企業兼大株主日揮ホールディングス東証プライム:1963】「建設業 twitterでつぶやくへ投稿

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企業概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 基本方針

 当社グループは、企業活動を行う上での軸・拠り所として企業理念「JGC's Purpose and Values」を制定しております。

「JGC's Purpose and Values」は日揮グループのパーパス(存在意義)及びValues(価値観)の2つの要素から構成され、日揮グループのパーパス(存在意義)として、「Enhancing planetary health」を掲げ、当社グループ共通のValuesとして、4つのちから、即ち、「挑戦」、「創造」、「結集」、「完遂」を定め、さらに「尊重」、「誠実」を2つの誓いとして明らかにしております。

 当社グループは、企業理念「JGC's Purpose and Values」に基づき企業活動を進めていくことで、企業価値の一層の向上を図り、以て人と地球の健やかな未来づくりに貢献してまいります。

(2) 目標とする経営指標、経営環境、中長期的な経営戦略及び会社の対処すべき課題

 当社グループは、2021年度から2025年度の5ヶ年を長期経営ビジョン「2040年ビジョン」の1stフェーズ、挑戦の5年間と位置づけ、中期経営計画「Building a Sustainable Planetary Infrastructure 2025(BSP2025)」において、「EPC事業のさらなる深化」、「高機能材製造事業の拡大」、「将来の成長エンジンの確立」を重点戦略とし、戦略投資に積極的に取り組むことで収益の拡大、多様化を進めております。財務目標として、2025年度に売上高8,000億円、営業利益600億円、親会社株主に帰属する当期純利益450億円、自己資本利益率(ROE)10%を掲げております。

 ご参考:BSP2025「3つの重点戦略」

(1)EPC事業のさらなる深化

① 大型EPCプロジェクトの競争力・収益力をさらに強化

2025年度の海外の大型EPC(設計・調達・建設)プロジェクトの売上高目標を3,500億円に設定し、リスク管理・プロジェクト折衝力の強化を通じたプロジェクト粗利益率の向上と、JV組成戦略・デジタル技術・建設工法の最適化による受注競争力の向上を推し進め、大型EPCプロジェクトにおける当社グループの強みをさらに深化させていきます。

② EPC事業の成長市場・分野への拡大

大型EPCプロジェクトに加え、EPC事業を成長市場・成長分野に拡大し、ポートフォリオの多様化を推進していくことで、2025年度の成長市場・分野におけるEPC事業の売上高目標として3,000億円の達成を目指します。今後案件の増加するLNG受入基地、ガス火力発電、太陽光発電、バイオマス発電、医薬品、病院、ケミカル分野の強化による収益拡大と並行して、成長著しいアジア地域におけるリージョナル経営体制の強化並びに、国内市場への対応も見据えた人員増強を図ります。

 

(2)高機能材製造事業の拡大

高機能材製造事業においては、事業規模を拡大し、2025年に売上高600億円の達成を目指します。その実現に向け、既存主力事業においてプロパーケミカル触媒、ハードディスク用研磨材、半導体製造装置関連素材等の製品ラインナップを増やし、収益の拡大に取り組みます。また、将来を見据えた戦略投資と次世代事業の開発にも取り組みます。戦略投資ではファインケミカル新製品開発や高熱伝導窒化ケイ素基板生産設備、次世代事業の開発ではカーボンリサイクル向け触媒、全固体電池用電解質、骨再生材料等が対象となります。

 

(3)将来の成長エンジンの確立

「2040年ビジョン」で定めた5つのビジネス領域について、特に将来の成長エンジンとして期待する以下のビジネスの確立に取り組みます。2025年度は売上高500億円を計画し、10年後には売上高5,000億円規模のビジネスに育成していく方針です。

 

・エネルギートランジション領域:

カーボンマネジメント支援、洋上風力、スマートO&M、水素・燃料アンモニア、小型モジュール原子炉(SMR)

・ヘルスケア・ライフサイエンス領域:

スマートホスピタル、スマート工場、デジタルヘルスケア

・高機能材領域:

カーボンリサイクル・ケミカルリサイクル向け触媒、骨再生材料/OCP 等

・資源循環領域:

廃プラスチック、廃繊維リサイクル、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)製造

・産業・都市インフラ領域:

水処理、鉄道

BSP2025の計画3年目となる2023年度において、「EPC事業のさらなる深化」では、海外プラント市場の中長期的な拡大を見据えたプロジェクト遂行キャパシティ拡大の一環として、インドに設立したオペレーションセンターの人員拡大を進めたほか、国内EPC事業の拡大に向けて、国内EPC事業会社である日揮株式会社は、株式会社高田工業所と国内EPC事業を対象とした協業基本合意書を締結しました。今後増加が見込まれる国内の低・脱炭素分野や資源循環分野の案件を共同で遂行し、より多くの案件に対応していく方針です。

 加えて、「将来の成長エンジンの確立」における産業・都市インフラ領域の拡大にも関連する取組みとして、海外EPC事業会社である日揮グローバル株式会社が、半導体や蓄電池などの先端技術産業分野のリーディングコントラクターであるExyte社傘下のExyte Singapore Pte. Ltd.と、インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイの4カ国における同分野のEPCプロジェクトの受注・遂行に関する協業契約を締結しました。同分野での営業活動からEPCプロジェクト見積・受注・遂行を共同で実施し事業拡大を目指していく方針です。また、遂行中の複数の海外EPCプロジェクトにおいて、データ統合管理システムを適用し、EPC役務をシームレスに遂行するデジタル技術を活用したプロジェクト遂行(EPC DX)を本格化させました。

 また、当連結会計年度において当社グループは、日揮グローバル株式会社がタイで遂行中の化学プラント及びサウジアラビアで遂行中の原油・ガス関連プラント建設プロジェクトなどにおいて採算悪化を招くこととなりました。これらプロジェクトにおける採算悪化を重く受け止め、新規プロジェクトの受注に際して、採算性に加えて設計業務に関して適正配員を重視した対応や事業管理体制の見直しや強化などに全力で取り組んでいく所存です。

「高機能材製造事業の拡大」では、触媒・ファインケミカル分野において、同分野の事業会社である日揮触媒化成株式会社は、合成燃料用やケミカルリサイクル用の触媒、及び高速通信材料や半導体用機能性研磨粒子など新規ファインケミカル製品の今後の需要拡大に向けて、現在所有する事業所の隣接地に新たな事業用地を取得しました。

 また、ファインセラミックス分野においては、同分野の事業会社である日本ファインセラミックス株式会社は、顧客ニーズに応えるために、電気自動車向けパワー半導体の高熱伝導窒化ケイ素基板の増産に向けて、宮城県富谷市で新工場の建設を開始しました。加えて同社は、東北大学とともに骨再生材料のリン酸八カルシウム(OCP)の量産に世界で初めて成功し、幅広い医薬品・医療機器製造会社との協業を目指してサンプル出荷を開始しました。

「将来の成長エンジンの確立」では、エネルギートランジション領域の水素・燃料アンモニア分野において、日揮グローバル株式会社が、住友商事株式会社の豪州現地法人向け水素製造プラント建設プロジェクトを受注したほか、ENEOS株式会社などがマレーシアで計画するMCH製造プラントの基本設計役務や、当社及び旭化成株式会社などが共同で推進する、マレーシアにおけるアルカリ水電解システムの建設を含む水素製造プラントの基本設計役務などを受注しました。また当社は、株式会社クボタなどとともに、大規模な水素製造事業への参入を視野に、輸入したアンモニアを熱分解して水素を得る「大規模外部加熱式アンモニア分解水素製造技術の研究開発」を開始しました。

 さらに、当社が石油資源開発株式会社などとともに進める日本を起点とするCCSバリューチェーン構築を目指す共同検討に、JFEスチール株式会社のほか、中国電力株式会社及び日本ガスライン株式会社が参画し、JFEスチール株式会社及び中国電力グループが保有する日本国内の製鉄所や発電所で排出されるCO2の分離・回収、及びマレーシアまでの液化CO2の海上輸送(瀬戸内エリアでの内航輸送を含む)と受入れ、貯留までのCCSバリューチェーン構築について、必要な設備やコストなどを含めた検討を開始しました。

 廃食用油を原料とした国産SAF製造・供給事業において、当社は、外食チェーン大手、金融機関や給食事業などに携わる様々な企業と廃食用油の供給及び利用に関する基本合意書を締結し原料の確保に取り組みました。コスモ石油堺製油所における大規模生産実証設備についても、2024年度下期から2025年度初頭の生産開始を目指して建設工事を進めております。

 さらに、将来の市場拡大が見込まれるバイオものづくりに対し、当社は株式会社バッカス・バイオイノベーションと共同で、微生物の開発・改良から培養槽のスケールアップ、生産プロセスの開発までをワンストップで手掛ける「統合型バイオファウンドリ」事業の構築に取り組むなど、ビジネスモデルの多角化にも取り組みました。

 総合エンジニアリング事業

 プラントマーケット全般として、天然ガス(LNGを含む)に加えて、低・脱炭素分野等においても、顧客の設備投資計画は引き続き豊富にあるものの、金利上昇や建設費用等の増加により顧客の初期投資費用が増加傾向にあるため、一部の顧客において投資決定時期を先送りする動きが出ております。また中東情勢などの地政学的リスクの高まりや、2024年の政治イベントとして米国大統領選挙などが予定されており、その結果次第では世界経済、ひいては当社グループのビジネスにも大きな影響を及ぼす可能性があることから、その状況を注視しております。

 エネルギーソリューションズ分野では、トランジションエネルギーとしての天然ガス(LNGを含む)の需要は、引き続きアジアやアフリカを中心に拡大していく見通しです。これを背景に中・長期的なエネルギーの安定確保と低・脱炭素社会の実現を見据えたLNGなどの設備投資計画が、引き続き進展していく見通しです。

 サステナブルソリューションズ分野では、世界的な低・脱炭素化の潮流を受け、水素・燃料アンモニアやSAF、CCS、合成メタン(e-methane)などの低・脱炭素分野のプラント建設計画が本格的に動きだしており、政府による導入目標などのイニシアチブや補助金によるサポートも受けながら顧客の設備投資計画が実現していくことを期待しております。

 ファシリティソリューションズ分野においては、世界的なデジタル産業の拡大や生産拠点の多様化などに伴って、需要が高まる半導体や蓄電池の周辺産業、及びデータセンターなどの設備投資計画が北米やアジアなどで引き続き進展していく見通しでおります。

 国内分野においては、水素・燃料アンモニア、SAF、廃プラスチックガス化などを中心とする低・脱炭素分野や資源循環分野において、顧客の設備投資計画が実現していくことを期待しております。一方で、政府による補助金交付の遅れや建設費用等の増加によって、顧客の初期投資費用が増加傾向にあることから、一部の顧客において投資決定時期を先送りする動きが出ており、その動向を注視しております。また、ライフサイエンス分野でも顧客の設備投資が引き続き継続していく見通しであるほか、既存製油所・化学プラントの保全工事においては、2024年度はメジャー年に当たり、定期修繕工事の需要が増加する見通しです。

 機能材製造事業

 触媒分野においては、FCC触媒の国内シェア拡大及び海外展開に加え、水素化処理触媒の協業先企業との体制維持と収益性向上、ケミカル触媒の新規案件獲得、拡大するカーボンリサイクルやケミカルリサイクル分野に対応する新規ケミカル触媒の製品化、再生可能エネルギー発電向け環境保全触媒の材料開発などを目指します。ファインケミカル分野においては、主力であるエレクトロニクスや半導体市場の事業環境悪化の影響が懸念されるものの、シリカゾルの新規研磨材の立上げ、機能性塗料材の拡販及び多用途展開、化粧品材のプラスチックビーズ代替拡大とオプト材の拡販、多用途展開に注力してまいります。

 ファインセラミックス分野においても、半導体製造装置市場の事業環境が引き続き停滞する影響が懸念されるものの、新規顧客獲得や新分野参入のほか、高熱伝導窒化ケイ素基板のさらなる受注拡大に取り組んでまいります。

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