日本毛織
【東証プライム:3201】「繊維製品」
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企業概要
文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
ニッケグループは、長期安定的に企業価値を向上させるために、「経営理念」「経営方針」に則り、株主をはじめとする多様なステークホルダーの皆さまから信頼される経営を目指しております。
<経営理念>
”人と地球に「やさしく、あったかい」企業グループとして、
わたしたちは情熱と誇りをもってチャレンジして行きます。”
<グループビジョン>
・未開の分野に目を向け、「高機能商品」「地域NO.1サービス」の開発と提供へ挑戦し、みらい生活創造企業を目指します。
<経営方針>
・「全員がチャレンジ精神を持ち」「人が育つ」、生命力あふれた会社を目指します。
・お客様の声と研究開発から、独自性のある商品・サービスで市場を創造します。
・常に未来を見つめ、グローバルな視点に立ち、世界に広がるお客様と社会の発展に貢献します。
・多くの市場で勝ち抜くために、広く人財を求め、多様な「知」を結集して、事業を革新・発展させます。
・お客様や株主様、社員、取引先、地域社会をはじめとした様々なステークホルダーとの永続的な信頼関係を築くことにより、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。
(2) 経営環境
国内の経済環境は、雇用・所得環境の改善や企業業績の回復はあるものの、急激な円安による物価高により実質賃金の上昇には至らず、その回復ペースは緩やかな状況です。世界経済におきましても、中国の不動産不況や世界的な政情不安・地政学リスクの高まりから、先行き不透明な状況が継続しております。エネルギー価格の高騰や為替の変動に伴う仕入れコストの上昇、人手不足への対応など、今後も厳しい事業環境が続くと考えられます。
ニッケグループもこのような経営環境の影響を大きく受けておりますが、中長期的・グローバルな目線で変化を捉え、リスクに対処するとともに「チャンス」も認識し、RN130第3次中期経営計画を推し進めて参りました。
当社グループにおける環境認識は以下のとおりです。
<衣料繊維事業>
・主力である国内スクールユニフォーム事業は、少子化により市場規模が漸減していく。足元では欧州や中国の市況低迷はあるも、世界の衣料市場は拡大していく。
・国内産地の疲弊は更に進み、バリューチェーンの再構築が喫緊の課題となる。
・SDGsの意識の高まりにより、顧客の要望が多様化・高度化していく。環境配慮素材に対する需要は更に高まっていく。
<産業機材事業>
・中国市場は、自動車・環境・生活関連、何れの分野においても景気減速の影響を受けており、今後も当面継続する。一方、地政学リスクが比較的低い東南アジアや他地域への中国からの生産移転は続く。また、インフラなどの課題はあるも、インドは更なる発展が見込まれる。
・EV化などの技術発展によるビジネスチャンスは引き続き期待できる。家電・OA分野は、海外での堅調な需要拡大を見込む。
・環境意識の高まりと各地での規制強化が進み、環境関連の市場規模は伸長する。特に、リサイクルビジネスの需要は拡大が期待できる。
<人とみらい開発事業>
・商業施設では地域密着型ショッピングセンターは堅調に推移する。不動産開発では省エネビルなど資産価値を高めた物件の引き合いが増える。
・ライフサポート分野では、介護関連市場は引き続き拡大していく。スポーツ関連市場は、ゴルフはブームがピークアウトするも、テニスは今後も堅調な推移が見込まれる。
・各分野とも安定した事業拡大には、施設の計画的なメンテナンス実施、人財の確保と安定化、並びに運営力強化が喫緊の課題である。
<生活流通事業>
・Eコマース市場はあらゆる分野にすそ野が広がり、その利便性から拡大基調は続く。
・一方、Eコマースはボーダレス化が進み、海外勢やメーカー直販も含め競合が増加する。大手モールの交渉力がより強くなると共に、仕入品価格や物流費、広告宣伝費の上昇基調も続く。
<メディカル関連事業>
・国内外において、医療機器・医薬用品業界は拡大していく。
・長期的には再生医療分野の市場が拡大していく。
(3) 対処すべき課題
①RN130ビジョン第3次中期経営計画(2024~2026年度)の進捗
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(単位:百万円) | ||||
| 第2次中期 経営計画 | 第3次中期経営計画(2024年度~2026年度)※1 | ||||
| 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 | 2026年度 | ||
| 実績 | 計画 | 実績 | 計画 | 業績予想 ※2 | 計画 |
売上高 | 113,497 | 111,000 | 115,438 | 120,000 | 128,000 | 130,000 |
営業利益 | 11,016 | 11,000 | 11,640 | 12,000 | 12,000 | 13,000 |
経常利益 | 11,634 | 11,600 | 12,098 | 12,400 | 12,400 | 13,400 |
親会社株主に 帰属する当期純利益 | 7,643 | 7,700 | 8,970 | 7,800 | 8,500 | 8,800 |
※1 2024年1月12日公表
※2 2025年1月10日公表
(a)2024年度実績
RN130ビジョンの最終フェーズである第3次中期経営計画(2024~2026年度)は、グループビジョンに掲げる「みらい生活創造企業」の具現化を目指して、着実に「前年よりも成長」し、過去最高の売上高・各利益の更新を目標に、その初年度をスタートしました。
その結果、人とみらい開発事業での事業ポートフォリオの見直しによる減収はあったものの、産業機材事業や生活流通事業での新規M&A会社の業績寄与、並びにショッピングセンター・FA設備など、既存事業が好調に推移し、売上高・営業利益は4期連続の増収増益を達成、営業利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高益を更新しました。
厳しい経営環境変化のなか、事業ごとに好不調の波はありますが、これらが相互補完することにより営業利益は継続して110億円台を維持し、強靭な企業グループの構築が進んでおります。衣料繊維事業では、円安に伴う羊毛原料価格高騰やエネルギー費など各種コストアップはあるものの、ユニフォーム事業における値上げ効果や筋肉質な経営体制の構築により高い利益率を維持しました。産業機材事業では、自動車・半導体向けを中心に、FA設備の受注が好調に推移しました。また、不織布事業を強化するため、アンビック株式会社と株式会社フジコーの経営統合、および株式会社カンキョーテクノと呉羽テック株式会社のグループ化を推進しました。人とみらい開発事業では、不採算事業の再編を進めるとともに、ショッピングセンターや保有不動産の付加価値向上と低効率資産の再開発・処分を進めました。生活流通事業では、災害用毛布やコンテナ、クラフト用スタンプ・インクなどの販売が好調に推移しました。Eコマースビジネスは競争の激化とコストアップにより低調でしたが、今後の再成長を目指し、独自商品の開発力強化や物流機能の強化を推進しました。メディカル分野では、主力商品の販売拡大と自社開発品の市場投入を進め、営業利益増につなげました。
(b)基本戦略の進捗
(ⅰ) 成長事業や新規事業・合理化への資源の重点配分および海外ビジネスの拡大
<衣料繊維事業>
・成長ドライバーの育成については、海外でのファッション向けテキスタイル販売の拡大を目指し、欧州や中国での展示会出展などプロモーション強化による認知度向上に努めています。また、当社独自開発糸を用いたニット製品の販売については、アウトドア市場での拡販を実現するため、有力ブランドとの取り組みを強化しています。
・合理化への資源配分については、省エネ・省人化を目指した製造設備への投資、並びにバリューチェーンの生産性向上を目指したデジタル化に取り組んでいます。
<産業機材事業>
・成長ドライバーの育成については、当社グループがターゲットとする、自動車・環境関連市場向けの不織布事業を強化し、ユニフォーム事業、不動産開発事業に続く第三の柱として育てるべく、アンビック株式会社と株式会社フジコーを統合して株式会社エフアンドエイノンウーブンズを立ち上げ、経営の合理化を進めました。また、株式会社カンキョーテクノと呉羽テック株式会社のグループ化により、不織布事業の規模を拡大すると共に、東南アジアや北米など海外販売拠点の拡充も推進しました。
・新規事業として、リサイクルビジネスへ本格参入し、回収した古着からジッパーやボタンなどの異物を自動除去する設備の導入決定や、古着を反毛して再生した繊維を活用した新商材の開発に注力しました。
<人とみらい開発事業>
・商業施設運営分野については、ニッケコルトンプラザにおける2022年度秋のリニューアル効果が今期も継続し、顧客満足度と収益性の向上に寄与しております。
・不動産開発分野においては、八重洲通フィルテラス(旧ニッケ東京ビル)や一宮遊休地の開発、神戸本店ビルの改修、並びに伊丹土地開発の検討着手など、保有不動産の資産価値向上への取り組みを推進しました。また、省エネ・再エネなど環境に配慮した施設作りを行い、ZEB Ready・ZEH認証を取得した開発も進めております。
<生活流通事業>
・競争が激化するEコマース分野は、家具・寝装品・アイデア家電などの分野を中心に、独自商品による差別化を図るべく、SPA(製造小売り)のバリューチェーン構築を推進しました。
・また、EC事業に適した物流基盤の構築についても、検討を進めています。
<メディカル分野>
・生体吸収性シート「Pawdre®」や腹腔鏡手術用マルチポート「Dome Port™」などの新規開発品を市場に投入し、拡販に注力しました。
・また、今後の市場拡大が予想される再生医療分野においては、細胞培養用ゼラチン繊維基材「Genocel®」を活用した産学連携での臨床研究など、用途開発を推進しました。
(ⅱ) 資本効率の改善
・不採算事業の見直しによる事業ポートフォリオの最適化や、低収益不動産の処分を継続して実施しております。
・新規投資案件については、ROICを指標とした投資判断を継続しております。(目標8%、最低5%以上)
(ⅲ) 事業部内・事業部間におけるシナジー効果の創出
・衣料繊維事業においては、海外テキスタイル拡販に向けた展示会の共同出展など、グループ会社間の連携強化や、生産工程の省人化に向けた設備投資、およびバリューチェーンのデジタル化を推進しております。
・産業機材事業においては、アンビック株式会社と株式会社フジコーの統合による生産および管理機能の効率化、並びにグループ化した呉羽テック株式会社、株式会社カンキョーテクノを含めたバリューチェーン合理化を進めております。
・資源循環システムにおいては、衣料繊維事業と産業機材事業が協働し、衣料品や副産品の回収、異物の除去、反毛などのスキーム構築を進めております。
② 2025年度の施策について
2025年度は、RN130ビジョンの最終フェーズ「第3次中期経営計画」における中間点であり、ビジョン達成に向けた大切な一年となります。一方、国内外の経済環境は先行き不透明な状況が続いており、今後も更に厳しさが増すことが想定されます。この様な環境変化にしなやかに対応することで、過去最高の売上高・各利益を更新すると共に、2026年度のビジョン実現を見据えた各施策を実行してまいります。
グループ全体の重点方針は以下のとおりです。
・3つの成長投資の加速(商品開発や合理化・省エネ設備への投資、顧客拡大投資、人財投資)
・海外事業拡大への挑戦
・人的資本の拡充(チャレンジする人財の育成、多様な能力の活用など)
・資本効率を意識した運営(構造改革の推進、不採算物件の再開発・処分、ROIC・ROEの向上など)
・地政学リスクや為替の変動を踏まえた強固なバリューチェーンの構築(国内外)
・サステナブル経営への取り組み(SDGs、CO2削減活動、災害ゼロへの取り組み、など)
これらを踏まえた、各事業で取り組む施策は以下のとおりです。
<衣料繊維事業>
・海外市場での拡販に向けた、「ニッケ」ブランドの浸透と価値向上。最終消費者を意識したマーケティング戦略の確立。オリジナル糸の開発・販売強化。
・垂直・水平連携を意識したサプライチェーンの構築と整流化。グループ会社間の連携強化。
・糸・生地・縫製品など様々な段階での商品提供機能の実現。バリューチェーンのデジタル化による生産管理強化と生産・販売の最適化。
・サーキュラーエコノミーの仕組み構築による販売拡大。
<産業機材事業>
・不織布事業の収益性向上。グループ会社間の連携強化によるシナジーの追求。
・海外拠点の設備投資および海外販売の拡大。
・新規事業としてリサイクルビジネス(古着反毛・新たな用途開発)への本格参入。
<人とみらい開発事業>
・ショッピングセンターでの新店導入による魅力アップ。
・不動産開発案件のスピードアップと収益化(東京ビル・伊丹・夙川の再開発など)。低収益不動産の再開発による資産価値の向上。
・ライフサポート分野(スポーツ・介護・保育)は、低収益事業所の見直し、人財確保と育成による安定化、並びにDX化による効率的運営を推進。
<生活流通事業>
・Eコマースビジネスにおける、商品企画・製造、コンテンツ制作、広告・販促施策、物流など、バリューチェーンを自社グループ内で完結できるSPA(製造小売り)機能の強化。
・グループ各社の連携強化による海外での拡販。
<メディカル分野>
・戦略商品(Pawdre®)および新商品(Dome Port™、穿刺ガイド、人工硬膜等)の拡販
・再生医療領域への挑戦(Genocel®、Pawdre®)
③ 成長投資と株主還元について
(ⅰ)成長投資と安定的な株主還元のバランスを志向します。
(ⅱ)成長投資については、研究開発投資、M&A投資、設備投資、人財投資など、中長期的な企業価値向上の観点から積極的に実行します。
(ⅲ)株主還元
・配当性向については現行の30%程度から順次切り上げ、第3次中期経営計画最終年度での35%を目標とします。なお、2024年度の配当性向は30.7%となりました。
・投資の進捗も鑑み機動的な自己株式取得を行い、総合的な株主還元を充実させてまいります。
厳しさと不確実性が増す経営環境下ではありますが、第3次中期経営計画を推進しRN130ビジョンの具現化を目指します。そして、その先の中長期ビジョンに向けた「ありたい姿」も描くと共に、自社のパーパス(存在意義)を改めて見つめ直すことで、地球環境も含めた各ステークホルダーから信頼され「人が集まる」魅力的な事業の創造に努めてまいります。
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