企業兼大株主旭化成東証プライム:3407】「化学 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

(1) サステナビリティ共通

 当社グループでは、サステナビリティの追求を経営の柱として位置づけており、「サステナビリティ基本方針」として明確にしています。すなわち、当社グループはグループミッションである「世界の人びとのいのち”とくらし”に貢献」するため、「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の2つのサステナビリティの好循環を追求すること、その実現に最適なガバナンスを追求すること、そして、持続可能な社会への貢献による価値創造/責任ある事業活動/従業員の活躍の促進の3点を実践すること、を方針としています。

① サステナビリティマネジメント及び旭化成グループのマテリアリティ

■ ガバナンス

当社は、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します。」というグループミッションのもと、社会への貢献による持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指しており、事業環境の変化に応じた、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うコーポレート・ガバナンスを追求しています。その中で、サステナビリティは、事業の機会とリスクの両面に関わる重要な事項として、複数の委員会を含むガバナンス体制としています。具体的には、社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」「リスク・コンプライアンス委員会」「環境安全・品質保証委員会」を設置し、事業部門責任者や関係するスタッフ部門を委員として、議論・方針確認などを行っています。これらの委員会での議論内容を含む実施状況は取締役会に報告され、取締役会は監督と助言を行っています。サステナビリティ推進委員会には、より専門的な議論を行うための専門委員会である「地球環境対策推進委員会」「人権専門委員会」を設置しています。また、専任部署であるサステナビリティ推進部を設置し、当社グループのサステナビリティ全般を推進する機能としています。

サステナビリティマネジメント体制


■ 戦略

 当社グループは目指すべき「持続可能な社会」を、グループビジョンに示す「健康で快適な生活」「環境との共生」に照らして定めています。すなわち、「健康で快適な生活」の観点では、Care for People”のキーワードによる、「ニューノーマル」での生き生きとしたくらしの実現”、「環境との共生」の観点では、Care for Earth”のキーワードによる、カーボンニュートラルでサステナブルな社会の実現”の二つです。COVID-19をはじめとする社会の大きな変化は、人類が取り組むべき課題を一段と浮き彫りにしています。この認識のもと、当社は創業来100年で培ってきた多様な人財・技術・事業を活かしながら、また、事業活動の前提となる基盤的な活動に注力しながら、5つの価値提供分野「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」「Home & Living」「Health Care」において、世界共通の課題の解決に向けた貢献を加速させていきます。

■ リスク管理

 サステナビリティを追求する上で、多様なリスクを的確に認識し、対応を積極的に図ることが重要です。そこで当社では、一段と激しくなる事業環境や経営環境の変化を踏まえ、リスク管理体制を強化しています。サステナビリティに関する事項を含む具体的なリスクに関する認識と管理体制は「3 事業等のリスク」をご参照ください。

■ 指標と目標

当社では、経営における重要課題(マテリアリティ)を以下のように定めています。いずれもサステナビリティを追求していく上で重要な要素であり、これらに重点を置いた経営活動を行い、定量的な管理が可能なものは、指標や目標を設定して管理しています。

旭化成グループのマテリアリティ


「中期経営計画2024」では、以下を目標としています。


また、事業の前提の一つである「安全」については、「休業災害件数」「休業度数率」等により管理し、徹底を図っています。

② 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応

■ ガバナンス

 当社グループでは気候変動対策を重要な経営課題と捉え、経営戦略の中核テーマの一つとしています。気候変動に関する方針や重要事項は取締役会で、また、関連する具体的事項は経営執行の意思決定機関である経営会議で、審議・決定を行っています(具体的には、中期経営計画、GHG排出量の削減目標、設備投資計画などの決定と実績の進捗確認等を行っています)。これらの取締役会・経営会議での決定を事業レベルで推進するため、社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置し、経営の各執行責任者が気候変動を含むサステナビリティに関する課題の共有と議論を実施しています。委員会の結果は取締役会に報告され、グループ全体での取り組みのあり方等についての議論を行っています。なお、GHG排出量の削減目標達成に向けてカーボンニュートラル推進プロジェクトで、具体的なロードマップを検討しています。詳細は旭化成レポートをご参照ください。

https://www.asahi-kasei.com/jp/ir/library/asahikasei_report/pdf/22jp_29.pdf

■ 戦略

[リスク]

「+4」シナリオでは、主として酷暑・大雨・洪水などの物理リスクを想定しています。特に、風水害の甚大化により、当社の国内外の主要な製造拠点における被災とその損害額をリスクとして認識しています。「+1.5」シナリオでは、主として脱炭素化に向けたカーボンプライシング等の政策による規制強化や、脱炭素に適した素材への需要シフトをリスクとして想定しています。さらに、循環経済への移行加速や脱炭素社会に向けた革新技術の登場による、市場構造変化もリスクとして想定しています。これらのリスクは濃淡がありながらも、今後の気候変動の中でいずれも発現しうるものと当社グループでは捉えており、リスク低減の取り組みを進めます。

[機会]

 当社グループは中期経営計画で「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」「Home & Living」「Health Care」を価値提供分野として位置付けています。また、成長に向けて重点的に資源投入する事業としてGG10を定めています。これらは、気候変動等のメガトレンドを踏まえて設定したもので、最新のIPCC、WEOの報告に照らし合わせても、さまざまな気候変動シナリオにおいて、緩和や適応の観点から価値を提供しうる分野であることが明らかです。当社の事業展開と方向性は、気候変動課題の解決に向けて、さまざまな製品・サービスを事業機会として提供しうるものと認識しています。

■ リスク管理

第三者保証を伴うGHG排出量の実績把握を年1回行っています。実績値並びに目標への進捗状況は、サステナビリティ推進委員会及びその分科会である地球環境対策推進委員会で共有し、今後の取り組みを議論しています。また、中期経営計画の策定や毎年の見直しの中でも、GHG排出量削減状況の把握、事業戦略検討、取締役会への報告等を行っています。さらに、四半期、月次でも、関連する事項の把握を行っています。随時検討・提案される設備投資では、インターナルカーボンプライシングを考慮して採算性を評価し、実施決定しています。

■ 指標と目標

当社グループは、以下の指標を気候変動のリスク・機会に関係するものとして位置付けています。


③ 責任ある事業活動へ向けた取り組み

■ 環境安全・品質保証活動

当社グループは、提供する製品・サービスのすべてのライフサイクルにおいて環境・安全・健康・品質に配慮する「環境安全・品質保証活動」を実施しています。しかし、誠に遺憾ながら、2022年4月9日に宮崎県延岡市にある当社のベンベルグ工場で火災が発生しました。従業員一同「安全は経営の最重要課題」であることをあらためて認識し、危機感を持って安全活動に取り組んでいきます。環境安全・品質保証に関するリスクマネジメントの詳細は「3 事業等のリスク (4) 当社グループ全体に係るリスク」もご参照ください。

■ コンプライアンス、人権・多様性の尊重

当社グループは、事業・業務に関する法令・諸規則や社内ルールの遵守を徹底し、事業活動においては、グループミッションに基づくグループバリュー(共通の価値観)として「誠実な行動」を促進しています。その実効性を高めるため、2019年度以降、各部署で「グループ行動規範」の読み合わせ活動を継続実施しており、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識の底上げを図っています。また、グループ全体のコンプライアンス体制の強化を図るために、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、当社グループ全体のコンプライアンスに関する遵守状況をモニタリングし、取締役会に報告しています。

「人権・多様性(ダイバーシティ)の尊重」については、当社グループは国際人権憲章(世界人権宣言並びに国際人権規約)を支持するとともに、国連グローバル・コンパクトの署名企業として、グローバル・コンパクトの人権に関する原則、及び国連「ビジネスと人権に関する指導原則」「子どもの権利とビジネスの原則」にも賛同しています。当社グループでは、従来より、多様性の尊重を含む人権に関するグループの考え方を「グループ行動規範」にて明示し、従業員研修等を通じてグループ内浸透を図っていますが、人権尊重の重要性を踏まえ、2022年3月、「旭化成グループ人権方針」を取締役会で決定し、公開しました。さらに、人権尊重について議論・方向付けする場として、また、「旭化成グループ人権方針」の実現のための推進体制として、人権専門委員会を新設し、2022年11月、第1回委員会を開催しました。今後、「旭化成グループ人権方針」のグループ内での普及啓発を進めるとともに、人権に関するリスクを抽出し、軽減・対応を行う「人権デュー・ディリジェンス」への取り組みを進めていきます。

■ ステークホルダーとの対話の強化

当社グループでは、ステークホルダーの皆様に適切な情報開示を行うとともに、双方向のコミュニケーションを取ることが重要と考えています。そこで、2022年度は、前年度に引き続き、投資家、メディアの皆様に対し、当社グループのサステナビリティに対する考え方と実行の状況を説明するため、「サステナビリティ説明会」を開催しました。2022年度の説明会では、「持続可能な社会への貢献」「持続的な企業価値向上」という2つのサステナビリティの好循環を追求し、経営基盤の強化と事業の高度化により新たな価値を創出していくため、事業共通の重要テーマであるGreen(グリーントランスフォーメーション)、People(人財のトランスフォーメーション)に関する当社グループの考え方と取り組みを紹介しました。

(2) 人的資本に関する開示

■ 戦略、指標と目標

 前提となる人財戦略の概要については「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等 <経営方針・経営戦略> ⅴ 経営基盤の強化 ■ People (「人財」のトランスフォーメーション)」記載のとおりであり、人財戦略の柱は、社員一人ひとりが挑戦・成長し続ける「終身成長」、当社の多様性を活かしコラボレーションを推進する「共創力」の2つを置いています。

「終身成長」については、一人ひとりが自らのキャリアを描き、成長に向けた学び・挑戦を進めること、そして、個とチームの力を最大限引き出し成果に結びつけるマネジメント力の向上に、一層取り組んでいきます。

「共創力」については、多様性を“拡げる”という視点と“つなげる”という視点から、様々な取り組みを実行していきます。具体的には下記のような取り組みを進めています。

(人財育成方針)

・高度専門職制度の拡充によるプロフェッショナル人財の育成強化

新事業創出、事業強化へ積極的に関与し、貢献できると期待できる人財に対しふさわしい処遇を行い、社内外に通用する専門性の高い人財を増やしていく仕組みです。人数をKPIとして注視しており、制度を開始した16年度90名から順調に増え、前中計最終年度である21年度時点で259名となっていました。22年度からの新中計では24年度300名を目標としていましたが、直近の増加ペースを踏まえて目標を引き上げ、24年度までに360名まで増やすことを新たな目標としています。(22年度実績294名)

・エンゲージメント向上 KSA(活力と成長アセスメント)

個人と組織の状態を可視化してPDCAを回し、エンゲージメントや挑戦・成長行動を高めていく取り組みです。毎年1回サーベイを実施して組織ごとの結果を各ラインマネージャーにフィードバックし、各組織が当事者意識を持って課題解決に向け取り組むものです。KSAでは「職場環境・上司部下関係」「活力」「成長行動指標」の3つの指標を測定していますが、このうち「成長行動指標」をKPIとして注視しています。取組開始以来順調に推移しており、直近22年度は3.71(1~5段階評価)まで上がってきましたが、今後もより高めていきたいと考えています。

・DE&I、女性活躍推進

DE&Iに関しては、以前より女性管理職へのメンタープログラムなど様々な取り組みを行ってきた結果、1994年に3名だった女性管理職は276名に増加しています(2023年3月31日現在)。また女性の執行役員は2名、取締役は2名、監査役は1名となっています(2023年6月27日現在)。

2022年度からは、多様な人財の活躍状況を測るKPIとして、管理職の中でも特に指導的役割を果たすポジション(ラインポスト及び高度専門職)の女性比率を2030年度に10%まで増やすという目標を掲げました(2022年度実績3.8%)。またその比率を役員報酬にも連動させており、2024年度は5.0%を目標としています。

これを達成するため、社長から各事業部門に対し女性活躍推進に経営課題として取り組むよう指示を発信し、部門ごとにアンケート等を実施し、各事業部門の現場課題に即した具体的な取組みを進めています。経営トップのコミットメントとリーダーシップでこのような具体的な現場での活動を強力に後押ししつつ、あわせて、「管理職の長時間労働」や「男女の基幹的職務の経験差」といった共通的な課題に対応すべく、体制の強化も行います。

 この取り組みは、女性活躍にとどまらず多様な人財が活躍し、連携し、「共創力」で新たな価値を生み出していくことが真の狙いです。女性・外国人・キャリア入社者の中核人材登用に関してはコーポレート・ガバナンスに関する報告書にも記載しているほか、障がい者雇用に関する取組みや各種データ類はサステナビリティレポートを参照ください。

https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/social/human_resources/

シニア活性化と定年延長

「終身成長」というコンセプトのもと、60歳を超えても専門性を磨き、環境に合わせて挑戦&変化し続ける人財を応援したい、シニア人財の持てる力をより一層引き出したい、というねらいで、2023年度から定年を65歳に引き上げました。60歳到達前に、改めて本人に自分のwill/can/mustを考えてもらい、それに沿った職務をマッチングする、という仕組みにしています。自身の意欲や能力に沿った業務についていただくことで、本人の働き甲斐は勿論、若手への伝承や刺激を与えていただくことも期待しています。

・マネジメント力強化、経営人材育成

 組織マネジメントのキーとなる部長層に対する研修プログラムを充実させています。プログラムには、マネジメントに関する集合研修及びeラーニング、360度フィードバック、1on1講座、KSA(上述)活用講座のほか、2020年度からは部長一人ひとりにコーチを付けて、ラインマネージャー自身が自ら考え解決していくことを支援することも含めています。2023年2月時点で部長層約680名中、すでに200名がプログラム受講済みです。

また経営幹部の育成・獲得にも力を入れており、次世代リーダー候補者にコーチング等を通じて自らの成長を促すとともに、リーダーシップやチームワークを強化するためのプログラムを通じた育成を行っています。毎年数名がこのプログラムを経てグループ役員*1)に昇格しています。2023年4月時点でグループ役員36名に対しそのプール人財は76名となっており、今後も質・量ともに同等以上のプール人財を維持していきたいと考えています。

*1) 執行役員の中から旭化成グループ全体の企業価値向上に責任と権限を有する者として、旭化成の取締役会決議に基づきグループ役員を任命しており、具体的には旭化成株式会社の上席執行役員以上及びそれに相応する事業会社の執行役員がこれにあたります。

(社内環境整備方針)

・経営戦略と人財戦略を連動させる仕組み

2021年度に社長を責任者とした人財戦略プロジェクトを立ち上げ、2022年度からの中期経営計画に連動した人財戦略を策定しました。現在実行している人事施策はこれをベースにしています。

 人事部門トップが取締役会メンバーであるほか、会長・社長と人事担当役員・人事部長によるミーティングを毎月1回実施し、経営戦略と人財戦略が常に連動する仕組みにしています。また各事業部門トップと人事担当役員・人事部長の定期ミーティングも実施し、ポートフォリオ転換を含めた事業課題を人事課題に落とし込み、施策に反映させています。

・自立な学習プラットフォーム「CLAP」

CLAPとはCo-Learning Adventure Placeの頭文字をとったもので、1万以上の社内外のeラーニングのコンテンツから、従業員が自分に必要な学習を、無料で自由に学べる当社独自の仕組みです。2022年12月の導入から2023年3月末までの間に対象者の81%にあたる15,500人がCLAPを利用し、そのうち12,300人は一つ以上のコンテンツの学習を完了しており、すでに多くの従業員が自律的に学習しています。

・人財の可視化、事業領域を超えた人事異動、公募人事制度

当社グループでは以前より事業領域を越えた人事異動を積極的に行っています。一例としては、当社の住宅事業は近年海外に進出しましたが、この事業展開にあたっては、グループ全体の人材・ノウハウなどの経営基盤を活用することで、スピーディに展開することができました。海外事業の拡大によって業績も伸び、キャッシュ創出力も高めています。2022年度からはタレントマネジメントシステムも導入し、人財の可視化を進め、グループ全体での人財の活用力を一層高めていきます。

また公募人事制度については2003年度から行っており、毎年数十名の人財が、自らの意思で部署を異動し、新たな環境に挑戦しています。

・人事部門の組織ケーパビリティの向上、キャリア開発室の設置

人的資本経営を実践していくためには、実働部隊である人事部門の組織能力の向上も重要です。当社では人事部門に今後必要となる能力について改めて定義づけを行い、その中でもデータ利活用スキルとキャリアコンサルティング能力については特に力を入れて向上に努めています。データ利活用スキルについては大阪大学開本教授監修のもと独自のプログラムを内製し、データの収集や分析に関するノウハウを人事メンバー全員が習得するように取り組んでいます(2023年3月31日時点で77名が受講済)。また、国家資格キャリアコンサルタントの資格取得も奨励しており、2023年4月時点で27名が資格を取得しています。2022年度には従業員のキャリア形成を支援するためにキャリア開発室を設置し、シニア層及び若手・中堅層に対してキャリア施策を充実させています。

人財戦略及び具体策については、旭化成レポートにも記載がありますので、あわせて参照ください。また、人事関連の諸データに関しては当社サステナビリティレポートにも掲載しています。

https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/esg_data/

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