト)免疫グロブリン10%(開発コード:TAK-771)]
- 2023年4月、当社は、HYQVIAについて、米国食品医薬品局(FDA)より、原発性免疫不全(PI)治療薬として対象年齢を2歳から16歳までの小児患者へ拡大する生物製剤承認一部変更申請(sBLA)の承認を取得したことを公表しました。FDAによる小児PI患者の治療薬としてのHYQVIAの承認は、2歳から16歳までの44例の小児PI患者を対象に実施したピボタル前向き非盲検非対照臨床第3相試験のエビデンスに基づきます。HYQVIAは、主要評価項目である急性の重篤な細菌感染症(aSBIs)の発現率につき、12ヵ月の治療期間において有効性が確認されました。年間の平均aSBI発現率は0.04であり、事前に設定された達成規準である被験者1例あたりの年間aSBI発現率1未満に対し統計学的に有意に低率(片側上限99%信頼区間 0.21、p<0.001)であったことから、小児PI患者に対するHYQVIAの有効性が確認されました。すべての患者が12ヵ月間(1年間の観察期間)の試験参加期間を完了した時点で行われた中間解析の結果では、成人と同様な安全性プロファイルが確認されました。
- 2023年6月、当社は、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)の成人患者を対象とした維持療法としてのHYQVIAを評価するピボタル臨床第3相ADVANCE-CIDP1試験の結果を発表しました。ADVANCE-CIDP1試験は、前向き無作為化プラセボ対照二重盲検多施設共同臨床第3相試験であり、静注用免疫グロブリン(IVIG)による治療で病勢が安定している成人CIDP患者を1:1の割合でHYQVIA群(n=62)、プラセボ群(n=70)へ無作為に割り付け、再発または試験治療の中止に至らない限り6ヵ月間の治療を行いました。主要評価項目は、CIDPの症状の増悪をInflammatory Neuropathy Cause and Treatment(INCAT)スコアで評価する再発率です。副次評価項目には、機能的悪化、再発までの期間、Rasch-built Overall Disability Scale(R-ODS)スコアの皮下注製剤開始前のベースライン時からの変化および安全性が含まれます。本試験の結果において、HYQVIAはプラセボと比較して臨床的に意義のある再発率の低下を示し(9.7% vs. 31.4%、p=0.0045)、その他の解析ではHYQVIAはプラセボと比較して再発までの期間の延長を示しました。また、その他の評価項目でも良好なデータが得られ、良好な忍容性が確認されました。これらの結果は、2023年6月にデンマークで開催された2023年末梢神経学会(PNS)年次総会で発表され、同時にthe Journal of the Peripheral Nervous System (JPNS)に掲載されました。
- 2024年1月、当社は、CIDPの成人患者における神経筋障害および機能障害の再発予防の維持療法としてHYQVIAがFDAにより承認されたことを公表しました。本承認は、ADVANCE-CIDP1試験および単群非盲検継続試験であるADVANCE-CIDP3試験の結果に基づきます。HYQVIAはFDAが承認した唯一の免疫グロブリン(IG)とヒアルロニダーゼの組合せ製剤であり、皮下注用免疫グロブリン製剤(SCIG)です。ヒアルロニダーゼ成分により皮膚と筋肉の間の皮下組織における大量のIGの拡散と吸収が促進されるため、CIDPの成人患者ではHYQVIAを最長で1か月に1回(2、3または4週ごと)の間隔で投与できます。またHYQVIAは皮下投与のため、医療従事者が医療機関または患者の自宅で投与することが可能であり、適切なトレーニングを受けた後、患者や介護者が自己注射することも可能です。
- 2024年1月、当社は、あらゆる年齢のCIDP患者を対象に、IVIGによる治療で安定した後の維持療法としてHYQVIAが欧州委員会(EC)により承認されたことを公表しました。本承認は、CIDP患者の再発予防のための維持療法としてHYQVIAの有効性と安全性を評価したピボタル臨床第3相ADVANCE-CIDP1試験のデータに基づいています。
- 2024年2月、当社は、TAK-771について、無又は低ガンマグロブリン血症を予定する効能または効果として、厚生労働省に対し製造販売承認申請を行ったことを公表しました。無又は低ガンマグロブリン血症は、原発性免疫不全症(PID)または続発性免疫不全症(SID)による抗体が無いまたは低い状態で、重篤な感染症の再発リスクが増加することを特徴とする疾患です。本申請は、主に有効性、安全性、忍容性および薬物動態を評価するために実施された、原発性免疫不全症(PID)の日本人患者を対象とした臨床第3相TAK-771-3004試験ならびにPID患者を対象とした3つの海外臨床第2/3相試験(160603試験、160902試験および161503試験)に基づきます。
- 2024年6月、当社は、CIDP患者におけるHYQVIAの安全性および有効性を評価する長期継続試験である臨床第3相ADVANCE-CIDP3試験のデータを発表しました。本結果はHYQVIAの良好な長期安全性および忍容性と低い再発率を示しており、CIDPに対する維持療法としての使用を支持しています。これらの結果は、末梢神経学会(PNS)年次総会のポスターセッションで発表される予定です。ADVANCE-CIDP3試験はCIDPを対象とした臨床試験として、これまでで最長の延長試験です。本試験はADVANCE-CIDP1試験から85名の患者を登録し、主要評価項目は安全性、忍容性および免疫原性でした。HYQVIAの投与期間中央値は33カ月(0カ月から77カ月)で、全追跡期間の累積は220人年でした。HYQVIAの安全性および忍容性プロファイルは既知のプロファイルと一致しており、新たな安全性に関する懸念は認められませんでした。
[キュービトル 一般名:皮下注(ヒト)免疫グロブリン20%]
- 2023年9月、当社は、キュービトルについて、2歳以上の患者を対象に、無又は低ガンマグロブリン血症を効能または効果として、厚生労働省から製造販売承認を取得したことを公表しました。無又は低ガンマグロブリン血症は、原発性免疫不全症(PID)または続発性免疫不全症(SID)による抗体が無いあるいは低い状態で、重篤な感染症の再発リスクが増加することを特徴とする疾患です。皮下投与の免疫グロブリン製剤の日本における承認取得は、当社として初めてです。本申請は、有効性、安全性、忍容性および薬物動態を評価するための、日本人のPID患者を対象とした臨床第3相試験、ならびに北米と欧州のPID患者を対象とした臨床第2/3相試験に基づくものです。日本の患者17例を対象とした試験において、有効性および安全性が確認されました。キュービトル投与期間中に、重篤または重度の有害事象は報告されておらず、良好な忍容性を示しました。主な有害事象は、頭痛および注射部位腫脹各4例(23.5%)、注射部位紅斑3例(17.6%)でした。これまでに報告されている臨床試験においても本剤の有効性および安全性が確認されています。
[GAMMAGARD LIQUID 一般名:(ヒト)免疫グロブリン10%]
- 2024年1月、当社は慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)の成人患者における神経筋障害および機能障害改善のための静注用人免疫グロブリン製剤(IVIG)治療薬として、GAMMAGARD LIQUIDが、米国食品医薬品局(FDA)により承認されたことを公表しました。本剤は、導入時用量とそれに続く維持時用量が含まれる導入療法としての使用が可能です。GAMMAGARD LIQUIDは、CIDPの治療において免疫グロブリン製剤未投与の患者に対して、または6か月を超える期間の維持療法としては検討されていません。本承認は、HYQVIAのADVANCE-CIDP1試験において再発した成人のCIDP患者を対象にGAMMAGARD LIQUIDの有効性および安全性を評価した無作為化プラセボ対照二重盲検ADVANCE-CIDP2試験の結果に基づいています。
[セプーロチン 一般名:乾燥濃縮ヒトプロテインC(開発コード:TAK-662)]
- 2024年3月、当社は、セプーロチン静注用1000単位について、先天性プロテインC欠乏症に起因する静脈血栓塞栓症、電撃性紫斑病の治療および血栓形成傾向の抑制を効能または効果として厚生労働省から製造販売承認を取得したことを公表しました。本承認は、主に日本人の4~27歳の先天性プロテインC欠乏症患者5例を対象とした国内臨床第1/2相試験および非日本人の先天性プロテインC欠乏症患者を対象とした2つの海外臨床第2/3相試験(IMAG-098試験、400101試験)に基づくものです。
ワクチン
ワクチンでは、イノベーションを活用し、デング熱(QDENGA(開発コード:TAK-003))、新型コロナウイルス感染(COVID-19)(ヌバキソビッド筋注)など、世界で最も困難な感染症に取り組んでいます。当社パイプラインの拡充およびプログラムの開発に対する支援を得るために、政府機関(日本、米国)や主要な世界的機関とのパートナーシップを締結しています。これらのパートナーシップは、当社のプログラムを実行し、それらのポテンシャルを最大限に引き出すための重要な能力を構築するために必要不可欠です。
[QDENGA 一般名:4価弱毒生デング熱ワクチン(開発コード:TAK-003)]
- 2023年7月、当社はTAK-003について、現行の生物学的製剤承認申請(BLA)の審査サイクル内では解決が困難なデータ収集に関する米国食品医薬品局(FDA)との議論の結果、米国におけるTAK-003のBLAを自主的に取り下げたことを公表しました。TAK-003の米国における今後の計画は、旅行者およびプエルトリコなどの米国のデング熱流行地域に居住する人々のニ
- 検索
- 業種別業績ランキング