日本アジア投資 【東証スタンダード:8518】「証券業」 へ投稿
企業概要
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
1 経営方針
当社グループは、「日本とアジアをつなぐ投資会社として少子高齢化が進む社会に安心・安全で質と生産性の高い未来を創ります」を経営理念として掲げ、全てのステークホルダーへの利益還元を果たして参ります。
2 経営環境と対処すべき課題
A:中期経営計画(2022年3月期から2024年3月期まで)
当社はこれまで、2022年3月期から2024年3月期までの中期経営計画を遂行して参りました。当該計画における経営環境と対処すべき課題は、次のとおりです。
(1)外部環境の認識
当社はこれまで、経営理念のもと、少子高齢化問題及び地球温暖化問題、特に原発問題を抱えた日本固有のエネルギー問題を重要なテーマとして位置付けて事業を行ってまいりました。これらの問題は、社会の在り方、個人生活、企業行動に変化を与え、技術革新をもたらしています。加えて、今般の新型コロナウィルス感染症の災禍により、これらの変化が加速しました。
そこで当社は、従前の課題に加えて新型コロナウィルス感染症が今後引き起こすであろう変化も踏まえ、投資分野別の外部環境を次のように認識し、これに対応した事業活動を行う計画です。
①再生可能エネルギー
脱炭素社会に向けて再生可能エネルギーによる発電が加速し、全世界で域内のCO2排出実質ゼロに向けた取り組みが進むと認識しています。
②スマートアグリ(植物工場)
温暖化による天候不順、自然災害の影響や農業人口の高齢化の影響から、露地野菜の供給の量・質・価格が不安定となり、工場野菜の市場規模は拡大していくと認識しています。
③ディストリビューションセンター(物流施設)
東京圏は、物流拠点の集約とEC市場の拡大により空室率が過去最低水準であり、賃料相場は2009年以来の高水準となっています。コロナ禍による巣ごもり需要も加わり、物流施設に対する需要は非常に高いと認識しています。
④ヘルスケア(障がい者グループホーム)
2013年に障碍者総合支援法が施行され、グループホームの利用者が増加しています。多様性を尊重し包摂的な社会を築く上で、今後さらに需要が高まると認識しています。
⑤ヘルスケア(高齢者施設)
国内総人口が減少する一方で高齢者人口は増加し、65歳以上の比率は2025年には30%に達する見込みであり、今後も高い需要が続くと認識しています。
⑥M&A仲介
後継者問題や企業の海外進出の活発化によりM&Aの件数は増加傾向にあり、特に中小の件数は大幅に増加しています。今後も高い需要が続くと認識しています。
(2)当社の投資事業の特徴
当社のプライベートエクイティ投資の特徴は、長年の投資活動を通じて蓄積されたノウハウに基づく上場支援に加え、広いネットワークを活用した海外展開支援や営業支援を行う点です。そのために、中国の政府系機関やアジア諸国のパートナー企業と業務提携などを行い、アジアのネットワークを構築しています。加えて、プロジェクト投資のパートナーであるベンチャー企業への投資である「戦略投資」を行うことも特徴です。当社では「戦略投資」を行った企業には、株主としての支援だけではなく、パートナーとして共にプロジェクトを運営し、その成長を支援します。
プロジェクト投資の特徴は、プロジェクト総額の多くを金融機関からの負債性資金で調達することでレバレッジを効かせ、少額の投資資金で高い採算性を追求している点です。加えて、多様な分野のプロジェクトに機動的に投資を行うことができるように、プロジェクトの企画や開発に精通したベンチャー企業とパートナーシップを組んでいる点も特徴です。
プロジェクトの開発や運営には、業界知識、ノウハウ、技術力、交渉力など高度なスキルが求められます。当社単独ではカバーできないこれらの経営資源をパートナーのベンチャー企業が提供し、当社は、主に投資資金の提供や金融機関からの資金調達を含めたファイナンススキームの構築を担います。
当社は、社内の経営資源のみならず外部の優れた経営資源も積極的に活用して、成長性が高く将来有望な投資分野を創出し投資を行うことで、社会に貢献して参ります。そのために、今後も継続的に外部とのネットワークを強化し、パートナー企業の発掘を行います。これにより、新たな投資分野の創出に常時取り組み、次の注力投資テーマとしていく方針です。
(3)当社の競争優位性
当社は、当社の競争優位性を、アジアでの歴史、最先端の業界情報収集力、ベンチャー企業とのネットワーク、ファイナンススキーム構築力の4つだと認識しています。より具体的には、投資分野別に次のように考えています。
①再生可能エネルギー
当社には「パートナー戦略による豊富なネットワークから得られる多様な案件へのアプローチ力」があります。その結果、メガソーラー、ソーラーシェアリング、風力、バイオマス、バイオガスへと投資対象を多様化しながら、電力の固定価格買取制度(FIT)の変容の中でも一定の収益性を確保できます。
②スマートアグリ(植物工場)
当社のパートナーである株式会社モーベルファームには「品質に厳しい大手企業に評価される高品質野菜の生産を可能とする技術力」があります。具体的には、生菌数が極めて低く高品質かつ無農薬の野菜の量産を実現し、大手コンビニエンスストアのコンペティションで勝ち抜き、他社工場からの乗り換えにより取引を開始した実績があります。
③ディストリビューションセンター(物流施設)
当社のパートナーであるKICホールディングス株式会社には「大手デベロッパーが敬遠する土地を安く買い、安く作って、安く貸す開発力」があります。道路付けの悪い土地、市街化調整区域など、そのままでは開発が困難な土地を安く仕入れ、手間を掛けて事業化することで大手との競争を回避しています。
④ヘルスケア(障がい者グループホーム)
当社のパートナーであるソーシャルインクルー株式会社は「大手が未だ参入していないマーケットで先行する地位」にあります。市場が拡大している中でも競争環境は未だ平穏であり、既に国内最大級の運営棟数を有し、業界をリードする立ち位置を確立しています。
⑤ヘルスケア(高齢者施設)
当社のパートナーであるAIPヘルスケアジャパン合同会社は、「日本初のヘルスケア特化型上場REITの運営に関与し、介護業界に広いネットワーク」を有しています。日本ヘルスケア投資法人の設立や運営アドバイザーを手掛け、業界の先駆者としての知名度があります。
⑥M&A仲介業務
当社は「国内外での投資活動、ファンド運営を通じてニーズを発掘する機会」を有しています。取引候補先となる300社以上のIPO実績を有し、また、長くアジアで投資活動を行ってきた知名度があります。
(4)中期経営計画(2022年3月期から2024年3月期)の達成状況
①計画の概要
既存のプライベートエクイティ投資資産のうち、過去に投資を行った「フィナンシャル投資(注1)」の資産を流動化し、その資金で好採算かつ収益の安定性が高いプロジェクトに投資を行いその残高を増加させ、棄損したバランスシートの早期修復と資産の入れ替えを行う方針でした。また、投資対象プロジェクトを多様化するために新たな投資分野を開拓し、パートナーとなるベンチャー企業に「戦略投資(注2)」を行い、プロジェクト投資での協業を通じたハンズオンの支援により株式売却益を増加させる方針でした。
注1:フィナンシャル投資とは、戦略投資以外のプライベートエクイティ投資です。
注2:戦略投資とは、プロジェクト投資のパートナーであるベンチャー企業へのプライベートエクイティ投資です。
②主要な業績評価指標(KPI)
主要な業績評価指標(KPI)は、従来連結基準(注)による親会社株主に帰属する当期純利益であり、2022年3月期は340百万円、2023年3月期は550百万円、2024年3月期は850百万円とする計画でした。
これまでより成長性が高くサステナブルな収益構造を構築することを目指し、株式売却益に比べて安定したプロジェクトの売却益や、プロジェクトの運営による収益、フィナンシャル投資に比べてより確度と収益性の高い戦略投資からの株式売却益、投資事業に付随するフィー収益の増加を目指しました。
③3年間の計画達成状況
これに対して実績は、「フィナンシャル投資」資産については、流動化を促進して投資残高を減少させたものの、新規上場(IPO)が遅れる銘柄や売却に至らない銘柄もあり、資産の入替は完了しませんでした。また、回収額が見込みを下回ったため利益・資金の充分な確保には至りませんでした。
プロジェクト投資の残高増加と多様化については、プロジェクトの種類により達成度合いに差が出ました。ディストリビューションセンターへの投資は、新規案件の開発に想定よりも時間がかかり、投資残高の増加も想定を下回る水準となりました。他方で、スマートアグリプロジェクトでは、大手外食チェーン向けを中心に販売先の開拓が進み、これに合わせて事業の規模も拡大しました。当社グループが投資している兵庫県丹波篠山市の工場を増設したことに加え、戦略投資先が兵庫県養父市の工場を取得しました。なお、篠山工場は、計画よりも黒字化が遅れていましたが、売上の拡大により黒字化まであと一歩という状況まで到達しています。また、ヘルスケアプロジェクトのうち障がい者グループホームでは、地域金融機関との新規取引の開拓が大きく進展し投資資産が増加しました。2024年3月期には、建設会社との連携により複数の施設を一括して取得するスキームを実現し、投資件数の増加や収益化までの期間短縮に寄与しています。しかしながら、1件当たりの金額が小規模なため、プロジェクト投資全体の残高増加への寄与は限定的でした。なお、多様化を図るべく新たなプロジェクトへの投資を行いましたが、投資したプロジェクトからの収益寄与はまだ少なく、収益の柱の構築には至りませんでした。
戦略投資では、積極的なハンズオン支援を行い、2件の戦略投資先をIPOとM&Aにより売却して利益を得ました。一方で、戦略投資先であっても業績が大きく下振れするケースや売却が予定どおり進まない銘柄が発生しました。
主要な業績評価指標(KPI)の達成状況は、従来連結基準(注)による親会社株主に帰属する当期純利益の実績が、1年目が49百万円(計画比△291百万円)、2年目が△269百万円(計画比△819百万円)、3年目が△1,574百万円(計画比△2,424百万円)と大幅な未達となり、2期連続の赤字となりました。
計画未達の主な要因は、株式売却益の下振れです。事業計画の進捗の遅れ等によりIPOが実現しなかった銘柄や、IPO後の株価が計画を下回った銘柄がありました。また、IPO以外の回収を計画していた銘柄では、売却交渉が合意に至らない銘柄や、売却価格が計画を下回る銘柄がありました。加えて、投資先企業の業績の悪化や回収見込額の低下に伴い、評価損や引当金の損失が計画以上に発生しました。
プロジェクト投資では、計画期間の2年目まではプロジェクトの売却が計画よりも前倒しで実現し好調でしたが、3年目は売却交渉や手続きに想定以上に時間がかかったためプロジェクトの売却が1件のみとなり、3年間累計の売却益の実績は計画未達となりました。また、スマートアグリプロジェクトや、再生可能エネルギープロジェクトのうちバイオガス発電プロジェクト、及びその他プロジェクトのうち一部で、売上が計画を下回り黒字化が遅れました。
B:2025年3月期の事業方針
2025年3月期は、2期連続赤字の状況を踏まえて、当社の事業再生を強力に推進するために監査等委員以外の取締役を入れ替え、新たな経営体制で黒字化を目指します。新たな事業方針や経営計画は、2024年7月以降に新経営体制の下で策定する予定です。それまでの間は、暫定的な予算や投資方針で運営して参ります。なお、当社は2024年5月24日の取締役会で、丸山俊氏が代表取締役を務めるガバナンス・パートナーズ㈱を無限責任組合員とするファンドを割当予定先とした第三者割当による新株式の発行を決議しました。当該新株式の発行で調達した資金で、障がい者グループホームへの投資とファンドの組成を行う計画です。
外部環境の認識では、マクロ経済環境に目を向けると、デフレから脱却しつつある日本経済への高い関心、長期化かつ先鋭化する米中対立を背景とした日本企業におけるサプライチェーンや研究開発拠点としての重要性、近年の為替円安の進行等から、海外、特にアジアの投資資金が日本国内の有望なテクノロジーやベンチャー企業、そして上場企業に対して投資機会を求める時代となっています。
その様な環境下における当社の競争優位性は、日本国内では上場企業としての信用やプレゼンス、アジアや中国ではこれまでに当社が築いてきた実績や知名度、そして、豊富な実績を有するファンドマネージャーやプロジェクトマネージャーや、各種の投資スキームに対応した投資と事業管理に長けた人材であると認識しています。
当社の投資事業の特徴の認識は、これまでと同じです。ただし、プライベートエクイティ投資では、ファンドを組成してその資金で投資を行うことで、投資への自己資金負担を減少させます。今般調達した資金では、2つのタイプのファンドを組成する計画です。1つ目のタイプは、これまで当社が戦略投資として当社の自己資金により投資を行っていたベンチャー企業への投資を行うファンドです。具体的には、既存プロジェクトのパートナーであるベンチャー企業や、将来プロジェクトのパートナーとなり得るベンチャー企業に対して投資を行う予定です。2つ目のタイプは、アジアや中国を中心とした海外投資家と国内投資家等を出資者として、日本国内の上場企業及び未上場企業を投資対象とするファンドを個社ごと・業種ごとにターゲット型として複数組成する計画です。
プロジェクト投資では、ヘルスケア(障がい者グループホーム)の外部環境について、これまでと同じく有望との認識をしています。そこで、障がい者グループホームへの投資に注力し、竣工後に私募ファンドへ売却することで短期的な利益を確保します。
主要な業績評価指標(KPI)は従来連結基準(注)による親会社株主に帰属する当期純利益であり、250百万円から950百万円と見込みます。上限と下限の差額は、未上場株式の売却による収益です。プライベートエクイティ投資において、投資金額の比較的多額な未上場株式の売却による利益を見込んだ場合が上限となります。また、その売却が実現できない場合でも、2024年3月期から売却活動をしているプロジェクト投資の売却益を中心に利益を確保し、下限を目指します。具体的には、物流施設1件、障がい者グループホーム16件、高齢者施設1件、メガソーラープロジェクト3件の売却を見込んでいます。また、企業規模や収益規模に合わせて、更なるコストの削減も実施します。
(注)従来連結基準
当社グループでは、2007年3月期より、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(企業会計基準委員会 2006年9月8日 実務対応報告第20号)を適用し、当社グループで運営している投資事業組合等の一部を連結の範囲に加えて連結財務諸表等を作成しております。しかしながら、投資家及び株主の皆さまに、当社グループの経営成績及び財務状況を正しくご認識いただくためには、従来からの会計基準による財務諸表等の開示も必要と考えております。
以上のことから、従来の会計基準に従って、投資事業組合については、資産、負債及び収益、費用を外部出資者の持分を含まない当社及び関係会社の出資持分に応じて計上し、また、会社型ファンドについては連結の範囲から除いた連結財務諸表等を「従来連結基準」として、決算短信等において継続的に開示しております。
- 検索
- 業種別業績ランキング