日産化学 【東証プライム:4021】「化学」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 中長期的な会社の経営戦略並びに会社の対処すべき課題
当社グループは、2022年4月に長期経営計画「Atelier2050」ならびに6ヵ年の中期経営計画「Vista2027」を始動しました。
Vista2027では、「新製品開発の更なる強化」、「事業計画の精緻化」、「業務効率の改善・強化」を課題として捉え、4つの基本戦略に基づき各種の施策を実行してきました。
第1の戦略「事業領域の深掘りとマーケティング力の向上」では、食品事業などで生じる廃棄物中の油脂を分解処理する、微生物製剤「ビーナスオイルクリーン」が、微生物死骸の不溶物や油脂が固形化したオイルボールを分解する機能も有することを新たに見出し、食品用途以外への提案を開始しました。需要拡大が期待される二次電池分野では、電気自動車向け二次電池で、その構成材料として当社製品が採用されました。
第2の戦略「サステナブル経営の推進」では、レスポンシブル・ケア活動の継続的強化として、2022年設置の気候変動対策委員会を中心に、気候変動対策に関する組織横断的な取り組みを進めております。2023年度は、GHG(温室効果ガス)排出量を費用として捉えるインターナル・カーボンプライシング(ICP)を活用した管理会計を開始しました。当社での設備投資計画の策定においては、損益に加え、GHG排出量の削減も考慮し、投資に対して総合的な経営判断を行う仕組みへと転換しました。また、サステナブル調達に関しては、サプライヤーに対するアンケート調査を実施する中で、当社が定める自主基準に未達の取引先に、改善の協力を仰いだ結果、基準未達企業数は減少しました。
第3の戦略「価値創造・共創プロセスの強化」では、人的資本経営の拡充に向けて、価値の創造・共創を促す基盤・環境づくりを推進しております。「誠実」という当社の強みを維持しながら、多様な人材が目標に向かって挑戦し、自己の成長を図る組織を実現するため、人材育成や環境整備を進めることを目的としています。具体的には、人材育成の強化として、職域別の人材開発会議およびキャリア対話を開始するとともに、イントラプレナー(企業内起業家)育成プログラムや10% Challenge(年間労働時間の10%を用い、通常業務外などのテーマ領域へ挑戦する仕組み)での取り組みを行いました。とくに、キャリア対話の中では、キャリア志向に配慮した人材の適正配置を推進し、生産性や定着率の向上を目指します。
第4の戦略「現有事業のシェア・利益の拡大」では、化学品セグメントは、高純度硫酸設備の増強工事が順調に進捗し、需要拡大に呼応する増販体制を構築しました。機能性材料セグメントは、視野角特性と色再現性に優れる光IPS(In-Plane Switching)式液晶ディスプレイ用配向材「レイアライン」が、スマートフォン、IT(情報技術)、そして車載向けで引き続き高い市場シェアを堅持しました。また、半導体向け前工程用材料を製造する韓国子会社NCK Co.,Ltd.の第2製造拠点が完成し、顧客承認用の製品製造を開始しました。農業化学品セグメントは、製品の供給体制強化のために設立したインド子会社Nissan Bharat Rasayan Private Limitedにおける殺菌剤「ライメイ」および殺虫剤「グレーシア」のプラントが稼働し、原体の出荷を開始しました。また、国内では、稲作農家を悩ませる難防除水田雑草に対し優れた効果を有する除草剤「ベルダー」の原体工場が完工しました。農薬登録を受け次第、販売をスタートします。ヘルスケアセグメントは、新たなジェネリック原薬のプロジェクトが本格始動し、当社による原薬製造に向けた協業先との技術協力合意に至りました。また、核酸創薬でも大きな進展があり、2024年4月の当社ニュースリリースのとおり、株式会社三和化学研究所との間で核酸創薬の戦略的提携に合意しました。当社の独自技術で設計された核酸化合物を、知見や経験の豊富な提携先が薬効および安全性評価を行うことで、新規医薬品の候補化合物創出を加速します。
上記のとおり、当社グループにおける中期経営計画は着実に進捗し、その成果は実を結んでいます。
一方、2023年度は、そのVista2027の前半3ヵ年となるStageⅠの2年目にあたりましたが、ある特定の事業や領域で計画に対する乖離がありました。財務指標では、4つの重要業績評価指標KPIのうち、3項目となる売上高営業利益率(目標20%以上)、配当性向(目標55%維持)および総還元性向(目標75%維持)は、いずれも目標を達成しましたが、自己資本当期純利益率ROEは目標18%以上に対し17%にとどまり、未達となりました。収益では、前期比減収減益となり、売上高や営業利益の最高値連続更新が途切れる結果となりました。これは、需要、原材料、為替など、著しい外的環境の変化や自然災害の影響に加えて、業績をけん引する事業の偏りや利益率向上に貢献する成長エンジンとなるべき新製品の創出の遅延によるものと、重く受け止めております。
2024年度は、Vista2027の後半3ヵ年となるStageⅡの計画を見直す年になります。当社グループが社会に選ばれ、求められる会社であり続けるため、StageⅠの乖離要因の解析や課題の抽出を徹底的に行い、戦略や施策、そしてその行動計画を丁寧に見直し、持続的成長に向けた計画を策定いたします。
当社は、企業理念である、「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」を事業活動の基本とし、コーポレートスローガンとして、「未来のための、はじめてをつくる。」を掲げ、変革する志のもと、新製品創出および事業拡大に注力しております。これからも、当社グループは、経営の健全性と透明性の向上、経営意思決定の迅速化、コンプライアンスの徹底、リスク管理や内部統制システムの強化を推進することで、すべてのステークホルダーから信頼される企業グループの実現に総力を挙げて取り組んでまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、株主からの受託資本の運用効率を示す指標である「自己資本当期純利益率(ROE)」、高付加価値企業としての指標となる「売上高営業利益率」を最重要指標と認識し、今後も収益力の一層の強化に向けた事業展開を推進してまいります。
自己資本当期純利益率(ROE)につきましては、2022年4月に始動した中期経営計画「Vista2027」のStageⅠにおいて2022年度以降は18%以上を維持することを目標としております。
なお、2022年4月に始動した中期経営計画「Vista2027」では、重要業績評価指標(KPI)を以下のように定めております。
財務指標(2022年~2027年)
売上高営業利益率 | 20%以上 |
自己資本当期純利益率(ROE) | 18%以上 |
配当性向 | 55%維持 (2021年度44.9%から引き上げ) |
総還元性向 | 75%維持 |
非財務指標(2027年)
日産化学サステナブルアジェンダ (社会課題解決に貢献する製品・サービスの合計売上高/全体売上高) | 55%以上維持 |
GHG排出量の削減 | 2018年度比30%以上 (2030年度目標を3年前倒し) |
社員意識調査の人材育成に関する質問への肯定回答率 | 65%以上 |
研究所女性総合職比率 | 18%以上 |
- 検索
- 業種別業績ランキング