日本化薬 【東証プライム:4272】「化学」 へ投稿
企業概要
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナブル経営基本方針
私たち日本化薬グループは、企業ビジョンであるKAYAKU spiritのもと、経営の透明性・公正性を確保し、事業活動を通じて持続可能な環境・社会の実現に貢献することで、すべてのステークホルダーの信頼に応えるサステナブル経営を実践します。
(2) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社グループは取締役会の直接監督のもと、代表取締役社長を議長とするサステナブル経営会議を設置し、グループ全体でサステナビリティの取組を推進しております。サステナブル経営会議は、原則として週1回開催しており、企業・社会・環境のサステナビリティ全般に関わる事項の審議及び報告を受けております。審議事項はサステナブル経営会議の承認を経て、取締役会に審議・報告しております。コーポレート・ガバナンス体制の一環として、倫理委員会、危機管理委員会、環境・安全・品質経営推進委員会、研究経営委員会の4委員会を設置しております。各委員会は定例かつ必要に応じて開催し、サステナブル経営会議へ審議及び報告することにより、経営の透明性・公正性を確保しております。
(3) 重要なサステナビリティ項目
上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
① 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応
当社グループは化学製品を創出する企業として気候変動を国際社会の重要な課題と認識し、地球環境への責任を積極的に果たしていくべきと考えております。2020年7月には温室効果ガス削減の中期環境目標を定め、サステナブル経営を一層推進する中期事業計画KV25の開始に合わせて、2022年3月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しました。
気候変動対応チームは、2050年のカーボンニュートラル達成を基本的な方針として、全社的な温室効果ガス削減の取組を進めております。計画の推進にあたっては、従来からの省エネルギー活動を深化させるとともに、新たに分散型電力を導入する環境投資や、エネルギー転換のための技術的調査などを、計画的かつ着実に実施する必要があります。また、生産部門だけではなく、事業部門はもとより調達や情報開示に係る間接部門を含めて、全社一丸となって取り組むことが重要と考えております。
当社グループは気候変動対応の活動を通じて、持続可能な社会実現と将来の事業機会創出の双方を追求することにより、更なる企業価値の向上を目指しながら、グローバルな環境問題の解決に貢献してまいります。
<ガバナンス>
当社グループは、代表取締役社長を議長とするサステナブル経営会議において、将来の気候変動対応を含む事業計画等の審議及び活動状況の総括・評価を行っております。これらの審議、総括・評価の結果を取締役会へ報告し、取締役会の監視・監督を受ける体制としております。また、気候変動対策の推進を統括する環境・安全・品質経営推進委員会(委員長:生産技術本部長)を組織し、グループ横断的な視点から、気候変動に関する課題についてより深めた議論を行っております。
<戦略>
当社グループでは、複数の事業をグローバルに展開しており、事業分野ごとに様々なリスクと機会を有しております。気候変動がもたらす各事業への影響を特定するため、TCFD提言に沿ってグループ全体の気候関連のリスクを評価し、さらに事業分野ごとの機会を検討しました。気候関連のリスクと機会を特定するにあたっては、リスクが出現する時期を以下のように定義しております。
| 期間 | 採用した理由 |
短期 | 2025年度まで | 2022年度よりスタートした中期事業計画 KAYAKU Vision 2025(KV25)の期間を設定 |
中期 | 2030年度まで | 日本化薬グループの中期環境目標で定める2030年度目標に合わせて設定 |
長期 | 2050年度まで | NDC(国が決定する貢献)目標年に合わせて設定 |
気候関連の事業リスクについては、2℃シナリオと4℃シナリオの二つのシナリオに関して、国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による代表的濃度経路に関する将来シナリオ(RCP2.6,8.5シナリオ)、並びにIEA(国際エネルギー機関)によるSDS(持続可能な発展シナリオ)及びSTEPS(公表政策シナリオ)に基づき特定しました。
2℃シナリオにおける脱炭素経済への移行のリスク
カテゴリー | 主なリスク | リスク | 財務影響 | 主な対策 |
政策及び | 排出規制強化の影響による操業コスト増大 | 短期~長期 | 中 | 各拠点への太陽光発電、高効率コジェネ発電などの分散化電源の導入 MFCAの活用によるマテリアルロスの削減や徹底した省エネ活動 |
電力及びLNG(液化天然ガス)等の価格上昇 | 短期~長期 | 中 | ||
排出規制強化の影響による原料価格上昇 | 短期~長期 | 中 | エンゲージメントを通じたサプライヤーの排出削減推進 | |
市場・評判 | 環境情報開示及びLCA(ライフサイクルアセスメント)算定等のコスト増加 | 中期~長期 | 小 | 各拠点からの排出量集計方法の合理化やLCA算定のシステム化 |
4℃シナリオにおける物理的影響リスク
カテゴリー | 主なリスク | リスク | 財務影響 | 主な対策 |
急性的・慢性的な物理的リスク | 台風、大雨、高潮等による洪水被害によるコスト増加 | 短期~長期 | 中 | 工場を新設する際には、洪水被害を想定し、立地条件や設備の構造、配置を考慮 |
水不足による操業への影響 | 中期~長期 | 小 | 生産に使用する水の節水対策の強化や、水のリユース、リサイクルの検討 | |
気温上昇による労働生産性の低下 | 中期~長期 | 小 | 空調の強化などによる労働環境改善や、高温工程の自動化の推進 |
<リスク管理>
当社グループは、気候変動関連のサステナビリティ重要課題として「エネルギー消費量と温室効果ガス排出量の削減」を特定しております。取締役会、サステナブル経営会議、環境・安全・品質経営推進委員会で構成されるガバナンス体制のもと、気候変動対応チームが中心となって、気候変動リスクの特定・評価を行なうとともに、省エネや環境投資を積極的に推進するなど、具体的な計画を実行しております。
<指標及び目標>
当社グループでは、気候変動のリスクに対する指標として、2030年度にグループの温室効果ガス排出量(Scope1及び2)の2019年度比32.5%削減をKPI(長期環境目標)としております。この達成のためにまず、KV25中の毎年の排出削減率3%を目指します。2030年以降、更なる削減を推進するために、サプライチェーン全体で削減を目指すための検討や、水素やアンモニアといったグリーンエネルギーへの転換に向けた事前調査などを行動計画に加えて、2050年のScope1カーボンニュートラルを目指します。
項目 | 目標(2019年対比) | 2022年度 |
Scope1及びScope2 | 2030年度までに温室効果ガスの排出量を32.5%削減し、排出量88,324 t-CO2以下とする | 108,039 |
|
|
Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
※2022年度は第三者検証中であり、速報値となります。確定値は第三者検証後に当社ホームページ(https://www.nipponkayaku.co.jp/)のサステナビリティサイトにて公開されます。
② 人的資本経営の取組
当社グループが、社会に対して果たすべき責任の一つは従業員の雇用の維持です。さらに事業活動の拡大を通じて雇用を増大させることが、当社が社会に存在する意義と考えます。
当社の成長の源泉は従業員の成長であり、従業員が最も重要な資産と考えております。自ら「成長したい」「学びたい」従業員に支援を行うことを通じて人材育成を図ってまいります。新たに人事制度にチャレンジ項目を取り入れ、従業員一人ひとりが個性を磨きながら知識と能力を伸ばす仕組みづくりを進めております。また、各種研修によるサポート体制も充実しており、仕事を通じて成長するための自律的変化を後押しし、個人の希望に沿った多彩なキャリアの実現を支援してまいります。
<ガバナンス>
当社グループは、代表取締役社長を議長とするサステナブル経営会議において、人的資本経営の取組等の審議及び活動状況の総括・評価を行っております。これらの審議、総括・評価の結果を取締役会へ報告し、取締役会の監視・監督を受ける体制としております。
<戦略>
当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
人材育成方針
私たちは、企業ビジョンであるKAYAKU spiritのもと、サステナブル経営の実践を通じて、環境・社会的価値及び経済的価値を創造し、持続可能な環境・社会の実現と企業価値の向上を目指しています。
当社は、KAYAKU spiritを実現するために以下に掲げる人材育成方針を定めています。
・創造性・専門性を高め、自ら主体的に行動できる自律型人材の育成
・失敗を恐れず、環境変化に対し果敢にチャレンジできる人材の育成
・グローバルな視点を持って活躍できる人材の育成
人材育成方針を実現するために、当社は階層別集合教育や選抜教育、eラーニングなどさまざまな研修プログラムを用意し、人材の育成強化を推進しています。
社内環境整備方針
当社は、従業員がKAYAKU spiritに共感し、経営陣と相互に信頼し合いながら、やりがいや熱意を持ち活き活きと仕事ができるように、多様性を確保し、働きやすく働きがいのある職場風土を醸成して、従業員エンゲージメントを高めることを重視しています。
人事制度としては、年齢や性別、キャリア、学歴、国籍などにこだわらない職務配置と処遇を可能にする「ポジションクラス(職務等級)制度」や、管理職への登用において自発的にチャレンジできる制度を設け、役割と責任に基軸をおいたシステムを導入しています。
人材育成においても自ら「成長したい」「学びたい」従業員をサポートすることを通じて、従業員一人ひとりの自律的な成長を促し、個人の希望に沿った多彩なキャリアの実現を支援してまいります。
(注)方針は提出会社となります。
当社の具体的な施策は次のとおりであります。
男女共同参画
仕事と生活、子育て等の調和を図り、働きやすい職場環境の整備を行う次世代育成支援対策行動計画を策定し、男性の育児休業取得の推奨などの具体的な施策を実施して、継続的・発展的に女性の活躍を推進しております。
次世代の人材育成
次世代経営幹部の育成を目的とする日本化薬経営スクール(NBA)を実施しております。2001年を第1回として今年度で13回目を迎え、多くの経営幹部を輩出しております。
グローバル人材の活躍推進
当社グループは日本よりも海外従業員の数が多い人員構成になっております。このような環境で素早く的確に企業としての活動を進めるために、国内外という意識を取り払いグローバルな視点を持って、世界中どの場所でも活躍できる人材の育成が重要と考えております。働き方改革チームでは、KV25においてグローバル人材の育成強化の取組を始めました。海外勤務経験者や次世代の当社グループ経営幹部を育成する目的で実施している選抜研修のNBA受講者等を母集団として海外志向性の強い人材をリストアップするとともに、グローバル人材としての新卒採用及びキャリア採用を進めていきます。また、新たにグローバル人材育成プログラムを策定し、グローバルで活躍する人材の質・量の充実を目指しております。OJTや拠点ローテーション、複数の海外赴任を組み合わせるなど育成プログラムをより効果的なものになるように強化し、赴任前教育や異文化、商習慣についての教育などのサポート体制の拡充にも取り組んでおります。さらに、海外グループ会社の現地採用者の中からもグローバル人材を育てるために、経営方針の浸透と理解を進め、海外従業員へのサーベイによって、キャリア志向を調査・分析しております。KV25の重点課題として、このような育成・採用体制の確立に注力してまいります。
適切な人材配置 ~人材情報の見える化~
人材情報を見える化し、タイムリーで的確な人員配置を可能にすることを目的として、タレントマネジメントシステムを導入しました。マニュアル整備と従業員向け説明会を行い、2022年9月から運用を開始、適宜人事関連活動への適用を拡げていきます。評価履歴や自己アピール、資格、語学スキル、海外志向性、現職への適性などのデータを簡単に素早く把握できるほか、従業員の意識調査を行う手法の一つであるパルスサーベイによる従業員満足度・健康度の可視化や人事評価もシステム上で完結できるようになり、人事情報を一元管理することで、「働きやすく働き甲斐のある職場風土の醸成」や「グローバル人材の育成」と連携しやすくなります。教育・研修や1on1ミーティングと組み合わせて活用し、一人ひとりのキャリアビジョンを可視化することで人材の活躍を推進していきます。
<リスク管理>
人材の流動化が高まる中、採用競争力が低下して計画通りの人材獲得が進まなくなること、離職により組織の総合力が低下することが最大のリスクと考えております。当社グループの活動の主役は“人”であるとの考えの下、サステナビリティ重要課題として従業員一人ひとりの人権を尊重し、安心して働ける職場の中で仕事を通して成長することができる会社を目指して、働き方改革を推進することでリスク低減に努めております。取締役会、サステナブル経営会議で構成されるガバナンス体制のもと、働き方改革チームは、誰もが公平にチャレンジでき、公正に結果を評価されることにより、適正な配置・処遇につなげ、実感を伴う幸福感が得られる人事制度へ向けて改革を進めていきます。2021年度から2022年度にかけては、コロナ禍における働き方の変化に対応するべく速やかに制度を整備し、多様な働き方に対応するとともに、グローバル人材の活躍推進及び適切な人材配置の強化に注力しております。
<指標及び目標>
上記「戦略」において記載した当社の人材育成方針及び社内環境整備方針に係る指標の管理と具体的な取組は当社では行われているものの、当社グループ全体としての記載は困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は提出会社のものを記載しております。
当社において、指導的立場にある女性人材の割合を示す「女性管理職比率」をダイバーシティ推進のKPIとして追跡しております。少子化が進む日本においては、女性活躍の場を増やすことが社会的な課題です。女性が働きやすい環境を整備し、女性管理職を増やすことを目指しております。女性管理職比率は2024年度の目標を10.0%と定めており、2022年度実績は9.0%となっております。
男女共同参画のKPIとして、男性の育児休業取得率を追跡しております。男性の育児休業取得率は女性に比べて低いのが実情ですが、男性の育児休業取得を促進することで従業員の働き方やキャリア人材の獲得等へよい効果をもたらすと考え積極的に促進しております。プラチナくるみんの特例認定基準である50%を目標に設定しましたが、男性の育児休業取得を推進するための社内整備を更に進めた結果、2022年度実績は目標を超える69.6%となっております。
また、ワーク・ライフ・バランスの充実のKPIとして、有給休暇取得率を追跡しております。2021年度までの5年間、有給休暇取得率は約60%となっており、従業員の生産性及びモチベーションの向上、また優秀な人材の獲得には有給休暇取得率の向上が必要であると考えております。
| 指標 | 目標 | 実績(当事業年度) |
ダイバーシティの推進 | 女性管理職比率 | 2025年3月までに10%以上 | 9.0% |
男女共同参画 | 男性の育児休業取得率 | 2025年3月までに50%以上 | 69.6% |
ワーク・ライフ・バランス | 有給休暇取得率 | 2026年3月までに70%以上 | 63.7% |
「男女間賃金格差」の実績につきましては、第一部「企業情報」第1「企業の概況」の5「従業員の状況」に記載しております。
- 検索
- 業種別業績ランキング