企業兼大株主東洋紡東証プライム:3101】「繊維製品 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

(1)当社グループの企業理念

 当社グループは、創立者である渋沢栄一が座右の銘の一つとしていた『順理則裕』を企業理念としています。『順理則裕』とは、「なすべきことをする、なすべからざることはしない。順理を貫くことで、世の中をゆたかにし、自らも成長する。」という会社の創業精神です。いわゆるCSV(Creating Shared Value:社会課題の解決に貢献するとともに、経済的価値の向上を図り、企業価値を高める)の考え方を、当社グループは創業当時から140年以上にわたり受け継いできました。

2019年、当社グループは、あらためて渋沢栄一の創業精神に立ち戻り、時代の変化に対応しながら、社会への貢献を通じて成長軌道を描き続ける会社となるために、企業理念体系「TOYOBO PVVs」として再整理しました。

■企業理念体系「TOYOBO PVVs」

(2)サステナブル・ビジョン2030(2022年5月発表)

 当社グループは、企業理念体系「TOYOBO PVVs」に基づいて、長期ビジョン「サステナブル・ビジョン2030」を策定しています。今後の事業環境の変化や社会トレンドを想定し、「人」と「地球」に関する5つの社会課題とサステナビリティ目標およびアクションプランを設定しています。当社のコア技術をベースにしたイノベーションにより5つの社会課題解決へ貢献していくことで、「安心してくらせる「ゆたか」な社会の実現と企業価値向上のスパイラルアップ」という当社グループのありたい姿を実現していきます。

■サステナブル・ビジョン2030の全体像

(3)マテリアリティ

 当社グループは、ステークホルダーの要請・期待に応え、めざす姿「人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループ」を実現するため、マテリアリティ(サステナブルな会社であるための重要課題)を特定しています。ステークホルダーにとっての影響度と当社グループにとっての影響度の2軸から、優先度の高い目標を明確にし、「事業を通じて社会課題解決に貢献する」「人的資本」「環境・ものづくり」「事業基盤」の4つの領域に整理しました。

■マテリアリティマップ

(4)2025中期経営計画(2022~2025年度)(2022年5月発表)

① 基本方針

「2025中期経営計画(2022~2025年度)(以下、「2025中計」といいます。)」は、2025年を「サステナブル・ビジョン2030」で掲げる目標達成に向けた通過点として、当該期間を「つくりかえる・仕込む4年」と位置づけています。「安全・防災、品質の徹底」「事業ポートフォリオの組替え」「未来への仕込み」「土台の再構築」の4つの施策の取組みを通じて、「サステナブル・グロース」への変革を図ります。

■基本方針と4つの施策

② 2025中計前半(2022~2023年度)の振り返り

 イ)経営環境

2025中計の策定にあたり、当社グループを取り巻く経営環境を、以下のように想定いたしました。

・ステークホルダー資本主義により企業のあり方が変わる

・脱炭素、循環型経済、EV(電気自動車)化の進展

・技術進歩・実装の加速(DX(デジタル・トランスフォーメーション)、ライフサイエンスなど)

・国内市場漸減、資源価格の高止まり、調達リスクの高まり

・人々の意識・価値観・行動の変容

 しかしながら、ロシア・ウクライナ戦争の長期化や中東情勢緊迫化による地政学リスクの高まり、原燃料価格の高止まり、円安の進行、中国経済の減速など、経営環境は、当初の想定を大きく上回るスピードと大きさで変化しています。

 ロ)2025中計前半の業績

 このような変化の激しい経営環境の中で、当社グループの事業においては、原燃料価格高騰による交易条件の悪化、サプライチェーンにおける在庫調整の長期化による数量減に加えて、事業拡大や基盤整備のための固定費の増加もあり、当社グループの稼ぐ力が大きく低下しました。一方で、成長事業への大型投資の先行もあり、有利子負債が増加しました。

■稼ぐ力の低下

 ハ)4つの施策の進捗

i)施策1:安全・防災、品質の徹底

 安全・防災については、「ゼロ災」をめざして、階層別安全ワークショップ、安全意識調査結果の活用などによる安全文化の醸成、および現場総点検、防災総点検、老朽設備更新を含む安全・防災投資、安全・防災研修の充実などによる安全基盤の整備を内容とする「安全防災ロードマップ」に沿った取組みを継続しています。2023年度は、労災件数は前年度比で改善には至りませんでしたが、前年度に引き続き重大インシデント・ゼロを達成しました。また、労働環境のリスク低減のため、労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)の適合証明取得を進めています。2024年3月末時点で、敦賀事業所、岩国事業所、宇都宮工場の3拠点で取得し、引き続き、他の事業所・工場での取得を進めていく予定です。

 品質については、「品質保証体制再構築ロードマップ」に沿って、PL/QAアセスメントの徹底、品質データのオンライン化、品質の中核人材育成(Qaceセミナー)(※)を含む製品安全・品質保証教育の充実化や品質不正に関する研修などのコンプライアンス教育の強化、品質保証マニュアルの多言語化(海外拠点への共有)などを進めています。組織風土改革と品質文化づくり、安全・安心を最優先にしたモノづくりを推進することで、ゆるぎない信頼の獲得をめざしています。

(※) Qace:Qa_assurance Qc_control Qe_ensuranceの頭文字をとったもの

ii)施策2:事業ポートフォリオの組替え

「収益性」と「成長性」の2軸で各事業を「重点拡大事業」「安定収益事業」「要改善事業」「新規育成事業」に層別し、それぞれの位置づけに応じた事業運営を行います。「収益性」は営業利益を使用資本で除した使用資本利益率(ROCE)、「成長性」は年平均売上高成長率(CAGR)を指標としています。「収益性」は資本コストをベースにハードルレート6.5%、「成長性」は業界の年平均売上高成長率を参考にハードルレート4.5%を目安として設定しています。なお、当社グループ全体の資本効率性指標はROICとしていますが、各事業の層別においてはROCEを用いています。

 フィルム事業およびライフサイエンス事業は、当社グループに優位性があり、市場の拡大が見込めるものとして「重点拡大事業」に位置づけ、中長期の成長拡大をめざして積極的な投資をしています。また、環境・機能材事業は、安定収益事業に位置づけられていましたが、今後の事業環境を踏まえ、各商材のもつ成長機会および潜在力を再評価し、第三の柱とすべく、三菱商事株式会社との合弁会社である東洋紡エムシー株式会社により、成長拡大を図ります。

「要改善事業」については、当初、衣料繊維事業、エアバッグ用基布事業、医薬品製造受託事業の3事業が位置づけられ、正常化に向けた対策を講じ、グループ全体の資産効率の向上に取り組んできました。しかしながら、事業環境変化により収益性が低下している包装用フィルム事業と不織布マテリアル事業のそれぞれの位置づけを要改善事業に変更しました。

■事業ポートフォリオ(位置づけの変化)

iii)施策3:未来への仕込み

4つのコア技術「高分子技術」「バイオ・メディカル技術」「環境技術」「分析・シミュレーション技術」を融合させ、リニューアブルポリマー100%を目標とする「新循環プラスチックソリューション」、水・空気などの環境浄化やCOの回収・利用に貢献する「環境アクティブクリーンソリューション」、人々が健康に寿命を全うできる社会をめざす「Well-Beingソリューション」の3つの領域でイノベーションを創出していきます。

 また、気候変動対応として、カーボンニュートラルに向けて策定した「GHG排出量削減ロードマップ」に沿って、Scope1,2の2050年ネットゼロ達成に向けて取り組むと同時に、バリューチェーン全体のGHG排出量の削減を進めます。加えて、浸透圧発電や風力発電に使われる材料、良質な水域・大気の維持に貢献する海水淡水化膜やVOC(揮発性有機化合物)回収装置などの拡販を通じて、事業の成長をめざします。

 さらに、DXの実現に向けて、IT環境を整備し、ビジネス・イノベーションを加速・推進するための基盤づくりを進めています。当社はこの取り組みについて、経済産業省の認定基準を満たしていることが評価され、2024年2月に「DX認定事業者」の認定を取得しました。

iv)施策4:土台の再構築

 当社グループが持続的に成長していくために必要な基盤の再構築として、「人的資本」「人権の尊重」「モノづくり現場力」「事業基盤の整備」「ガバナンス・コンプライアンス」「組織風土改革」を進めます。

「人的資本」では、「人」こそが最も重要な経営資本と位置づける「人材マネジメント方針」のもと各種施策を実行しています。具体的には、次世代経営人材の育成、ダイバーシティの推進、モノづくりを支える現場リーダーの育成、健康経営の推進などの取組みを進めていくことで、従業員の幸せと当社グループの持続的成長、そして、従業員エンゲージメントの向上につながると考えています。

「人権の尊重」については、2020年10月に制定(2024年2月更新)した「東洋紡グループ人権方針」、2024年2月に制定した「東洋紡グループダイバーシティ推進方針」にのっとり、外国人技能実習生の就業状況を把握し、特に海外グループ会社において児童労働や強制労働がないことの確認を進めています。また、役員・従業員向けに「ビジネスと人権」に関する研修機会を提供し啓発に努めています。

「モノづくり現場力」においては、技術者教育体系の整備や階層別教育の強化を行い、デジタル技術の活用(スマートファクトリーなど)、全社の知恵を結集するための現場交流や3Sの取組みなどにより、生産革新活動の全社展開を進めていきます。

「事業基盤の整備」においては、全社・事業所拠点構想の検討、老朽化したインフラのリニューアル投資やレガシーシステムの更新などに取り組んでいきます。

「ガバナンス・コンプライアンス」においては、グループガバナンスの強化として、リスクマネジメント体制の整備を行っています。具体的には、グループ管理総括部は、リスク内在部門(事業)、リスク主管部門(スタッフ)と連携しながら、リスクアセスメント(重大リスクの抽出、モニタリング)、リスク最小化のための資源配置を行い、グループ会社へも展開しています。コンプライアンスについては、研修や勉強会を充実させ徹底を図るとともに、内部通報窓口のアクセシビリティ向上により違反の早期発見と是正に努めています。また、内部監査部は、監査計画および報告を取締役会に行い、内部監査機能の実効性を確保しています。

「組織風土改革」においては、カエル推進部による企業理念体系「TOYOBO PVVs」の浸透活動を軸に、組織の垣根を越えて、気づきを改善・改革につなげる働きかけや「カエ続ける」ことを文化として定着させるための取組みを行っています。また、「まじめな雑談」による対話の促進を通じて心理的安全性の向上に努めています。

③ 2025中計後半の課題(2025年度以降を見据えたアクション)

2025中計の後半2年間において、企業価値の向上のためのアクションとして、「稼ぐ力を取り戻す」「使用資本の圧縮(投資の絞り込み他)」「次の成長ステージへ(新の創出)」に取り組みます。

 イ)稼ぐ力を取り戻す

i)価値に見合ったプライシングの徹底

 製品価格の設定については、コストベースから価値ベースでの実施を徹底していきます。加えて、経営によるプライシングの実行フォローも進めていきます。

ii)要改善事業対策

 事業ポートフォリオの組替えにおいて、要改善事業には、当初の衣料繊維事業、医薬品製造受託事業、エアバッグ用基布事業に、包装用フィルム事業、不織布マテリアル事業が加わりました。全ての事業において、2025年度までに、事業の正常化・黒字化をめざします。

a.包装用フィルム事業は、製品価格改定の徹底や生産体制の見直しに加え、当社に強みがある環境配慮製品へのシフト加速や、海外展開の強化を進めます。

b.不織布マテリアル事業は、国内生産体制の見直しと外部生産委託の拡大、開発品の強化を進めます。

c.衣料繊維事業は、東洋紡せんい株式会社(2022年4月発足)によるグループ会社の統合・再編、富山事業所の3拠点の集約が、2024年3月に完了しました。さらに、不採算商材からの撤退などの事業構造改革に加え、製品価格の改定を進め、2023年度黒字化を達成しました。引き続き、資産効率改善の追求を進めていきます。

d.医薬品製造受託事業は、2023年7月にFDAからのWarning Letterが解除されたことを受け、事業の正常化に向けた取組みを進めます。

e.エアバッグ用基布事業は、2023年度よりタイのエアバッグ用原糸の新工場の商業生産が始まるなど事業正常化に向けた取組みを進めています。

iii)経費の絞り込み、コストダウン

 全社プロジェクトによって、当社グループ全体の業務改革を推進していきます。事業所・工場の競争力強化(共通部門費見直し、事業再配置)、間接材費のコストダウン、業務効率・生産性向上(業務品質を上げつつコストを下げる)を実行していきます。

iv)成長投資の確実な回収

 フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材など成長分野に、積極的に設備投資を実施してきました。これら投資案件を計画通りに立ち上げ、確実に収益拡大につなげ、投資回収できるよう進めていきます。主な成長投資は以下のとおりです。

■主な成長投資

 ロ)使用資本の圧縮

2025年度以降の持続的な成長を見据えて、使用資本の適正化のために、「投資の絞り込み」「ポートフォリオ改革(要改善事業の正常化、ハードルレートROCE6.5%に基づく層別と対策実行)」「非事業用資産の売却」の対策を講じていきます。

 このうち、「投資の絞り込み」において、2025中計策定時は、2022~2025年度の4年間累計2,400億円の設備投資を計画していましたが、今般、投資案件を見直すことで、総額600億円を圧縮し、4年間累計1,800億円とします。成長投資は、事業ポートフォリオの位置づけが変わった包装用フィルム事業関連の投資案件を中心に見送ることにより1,150億円から780億円に、つくりかえる投資は、優先順位の精査により920億円から840億円に、安全・防災・環境投資は、安全・防災、品質に関する投資は優先順位を下げることなく着実に実行しながら330億円から180億円に絞り込み、資本効率を重視した経営を進めていきます。

■設備投資の見直し

 ハ)次の成長ステージへ(新の創出)

i)成長戦略

a.フィルム

「人」中心のデジタル社会実現へ貢献する製品として、液晶偏光子保護フィルム、セラミックコンデンサ用離型フィルムを中心に拡販していきます。

・液晶偏光子保護フィルムは、液晶テレビに使われています。当社独自の技術を駆使した超複屈折ポリエステルフィルムです。現在約60%の面積シェア(当社推定)をさらに高めていく予定です。今後、フィルムの薄肉化に加え、既存生産ライン改造により更なる増産体制を確立していきます。

・セラミックコンデンサ用離型フィルムは、セラミックコンデンサの製造工程に使われています。平滑性に優れることが当社の強みです。市場の成長に応じて、2024年度には、ハイエンドのセラミックコンデンサ用離型フィルムを、原反からコーティングまで1工程で製造する、当社独自の設備を新設・稼働予定です。

 更に、新規高機能フィルムの開発として、PENフィルムの風力発電(絶縁)用途や燃料電池セル用シール材用途への展開などを推進していきます。

b.ライフサイエンス

 バイオ事業は、高機能たんぱく質を作る技術を強みに、生化学診断薬用原料酵素、遺伝子検査用原料酵素、研究用試薬、診断薬、診断システムまで幅広く展開しています。拡大計画は以下の通りです。

・生化学診断薬用原料酵素は、現在、海外売上高比率が約70%とグローバルに展開しています。2024年度の新設備稼働(生産能力約1.5倍)により、更なる海外展開の拡大を進めます。

・遺伝子検査用原料酵素は、2024年度の新設備稼働(生産能力約3倍)により、感染症ソリューションビジネスの拡大をめざします。

 メディカル事業は、製膜技術に強みがあり、その強みを生かして、慢性血液浄化膜に加えて、急性血液浄化膜の市場などに拡大していきます。拡大計画は以下の通りです。

・人工腎臓用中空糸膜は、海外展開を見据えた、中空糸膜製造からダイアライザへの加工・製品化までの一貫生産工場(ニプロ株式会社と共同)が2024年度から稼働します。

・急性血液浄化膜やプロセス膜への用途拡大として、CART膜(腹水濾過濃縮)、ウイルス除去膜、培地濾過膜の展開を進めていきます。

・バイオマテリアルの拡大として、合成系コーティング材料(抗血栓)などの展開を進めていきます。

c.環境・機能材

 当社は、三菱商事株式会社と機能素材の企画、開発、製造および販売を行う合弁会社として東洋紡エムシー株式会社を当社51%、三菱商事㈱49%の出資比率で設立し、2023年4月に事業を開始しました。東洋紡エムシー㈱は、当社の技術力と、三菱商事㈱の総合力を融合し、グローバル市場でさらなる成長をめざします。特に、自動車の軽量化に資するエンジニアリングプラスチック、5G・6G通信の普及に貢献する接着剤・塗料原料などの「モビリティ・電子材料」分野、海水淡水化膜、VOC回収装置、浮体式洋上風力発電の係留ロープに使用可能な超高強力繊維などの「環境ソリューション」分野での成長をめざします。拡大計画は以下の通りです。

・「モビリティ・電子材料」分野においては、エンジニアリングプラスチックは、EV化対応、および三菱商事㈱の海外ネットワークを活用した外資系OEM(完成車メーカー)への展開、低圧成形用ポリエステル樹脂は、プリント基板、および電子部品保護用途での拡大、ポリオレフィン用接着付与材は、低誘電率性能を強みに、5G・6Gでの高速・大容量通信用途への拡大を進めます。加えて、溶剤フリー、常温流通可能な高耐熱接着素材”Vitrimer”(※)の実用化として、電子材料接着シートとしての展開をめざします。

(※)“Vitrimer”はFONDS ESPCI PARISの登録商標です。

・「環境ソリューション」分野においては、EV化に伴うリチウムイオンバッテリーセパレータ工場向けのVOC回収装置・エレメントの拡大、アクア膜は、海水淡水化用RO(逆浸透)膜に加え、省電力海水淡水化や浸透圧発電に使用されるFO(正浸透)膜、排水処理、製塩、有価物回収などに使用されるBC(ブラインコンセントレーション)膜の拡大、超高強力ポリエチレン繊維は、洋上風力発電(浮体式)用係留策への展開を進めます。

 また、東洋紡エムシー㈱は、2024年4月、OEMへ直接アプローチして共同開発を進める新組織「モビリティ事業推進ユニット」を立ち上げました。モビリティ業界では、急速な技術革新が起こり、異業種の新興メーカーも台頭するなど、その事業環境は劇的に変化しています。新組織ではOEMの先行開発段階からそのニーズをつかみ、一体となって開発に取り組むことで、より付加価値の高い製品をグローバル市場へ投入していきます。

ii)イノベーションの創出

2025中計の施策の1つ「未来への仕込み」において、4つのコア技術「高分子技術」「バイオ・メディカル技術」「環境技術」「分析・シミュレーション技術」を融合させ、リニューアブルポリマー100%を目標とする「新循環プラスチックソリューション」、水・空気などの環境浄化やCOの回収・利用に貢献する「環境アクティブクリーンソリューション」、人々が健康に寿命を全うできる社会をめざす「Well-Beingソリューション」の3つの領域におけるイノベーション創出に挑戦しています。

 イノベーションの創出を加速させるために、コーポレート研究と事業部開発の連携、R&Dのオープンイノベーション(例:米国バイオベンチャーへの出資、国立大学法人神戸大学との包括連携協定)、マーケティングイノベーション(例:東洋紡エムシー㈱モビリティ事業推進ユニット)を推進し、新の創出をめざします。また、年間研究開発投資額(知的財産関係費用を含む)は、売上高比率3.6~3.8%を目安としています。

3つの領域における主な「新の創出」テーマは以下のとおりです。

■3領域での新の創出

④ 財務目標

2025中計において、「売上高」「営業利益」「営業利益率」「EBITDA」「当期純利益」「自己資本利益率(ROE)」「投下資本利益率(ROIC)」「D/Eレシオ」「Net Debt/EBITDA倍率」を重要財務指標としています。持続的な成長に向けて、積極的な投資マインドを社内に形成するため、営業利益に減価償却費を加えた「EBITDA」を指標に加えるとともに、資本効率を重視した経営を推進する目的で、投下資本利益率(ROIC)を指標に加え、成長性と効率性の両側面から経営資源の最適な配分に努めます。

 また、社債の発行体格付の維持向上等を通じて資金調達の安定性を確保する観点から、有利子負債と自己資本の比率(D/Eレシオ)を重視しています。2018~2021年度の中期経営計画では、D/Eレシオ1.0倍未満を目標とし、その目標を達成しました。2025中計では、将来の成長に向けた先行投資を、時機を逸することなく実施していくため、D/Eレシオの目標を1.2倍未満とし、キャッシュ・フローの創出力と有利子負債とのバランスを失することなくコントロールするため、Net Debt/EBITDA倍率の指標を加え、4倍台を目安にコントロールし、財務状態を安定的に管理していく方針です。

 しかしながら、経営環境が当初想定から大きく変化し、営業キャッシュ・フローの減少に加え、フィルムやライフサイエンスなどの成長事業への大型投資による投資キャッシュ・フローの増加や、事業ポートフォリオ組替えの遅れによる使用資本の増加によって有利子負債が増加し、2024年3月末において、D/Eレシオは1.26倍、Net Debt/EBITDA倍率は7.5倍となり、財務状態が悪化しました。これらを踏まえ、2025年度の財務指標見通しを以下の通りとし、あわせて、上記「使用資本の圧縮(投資の絞り込み他)」の通り、総額600億円の設備投資額圧縮を踏まえ、キャッシュフロー・アロケーションを見直しました。

2025中計後半のアクション(「稼ぐ力を取り戻す」「使用資本の圧縮(投資の絞り込み等)」「次の成長ステージへ(新の創出)」)を確実に実行し、企業価値の向上に努めます。

■財務指標(2025年度見通し)

■キャッシュフロー・アロケーション(2022年度~2025年度)

⑤ 資本コストと株価を意識した経営

 当社グループでは、資本コストを意識した経営を推進しており、2025中計の重要財務指標にROE、ROIC等を採用しています。現状、PBRが1.0倍を下回る状態にあることを重く受け止め、ROE、ROICをいかに高めるかが重要課題と認識しています。2025中計の施策の1つである「事業ポートフォリオの組替え」を推進することにより、グループ全体の資産効率、収益性の改善を通じてROEを向上させるとともに、「未来への仕込み」において、成長の具体策と成果を示し成長期待を高めていくことに加えて、「安全・防災、品質の徹底」や「土台の再構築」によりリスクの低減を進めていくことで、PBRの向上を図ってまいります。

■資本コストと株価を意識した経営|各施策によるROE、PBRの改善

⑥ 2024年度経営方針

2025中計後半の課題を受け、2024年度の経営方針を「未来をつくるために稼ぐ力を取り戻す」とし、以下の5つのアクションを進めてまいります。

・安全・防災、品質、コンプライアンスの徹底(大前提)

・価値に見合ったプライシングの徹底

・要改善事業(低収益・赤字セグメント)対策

・成長投資の確実な回収と新の創出

・投資、経費の絞り込み、コストダウン

⑦ 株主還元方針

「第4提出会社の状況 3配当政策」に記載のとおりです。

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