東和フードサービス 【東証スタンダード:3329】「小売業」 へ投稿
企業概要
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針・経営戦略等
当社は「味覚とサービスを通して都会生活に安全で楽しい食の場を提供する」という経営理念のもと、「あったら楽しい」「手の届く贅沢」を営業コンセプトとしております。「東京圏ベストロケーション」「女性ターゲット」「ライトフード・自社生産」という戦略に基づき、すべて直営店での店舗展開をしながら営業活動を行っており、また3つの生産拠点で製造するパスタソース・ドレッシング・珈琲豆・ケーキ・焼き菓子など自社製品のインターネット販売、催事販売も行っております。
(2)経営環境及び対処すべき課題等
新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行を受け、経済と消費活動の正常化が進んだことで、インバウンドを含め人流が回復し、客数・売上高は回復しております。一方、不安定な国際情勢や円安の進行により、原材料価格の高騰をはじめ、物流費、人件費、エネルギーコストの上昇への対応も必要となっております。このような環境下におきまして、私たちの提供するサービスがさらに付加価値を作り出し、お客様が体験価値として実感できるものになるよう、以下のような課題を設定しております。
① インフレ・食材高騰への対応
我が国経済は長く続いたデフレ経済を脱却し、インフレ経済への転換点を迎えています。円安、労働力不足によるコストプッシュ型の物価上昇においては、価格転嫁の余地は少なく、安定収益の確保には、より一層のコスト管理とメニューの高付加価値化による価格の適正化が課題です。当社においては、食材高騰の対応として、「原価管理の精度向上」、「持続可能な食材調達」、「セントラルキッチンの生産性向上」を通じて、食材の品質を損なわずに食材原価率の上昇を抑制できるよう努めてまいります。
「原価管理の精度向上」においては、仕入れ食材のマスタデータと売上データを紐づけ、リアルタイムの理論原価率の確度を高めることで、レシピの見直しや、オーバーポーション、オーダーミス、在庫管理による食品ロスの見える化により、食材原価の適正化に努めます。また当社では、仕入れ購買とメニュー開発をひとつの部署で一元的に管理しています。気候変動等による食材価格の急騰においては、迅速にメニューラインアップやレシピの改訂を行い、対応してまいります。
「持続可能な食材調達」においては、より安定的に安全で高品質な食材を確保することが課題です。自社で焙煎する年間90トンの珈琲豆は、“From seed to cup”をコンセプトに、生産から抽出まで一貫した品質基準をクリアした「スペシャルティコーヒー」を使用しています。フェアトレードによる生産農家への現地買い付けを行い、栽培から収穫、生産処理まで農家との関係性を深めることによって、より安全で安心な持続性の高い高品質な珈琲豆の調達を実現します。昨年開催された日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)主催のサイフォニスト大会においては、椿屋珈琲所属の従業員が日本一の栄誉に浴し、スペシャルティコーヒーの普及に貢献いたしました。
当社では、メニューで使用する食材の約半分をセントラルキッチンで集中的に加工製造し、店舗の調理負担を軽減しています。前期末には戸塚工場に急速冷凍設備を導入し、製造過程の滞留時間を圧縮したほか、省エネルギー性能の向上により今夏は電気使用量の低減が見込まれます。
また物流においては配送委託先の休配に対応すべく、出荷時の入り数や容量の見直しによる配送個数の最適化を行うと同時に、製造管理の見直しにより、品質を維持した上で賞味期限を延長し、物流コストの上昇を抑制してまいります。またサステナビリティの取り組みとして、製造過程で排出される約1トンの廃油を航空機用再利用燃料(SAF)としてリサイクルしているほか、製造過程の食品ロスを低減するために、仕入れ先で下処理されたカット野菜を加工用食材として使用しています。仕入れ先の廃棄食材は堆肥や飼料として利用されており、サプライチェーン全体での対応を一義とした食品ロスへの取り組みを推進しております。
② 労働力不足への対応
生産年齢人口の減少により、労働集約型のサービス業は未曽有の労働力不足の対応に追われています。労働力確保の競争は激化し、募集・採用コストは増加傾向です。また戦力化のための教育研修費、時給や給与だけでなく、福利厚生や労務環境の改善も喫緊の課題です。
当社はこの労働力不足の対応として、以下の3つをテーマに課題解決の優先順位を高めています。
①労務環境の改善 ②賃上げ・福利厚生の拡充 ③やりがい・成長実感の向上
現在、年間の休日取得、時間外労働に目標を設定し、人材の確保と育成、応援体制の整備を進めています。当25期は椿屋珈琲グループでの取り組みが先行し、年間取得休日は平均123日間(公休・有給を含む)、月間の時間外労働時間は平均で約17時間となりました。この成果を会社全体の取り組みとなるよう要員計画を整え、制度設計に活かしてまいります。
インフレ経済への転換期を迎え、定期昇給等の賃上げは人材確保の前提条件ととらえています。福利厚生制度においても見直しを行い、従業員とその家族に対する家族手当や奨学金返済の支援制度などを中心に拡充を行いました。
またスキルアップを通じたキャリアパスを明確化し、「やりがい・成長実感」の醸成を図るため、入社した全従業員を対象とする研修制度を整備し、専任のトレーナーによるオペレーションと接客技術の向上を図る研修を実施しています。研修センターでは、キッチン、レジ、オーダーシステムなど店舗同等の設備を配備し、接客および業務スキルの基準の統一を図りながら、スキルアップによる「やりがい・成長実感」の醸成につなげてまいります。
③ マーケット競争の激化への対応
競争が激化する外食企業が直面する課題のひとつは、競合他社との差別化とブランド価値の向上です。またポストコロナにおける「職住近接」や「リモートワークの普及」、付加価値の高い商品・サービスを欲求する「こだわり消費」など、消費者のライフスタイルや価値観は変容しています。店舗開発においては、店舗の8割が出店する商業施設では、更新のない定期借家賃貸借契約が基本となり、「収益店の退店リスク」は常態化しています。労働力不足を背景にストアオペレーションを十分に見直し、「省人力設備を活用したQSC(クオリティ・サービス・クリンリネス)の維持・向上」も重要な課題に挙げられ、店舗開発と業態開発の強化に取り組みます。
更新のない定期借家契約の期限を「業態ブラッシュアップ」のチャンスととらえ、デベロッパーへの大規模改装や新業態の提案により長期契約の獲得に努めます。定期借家契約の期限を迎えた「こてがえし 浦和パルコ店」では、これまでの閉鎖的な内装から、より広い客層が入りやすいオープンな雰囲気への改装の提案を行い、長期の契約締結につながりました。テーブルオーダーシステムやキッチンディスプレイを新たに導入してオーダー処理効率を高めると同時に、主力メニューの「お好み焼き・もんじゃ焼き」を客席で調理するサービスを展開し、客数増に結びついています。あわせて、普通借家契約を条件とした路面ビルへの出店も強化してまいります。
当社は労働力不足によるQSCの低下を防ぐため、省人力化を推進する「生産性向上パッケージ」を作成し、業態や店舗の運営状況に応じた生産性向上設備の導入を随時実施しております。既に自動釣銭機の全店配備や予約管理システム(EPARK)、QRコードによるモバイルオーダーシステム(インバウンド対応)、インカム、キッチンディスプレイなどを配備し、オーダー処理の効率化を進めているほか、今期は店舗スタッフの業務プロセスや事務作業の低減を課題に掲げ、シフト作成等の管理業務負担の低減に努めてまいります。
昨年4月より開始したポイントアプリの展開においては、登録者数が13万人を超えました。同時に展開するLINEの有効会員は22万人を有しています。全業態およびECサイトで利用できるポイントサービスの充実や定期的に配信されるクーポンの活用、新メニューの紹介等により、優良顧客の囲い込み、来店頻度の向上につなげてまいります。今後も実店舗とポイントアプリ、SNS等との「ネットとリアルの連携」を深め、デジタルマーケティングの推進を通じたカスタマーリレーションシップの向上による、顧客体験価値のさらなる向上を目指してまいります。
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