企業兼大株主日本郵船東証プライム:9101】「海運業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 当社グループの定期船事業、航空運送事業、物流事業、不定期専用船事業、不動産業、その他の事業の事業活動において、世界各国の経済情勢、政治的又は社会的な要因等により、当社グループの事業や業績が影響を受け、その結果当社グループの株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、リスク管理方針及びリスク管理規則に基づき、リスク管理委員会を年2回実施し、当社の経営に大きな影響を与えうる、重要リスクの管理状況の報告と評価を行い、その結果を取締役会に報告します。当社グループは、「当社グループの継続的成長にとって影響を与えうる不確実性」をリスクと定義し、社長を委員長、本部長とESG経営担当執行役員をメンバーとするリスク管理委員会において各本部からの報告を基に重要リスクを特定し、重要リスク毎にリスク対応の推進役となる本部を決定し、グループ全体のリスク低減活動を推進します。

 当社グループの事業継続に重大な影響を与えうる「最重要リスク」には、コンプライアンスリスク、重大事故などのオペレーションリスク、サイバーリスク、自然災害などの災害や気候変動への対応に関するリスクがあります。また、当社グループの経営に大きな影響を与えうる「重要リスク」には、戦略リスクや市況変動リスク、オペレーショナルリスク、財務と会計リスク、人権リスク、新型コロナウイルスなどの感染症リスク等があります。なお、毎年、リスク管理委員会において、「重要リスク」の中から「最重要リスク」を選定します。

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(最重要リスク)
(1)コンプライアンスリスクについて

 世界的にさまざまなルールの強化が進むなかで、企業にはより一層高いコンプライアンス意識が求められています。当社グループは、コンプライアンスを推進、強化するための体制の整備及び、重要方針に関する事項等を審議・決議するための場として、年2回コンプライアンス委員会を開催しています。また、毎年9月を当社グループのコンプライアンス総点検月と定め、役員・従業員自らの行動・業務プロセスを見直し、コンプライアンス推進活動を実施しています。同活動では、「コンプライアンスDAY」と定めた日にNYK Chief Compliance Officer 自らコンプライアンスについてのメッセージを発信し、また、当社グループで発生した事例を取り上げ、弁護士によるコンプライアンス研修を行っています。

 更に、遵法活動徹底委員会を設置し、独占禁止法、贈収賄関連法令、経済制裁などの特定の法令のみならず、法令全般及び各種許認可等も含めた遵法の徹底を図っています。

 しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全には回避できない可能性があり、法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

(2)重大な事故等による影響について

 当社グループは、「Bringing value to life.」という企業理念のもと、海・陸・空にまたがる幅広い物流事業を展開しています。船舶や航空機等の安全運航及び環境保護対策を最重要課題と認識しています。

 当社グループの海上運送事業においては、独自の安全規格である「NAV9000」によるアセスメントを実施するなど、安全運航に努めています。船舶をはじめ各現場での実行状況は、社長を委員長とする「安全・環境対策推進委員会」で定期的にレビューされ、安全品質レベルを更に向上・改善させるシステムが構築されており、また、緊急事態に際しては、適切な対応ができる体制を整えています。しかしながら、もし不測の事故、特に油濁その他の環境汚染、乗組員、乗客、及び荷役関係者を含む訪船者の死傷、船舶の喪失又は損傷等につながる重大な事故等が発生した場合、また、船内における感染症の発生、感染症の世界規模の蔓延による検疫強化、もしくは海賊・テロ事案等保安事件が発生した場合には、貨物輸送の遅延・不能、運送契約の解除、債務不履行、過料、訴訟、罰金、営業制限、保険料の引き上げ、評判及び顧客関係の悪化といった事態に直面する可能性があり、かかるリスクを保険で適切にカバーできない場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 当社グループの航空運送事業においては、活動範囲が世界各地に及んでおり、「安全は全てに優先する」という安全方針に基づき、全社的安全推進体制を構築し、安全運航の確保に努めています。しかしながら、乗務員の死傷、航空機の喪失又は損傷等につながる重大な航空機事故が発生した場合、航空機の安全性を著しく損なう問題が発生した場合、航空機の稼働を著しく低下させる事由が発生した場合、もしくは各々の地域における政情不安、テロ、新型コロナウイルス感染症等の疫病の流行、及び自然災害等が発生した場合には、貨物輸送の遅延・不能、運送契約の解除、債務不履行、過料、訴訟、罰金、営業制限、保険料の引き上げ、評判及び顧客関係の悪化といった事態に直面する可能性があり、かかるリスクを保険で適切にカバーできない場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。また、航空機の安全性が確認できない場合、自主的に機材の運航を見合わせ、安全性が確認できるまで点検等の整備を行うことがあります。

 航空機を運航する当社グループ会社は、航空運送事業者として国際条約、二国間協定、IATA(国際航空運送協会)の決定事項その他の国際的取り決めに従って国際航空運送事業を営んでおり、当社グループの航空運送事業は運賃及び料金の設定に関し独占禁止法の制約を受ける場合があります。また、米国を中心に世界規模で航空保安強化に係る法規制が進むなか、保安対策費用の増加が見込まれます。加えて、民間国際航空の分野では環境負荷低減の取り組みが着実に進行しており、規制強化などによって対策費用が増加した場合は、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

(3)本社及び主要な事業会社(拠点)の事業運営に重大な影響を与える自然災害等のリスクについて

 地震、津波、竜巻、台風、寒波等の自然災害や戦争・テロ、紛争、その他の要因による社会混乱により、本社や主要な事業会社(拠点)が被災し、経営体制の本社機能が麻痺するリスクや本社の管理機能が麻痺することによるオペレーション上の事業継続リスクや、主要な事業会社のオペレーション機能が麻痺することによる事業継続リスクがあります。

 災害や事故などで被害を受けた際に、重要な機能を可能な限り中断せず、また中断した場合にもできるだけ早急に復旧できるように、主要な事業ごとに「事業継続計画(BCP: Business Continuity Plan)」を策定しています。しかしながら、自然災害等が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

(4)情報システムセキュリティに関するリスクについて

 当社グループは、その業務遂行には、ITの円滑な運用は今や欠かせない企業基盤となっており、地震・火災等の罹災に際しても、システムの安全及び安定稼動の確保に努めています。また、サイバー攻撃に対しても、ゼロトラストセキュリティモデルを念頭においたセキュリティ対策の強化に加え、ダメージの最小化及び早期復旧にも重点を置き、定期的な訓練の実施やグローバルでの管理体制の構築を進めています。しかしながら、システムダウンが一定期間以上に及び、お客様への情報提供及び業務処理が滞ることとなった場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

(5)気候変動リスクへの対応について

 当社グループはESG要素の一つである「気候変動」を重要な経営課題の一つとして認識しており、2023年3月に発表した中期経営計画“Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -”の中で経営戦略としてのEX(エネルギー転換)の位置づけを再定義、財務影響を含めた具体的な取り組みを策定しました。

 この内容を更に補強する形として同年11月に「NYK Group Decarbonization Story」を発表、2050年に向けた脱炭素戦略を公表しました。

 最新の科学的知見である1.5℃目標水準に準じた野心的なGHG削減目標を設定、脱炭素社会の達成を目指し当社グループ全体のGHG排出量削減に努めます。

 一方、本長期目標を達成するためには、アンモニアや水素等のゼロエミッション燃料の実用化が不可欠であり、そのためには現時点の水準から大きな技術革新が必要です。

 大型外航船の使用期間は15年から20年程度であるため、仮に革新的技術が利用可能となったとしても、全世界の船舶に普及するまでには、相当の時間とコストが発生すると見込まれています。

 このような認識の下、技術革新と具現化の途上においては、世界の持続的な成長に必要な輸送需要に、その時々において最も環境負荷が低いソリューションで応えつつ、社会に対して相応の負担への理解を得る必要があると考えています。

 今後、当社グループが気候変動リスクに適切に対応できなかった場合には、顧客離れ、地域社会との関係悪化や船舶に対する融資が得られないなどの事態が生じ、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

(重要リスク)
(6)経営戦略に関するリスクについて

 当社グループは、中期経営計画に基づき、「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」というビジョン達成に向けた具体的施策に取り組んでいます。しかしながら、事業戦略の遂行や次世代の成長分野への積極的な取組みを実行する際には、以下に記載したリスクがあります。

① 投資計画に係る影響について

 当社グループは、船隊の整備等に係る投資を計画し、実行していますが、今後の世界経済の状況や海運市況及び公的規制等の動向によって、これらが計画どおりに進捗しない場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 新造船の発注から竣工までには数年の年月を要し、その間の需要の変化も一つの要因です。造船スケジュールの遅延や、造船所における労働争議、造船所の経営難など造船所自体に関わる要因によっても左右されます。

 また、鋼材価格の高騰等により新造船の価格が上昇し、それを適切に運賃等に反映させることができない場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

② 運航船舶等の処分に関する影響と市況悪化による固定資産の減損損失について

 当社グループは、海運・空運市況の著しい変動、運航する船舶や航空機の新技術開発・導入に起因する陳腐化あるいは安全規制・諸規則の変更等による物理的使用制限等により、当社グループが保有する船舶や航空機を売却する場合、又は当社グループが傭船する船舶の傭船契約解約等を実施する場合があります。その結果、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 船舶又は航空機を売却する際、常に有利な条件で売却できる保証はなく、また売却できない可能性もあります。市況が低迷し、船舶及び航空機の市場価格が下落しているときに、減価償却が済んでいない船舶及び航空機を簿価より低い価格で売却しなければならない場合もあり、その場合売却損を被る可能性もあります。また、売却をしない場合でも、市場低迷が回復せず、又は更に悪化した場合、船舶、航空機その他の固定資産の収益性低下により投資額の回収が見込めなくなる場合があります。この場合資産価値が下落して減損損失が発生し、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 傭船契約を解約又はそれに準じる行為を行う場合は、船主と協議の上、違約金等を支払う可能性があります。

③ 他社との提携戦略について

 当社グループは、コンテナ船事業において、他の海運会社との戦略的提携であるザ・アライアンスのメンバーとなっています。当社グループは、コンテナ船事業の効率的かつグローバルなネットワークを保つために、かかるアライアンスが必要であると考えています。しかしながら、アライアンスの活動には、均一の安全・運航基準及び管理方針・手続を維持する難しさ、アライアンス統合及び解散の可能性、アライアンスに加盟している会社の撤退又はアライアンスによって必ずしも期待していた結果が得られない可能性、また各国規制等によりアライアンス自体が認められなくなる等のリスクを伴います。当社グループがかかる要因に適切に対処できない場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

④ 長期安定的な収益基盤の維持・構築について

 当社グループは、長期の安定契約に重点を置いており、船隊の多くを船舶の保有又は長期傭船により調達しています。しかしながら、その船隊規模に見合った貨物の長期契約が十分に獲得できない場合、それら船舶は短期契約による運航に供することとなり、運賃水準が大幅に下落すると、船舶の運航により得られる収益が、保有船及び長期傭船の固定費用を十分にまかなうことができず、その結果として当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 当社グループのドライバルク事業部門及びエネルギー事業部門においては、取引先との長期契約に重点を置いています。かかる長期契約には、決定された運賃、使用船腹量及び費用調整条項が定められ、市場環境の変化による影響を軽減するのに役立っています。しかしながら、当社グループが長期契約を結んでいる一部の取引先の経営状態等が悪化し、取引先が契約条項の全部又は一部の履行を継続できなくなる可能性があります。一方当社グループは、かかる長期契約上の義務を履行するにあたって、第三者からの傭船によって船舶を調達する場合があります。船主が、傭船期間終了前に当社グループとの契約を履行できなくなる可能性があり、これによって他の船舶を調達するための費用が発生する可能性もあります。今後このような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。なお、長期契約は市況の変動による影響を軽減する効果がありますが、市況の上昇局面においても直ちに運賃に反映できなくなる可能性があります。

 当社グループの重要な取引先には、自動車メーカー、製鉄会社、製紙会社、公共事業会社、電機メーカーや小売業者等が含まれています。仮に、重要な取引先との間の取引規模が縮小したり、重要な取引先を失うようなことがあれば、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

(7)市況変動に関するリスクについて

 ① 海運市況・荷動き等の変動による影響について

 当社グループは、海運市況の変動に左右されない安定的な営業収益の確保に努めていますが、世界の経済動向、国際間の荷動き、競争激化、船腹需給バランス等の影響により、運賃収入及び傭船料収入などが大きく変動する可能性があり、その結果として当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 特に、海上運賃は、船腹需給の不均衡により大幅に変動する傾向にあります。一方、船腹の供給が需要を上回ると、市場における傭船料の水準が下落する可能性があります。

 なお、船腹の需要に影響を及ぼす可能性のある要因には、以下のものがあります。

・世界的、地域的な紛争、政治動向及び経済状況

・世界的な感染症の蔓延

・当社グループが輸送するエネルギー資源、原材料及び商品の需要及び在庫水準

・工場のグローバル化

・海上輸送及びその他の輸送方法の変化並びに代替輸送手段の発展

・環境及びその他の規制の動向

 一方、船腹の供給に影響を及ぼす可能性のある要因には、以下のものがあります。

・新造船の竣工により増加する船腹量

・老齢船の解撤により減少する船腹量

・港及び運河の混雑又は閉鎖

・環境規制及び船舶の耐用年数を制限する可能性のあるその他の規制の変更

 航空貨物の運賃は、貨物を輸送するスペースと荷動きの不均衡により大幅に変動する可能性があります。航空業界の競争環境と景気動向からもたらされる大幅な航空運賃の変動又は、取扱い貨物量の変動により当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 また、フォワーディング等の物流事業においても、海上・航空貨物と同様にスペース供給と需要の不均衡により、運賃が大幅に変動する可能性があります。物流事業での大幅な運賃の変動や取扱貨物量の変動により当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 ② 為替レートの変動による影響について

 当社グループの事業においては、外貨建て取引の収入が多く、為替レートの変動が損益に影響を与える可能性があります。収入と費用の通貨を一致させる施策を進めるとともに、為替予約や通貨スワップ等のヘッジ取引により、為替レート変動の影響の軽減に努めています。また、当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、在外子会社等の財務諸表を円換算しており、為替レートが変動した場合、当社グループの財務状況が影響を受ける可能性があります。

 ③ 燃料価格の変動による影響について

 当社グループは、世界中で当社グループが運航する船舶及び航空機に使用される燃料を常時購入しています。

 燃料費は、当社グループの定期船事業、不定期専用船事業及び航空運送事業における費用の大きな割合を占めています。燃料の価格水準及び入手可能量は、世界的な原油・天然ガス需給、外国為替市場の変動、産油国やOPEC及び産ガス国の動向、環境規制の状況、戦争その他の多くの要因により変動し、これらの動向を正確に予測することは困難です。当社グループとして、燃料調達地域の分散及び燃料サーチャージの適用、ヘッジ手段としてのデリバティブ取引の利用、燃料の消費量節減等の対策を講じて業績に与える影響の軽減に努めていますが、価格の変動又は供給不足から十分に影響を軽減できない可能性があります。

 ④ 金利動向による影響について

 当社グループは、船舶や航空機、輸送関連施設等の取得に係る設備投資需要や事業活動に係る運転資金需要に対し、内部資金を充当する他、外部から資金を調達しています。

 これらの外部資金については、現在、変動金利調達と固定金利調達があり、金利環境を勘案の上その割合を注視し金利変動による影響の軽減に努めていますが、将来の金利変動によっては、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

(8)投資有価証券における評価損による影響について

 当社グループは、有価証券の評価基準及び評価方法として、その他有価証券のうち市場価格のない株式等以外のものについては決算期末日の市場価格等に基づく時価法を採用しています。株式市況の変動等により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

(9)人権問題について

 当社グループは、自らの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権が尊重されなければならないことを理解し、多様な価値観や異文化を認め合い、尊重することを企業活動の基盤とし、その責務を果たす指針として、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく「日本郵船グループ人権方針」を2022年11月に定めました。社内委員会を設置し、専門的知見を有する第三者機関からの助言を定期的に受けつつ、人権デュー・ディリジェンスをはじめとした人権尊重の取り組みを推進しています。

 また、グローバルな事業活動を展開する上で、サプライチェーン全体での強制労働、児童労働、環境破壊行為などの世界的な社会問題が顕在化する中、「取引先に対するCSR ガイドライン」を策定しています。

 しかしながら、当社グループの事業活動において人権問題が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

(10)感染症(新型コロナウイルス感染症・インフルエンザ等)の流行によるリスクについて

 新型コロナウイルス感染症やインフルエンザを含む感染症の蔓延は、依然として、当社グループの全ての事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループは引き続き社内外への感染拡大防止と社員の安全確保を最優先に、船舶の安全運航を継続し、生活を支えるエネルギー、資源、その他物資の安定輸送に従事します。客船では、感染症分類変更により、新型コロナウイルス感染症に特化した対策は終了していますが、引き続き、従前からの感染症対策プランに則り手洗い、手指消毒などを実施し、商業クルーズを実施しています。

 しかしながら、特定の事務所において従業員の病欠者が増加し、サービスの提供が一時的に滞ることや、また、個別の船舶等において感染拡大することによって運航に影響が出ることや、感染拡大地域へのサービスの提供に影響が出るなど、当社グループの事業運営、業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

(その他経営全般に係るリスク)

(11)当社グループの重要課題「安全」「環境」「人材」について

 当社グループの船舶の安全な運航のためには、優秀な船員を確保することが特に重要となります。当社グループは、優秀な船員を確保するために、教育と訓練の提供及び多様な国からの採用など、様々な手段を取ってきましたが、将来において、適切な費用で必要な技術水準を持った船員を十分に確保できるという保証はありません。例えば、2008年のリーマン・ショック前の数年間、海上輸送への需要が高かった時期においては、船員を雇用するための人件費が大幅に増加しました。新型コロナウイルス感染症の再拡大や新たな感染症等の発生により、必要な船員を合理的な費用で雇用、維持、あるいは交代できない場合、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループが事業を行う各地域において、当社グループの船舶は安全運航及び海難事故の防止に関する国際法を遵守する必要があります。加えて、環境保護に関する地域固有の法令及び規制を遵守する必要があります。

 当社グループは、環境保全活動及び物流サプライチェーンの安全・保安対策の重要性を認識しつつ、グローバルに事業を展開・拡大しています。例えば、アンモニアや水素など将来代替燃料に向けた研究開発促進、LNG/LPG/メタノール燃料船建造の拡大、LNG燃料供給船建造の拡大、省エネ運航によるCO2排出量削減、バラスト水管理のための処理装置の搭載、藻、貝類等の船体付着物の移動防止に関する規制への対応、サイバーセキュリティ対策導入などを実施しています。

 今後、これらに関連する対策費用が増加した場合や、特定の地域における法令又は規制を遵守することが困難となった場合には、当該地域における当社グループの事業運営が制限され、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

(12)グローバルな事業展開による影響について

 当社グループの活動の範囲は、世界各地に及んでおり、各々の地域における経済状況等により影響を受ける可能性があります。具体的には、以下に掲げるいくつかのリスクが内在しています。

 ・政治的又は経済的要因

 ・事業・投資許可、租税、為替管制、国際資産の没収、独占禁止、通商制限など公的規制の影響

 ・他社と合弁・提携する事業の動向により生じる影響

 ・戦争、暴動、テロ、海賊、感染症、ストライキ、サイバー攻撃、その他の要因による社会的混乱

 ・地震、津波、台風等の自然災害の影響

 ・各国規制・制裁などの把握不全

 これらリスクに対しては、グループ内での情報収集、外部コンサルタント起用等を通じ、その予防・回避に努めていますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。船員を含む当社グループの従業員の一部は、労働組合に所属しており、当社グループの従業員によってストライキ、業務停止又はサボタージュが行われた場合、さらには北米の港湾施設など当社グループ従業員以外の第三者によるストライキ又は業務停止によっても、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。加えて、戦争や政治的な要因も、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、中東を含め世界中の紛争やテロ及びロシア・ウクライナ情勢等による治安・情勢不安・各国規制・制裁の強化等の影響を受けます。なお、ロシア・ウクライナ情勢の影響については、「第5 経理の状況  1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」をご参照ください。海賊被害は近年減少していますが、今もなお海賊行為が発生するマラッカ・シンガポール海峡、セルベス・スールー海、西アフリカ沿岸及びソマリア海賊襲撃エリアであるアラビア海、インド洋などを航行しています。なお、相次ぐホーシ―派の攻撃により、情勢が緊迫化している紅海・アデン湾においては、当社グループ船舶の航行を停止しています。当社グループでは、関係機関からの情報収集を行い海賊行為について対策を講じていますが、テロ及び海賊の襲撃を受けた場合、あるいは政情不安及び戦闘などが起こった場合、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。今後、これら水域が通常の戦争保険除外地域として指定された場合(一部水域は既に指定されています。)には、保険料の水準及び保険会社による保険金の支払いに影響を与える可能性があります。紅海・アデン湾・ソマリア沖における保険料率は常時変動しており、現状は値上げに動いています。また、物流事業等、特定の国において行う事業活動は、当該事業を行う国の治安・情勢不安等による事業環境の悪化により、事業の縮小、廃止、撤退等を決定する場合があり、その場合当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

(13)訴訟その他の法定手続の発生について

 当社グループの定期船事業、航空運送事業、物流事業、不定期専用船事業、不動産業、その他の事業の事業活動において、各種の訴訟や規制当局による調査及び処分に関するリスクを有しています。以下の事例も含め、訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、2012年9月以降完成自動車車両等の海上輸送について、主要自動車船社と共同して運賃を設定したとして、請求金額を特定しないまま損害賠償及び差し止め等を求める集団民事訴訟を、一部の地域にて提起されていますが、現時点ではこれらの訴訟の結果を合理的に予測することは困難です。

 なお、上記は当社グループが事業を継続する上で、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、これらに限定されるものではありません。

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