月島ホールディングス 【東証プライム:6332】「機械」 へ投稿
企業概要
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 中長期的な会社の経営方針
当社グループは、上下水道および汚泥再生処理・バイオマス利活用設備を主要マーケットとする水環境事業と、化学分野や二次電池製造などに関連する産業インフラ設備および廃液や固形廃棄物処理などの環境関連設備を主要マーケットとする産業事業の2つを主たる事業と位置付けており、それら以外の事業をその他としております。
当社グループは、グループ経営の効率化とガバナンス体制の高度化を推進するため、2023年4月より持株会社体制に移行いたしました。当社グループの持続的な成長を目指すために、「サステナビリティ経営の推進」「事業領域の拡充とグループ収益力の強化」「資本効率の向上と株主還元の拡充」を基本方針とした中期経営計画(2023年4月~2027年3月)を策定し、推進することで、企業価値の向上に取り組んでまいりました。
中期経営計画の最終年度となる2027年3月期の数値目標については、連結売上高1,600億円、連結営業利益120億円、親会社株主に帰属する当期純利益70億円を目指してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループでは、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益を重要な経営指標と位置付けており、2025年3月期は営業利益70億円、親会社株主に帰属する当期純利益44億円の達成を目標としております。
| 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
営業利益 | 5,004百万円 | 6,765百万円 | 7,000百万円 |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 4,214百万円 | 2,675百万円 | 4,400百万円 |
(3) 会社の対処すべき課題
当社グループの事業環境に関する今後の景況感につきましては、米中貿易摩擦やロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東情勢の緊迫などの地政学的リスクの影響、および中国経済の減速、原材料価格の高騰や為替等の変動などが経済活動に与える影響について留意する必要があります。
国内の上下水道分野は、水インフラ関連の投資は引き続き堅調に推移していくものと推測されますが、中長期的には人口減による市場規模の縮小、および競争の激化等により事業環境が厳しくなることが予想されております。昨年10月に実施したJFEエンジニアリング株式会社との国内水エンジニアリング事業の統合は、中長期的な事業環境への対応策の一つでもあり、シナジーを創出することでさらなる事業基盤の安定化に取り組んでまいります。
民間の設備投資については、注力しているリチウムイオン二次電池向けの機器・プラントの市況は、欧米等における電気自動車に対する補助金の見直しの影響などもあり踊り場を迎えている状況ですが、中長期的には内燃機関から電気自動車へのシフトが進む方向性は変わらないと思われることから、引き続き競争力の強化に取り組み脱炭素社会の構築に貢献してまいります。
① サステナビリティ経営の推進
当社グループは、持株会社体制の移行に伴い、目指す方向性と存在意義を明確化するため、パーパスとして「環境技術で世界に貢献し未来を創る」を定義いたしました。また、従来の企業理念をグループ企業理念として再定義し、2030年に向けた長期ビジョン「豊かな生活・文化の創造に貢献し、快適でサステナブルな社会を実現する」を制定いたしました。
当社グループは、様々な環境・社会問題の解決を通じステークホルダーの皆様とともに事業の持続的な成長を実現するため、サステナビリティ経営に取り組んでまいります。
事業を通じた脱炭素社会への貢献については、最重要KPIとして脱炭素社会へ貢献する事業の売上高比率を水環境・産業事業ともに20%以上、脱炭素社会へ貢献する研究開発費の比率を30%以上と掲げております。当連結会計年度における売上高比率は水環境事業で46%、産業事業で55%、研究開発費は49%となりました。引き続き、気候変動などの環境課題の解決に取り組み、事業を通じて脱炭素社会へ貢献するため、カーボンニュートラルな資源である下水汚泥のエネルギー活用や、電気自動車などで利用されるリチウムイオン二次電池の材料を製造する設備の拡販を推進してまいります。
働きがいのある職場環境と制度を整備し、ダイバーシティ&インクルージョンを推進することで、人材育成に取り組んでまいります。2023年度には、社員向けのエンゲージメント調査を行い、その結果を受けて福利厚生の充実、労働時間の短縮等、就業規則の改定、社員教育プログラムの見直し、経営陣とのタウンホールミーティング等を実施しております。また、温室効果ガス削減プラグラムを策定するとともに将来の開示に向けたScope3算定対応を継続しております。今後も月島ホールディングス代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会ならびにその下部組織である分科会において、サステナビリティに関連する各種施策の検討および推進に取り組んでまいります。
② 事業領域の拡充とグループ収益力の強化
水環境事業では、2023年10月にJFEエンジニアリング株式会社の国内水エンジニアリング事業を統合しました。両社の経営資源・ノウハウを集約させ、技術・サービスを高度化し、強固な事業基盤を構築することで、国内上下水道分野における強固な地位を確立し、リーディングカンパニーを目指してまいります。再生可能エネルギーを生み出す下水汚泥燃料化、消化ガス発電事業や創エネルギー型脱水焼却システムなどの創エネルギー事業に積極的に取り組んでまいります。近年、案件数が増加しているPFI、DBO事業や包括O&M業務などの官民連携事業についても、JFEエンジニアリング株式会社との統合効果により対応力を強化してまいります。
産業事業では、リチウムイオン二次電池の性能を左右する正極材活物質の製造に不可欠な晶析などの微粒子製造技術の強化を図っており、「超微粒子晶析装置」のパイロット機をリリースし顧客のサンプル製造に協力することで機器の販売につなげてまいります。脱炭素技術への取り組みとしては、アンモニアなどの次世代エネルギー技術の開発・活用に取り組んでまいります。また、業績が悪化した月島機械株式会社においては、再生計画を策定し、受注獲得および収益向上に取り組んでまいります。
両事業に共通する施策として、脱炭素社会に貢献する環境ビジネスや成長性が見込める官民連携事業など付加価値の高い領域を「重点領域」と定義して事業領域をシフトし、2027年3月期は売上高1,600億円、営業利益120億円を目指してまいります。官民連携事業については、「ウォーターPPP(*)」に類似する先進的な事例として「箱根地区水道事業包括委託事業(第3期)」を受託し、ノウハウと実績を積み重ねております。
*:ウォーターPPP
上水道、下水道、工業用水道分野における官民連携事業の推進のため、公共施設等運営事業(コンセッション方式)に加え、コンセッション方式に段階的に移行するための官民連携方式として新たに位置付けられた「管理・更新一体マネジメント方式」を含めた事業
③ 資本効率の向上と株主還元の拡充
当社グループは、ROEとROICを新たに経営指標に設定し、資本効率の向上と資本コストを意識した企業価値経営を推進してまいります。また、キャピタルアロケーションを策定し、創出した営業キャッシュ・フローに加え政策保有株式の売却を実施し、通常の設備投資に加えデジタルトランスフォーメーション(DX)や人的資本などの戦略投資、株主還元に配分してまいります。M&Aなどの大規模投資には必要に応じて負債等による調達を活用し最適資本構成を目指します。なお、政策保有株式については継続的な縮減に取り組み、本中期経営計画の期間内で連結純資産の20%以内、金額として30~50億円の売却を目指しておりましたが、縮減をより一層加速させるべく目標を本中期経営計画期間中に70億円以上の売却に変更いたしました。売却により生じた資金については、中長期的な企業価値向上に向け、成長投資や株主還元に最適配分してまいります。
株主還元につきましては、総還元性向50%以上、配当性向40%以上を目標としておりましたが、本中期経営計画期間中における政策保有株式の売却拡大と検討中の設備投資の時期の見直しにより、2025年3月期の配当性向の目標を50%以上に拡充いたしました。
引き続き、安定的な配当と継続的な増配に努めるとともに、機動的な自己株式の取得にも取り組んでまいります。
以上の取り組みにより、企業価値の向上に努めてまいります。
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