日本冶金工業 【東証プライム:5480】「鉄鋼」 へ投稿
企業概要
当社は、目指すべき姿として強靭でしなやかな「レジリエントカンパニー」の実現を掲げ、持続可能な社会の構築を目指すとともに、当社グループ自らの持続可能性を高める取り組みを進めております。加えて、足元ではSDGs(持続可能な開発目標)やカーボンニュートラルなど社会のサステナビリティに対する要求が高まるなど、外部環境が大きく変化しています。そこで、これに対応すべく当社が今後取り組むべき課題を抽出し「重要課題」として特定しております。当社はこれらの重要課題を企業の成長戦略と捉えるとともに、課題解決を通じて持続可能な社会の実現を推進いたします。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
重要課題1 | 社会に貢献する商品の提供 |
重要課題2 | 事業活動を通じた地球環境への負荷低減 |
重要課題3 | 安全で安定したモノづくりの実現 |
重要課題4 | 全ての人に平等で働きがいのある職場づくり |
重要課題5 | 持続可能なパートナーシップの構築 |
重要課題6 | 社会環境に適合したコーポレート基盤の進化 |
1.気候変動
当社は、気候変動問題への対応を経営課題の一つと捉えており、サステナビリティ推進会議を中心に推進しております。具体的には、シナリオ分析を行い、気候変動に伴うリスクと機会を評価し、その結果をサステナビリティレポート等で開示しております。
(1)ガバナンス
当社は、サステナビリティに関わる重要課題を全社的取り組みとして推進するため、社長を議長とする「サステナビリティ推進会議」を設置しております。サステナビリティ推進会議は、サステナビリティに関わる重要課題について特定するとともに、各部門および各常設委員会(環境委員会、開発委員会、コンプライアンス委員会、IR委員会、NASグループ品質保証委員会、規制輸出等管理委員会)のサステナビリティに関わる重要課題について、トップマネジメントとして全社横断的に、活動内容の評価、戦略の推進を行うことで、当社のサステナビリティの取り組みを牽引しております。
気候変動に関しては、前年度のCO2排出量実績(スコープ1+2)、スコープ3の算定、TCFDシナリオ分析結果等について報告し、また適宜取締役会でも報告しております。
スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
スコープ2:他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出
スコープ3:スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
(2)戦略
①カーボンニュートラルへのロードマップ
当社では、2050年度を見据えたカーボンニュートラルへのロードマップを策定しております。スコープ1では、大江山製造所のリサイクル原料の使用拡大と、カーボンレス操業技術の確立を目指しております。燃料に関しては当面はLNGなどへの燃料転換を進め、その後は合成メタンや水素など新しい燃焼システムの導入を図ってまいります。スコープ2では、まず2022年1月に稼働した高効率電気炉設備(E炉)の省エネ効果の刈取りを行っております。またインバーター化など、エネルギー効率化に向けての設備更新と並行して、グリーン電力の活用を検討しております。そして、あらゆる省エネを行った上で生産プロセス上削減できないCO2については、カーボン・オフセットも検討いたします。
②取り組み状況
当社は、事業活動のあらゆる面で徹底した省エネを推進しております。川崎製造所では、設備のインバーター化、照明のLED化などに加え、省エネ性能に優れた高効率電気炉設備を導入しました。2021年度から電力需給変動に対応してフレキシブルに操業パターンを変更する、いわゆるデマンドレスポンスの運用を始めました。また2022年度から、CO2排出量の増減を伴う設備投資について、社内で炭素価格を設定し、CO2排出量を仮想的に費用換算するインターナルカーボンプライシング(ICP)制度の運用を始めております。
また大江山製造所では、ステンレスの原料となるフェロニッケルを製造していますが、「カーボンレス・ニッケル製錬への挑戦」を公表※し、リサイクル原料(都市鉱山)の使用拡大による燃料原単位の改善や、CO2排出量の抑制を進めております。
※「カーボンレス・ニッケル製錬への挑戦」の内容の詳細につきましては、
当社ウェブサイト(https://ssl4.eir-parts.net/doc/5480/tdnet/2099171/00.pdf)をご参照下さい。
(3)リスク管理
気候変動に伴うリスクと機会は、当社が持続可能であるためにも重要な課題であると認識しております。そこで気候変動財務情報開示タスクフォース(以下「TCFD」という)の提言に沿ったシナリオ分析を行った結果、カーボンプライシングの追加負担発生による製造コストの増加や、電力や燃料価格の上昇は、当社にとって大きなリスクと評価されました。今後も、IEA World Energy Outlookなど最新の情報を入手し、年1回を目処にサステナビリティ推進会議にて議論し、必要に応じて見直しを行ないます。なお当社は、2022年9月にTCFD提言への賛同を表明しております。
| インパクト 評価項目 | 影響評価 | リスクと機会 | 対応策 | |
4℃ | 1.5℃ | ||||
移行 リスク | カーボンプライシングの導入 | -
| ▼ 大きい | ・カーボンプライシングの追加負担発生による製造コストの増加 | ・省エネ、カーボンニュートラルへの設備投資と操業改善の推進 ・水素、アンモニア、合成メタン、バイオ燃料などへの燃料転換 ・カーボンレスなニッケル製錬技術の開発 |
カーボンニュートラルを目指した社会への移行 | -
| ▼ 大きい | ・電力や燃料価格の上昇 ・原料価格・輸送費などの調達コストの上昇 | ・操業における省エネ施策の推進(エネルギー原単位向上) ・コストを勘案した適正な製品価格形成 | |
- | ▼ | ・CO2排出量削減のための設備投資額増加 | ・環境負荷低減効果も織り込んだ投資判断の実施 ・投資コストを勘案した適正な製品価格形成 | ||
- | ▼ | ・CO2排出量の多い需要分野の縮小または消滅(低効率石炭火力用FGD、ボイラー、EGRなど) | ・顧客のニーズに合わせた環境適合型商品の開発 ・水素、再エネ、EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)、二次電池、CCUSなど新規需要捕捉に向けたソリューション営業
| ||
-
| ▲ 大きい | ・環境・エネルギー分野など新たな需要の取り込み | |||
- | ▼ | ・リサイクル原料の需給タイト化 | ・高効率電気炉設備によるリサイクル原料利用の多角化 ・安価な調達ソースの確保(大江山製造所) | ||
物理的リスク | 異常気象による事業への影響 | ▼ 大きい | ▼ | ・自然災害(豪雨・強風・高潮など)が多発かつ激甚化による生産停止、サプライチェーンの分断、物流停止 | ・自然災害対策(設備点検、強化、BCP対応など)の検討、実行 ・生産受委託など他社との設備の相互有効利用 ・国内資源の活用、物流(販売・調査)ソースの安定確保などサプライチェーン整備、多様化 |
気温上昇に伴う職場環境の悪化 | ▼ | - | ・感染症・熱中症など健康被害の発生リスクの増大 | ・作業環境改善、省力化投資の実行 ・感染症、熱中症対策BCPの強化 |
▼:リスク、▲:機会、-:影響がないまたは小さい
(4)指標及び目標
①CO2排出量削減目標
当社は、気候変動の影響による自然災害の深刻化やそれに伴う脱炭素社会への移行の世界的な流れを踏まえ、2030年度CO2排出量削減目標(スコープ1+2)を46%(2013年度対比)と設定しております。またカーボンニュートラル社会の実現に向け、2050年度実質ゼロを目指してまいります。またNASグループ全体としても、2030年度CO2排出量46%削減を達成できるよう推進してまいります。
②CO2排出量実績(スコープ1+2)
2021年度のCO2排出量は、川崎製造所と大江山製造所を合わせた当社(単体)は411千t-CO2、NASグループ全体では443千t-CO2となりました。CO2排出量は、生産量の影響を大きく受けますが、原単位を着実に下げていくことで、削減目標を達成すべく取り組んでまいります。
CO2排出量実績(スコープ1+2)
| 2013年度 (千t-CO2) | 2021年度 (千t-CO2) |
当社単体 | 768 | 411 |
当社グループ(当社を除く) | 44 | 32 |
販売量1t当たりの原単位
| 2013年度 (t-CO2/t) | 2021年度 (t-CO2/t) |
当社単体 | 3.03 | 1.83 |
③サプライチェーン全体のCO2排出量(スコープ3)
事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関係するサプライチェーン全体のCO2排出量を把握するため、環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.4)」に基づいて、当社のスコープ3排出量の試算を行いました。
スコープ3の合計は669千t-CO2で、当社のスコープ1+2のおよそ1.5倍となりました。またカテゴリー別ではカテゴリー1「購入した製品・サービス」が全体の75%を占めております。
CO2排出量(スコープ3)
カテゴリー | CO2排出量 (千t-CO2) | 構成比 |
1.購入した製品・サービス | 502 | 75% |
2.資本財 | 39 | 6% |
3.スコープ1,2に含まれない燃料およびエネルギー活動 | 38 | 6% |
4.輸送、配送(上流) | 89 | 13% |
5.事業から出る廃棄物 | 0.7 | 0% |
6.出張 | 0.1 | 0% |
7.雇用者の通勤 | 0.3 | 0% |
計 | 669 | 100% |
排出原単位の出典:①サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.2)、②IDEAv2(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)
なお、CO2排出量の2022年度実績は集計中であり、2023年9月末発行見込の統合報告書2023にて開示する予定であります。
※統合報告書の詳細につきましては、当社ウェブサイト(https://www.nyk.co.jp)をご参照下さい。
2.人材育成方針及び社内環境整備方針
(1)人材育成方針
直面する様々な経営課題に取り組み、さらなる企業価値の向上を実現するため、当社の行動指針を体現できる人材を育成いたします。
<当社の行動指針>
Ⅰ.法令を遵守し、社会ルールを尊重し、社会的良識を以って行動をする。
Ⅱ.変化には、知力を凝らし、進取の精神を以って挑戦する。
Ⅲ.目標は、万難を排し、勇気を以って遂行する。
Ⅳ.多様と異質を尊重し、協和の心を以って総合力を発揮する。
具体的には、以下のような多様で充実した学ぶ機会を提供いたします。
・様々な業務経験と個々の力量に応じた職場OJT、階層別教育
・業務に係わる知識および技能習得のための定期的な研修
・自分の得意分野や興味のある分野を学ぶための自己啓発支援
・高い技術力や専門性を高めることに加えて社外における幅広い経験を得るための、海外派遣や国内大学等で学ぶ機会
(2)社内環境整備方針
従業員一人一人が自己の能力を十分に発揮し、やりがいをもって伸び伸びと業務に取り組むため、安心して働ける社内環境を整備いたします。
具体的には、以下のような施策に取り組んでまいります。
・性別、年齢等の異なる属性の従業員が働く中、職場のコミュニケーションを円滑にするための制度
・学歴や入社経緯に関わらず能力を十分に発揮するため、様々なキャリアに挑戦できる制度
・ハラスメント防止、育児・介護休業制度の整備
・従業員のライフステージが変化することを踏まえた、労働時間を含めた働き方改革
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